対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。 作:槍刀拳
今日は新しい試み、うんどぅるむ兄貴から頂いたファンアートを元に一本書いちゃうぞ!
まえさき市で3時間ウンコしていた蛇子ちゃんが、私を発見した趣旨を他の捜索隊に連絡し始めてから早1分。
ちょっとのぞき込んだだけでも呆気にとられるような長文を彼女は書き終えていた。
「送信っと♪ あ、でもやっぱり学園中を探し回って心配したことと大変な思いをしたことは事実だから、日葵ちゃんにお礼の埋め合わせをしてもらってもいいかな~?」
「お。現金なやつですね。いいですよ。まえさき市にまた遊びに行ったとき、大福やパフェでも何でも好きなものでも奢りましょうか?」
「あはは!やったぁ! でも、それもいいけど、蛇子はもっと別の事が知りたいな~」
メールを送信し終えた彼女はニヤリ、ニシシと笑う。
「ふむ。別のこと」
「うん。質問なんだけど……聞いても良いかな?」
「なんでもどうぞ」
「じゃあズバリ! 日葵ちゃんは鹿之助ちゃんが大好きなのは明らかですが、告白はいつするのかな!?」
「ミ゚ュっ?!」
想定外の質問に声が裏返る。
蛇子ちゃん……ぶっこんで来たね。
私もなんでも答えると言ったことと総動員をさせてまで心配かけさせてしまった手前。誤魔化したり質問から逃れることはできず、普段は半目の目を丸くしながら目を逸らしたあとに両目を瞑って片手で後頭部を掻く。
「こ、こくはく……ねぇ……」
「答えにくい?」
「…………ちょ、ちょ、ちょっとね」
「じゃあ、ちょっと質問の難易度を落として……日葵ちゃんは鹿之助ちゃんのどんなところに惚れたの?」
興味津々と言った様子でグイグイ距離を詰めて尋ねる蛇子ちゃん。
これがお年頃の乙女ってやつか。
ぐいぐいくるじゃん。すごくぐいぐいくるじゃん。遠慮の二文字がないじゃん。
まぁ、蛇子ちゃんの質問の手口が完全に〈説得〉における交渉術。
【ドアインザフェイス】
『最初に「大きな要求」をして断られたあとで、本命の「小さな要求」をすると承諾してもらいやすくする』という技法なのだが、これは確かに断りにくい。
でも『それぐらいなら答えてもいいかな』と思ってしまう。それこそ完全に〈説得〉の話術に囚われてしまって居るわけだが。
うーん……。鹿之助くんに惚れたところ……ね。
「最初は……その『芯の強さ』かな……」
「芯の強さ?」
「うん。私の転校初日。私が紫先生による基礎能力試験に強制参加させられたことについて、蛇子ちゃんはご存知でしょうか?」
「もちろん! あの日のことは鹿之助ちゃんから事情は大まかに聞いたし、日葵ちゃんとは初日の放課後から友達になったんだもん。忘れてないよ」
「ははは、ありがとうございます。……その際、彼は五車学園に来て右も左も分からない私に声を掛けてくれて……詳細は省くけど、とにかく彼には色々と助けられたんです。紫先生に無茶難題を突き付けられたときも、クラスメイトは息を潜め荒波を立てようとしない中で、彼だけが紫先生を止めようと動いてくれて……。その……。周りの空気に流されない『困ったことがあれば助ける』と言った筋を通す、相手が何者であろうと臆さずに言及できる『芯の強さ』かな? そこに惚れた感じ……ですね」
「……」
「いやっ、でもっ。ま、まぁ? それだけじゃなくて、小動物みたいな “外見の” 可愛さで好きになった部分もありますが???」
鹿之助くんに惚れた経緯を真剣な顔で聞いてくれる蛇子ちゃんに気付いて、ちょっと照れてしまいおどけたような声でオチも付属させる。
「でも……。やっぱり鹿之助くんは、私には存在しない……あの正義への情熱と輝きが眩しくて、一緒に居るとかつて活力に満ち溢れていたものが湧き上がるような気がして……若かりし頃を思い出して、懐かしさを温かい気持ちにさせてくれるんです……」
オチをつけたのにそんな私の一面も認めてくれるように私のことを笑わず、話をうんうんと頷いて聞いてくれる蛇子ちゃんから逃げるようにして日差しがあたる場所まで出向く。
真剣な蛇子ちゃんに視線を合わせられなくて、おもむろに左手を頭上の太陽に突き出して重ねる。指先の隙間から零れた日の光が私の目に吸い込まれて行く。でも太陽の光は眩しくて、私はそんな光を隠しながらも太陽が見えるように指先で影を作る。
「日葵ちゃん、ってさ」
「ん?」
「やっぱり蛇子達とは違って、本当に
「モヒョォッ?!」
彼女の言葉に思わずヒヤリとして、ギョッとした顔で蛇子ちゃんを見る。
一瞬にして『嘘だろ!? 私の正体に気づいたか!? え!? いまは鹿之助くんが好きになった経緯しか話してないんだが!? どこで釘貫 神葬要素が漏れ出ちゃった?! え!?え?!どこどこどこどこどこどこ?!!?』と焦るも、蛇子ちゃんの顔を見る限り、たぶん。たぶん私が考えているものと違う別の意味か、そのままの意味らしい。
蛇子ちゃんの顔は非常に優しい笑顔をしている。
即座に〈心理学〉で彼女が私に対してどのような感情を抱いた上で、そんな発言をしたのか表情筋を使っての探りを入れるも私の正体に関することでは言及していないように見える。あの優しい顔の裏側に私の弱み『釘貫神葬であること』を握ったことを出汁にして脅迫してくるような素振りは見られないし、本当に優しい微笑んだ顔と……わたしの恋心に対する応援や祝福するような顔だ。
ギョッとしたことを誤魔化すようにして、片目を瞑りながら左手で後頭部を掻く。
「えへへっ。そんな日葵ちゃんに蛇子からワンポイントアドバイスもしてもいいかな?」
「あ……は、はぁ……。なんでしょうか?」
「これは余計な一言かもしれないし、無粋かもだけど……。蛇子は鹿之助ちゃんに告白しても良いと思うよ?」
「ン゙ッ」
蛇子ちゃんの後押しに顔が、梅干しでも食べたかのようにキュッとすっぱい顔になる。両目を瞑って後頭部を掻く。
更に普段出ないような青空 日葵の声の4、5オクターブ高い声が喉の奥から零れ出た。
それに顔が熱い。夏の炎天下に照らされての暑さではない。皮膚の真皮から火が吹き出ているかのような熱さだ。
「い、いやぁ、でも私学生だし? 今は恋愛に集中することよりも、学生の身として勉学に集中するべきだし? 告白して付き合うのは……あのっ。その、えっと」
「ふーん? じゃあ、日葵ちゃんは舞華ちゃん*1に鹿之助ちゃんを取られちゃってもいいの?」
「それは困る!困ります! ……でも……でも、さ……大学進学とかさ。就職とかさ……。それにまだ知り合って2カ月だし……鹿之助くんは私のことどう思ってるか……つきあって
「…………日葵ちゃんって変なところ奥手だよね!」
俯き両目を瞑って左手で後頭部を掻く私の隣で、からかうようにケラケラと笑い始める蛇子ちゃん。
これは完全に手玉に取られている。
くっ! 殺せ!!!
「それに、なんかたまに年寄りみたいなことを言うよね。もしかしてだけど、鹿之助ちゃんに好きって伝えられないのはそのギャップに葛藤していることもあるのかな~?」
しかしその伝えられた彼女の言葉が、どこか自分の中で腑に落ちたような気がする。
そうか。ギャップか。
実際問題、告白できないのもそういうことが私の中でリミッターとしてかかっているのかもしれない。正直なところ告白するという行為に対して『釣り合わないんじゃないか』という言葉が脳裏を過ぎる。
なにぶん、身体はピチピチの16歳でも、精神は……ハンジロー先生と付き合うぐらいがお似合いの精神なのだから。
それに————
「そ、そそそそそそうかも! そうだ! それだ! ギャップのせいだよ!!!きっと!!!!」
「ふふふふふっ。そっか~そっか~」
つい “ギャップ” に対して想いを募らせ、伏目になってしまった私が誤魔化すためにできたことは、テンパりながらも意地悪そうな顔をした彼女の問いかけに答えることだけだった。
………
……
…
鹿之助くんがどうして好きなのか。
心配させて学園中を探し回らさせてしまった蛇子ちゃんにお詫びとして『彼に惚れた部分』を話したのち、ひと段落ついたところで彼女はベンチから立ち上がる。
「ふふふふ。日葵ちゃんの安否は確認できたし、日葵ちゃんがどうして鹿之助ちゃんが好きなのか経緯も聴けたことだし蛇子はそろそろ戻ろうかな!」
「分かっていると思いますが、蛇子ちゃん。この話は——」
「チッチッチッ。日葵ちゃ~ん? 日葵ちゃんには私がそこまで無粋な女に見えるのかな~? どうして日葵ちゃんが鹿之助ちゃんを好きなのかはここだけの話。誰かに話したりなんかしないよ」
「ならば結構。以上をもちまして、私から特に言及することはございません」
「うん♪ でも告白して気持ちを伝えるなら早めにしたほうがいいとおもうな! この先、何があるかわからないし
「……人生は上り坂、下り坂、ま
それでも私の護れる範疇であれば、彼に降りかかる火の粉は振り払うつもりだが。
「うふふふふっ! うまいこと言うね! 分かってるなら急がなくっちゃ! それじゃあ、またねー!」
「はい。また明日」
人の恋愛事情を見抜いてウキウキ調子に乗りまくっている蛇子ちゃんを見送って、私は再び屋上のベンチに座り上空を見上げる。
しっかし、蛇子ちゃんの『チッチッチッ』と発言した時の仕草。
あの人差し指をメトロノームのように左右に動かすポーズを見たのは何年ぶりだろうか。平成初期のドラマ、古畑任二郎のドラマで見たぐらいの懐かしさを感じた。
「…………ふふ」
蛇子ちゃんのおかげで少し元気が出た。
だからベンチの背もたれに背中を預けて、また空を見上げる。
先ほどまで褪せていた空が、気分が晴れ渡る青空に染め上げられていた。
そうか。これが
「あっ、そうだ!」
「!?」
元気も出たところで再び蛇子ちゃんが戻ってくる。
まるでフローロングの床を靴下で滑っているようで、底面だけを使って器用に滑るかのような動きだ。
「あのね! 鹿之助ちゃんが、日葵ちゃんにお話したいことがあるって言ってたから、メールでこの場所のことを伝えておいたからね!」
「ファッ!? えっ!? 鹿之助くんが来るの!!? 今から!? ナンデ!? アイエ?!」
「うん。だから日葵ちゃんはこのまま待っててね♪」
つい先ほどまで鹿之助くんに対する好きなところを話して、蛇子ちゃんに告白するよう後押しされたばかりなのでソワソワとしてしまう。
もしかして蛇子ちゃんが全てお膳立てをするために私にあんな話をしたのだろうか? 心寧ちゃんも恋愛クソ強女としてできる女だが、蛇子ちゃんもこういう根回しの強さに関しては引けを取らないだけに何ともいえない。
でも多分、今回はそういうのじゃないだろう。
あまりにも急すぎるからだ。
今の姿は神村さんと殴り合ったせいでポニーテールのリボンが弾け飛んだり、髪留めが粉砕して私のくせ毛がボンバーしていて今、彼に好きだって伝えるのはハードルが高すぎる。
彼が五車学園の何処に居るのか分からない以上、ここまでの距離から到着する時間を逆算することはできないが……たぶん購買部に赴いて髪留めを買って整えている暇はないだろう。
思わず狼狽しながら、片目を瞑りながらグシャグシャになってしまって整えられていない頭部に触れる。
「ふふふふふ~。やっぱり日葵ちゃんは鹿之助ちゃんが好きなんだね~? 蛇子は鹿之助ちゃんが日葵ちゃんに何を伝えようとしているのか知ってるけど、これは私の口からは言えないな~♪」
「っ!っ!」
「結果は後日聞かせてね♪ お邪魔はできないから私はおいとまするよ~!」
「~~~~~ッ!!!」
そわそわしてしまっている私を見透かすような小悪魔的な笑みを浮かべる蛇子ちゃん。彼女はそのまま私にもう一度手を振って階段を降りて行ってしまう。
ま、ままままままま! おおおおおおお落ち着け私。もちつけ!わたし!!!!!
まままままずは身だしなみを整えよう!頬のガーゼ保護は外さない方が良いでしょ?!ヤマンバギャル的な髪型は何かで抑えないと……あっそうだ!頭に撒かれた包帯をうまく使って簡易的な髪留めに活用して……!
~あとがき~
鹿ちゃん人形は登場しませんが、心の目で見てください。
そこに鹿ちゃん人形(鹿之助くん)は存在するんですよ!!!(幻影)
→いつかアルジェニキの挿絵も小説に取り込みたい。(小並感)
また、ここまで情報が出そろえば、対魔忍と一般人(探索者も含む)、それぞれの恋愛価値観基準が分かった兄貴姉貴もいるかと思います。
つまりEpisode-Inside16-7で蛇子ちゃんが、陽葵ちゃんに『鹿之助くんの討伐自慢をオリ主にするな』と止めに言った理由はもうお分かりですね!!!?
わからなかった兄貴姉貴にも分かるよう次回、探索者(一般人)の恋愛価値観基準について回答をオープンしたいと思います。
べ、べつに情報は出そろってるんだから、感想欄で予想を立てても良いんだからねっ!