対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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Episode-Inside16-5 『恐ろしく早い動揺!私でなきゃ見逃しちゃうね!』

 

 ここで1つ日葵ちゃんの話をしようかな。

 

 学園のみんなも知っている通り、日葵ちゃんは毎日噂が生成されているほどに人気者で、親しくなった異性同性両方にモテる理由が私にはよくわかる。

 

 個人の戦闘能力

 巷の噂を除いた実績

 対魔忍(わたし達)を纏めあげられる統率力

 前線の実働部隊として適した忍法

 そして神村ちゃんやその身が凍り付いちゃうような幽霊に対しても臆さないその強い精神力

 

 すべて対魔忍として必要な要素だよね。

 

 噂だけで毛嫌いする人もいるけど……。

 

 現に私は初めて出会った時から日葵ちゃんに好意を持てたし、上原くんだって日葵ちゃんと常に一緒に居るし、日葵ちゃんの強さを知っているなら上原くんもきっと日葵ちゃんのことは対魔忍としても、異性としても大好きに違いない。

 

 

暗に好きだって言ってたし!

 

 

 でも日葵ちゃんとしては、私よりも上原くんを好いているのは火を見るよりも明らかだ。

 

 彼と2人きりでいるときだけは私には見せたことのない甘いメスの顔をしている。

 

 上原くんは鈍感な男の子だから、特別扱いされていることには気づいてないみたいだけど……。

 

 同性ならば誰だって、上原くんに対するあからさまな日葵ちゃん態度で気付けるはずだ。

 

 『日葵ちゃんは上原くんが好きなんだ』って。

 

 私にだってそんな表情を向けてくれる時もあるけど、あくまでもそれは私が病室で押し倒すことに成功して、性感帯の愛撫によって日葵ちゃんをエッチな気分にさせられたときだけ。

 

 

 どんなに本気で好きだって伝えても、いつも流されちゃう。

 

 

 本気になってもらえない。

 

 

 まるで私が一時的な冗談でも言っているみたいな反応だ。

 

 

 例えるなら……。

 

 

 ……そう……。

 

 

 私と日葵ちゃんが本当の姉妹だとして、妹の私が本気でお姉ちゃんに恋愛対象として好きだって伝えているのに流されちゃうような感じ。

 

 

 だからこの期末試験。私はゆきかぜちゃんに敗北したとしても上原くんだけには負けられない戦いがある……!

 

 日葵ちゃんが私にも愛情を注いでくれるのであれば、私は上原くんとその与えられた愛を喜んで分かち合えるけど……。

 

 日葵ちゃんの愛が1人にしか向けられないのであれば、私はその座を絶対に勝ち取らねばならない!

 

 対魔忍として、本当はこういう私情を持ち込んじゃいけないことはわかっているけど……。

 

 それでも今日は。今日を境には。

 

 上原くんに勝って、日葵ちゃんに対魔忍として強い私になびいて貰いたいのだ。

 

 

「…………」

 

「さっきからちょこまかと!!! いつまでも逃げ回ってないで対魔忍らしく正々堂々と戦いなさい!」

 

「追いかけても追いかけても追いつけない! 先ほどから、蛇子達と何回も遭遇しているのに!」

 

「でもそれって相手は逃げ場を失いつつあるってことよね! いい加減この鬼ごっこを終わらせてやるわ! 行くわよ! 蛇子ちゃん! 鹿之助!」

 

「うん!」

 

「はぁ……はぁ……っ! はぁ……! ま、まって……少し休——」

 

 

 私達の作戦の思惑通り、時間切れに焦るゆきかぜちゃんと体力に余裕のある蛇子ちゃんの2人は姿を現しては逃げ続ける心寧ちゃんを追って森の最深部へと駆け出していく。

 

 心寧ちゃんが時々、振り返っては見せるジト目とか鼻で嗤うような仕草が、2人の闘争心を燃え上がらせているっぽいかな。

 

 一方で上原くんはというと……。背後から尾行してもわかるほどに体力のある2人から引き離されて、ほぼ孤立。単独行動の状態になっている。

 

 だからこそ、上原くんの進行方向上に回り込んでタイミングを見計らって……!

 

 

行けっ! 私の式神!!!」

 

 

 ブンッ!

 

 

「ひゃぁ……うはぁっ!

 

 

 ゴッッ!!!

 

 

「よしっ!」

 

 

 私の鉄球に憑依させている式神はヘロヘロになっている上原くんのおデコに向けて、思いっきり衝突させて上原くんを吹き飛ばす。

 

 上原くん突然の私の登場に反応できず。また鉄球に突き飛ばされたことで、そのまま連続で後転するようにコロコロと転がって木の幹に衝突する形で停止する。

 

 

 これで索敵特化の上原くんを分断することは成功した!

 

 

 彼が進路を塞ぐ私をなんとかしてゆきかぜちゃんや蛇子ちゃんを探しても彼が2人に追いつくには、時間がそれなりにかかるだろう。

 

 上原くんに勝って、彼よりも強いことを証明して、私は日葵ちゃんに対魔忍として認めてもらいながらも惚れてもらうんだもん!

 

 

「いたたたたたぁ……」

 

「上原くん! ここから先は通さないよ!」

 

「うわぁっ! ひ、日ノ出さん!? それに、と、通さないって……」

 

「そぉれっ!」

 

 

 ブンッ!

 

 

「ひぃっ!」

 

 

 メキャッ!

 

 

「ひぃぃぃぃぃぃっ!」

 

 

 今度の鉄球の攻撃は彼には当たらずに木にめり込む。

 

 だたでさえ日葵ちゃんや蛇子ちゃんよりも小柄な彼は、地面に這うことで攻撃可能範囲を小さくして避けて、ゆきかぜちゃんや蛇子ちゃんの方向とは真逆に逃げていく。

 

 やっぱり彼自身には攻撃能力はないっぽい!

 

 それでも私もここで上原くんを見逃がす気なんてさらさらないし! 鉄球を水ヨーヨーみたいに手元に引き寄せて彼を追いかける!

 

 

「ホラホラホラホラ! どんどんいっくよー!」

 

ま、まって! まってくれぇ!」

 

「実戦では『待って』は効かないよ!」

 

 

 向こうの森の中ではまだ心寧ちゃんとゆきかぜちゃんと蛇子ちゃんの追走撃は続いているらしく、ゆきかぜちゃんの雷遁の術による激しい炸裂音や地上から上空に立ち昇る雷がチラチラと木陰の隙間から覗ける。

 

 上原くんも最初は当てもなく逃げ惑っていたが、次第にゆきかぜちゃんの雷遁の術の方向へよろけながらも進んでいた。

 

 私もそんな彼の背後から、頭上で鉄球を振り回しながら追いかける!

 

 このシーンを日葵ちゃんがよく口走るネタ流に言うなら甘寧(かんねい)、一番乗り!』かな!?

 

 

「ひぃっ! ひぃぃぃっ!」

 

「捕まえた! えっと、甘寧!一番乗りぃ!」

 

「わぁっ! は、放せよぉ! ヒっ! ゆ、ゆきかぜ! 蛇子! た、たすけてぇ!!!」

 

 

 でも私から逃げていく彼の動きは疲弊していることもあってか、とっても遅くて、私が走りながら追撃の鉄球の甘寧攻撃をするまでもなくちょっと走っただけで彼の元まで追いちゃった。だから逃げる彼の襟首をむんずと掴み上げることで、こちらの鬼ごっこはあっさりと終わらせちゃう。

 

 宙に浮いた上原くんは手足をバタつかせながら、こちらを弱々しく殴ろうとしたり、先に行ってしまったゆきかぜちゃんや蛇子ちゃんに助けを求めているが、誰も助けになんか来ないし、彼の腕の長さでは私へ届く距離は彼の首根っこを掴んでいる手とか腕ぐらいにしか当たらない。

 

 ……。

 

 ますます分からなくなってきちゃった。

 

 日葵ちゃんは対魔忍の彼の何処に惚れたんだろう?

 

 上原くんは私たち女性対魔忍よりも強い対魔忍の男の子なのに。私でも簡単に取り押さえられるぐらい、こんなにも弱っちいのに。

 

 もしかして上原くんの実力を知らないとか?

 

 それでも一緒の学園生活を送っていれば、彼の強さは簡単に気づけると思うんだけど……。

 

 不思議な日葵ちゃん。

 

 

バチッ! バチッ!

 

 

 彼を掴んでいる私の手の中で、彼の忍法の静電気攻撃が弾けるけど……。本当に強めの静電気程度の威力しかないから放してしまう……こともなく。ほぼ決着はついている。

 

 

「えっへへー♪ この勝負は私の勝ちだね! 『棄権』って宣言するのと、荒っぽくなるけど一撃入れられて気絶するの……どっちがいい?」

 

「ゆ——」

 

「あ、そうだ『唐突』。上原くんは私と同じで日葵ちゃんが “大好きなもの同士” だから、これはアドバイスになるんだけど……」

 

「ひゃ、ひゃぃっ!?」

 

「私も心寧ちゃん達と合流しなきゃだから、この期に及んで2人を呼ぶようなら荒っぽい方法での気絶をしてもらうからね!」

 

 

 私の言葉に、彼は出かけていた言葉を飲み込んで目を左右に泳がせる。

 

 えーっと、こういう時は……。

 

 

 恐ろしく早い動揺!

 私でなきゃ見逃しちゃうね!

 

 

 上原くんもどこかで日葵ちゃんに助けて貰ったりしたのかな? 『日葵ちゃんが大好きなもの同士』って言った途端に顔を赤らめてるよ!

 

 

 やっぱり、図星だね~!?

 

 

 それと……なんだか…………。

 

 思いっきり、私の鉄球をオデコに受けたせいで……当たった場所が赤くなりつつあるけど、後で冷やしてもらえばいいよね。

 

 

「き、棄権します……」

 

「ヨシッ」

 

 

 上原くんの言葉を聞いてから、現場猫のポーズをして手を離す。

 

 組手ではあるあるな話だけど、降参や棄権と見せかけて奇襲をしかけてくる対魔忍もいるみたいだから彼からは決して目を離さずに、鉄球を振り回して(甘寧、一番乗りのポーズで)いつでも彼の脳天に鉄球を振り落とせるように動向を見守る。

 

 上原くん? ここではね。上原くんが蛇子ちゃんやゆきかぜちゃんに話していたように、いつもヒーローのように颯爽と現れて、私達を護ってくれる日葵ちゃんは現れないんだよ?

 

 

「ゆきかぜ……蛇子……ごめん

 

 

 彼は怯えた様子で震えながらも、地面の土をほじって指に刷り込ませた泥を使って自分の首に一本線を付けてくれる。

 

 これで完全に彼は脱落となり、この期末試験中では脅威とはならなくなった。

 

 

「いよぉーしっ! 上原くん撃破~!」

 

「うぅぅ……」

 

 

 その場に乙女チックなぺたん座りでへたり込んで、女の子っぽくシクシク泣き始める上原くんを放置して、2人を引き付けている心寧ちゃんの元へと急ぐ。

 

 相変わらず森の中からは遠目で見ても分かるほどに、ゆきかぜちゃんの雷撃が空高く伸び、おまけに暗闇が広がる森の中で一カ所だけ光が煌めいている。

 

 つまり! 私は広大な森林で心寧ちゃんを探さなくても、ゆきかぜちゃんの雷遁の術が放たれた場所へと向かえば自然と合流でき、なおかつゆきかぜちゃんは術を消費続けるという私達にとってWINWINになる作戦なのだ!

 

 わぁっはっはっはっはー!

 

 完璧な作戦だね!

 

 




~あとがき~
 な、なんて綺麗な三角関係なんだ……。
 綺麗な三角関係過ぎて平行四辺形が構築されている……!

 そして類は友を呼ぶとも言いますね。

 さらに前回、とある兄貴に不定の狂気は続いていますか?と質問をされましたが、続いているのと……また補足として、“とある習性”がより強く濃いものにもしていますと改めて解答させて頂きます。

 次回!
 Episode-Inside 実技試験編 決着します!

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