対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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~まえがき~
 タイトルパロディ『桐島、部活やめるってよ』



Episode121 『青空、東京キングダム行くってよ』

 

「ねぇねぇ、日葵ちゃん。カレンダーに書かれたここの『絶対に外せない観光』ってどこに行くの?」

 

 五車学園の友人達と日程調整のひと段落がついたところで、私達を遠巻きに眺めていた蛇子ちゃんが箇条書きにされた日程表を眺めにやってくる。

 

 それからカレンダーの8月、私が絶対に忘れてはならないようにと1日だけ明らかに彩られたお盆『絶対に外せない観光』の詳細を尋ねてきた。

 

 ここはあのまえさき市で人間風情に泣かされたえっちなお店を開いている蛇子ちゃんとの約束の日なのだが…………きっと私がここで『まえさき市の蛇子ちゃんに会いに行きます』なんて正直なことを言おうものなら、まずは鹿之助くんからのSTOP。事情を説明されてこの場にいる全員から確実に猛反対されそうな予感がする。

 

 だが私にはお盆の蛇子ちゃん日程を蹴るわけにもいかないのだ。

 

 本当は蹴りたいけど。

 

 その選択肢はあの高位魔族(邪神)に赦されていない。

 

 むしろ、邪神(高位魔族)を野放しにすることが一番危険。

 

 邪神は制御できないからこそ、邪神なのだ。

 

 人間風情が制御できる等と実におこがましい。

 

 

「あぁ。その日はちょっと東京キングダムっていう人工島に観光へ出かけます」

 

 

 ここで嘘をつけばボロが出るかもしれないし、変に隠そうとすれば好奇心旺盛な陽葵ちゃんがさらに突いてくるかもしれない。

 

 それにこの場には普段はぼんやりしているが、博識なふうま君の存在もある。

 

 彼はMDコンポ前でMAD音楽を聴いているように見えるが、片耳だけはこちらに向けて会話を聞いているように見えた。

 

 ゆえに誠実な返事したのだった。

 

 

「それで次の日程——」

 

 

 最終的にその何気ない彼女の質問に対して、行先のみを伝えてあっけらかんとした顔をしたまま次の話題で話を流そうとする。

 

 

「「「「「え?」」」」」

 

 

 ……。

 

 ふっ。やれやれだぜ。

 

 ……どうやら私の答えはまずったらしい。

 

 サラッと流すつもりで答えた行先のせいで、一瞬にして部屋の空気が凍り付く。

 

 凍り付いた上に、私の次の日程の話の方が流されてしまった。

 

 だが、その東京キングダムってそんなに危険地帯だっけか?

 

 えっちなお店で働いている蛇子ちゃんに会いに行く過程で、既に情報収集は進めている。

 

 しかし調査した〈図書館〉による東京都庁によって掲載された情報によれば、第二の首都として東京湾に建築された人工島で移転企業募集中と表記されている——ニュータウン(笑)五車町よりも発展した島って認識だったのだけど……。

 

 

「この日は東京キングダムに行くの?」

「具体的に東京キングダムには何しに行くんだ?」

「オススメできないな……やめとこうぜ?」

「最初からあそこはハードル高いんじゃないかな」

「詮索しませんが行かない方が良いと思います」

 

 

 まさかの質問と否定の総攻撃である。

 

 あの 前向きポジティブ娘である陽葵ちゃん ですらオロオロしながら、私が東京キングダムに赴くことに関して心配そうな顔をしている。

 

 要するに陽葵ちゃんからしてみれば、鋼人邸(洋館事件)よりも東京キングダムのほうが危険な場所らしい。

 

 あるぇー? なんか私の調べた〈図書館〉の情報と皆の反応が乖離していないか?

 

 これは入念に入念を重ねた——かつての日本国総理大臣である検討使が()()に備えたあの瞬間のような準備に取り組んだ方がいいのではなかろうか?

 

 まえさき市でえっちなお店を開いている方の蛇子ちゃんを、お星様へと還らせるぐらいの得意武器による重装備。

 

 

「待ってください。そんなに一度に話しかけないで。私は聖徳太子じゃないんですよ。一度に聞き取れる人の声は1人から3人までです」

 

 

 私の言葉に今度はMDディスクの音楽を聴いていたふうま君まで『聞き捨てならない』とでも言いたげに近寄ってくる。

 

 カレンダーを中心に集合した5人はアイコンタクトを送りながら、お互いに不安な意志を送り合っている。

 

 

「質問は順番に。順番にお願いします。答えられる範疇なら話しますから」

 

「え、じゃぁ私から。東京キングダムには誰かと一緒に行くの? お父さんとお母さんとかと?」

 

「いえ。1人ですね。1人で観光に行きます」

 

「ヒュッ」

 

 

 私の言葉に陽葵ちゃんの表情が、目の前に鉄骨が落ちてきたあげく前髪を掠めて驚いたときのような顔になる。

 

 その他の4人といえば…………。

 

……。        ……。

    ∧,,∧   ∧,,∧

 ∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧

( ´・ω) と) ( つと ノ(ω・` )

| つ   [カレンダー] 旦と ノ

と_)_)       (_(_つ

 

 

 まるでくだらないダジャレでも話した時にレスされる2chのAA(アスキーアート)【審議中】のように顔を見合わせ始めてしまった。

 

 

「えっと、青空さんは1人で東京キングダムには何をしに行くんだ?」

 

「あー……主な目的は先ほど申し上げた通りの観光です。〈図書館〉ざっくり調べた限りだと海中に浮かぶ第二の都市として設計されたものらしいので……。よくもまぁ、この地震大国日本でそんなものを作ろうと思ったのか。首都直下型地震の埋め立て地の地盤沈下による液状化と湾内津波に対する防災対策の仕組みや構造を実地調査しに行くってのが主な目的ですね。絶対、2020(2021)東京オリンピックみたいに建設費の中抜き事案臭がするんです」

 

 

 もちろん東京キングダムに赴く目的は今適当に組み立てた捏造にしか過ぎないが……。

 

 今の詳しい目的について言及したところで、鹿之助くんと陽葵ちゃんは私の小難しい話には着いては来れなかったようだ。

 

 ゲームのようなNow loading.......に加えてダイヤルアップ接続音中(ピー!ガガガガガ!ゴォー!)みたいな顔をし始めている。

 

 頭上に♻︎みたいなマークが浮かんでいる。

 

 最初に話題から振り落とせるような理由を話してみただけなんだけどね。

 

 

「えっと。それはつまり1人で観光しにはいくけど……現地で誰かガイドとかと合流してと調査するって感じ……なのかな……?」

 

「うーん……ガイド……は……。予定に組み込んでないですね。自分の足で自由に散策しながら調査するのが好きなので……そのあたりは必要に応じて依頼の予定です」

 

 

 鹿之助くんはここで復帰するが、陽葵ちゃんはまだ話から脱落している。

 

 その顔は目を丸くした宇宙猫だ。

 

 更なる質問は来なさそうではあったが、私の調査内容に理解ができたふうま君、蛇子ちゃん、心寧ちゃんの3人はまたもや顔を合わせて審議中な状態になっている。

 

 

「あのさ……。これまでの日葵の性分から俺達が『やめとけ』って言っても行くと思うから、その上で助言してもいいか?」

 

「はい」

 

「東京キングダムって、まえさき市のあの店以上に……たくさん、そういう……魔族の店があるんだ……」

 

「ああ、だから!」

 

「……だから?」

 

 

 おっと。いけない。

 

 思わず声が震えながらも説明してくれる鹿之助くんに対し『だからまえさき市でえっちなお店を開いている蛇子ちゃんが指定してきたのか。点と点が繋がったのと、魔族だらけなら相手にとって有利な場所ですね』なんて口走りそうになって発言をこらえる。

 

 そういえば、貰った名刺の源氏名にスネークレディって書かれていた他にも『カオス・アリーナ』とかなんか色々書いてあった気がする。

 

 結局バタバタしちゃってカオス・アリーナも調べられてないし、あっちの蛇子ちゃんから貰った名刺もどこにやったっけな……。あれがあれば、蛇子ちゃんの元まですんなり行けるとか何とかメールで書いてあった気がするけど。

 

 2枚あったし、行きと帰りのチケットとして役に立ったりしないかな……。

 

 

「だから??? 『だから』って何だ? 日葵」

 

「いえ、話を遮ってすみません。続けてください」

 

「……。魔族の店があるから、日葵の直感で良さそうだなとか思ったところに入るなよ? あと悪そうだなと思った店にも入っちゃだめだぞ」

 

「え、つまり魔族の店の全店に入っちゃダメ……ってコト?!」

 

「あたりまえだろ!?!???」

 

 

 冗談のつもりでちいかわムーブをするも、鹿之助くんは『おまえは何を言っているんだ』おじさんのような顔をし始める。

 

 

「本当の東京キングダムは怖いところなんだからな?!??いくら日葵みたいな規格外れな存在でも気軽に観光に行くような場所じゃないんだぞっ?!」

 

「ん?ん?ん?んんんん??? いま、鹿之助くん。わたしのこと『規格外れな存在』って言いました?」

 

「あ、あ、あ、あ。え、えっと。鹿之助ちゃんが言いたいのは、日葵ちゃんがどんなに神村ちゃんと互角に殴り合える実力があってもすごく危険な場所だって言いたいんだとおもうよ! えっと、だから心配しているだけで他意はないかな!?!?」

 

 

 鹿之助くんは私の実父かと思うほどにひどく怒り出す。

 

 いつものように私の心にナイフを突き立てるようなデリカシーのカケラもない単語が出てきたが、即座に蛇子ちゃんのフォローが入る。

 

 

「…………わかりました。すみません。魔族の店には入らないようにします」

 

「絶対にダメだからな。まえさき市の時みたいにうまく逃げられないからな!」

 

 

 あ。

 

 うん。そっか。

 

 そうだった。

 

 鹿之助くんは私とフードコートで別れた後、ケモミミフードの集団に捕まっちゃったから知らないんだっけ。

 

 あの後、えっちなお店で働いている蛇子ちゃんが私に直接会いに訪れて殴り合ったことについて。

 

 たしかプールの見学席で面白おかしく茶化した話をして、『()()使()()()お願いしたら蛇子ちゃんがギャン泣きしながら』無事にその場は逃げられた(てい)で話したんだっけ。

 

 実際のところは現在進行形で逃げられてないんだわ。

 

 だから東京キングダムにいくわけだしね。

 

 本当は行かないことが一番、お互いのためになるんだろうけど……。

 

 どうしてもね。あっちに聞き分けのないその蛇子ちゃんが脅迫してくる以上ね……。

 

 




~あとがき~
 内容が長くなってしまったのと、作者がどうしても話したい内容があるので二分割しました。
 次回もあとがきも本編に一部加わっていることもあるので、長いと思います。

 あとがきのまえがきはそのぐらいにしておきまして……。
 今年の対魔忍RPGのエイプリルフール企画すごかったですね!
 音ゲー、謎のファンシー姐、高UI……。
 いずれもこれ一本だけでゲーム作れるんじゃないか?ってレベルでした!
 『シアトリズム 対魔忍』とか出そう……。

 企画で【サンライズチアー】日ノ出 陽葵ちゃんまで登場して、記念撮影不可避でした。別個で新調したちびキャラSDが新しい動きを見せるの凄い……すごくない?

 今年も陽葵ちゃんの登場ありがとうございました! 私はホクホクやぞ!!!
 対魔忍RPGは蓮魔先生(ノーマル版)とか運営開始の時期から存在するのに、メインストーリーやイベントで登場しない……なんてキャラがザラに居るのでこうして本作で利用させて頂いているキャラが原作で生き生きとされているとモチベに繋がります!!!
 しかも4月の現在進行形イベント『青春と欲望のキックオフ』では、中ボスにキラキラ鹿之助くんが配備されているし……。

 公式供給ウマウマ……。
 対魔忍RPGの運営社員様ありがとうございます!
>>去年もこのぐらいの時期に、LILITHソフトの社員が見ているな!?と言ってモチベが上昇していたような気がします。(時期的に鋼人洋館事件あたりで陽葵ちゃんフィーバーしてたかな?)
>>次回、まえがきから本編を通して作者がフルスロットルで対魔忍に関して過激な事を言います。(続にネタの消化ともいう)


~評価返信~
 『ひきわけ様』
■ クトゥルフ神話についてはそれなり、TRPGは片手で数えられる程度しか遊んでおらず、退魔忍についても基礎程度しか知らない私ですが、とても楽しく読ませてもらっています。まだ序盤ですが、これから読み進めるのがとても楽しみです!更新応援しております!
◇ 応援ありがとうございます! 私も最初本作を書き始めた当初は対魔忍のこと基礎も知らない状態でしたが、いまは対魔忍RPGのほうで情報収集しながら皆さんの応援を糧に執筆を続けさせて頂いております!
  まだ序盤とのことでしたが、続けて読んで頂ければ私も執筆した甲斐で満たされます! 今後も投稿を続けていくので同じ瞬間を並んで歩けるときを楽しみにしてお待ちさせて頂きます!

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