対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。 作:槍刀拳
あ っ た わ。
五車学園の学生証カード。
公式からは2022年の夏コミで配布されてたわ……。
と、なると、私が先に見た相州 蛇子ちゃんVer~は恐らく二次創作ですね。ドヤ顔の蛇子ちゃんが『可愛くとってよね』って言っているやつ。素材も同封してあったと思うのですが、誰がTwitterで投稿していたか覚えてない……。
でも、学生証に校則……? どこ……? かれん……?
「……ありがとうございます。なお先輩」
「礼には及ばないさ」
氷室先輩と黒田先輩の詰問と事実陳列罪に対し、イケメンオーラ全開で〈言いくるめ〉の貴公子として私を守護してくれた先輩に礼を述べる。
そんな私に彼はニコリと笑って、またもや頭をポンポンと優しく撫でながら私を背後から抱きしめていた手を引く。
「それで……コロ先輩、この書物の言語……何か分かりました?」
「
私の問いかけにコロ先輩は肩をすくめて首を横に振る。
「
コロ先輩は氷室先輩と黒田先輩に目配せする。
「……私には分かりませんでした。蓮魔先生に拝見して頂いてはどうでしょう?」
「私も。残念だけど見たことのない文字だわ。でも文字の形状が古代語に類似していることから考えるに歴史ある魔族が用いている言語じゃないかと思うけど……」
「
「……僕もみせてもらってもいい?」
「
「————」
のぞみ先輩は愛らしく人差し指を自身のこめかみに当てながら、目を瞑りながら指で頭をノックし始める。
「どうだい? のぞみには、この言語がわかるかい?」
「……。……うーん……? 見たことがあるような……気はするんだけど……」
「「「「「……」」」」」
何かしらの進展に期待してか、あるいはその動きによって、この場にいる全員が彼を注視する……。
「ごめん。思い出せないや」
思い出すには至らなかったらしい。
残念だが、先輩方による魔族語の言語解析は惨敗に終わった。
黒田先輩は蓮魔先生に見せる案を提案してくれたが、私としては蓮魔先生にこれを見せるのは避けたい。
まず図書室に存在している本ではないことが発覚してしまうこと。
次に〈言いくるめ〉の貴公子が誤魔化してくれたにも拘らず、その顔へ泥を塗る状況に繋がってしまうこと。
最後に、蓮魔先生は私が洋館に突入しようとしたとき、ヴェールの裏側を知る者のような目していた。
五車学園の教員という立場から学生に比べれば言語に精通しているかもしれないが、上記のリスクを冒して更に面倒なことに発展するぐらいなら地道に自分で解析をした方が100倍良いだろう。
既にこの本絡みでえっちなお店で働いている人間風情に泣かされた方の高位魔族な蛇子ちゃんにウザ絡みされているのだ。
本当は会いに行きたくはないのだが、この夏休みの期間には蛇子ちゃんとその友人に会いに行って本を見せる約束をしている。
そっちの方で何か少しでも情報を拾えればいい。
拾った情報を繋ぎ合わせて、真相に辿り着くことは何十回もこなして来た。
それにここで文字の意味が分かったとして。
それは爆弾ごと投げ渡して全力で逃走するか、本を投げ渡して反応を伺ってから全力で逃走するかの違いだ。
幸いにも『
「あー。確認して頂いて、ありがとうございました」
「力になれなくてすまないね」
「いえいえ。それと蓮魔先生に関してですが……別に先生の手を煩わせてまで知りたいわけではないので現状は大丈夫です。困ったら頼りに行きます。それよりも氷室先輩。歴史ある魔族というとどのような魔族を指すのですか?」
「んー、そうね。でも
「えー……ならば確認になるのですが。その歴史ある魔族って高位魔族のことを指していて、かつナーガ族、吸血鬼族、レイス族、淫魔族、鬼族、鬼神乙女族の6種族のことで合っていますか?」
「そうよ。安心したわ。ちゃんと授業には出ているようね」
氷室先輩による『不良だから、どうせ授業にも出席してないでしょ』みたいな態度に僅かに腹が立つ。でも残念ながらその内容はあくまでも確認にしか過ぎない。
だがな。既に鹿之助くんからまえさき市のフードコートにてちゃんと教えられている。*1
「ははは……。ちゃんと授業には出てますよ。社会人になったら学校の勉強を使うことはほぼないですけど、知っていれば知っている分だけ人生を豊かにしてくれるものなので……」
この言葉に黒田先輩と氷室先輩は心底意外そうな顔をしている。
その反面、コロ先輩となお先輩はお互いにアイコンタクトを送りながら私の発言に信憑性があるのだろう。うんうんと頷きあっているのが伺えた。
のぞみ先輩は私に関する情報が、どこまで真実なのか考え込んでいるような顔をしている。
と、まぁ……ここまで出そろった情報で分かることは、まえさき市でえっちなお店で働いている方の蛇子ちゃんはナーガ種であり、大々的に掲げられた『အနားယူခြင်း အနှိပ်ဆိုင်』のミャンマー語に類似した文字列と本の文字とは完全に異なるので、他の5種から絞って調査していけばいいだろう。
幸いにも氷室先輩によって古代という時代世紀が判明している。ここまで情報が割れれば個人での解析はそう難しくない筈だ。
しかし……そういえば、えっちなお店を開きながら人間風情に敗北した蛇子ちゃんは『親友なら文字を読めるかも』とか言ってたような気がする。ナーガ種の親友とはどんな存在なのだろうか? 同じナーガ種? それとも異種族?
「ところで先輩方は、高位魔族6種でナーガ種の親友と言ったらどんな種族が思い浮かびますか?」
「ナーガ種の親友の種族?」
「それは……同じナーガ族じゃないかな?」
「利害関係……ではないのよね?」
利害関係……!
氷室先輩の言葉を聞いた途端。
孤島のグルメ、井の頭五郎みたいな顔になる。
そういうのも考えられるか……!
「利害関係も含めてでお願いします」
「うーん……」
「結構難しい質問だね」
5人とも首を傾げ始める。
このことから分かることは3年生であっても異種族同士の親友関係は思い当たらないらしい。
「利害関係を含めてもナーガ種は、ナーガ種としか……。あっ! 美貌を追求する仲なら淫魔族と仲良しかもしれないよ!」
「私はナーガ族はナーガ族と最も親しい関係にあると思いますが……」
「そのナーガ族がお酒好きで金払いがいいのなら、鬼族と親しいかもしれないね」
「
「難しいわ。消去法で考えるなら、まずナーガ族が影で陰湿に活動するものとして、豪快な戦闘を好む鬼族と鬼神乙女は候補から外れるわね。次にナーガ族は極めて強力な力を持つ個体が多いから、知略系のレイス族と淫魔族も外れるかしら? となると、そこで考えられるのは影で暗躍することを得意とするナーガ族か……吸血鬼族だと思うわ」
うーん……三者三様だ。
条件によって親友の存在は多種多様な形態になってしまうらしい。民主主義に習って多数決、候補として多く出たもので考えるならば『ナーガ種』になってしまう。
私は蛇子ちゃんの友人について何も知らない。
ゆえに漠然としか先輩方に質問できない。
「……わかりました。一緒に考えてくれてありがとうございます」
これ以上、ここにても更なる進展は得られないだろう。
されど十分に情報は集められたと思う。
だから5人に頭を下げ、コロ先輩に託した小冊子を回収して教室を後にしようとする。
「
「あ、はい。コロ先輩、なんでしょうか?」
「
去り際に〈聞き耳〉で判別がつくぐらいの声の大きさでコロ先輩から呼び止められる。
どうやらまだ誰か来てくれるようだ。まさか、こんなにこの言語解析に3年生が集まるとは思っていなかった。
そのおかげでその人物によって無事に調査中の言語が割れればいいのだが。
~あとがき~
今回はもう一人、五車学園先輩のお友達をお呼びしております。
実力が伴ってないと正論とも呼べる辛辣な言葉を言ってしまって、だけど本当は後輩の面倒見の良い3年生のあの人です……。
次回
『対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい』2夜連続投稿。
Episode126 2023/04/30/20:37~
Episode127 2023/05/01/20:37~