対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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Episode124 『〈言いくるめ〉の貴公子』

 

 

「おまたせ。コロちゃん」

 

……。(おかえり。)……………………。(藍野ちゃんも一緒なんだ。)……………………?(随分遅かったけど、何かあった?)

 

「なんにも。教室の外で妖精ちゃんとばったり出会ったから、少し雑談を挟んだぐらいさ」

 

「ど、どうもーー? 噂の妖精ちゃんでーす?」

 

 

 なお先輩とのぞみ先輩から物理的に背中を押されるがまま、コロ先輩達が待機している3-C教室へ入る。

 

 美少年と女装系男の娘に両肩を掴まれたまま、私はコロ先輩の元まで運ばれて、黒田先輩・氷室先輩の間に割って入る形で2人に顔見せすることになった。

 

 第一印象は大事というし、引きつった笑顔になってしまったが無理矢理に愛想笑いを作りながら、間に割って入った3人の顔をそれぞれ確認する。

 

 

…………。(いらっしゃい。)…………(来るの待ってた)

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 コロ先輩は後輩を出迎える先輩のようにニコリと小さく微笑んで出迎えてくれたが、他の2人は駄目そうだ。もう駄目そう。駄目だ。駄目。

 

 蓮魔先生大好きっ娘は戦艦クラスの眼光でこっちを睨んでくるし、雪ん子藁合羽っ娘は 完全に冷め切った女傑 のような目でこっちを見おろしている。

 

 

「」ダッ

 

「はーい。逃げない。逃げない。大丈夫。大丈夫」

 

 

 むりむりむりむりむり! 無理だって! 今逃げなきゃ、いつ逃げるんだよ!?

 

 この瞬間から睨みつけてくる2人に打ち勝つプランを練ったけど、背後から不意打ちの後頭部〈キック〉からの離脱以外に作戦思いつかなかったもん!

 

 作戦の段階でもヒットアンドウェイしか思いつかないってことは、絶対に正攻法で勝てる相手じゃないって直感してるってことだもん!

 

 無理だって!殺気を感じちゃう!

 

 まだ何もしてないのに殺されちゃうよぉおおっ!

 

 そんな必死の思いを他所になお先輩は、まるで社交ダンスでも踊る様に私を引き寄せる。

 

 怯える子供をなだめるように抱きしめてポンポンと頭を触りながらコロ先輩の前に戻しちゃう!

 

 やめて!

 

そんな優雅に戻さないで!

 

 

「青空 日葵」

 

「青空 日葵さん」

 

「うひ、は、はひ……お二人とも洋館事件以来でしゅね……」

 

 

 逃げられないよう、なお先輩に抱きしめられながらを押さえつけられている以上。緊急脱出することが叶わず、震えながらもできたことはNTRビデオに登場する歪なダブルピースを作りながら、どう2人の逆鱗に触れてしまわないよう立ち回ることだけを考えていた。

 

 

「お久しぶりね。ところで死々村さんに見せてもらったのだけど、これは何かしら?」

 

 

 氷室先輩はコロ先輩の机の上にあった冊子をひったくるように手に取ると私の眼前へと突き付けてくる。

 

 それはまごうことなきコロ先輩に言語解析を依頼したときに渡した写本の一部(【ウ=ス異本】)だった。

 

 

「な、な、なななななにって、ほ、ほほほほほん? でででですがが???」

 

「そんなのは見ればわかるわ。私が言いたいことは、あなたがどうしてこの本を学園内に持ち込んでいるかってことよ」

 

 

 それはつまり……えっ。

 

 もしかして、そのニュアンスは……これは何か危険な本ということだろうか?

 

 つまり氷室先輩は、写本の一部に書かれている内容を解析することができたという事なのか?

 

 だとすれば何の言語で書いてあって、なんて書いてあったのか是非ともお話を聞かせて頂きたいところなのだが……。

 

 ひとまずは……。

 

 

 勝ち確演出入りましたーッ!

 

 

 ここで言語だけでも判明すれば、人間風情に泣かされたえっちなお店の蛇子ちゃんにこの本を投げ渡して速攻逃げられるゥーッ!

 

 今の状態は一昔前のパチスロで言えば、7(セブン)が3つーッ!!!

 

 

「えっ。え。え。え」

 

「いい? 五車学園へ学習に無関係な不要な私物を持ち込むこと、それはすなわち五車学園校則第3条の学内生活について(4)項に違反しているわ!」

 

 

 はい、違ったー。

 

 これただ単純に学内生活の校則に違反しているって説教の話だったー。

 

 言語の判別・解読できちゃったのかと思っただろ!!!

 

 私の淡い期待を返せ!

 

 背面姿、雪ん子がァーッ!!!

 

 

「え、あああ……す、すみませ——」

 

 

 内心では悪態をつきつつも、私について偏見を持っていない のぞみ先輩の手前。

 

 表面上では震えてマナーモードバイブのように振動して怯えた演出をする。

 

 

「それは違うよ氷室さん。その冊子は妖精ちゃんが図書室で見つけた書物の言語調査をしたいと言っていたから、そのページを印刷して持って来てもらってきてもらったものなんだ」

 

 

 そんな演技をしていると私に頭上から、落ち着きながらも凛としたなお先輩の声が掛かった。

 

 ふと頭上を見上げてみれば、彼は私に対してウィンクをして口裏を合わせる素振りをしてくれているではないか。

 

 な、なお せんぱぁい!!!

 

 このイケメン系美少年の貴公子め! 私の性癖が美少年スキーだったら、確実に今の一撃でトゥンクしてたぞ!!! 男の娘スキーでよかったな!!!

 

 

ちなみに。

 

 

 のぞみ先輩は男の娘には入らない。

 

 個人的なジャンル分けとしては女装男子によって生じた男の娘だと分類している。

 

 美少年*1、男の娘*2、女装男子*3このジャンル分けは誤ってはならない。

 

 誤れば私の脳内などで戦が起きる。

 

 ふたなりで例えるなら『玉あり』『玉なし』、玉無しなら『陰核が陰茎』『陰核と陰茎は別』レベルの戦争が起きる。

 

 

「そうなの?」

 

「は、はぃー……」

 

「ならいいけど……でもこの文字列の本は見たことないのよね……。まさか勝手に持ち出し禁止の禁書を印刷したわけじゃないわよね? 物によっては持ち出しに応じて校長先生への持ち出し許可が必要なものもあるけど。これは図書貸し出し規約6条に——」

 

「おいおい。氷室さん? いくら妖精ちゃんが学園中を震撼させている問題児だからって、そういう偏見だけで尋問に取り掛かることはとても良いことだとは思えないね。そんなに捲し立てるよう詰問して疑いにかかることは同じ風紀委員、風紀隊の隊長として見過ごせない行為だよ」

 

「……」

 

 

 なお先輩に叱られた氷室先輩は少し萎縮しているように見える。

 

 

「それと今回の件は僕もコロちゃんも一枚噛んでいる案件だし、その過程で君が提示しているような学則に違反した咎があれば君達を招集してまで言語解析に勤しむわけがないじゃないか」

 

 

 虚言にも関わらず、筋が通り過ぎている言い分に氷室先輩は完全に黙る。

 

 その表情は非常に不服そうな顔だが、風紀委員・風紀隊という立場の中ではなお先輩のほうが上なのかもしれない。

 

 あるいはなお先輩が五車学園で会得している人望によるものか。

 

 なんだこの美少年!?

 

 味方につけると無敵か!?

 

 〈言いくるめ〉力、たっけーぇな!

 

 

「とはいっても穂稀さん。彼女は疑われても仕方ないほどに数々の不良行為が目立ってますので。これまでに我々、風紀委員として把握していることとしまして、今回の私物の持ち込みを始め。平穏時の緊急ボタン連打、病院内での暴走、学内の備品破壊(主に窓ガラス)。禁足地への不法侵入。立ち入り禁止地区への不法侵入、上級生等への暴力行為を数回。同級生への暴力行為。卑劣な行いなど前例が多すぎます。そう思われたくなければ日々の素行から疑われないように振る舞うべきでは?」

 

 

 氷室先輩を〈言いくるめ〉黙らせたなお先輩に対し、今度は黒田先輩が噛みついてくる。

 

 ぐぅの音も出ない関西人のイジリ発言も驚きな、事実陳列罪に私は酸っぱい顔で両目を瞑り後頭部を掻く。

 

 この場で私の素行について何も知ら無さそうであろうのぞみ先輩を一瞥したが、こっちもこっちで幻滅していそうな顔で私を見ている。

 

 きっと彼も私に対するイメージが相当ダウンしたのかもしれない。

 

 くっ……。ここでも化けの皮が剥がされた! 余計なことを……。

 

 

「黒田さん。僕が氷室さんに注意したのは、必要以上に彼女を疑い学則に基づいて処罰・追い詰めようとしたからだよ。勿論、妖精ちゃんの “素行が悪い” ことは僕も知ってる」

 

 

 アァーッ! まさかのなお先輩までも私の事実を認めてしまったぁー!

 

 これには俯くほかないーッ!

 

 

「……だけど、それを理由に彼女の行い “全てが悪行” と決めつけるのは止したほうがいい。決めつけは真実を濁してしまう事だってあるのだからね」

 

「…………」

 

 

 なお先輩の言葉で黒田先輩も黙る。

 

 さらに俯くのを止めて見上げる私に対してウィンクを飛ばしてくる。

 

 〈心理学〉で彼の心情を探り、言葉をあてるならば『だから怖くないって言っただろ? ちゃんと僕も付いているんだから』って副音声がついてそう。

 

 ああああああああ!

 

 いまのはキュンとした!

 

 いまのはキュンとしたわ~~~!!!

 

 このイケメン学内で絶対にモテるでしょ。なお様ファンクラブ作ろうぜ!

 

 『㊙︎ふうまファンクラブ』とは別に『〈言いくるめ〉の貴公子』ファンクラブ作っちゃおうぜ!

 

 

 

*1
穂希なお先輩タイプ:女装ではない。特に彼の場合は自分好みなものを装飾していたら、いつの間にかに女っぽく見えるようになってしまっただけ。あくまでも女性に見えるのは副産物であり、男らしい服を着用することでまた彼のポテンシャルである美少年というジャンルは新たに輝きを見せることだろう。要するに顔の整った美しい少年。

*2
上原 鹿之助くんタイプ:女装ではない。こちらは生粋の天然記念物。両親の遺伝子がイリュージョンなコラボを果たして生み出された存在。美少年のような男っぽいカッコよさ全振りではなく、自然体で愛くるしさで満ち溢れたジャンル。美少年と共有している点は、いずれも天然記念物という点。女装男子にしか見られない『自分を可愛らしく魅せよう』という意図が加わっていない自然体。すっぴん。奇跡の産物。男の娘にも様々なジャンルがあるので一概には言えないが、少なくとも私の定義の中、天然記念物という視点では鹿之助くんは男の娘であり、のぞみ先輩は男の娘ではない。鹿之助くん=先天性男の娘。のぞみ先輩=後天性男の娘。基本的にアダルトビデオに登場する男優は後者の存在が多く産出されている。

*3
藍野のぞみ先輩タイプ:自身を可愛く魅せようと思った or 女性に憧れて女性のような姿をしているジャンル。嗜好として可愛いもの好きななお先輩とはまたちょっと違う。女装男子の過程を経て最終的に男の娘というジャンルに行き届いているが、大元としては彼の場合『女装男子』の方が適切。文化記念物。彼のヒザの皿と肩幅、体系は男らしさを隠しきれていない。それともそこまで隠すつもりはないのか。まぁ、女装男子と言ってしまうと色気がないからここは男の娘という表現にすることで艶っぽいカモフラージュを施している。




~あとがき~
 な、長くなっちゃった……。
 この場面に投稿した時には4000文字ぐらいだったのに……。
 いつの間にかに倍に……。
 小説を書いている人なら分かってもらえますかね?
 投稿前に再確認と編集を繰り返し眺めている間に、どんどん内容が厚くなって行っちゃう現象。

 これもオリ主が穂稀なお先輩、上原鹿之助くん、藍野のぞみ先輩について暴走解説し始めたことが原因なんや!

 内容を濃縮しすぎたので、読みやすさを考慮して2分割します。
 Episode125『(タイトル未定)』は、2023/04/26 20:37に投稿します……。

 また氷室先輩が『規則何条~』と具体的に規則を上げてオリ主を詰問していますが、こちらは私の中学生時代の学生手帳を参考に創造したものです。
 対魔忍RPGでも『氷室 花蓮』先輩は待機画面の待機画面発言で校則について言及することがあるのですが、具体的に第何条とか言われてなかったりします。
 それで『ちょっと確認してみるわ……』と手軽に確認するような内容があったので、最初は生徒手帳とかあるのかな?とか思っていたのですが、前に二次創作で蛇子ちゃんの(絵柄がカガミ先生の絵ではなかったので多分、二次創作)五車学園の学生カードが回ってきて、困惑したのはいい思い出です。

 私もなー。オリ主の五車学園 学生カードが欲しい! 作ってみたい!
 公式でも配布してなかったかな? ラミネート五車学園カード。

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