対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。 作:槍刀拳
来週から毎週月曜日 20:37~投稿になります。
「妖精ちゃん。妖精ちゃん」
「どうかされましたか? なお先輩」
キララ先生が小冊子の言語を確認してくれている間に、いつのまにか背後で立っていたなお先輩が身を屈めて耳打ちを始めたので応じる。
「これは僕の興味本位の質問になるんだけど……君ときららさんはどこで出会ったのかな?」
「ああ。キララ先生とは以前とある繁華街で災難と遭遇した際にお会いしまして。裏の世界の怖い人たちに囲まれていた時に共闘して知り合った感じですね」
私の説明に、なお先輩は納得しているようなしていないような仕草をしながら頷く。
でも〈心理学〉で探りを入れれば、本心は約6割、納得していないのが顔つきとして現れている。
無理もない。今の説明には若干のフェイクが混じっている。
これは渡した情報から直接的に『釘貫 神葬』へ繋がってしまわないようにするためだ。
ゆえに彼女のとの正確な出会いを説明するならば、出会いは私が
まだ私が(新)クトゥルフ神話TRPG世界線の住人であった頃の話まで遡る。
………
……
…
当時の出来事から現在まで某アニメに準えるならば、きっと“あらすじ”としてはこうだ。
私は何処にでもいる探索者、釘貫 神葬。
同探索者で親友の
例の取引に興味深々。夢中になっていた私は、背後から襲撃してきた対魔忍世界のオークに気づかなかったのだ。
私はその場で気絶させられ、目が覚めたら……。
ヨミハラと呼ばれる地下都市の一角に存在する『高級娼館アンダーエデン』という娼館に囚われの身となってしまった!
2人の対魔忍と共に探索者としてアンダーエデンを脱出する私達。
釘貫神葬が逃げ延びていると奴等にバレたら、また身体を狙われ周りの友人達にも危害が及ぶ。
(その後は色々あって)ナイ牧師の転生によって対魔忍世界に訪れることにした私は肉体の名前——
「青空 日葵」
と名乗り、対魔忍から離れ対魔忍世界で一般人枠で人生を謳歌するために、父親の転勤の都合でやってきた新天地。五車学園に転がりこんだ。
たった1人の異世界人、見た目は子供、頭脳は大人。
私の名は釘貫 神葬!
…
……
………
……
…
はい。
はい。じゃないが。
まぁ、クトゥルフ神話世界線に居た頃、その拉致された先。
アンダーエデンの調教部屋で目が合わせたのと同時に知り合った
女性……女性、が『
なお先輩に説明した『裏の怖い人』たちというのは、主にオーク共と奴隷商人のオーク。
『共闘した』というのは、一足遅れて救出に来てくれた対魔忍2人と協力関係を築いたことを指している。
そういえば。
キララ先生と私、その他に2人。
高級娼婦として売られそうになっていた
「…………」フッ
あーあ。過去の思い出を振り返ってたら、懐かしくなってきちゃった。
そのヨミハラのアンダーエデンへ救出へ来てくれた2人の対魔忍。
『
あの2人も、この世界の何処か。
遠い場所にある対魔忍組織内で元気にしているだろうか?
腐ったこの世界で対魔忍は必要な存在かもしれないが、あの結果に懲りているのなら大学進学や社会経験を踏まえて最低限必要な知識を身に着けて対魔忍の道を歩むか、対魔忍を辞めて普通の職に就いてくれていると良いんだけど。
「えっと、転校生。あんた名前は?」
「……ん。あぁ(今は)『青空 日葵』です。キララ先生」
「青空 日葵ちゃんね……。どうしてあんたが私のことを “先生” って呼ぶのかは分かんないけど、ひとまずこの本は返させてもらうわ」
「ありがとうございます。……いかがでしたでしょうか? 私にはまだ
「そうね……」
キララ先生は平常時にはつり上がっている目尻側の眉の角度を平坦にして、困ったような顔をする。
この顔は、言うべきか言わないべきか悩んでいる時の顔だ。
でも流石は先生。
既に何かしらの情報を掴んでいるらしい。
表情や仕草まで一緒なのだ。
これは確実に彼女(?)で間違いない。
やっぱ情報通なホステスのママは違うね!
「どんな情報でも構いません。得られた情報を足掛かりに更なる調査を進めることは私の得意分野ですので」
「そう……。なら、この言語は鬼族の言語じゃないことは確かかしら……?」
「『鬼族の言語ではない』ですか……」
「ええ、コロちゃんの方から大体話は聞いているけど、青空ちゃんはその本の解読をするために情報を集めているのよね? 力になれなくてごめ——」
謝ろうとする先生を遮り、熱烈な1人拍手を送る。
お気になさらず。キララ先生。
言語に関しては先生の専門分野でないことは理解していますから。
ただ。先生は『こっちの世界の生活歴が長いので知っているかなー?』程度の質問でしたし。
「流石は先生。流石キララ先生ですよ。サスキラ。十分です。これで古代語の吸血鬼族、レイス族、淫魔族、鬼神乙女の4種類まで調査の範囲を狭めて調べられそうです」
「あ、ありがと……えっと。青空ちゃん。…………学園内の噂で耳にしている人物像とは、かなり違うわね?」
「えぇ。よく言われます。……フッ。噂は所詮
「そ、そ、そ、そう……」
「この場に蓮魔先生がいらっしゃられば『火のない所に煙は立たぬ』と仰られるでしょうね」
せっかくド肝を抜かれたかのような顔をしているキララ先生へ、したり顔をしながら恰好をつけているのに蓮魔先生大好きっ娘が余計な一言をボソリと呟く。
いいんだよ。そういう余計な事は言わなくて。
上級生への暴力行為はともかくとして、他は偶然の産物だったりするんだから。見逃してよ。
まぁ、これで五車学園にキララ先生が在学*1・在籍しているということは、鹿之助くんの恐怖症も、陽葵ちゃんの狂気状態も先生の力があれば早期に治せるだろう。
それ以外でも2人の精神状態が今後、神話生物共に狂わせられたとしてもキララ先生に治療および支えてもらえる期待ができるのだ。〈精神分析〉の勝手がわからない私にしてみればこんなにも心強いことはない。
ただ心配な要素としては、五車学園の校医は揃いも揃って曲者揃いなので……。
ですが、精神的ケアがお得意のキララ先生なら大丈夫でしょう!
個性:おっぱいで生徒達を治癒して行ってあげてください!
でも〈精神分析〉をするのに筋肉ぱふぱふは人を選んで治療してください! 鹿之助くんには刺激が強すぎるのと、子供は窒息死してしまいます!
「ところでやっぱり引っ掛かるのだけど……。私のことを別の誰かと勘違いしてない? 青空ちゃんみたいな子は一度会ったら忘れられないような存在感だけど、私にはあんたと出会った記憶がないのよね」
ここで再びキララ先生が腑に落ちない顔をして私のことを見つめる。
嗚呼。『釘貫 神葬です』って一言正体をこの場で暴露できれば、すぐにわかってもらえるのだろう。
だが背後にはコロ先輩、なお先輩、のぞみ先輩、黒田先輩、氷室先輩までもが事の成り行きを見守っている。
同じ
だから確認のために、もう一度。
「ハハァ。まさか。『おに
「私は、『おに
「……」
「……」
「……濁点の有無など誤差では?」
「……別人の可能性を誤差で片付けようとする下級生と出会ったら、インパクト強すぎて絶対に忘れられないわよ」
キララ先生は腕組みをはじめ、私の方が誤解していることをジト目を細めながら指摘してくる。
いやでも。その胸に油を投与しなきゃ実現できないような人外離れしたデカパイおっぱいと、女性の姿なのに
そのおっぱいの大きさはね。現実的じゃないです。
かくなる上は……。
「キララ先生」
「何?」
「失礼します」
「えっ。きゃぁぁあああああああああああああっ!?!!!??」
股間に生えていると思わしい『TRICK上田二郎級-馬級ディルドの付属品(なまもの)』具合を確認するため、スカート越しから彼女の股にぶら下がっている筈の巨根・デカマーラを掴みにかかる。
…………ぅん?
あれ?
ない。
無くなってる。
「こっちも失礼します」
「ちょあああぁあああああああああああああっ!!!!!!!?」
股間に馬級ディルドが付属していないことについて、私の知っている
本当にただの他人の空似の説が濃厚になってきたが、オネエでいることに飽きてシーメールからニューハーフへTSしたことを考慮する。
だって、ほら。
ここ対魔忍世界だし。そういう薬もあるかもしれないし?
目を瞑って五感の触覚に全神経を集中。
制服越しに胸を、スカートは捲り上げて生尻もニギニギと鷲掴みにする。
だ、だって、ほ、ほら。
世界には同じ顔の人間が3人いるって言うもんね?
か、確認は大事だもんね?
彼が私の想像しているキ、キララ先生で、あるならば、これぐらいのスキンシップは笑って、愛のホールドで押さえつけてくる程度だ、だし?
……。
……。
……。
うん。
「」
「」
「」
「」
「」
「なっ! なぁっ……!!!」
胸も、尻も。天然の生乳と生尻。
これは油やシリコンの類じゃない。これは生粋の脂肪による柔らかさだ。
嘘だろ……!? この世にはこんなデカパイが実在するなんて……!
要するに彼女は
同姓同名異性の同じ容姿、外見上は一寸の狂いもないドッペルゲンガーのような対魔忍世界側の住人。
つまり、
ケッ。紛らわしいドスケベボディしやがって。
このオッパイセンがよォ——
「んンンなぁにぃすんのよぉおおおおおッッッ!!! このバァカァ女ァアアアア!!!!!」
ベェッチーン!!!!!
エバにおけるアヌカ(以下略)のような悲鳴と共に、教室内にきららさんの怒りの平手打ちが私の胸部キリタッタ崖に突き刺さる。
「ヌ゛ッ」
目を瞑って触覚に全神経を集中させていたため、見えないその攻撃を〈回避〉することはできない。
うん。もうこれ、平手打ちというよりも相撲における張り手、だね。
斜めから突き刺さり払い上げるタイプの張り手。
ビルド2*2を優に超えていそうな一撃が私の胸部を正確に捉える。
空に打ち上げられた衝撃で、地面の木の葉が巻き上がるように私の身体が宙を舞う。
「おぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ!!!?」
まるで——
まえさき市でえっちなお店を開いている蛇子ちゃんに投げ捨てられたときのような——
錐もみ回転の動きで、空中での激しい横回転を加えながら激闘のデジャウと共に吹き飛ばされる。
このパワーは絶対に人じゃない。
人間とは到底考えられないような拳に吹き飛ばされ、硬く尖った鉄パイプと木製の机をクッションにして、私はこっちの世界の
胸はデケェのに心の器はちいせぇなァ!?(開き直り)
~あとがき~
穂稀 なお「あ。うん。今のは完全に妖精ちゃんが悪い」
死々村 狐路「
氷室 花蓮「あれは不純異性交遊ではないわね。セクシャルハラスメントで罰則を与えるべき?」
黒田 巴「お忙しいところ申し訳ございません蓮魔先生。黒田です。今お時間宜しいでしょうか? また青空 日葵が……はい。居ます。今、3-C教室です。はい。そうです。きららさんに対し痴漢行為を働きまして……はい。はい。……はい。同性に痴漢行為など信じられないでしょうが、あの
鬼崎きらら「逃げるなァアァアアア!!!あと2発は殴らせろぉおお!このぉおおおおッ!!!」
釘貫 神葬「んひぃぃいいいい!すみません!すみません!すみませんんんんんんん!!!好奇心が抑えられなかったんですぅううう!!!うわ!扉開かねえ!うわああっ!言語解析・休学届けはありがとうございました! 五車学園はお邪魔しましたァー!」パリィーン!!!!
藍野 のぞみ「……ねぇ、なお。僕の中での青空ちゃんのイメージが、出入り口を氷結されて逃げられないからって躊躇なく全身で窓を破りながら逃げて行ったり、他人の目の前で先輩のスカート捲り上げて揉んだりする思考回路が奇抜な変人1年生っていう印象派なイメージでしか記憶に残らなさそうなんだけど」
秋山 凜子「隣の教室まで響き渡る殴打音が聞こえたのだが……。ん?あれは噂の転校生と鬼崎さ……。!? 窓まで破れていったい何があった?!」