対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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20章 『夏だ!海だ!水着だ!開戦だーッ!』
Episode128 『くさぶき城-海水浴場』


 

 照りつく太陽。

 

 晴れ晴れとした蒼天。

 

 見渡す限りの砂浜。

 

 砂浜へ波状攻撃を続ける波。

 

 浜辺に立ち並ぶ色彩豊かなビーチパラソル。

 

 遠方から響くは黄色い声。

 

 ほんのちょっとの磯の匂い。

 

 まさに学生時代の夏休み。

 

 年に1度は求めていた景色が眼前に広がる。

 

 

「海だ……」

 

 

 私は鹿之助くんに誘われて海のある大地の海岸沿い降り立っていた。

 

 場所は茨城県の太平洋に面した沿岸沿い。

 

 この地は茨城(くさぶきじょう)-海水浴場と呼ばれている。

 

 群馬県民の他にも埼玉県民やら栃木県民やらが集結する対魔忍世界では “比較的” 安全らしい海岸沿いらしい。

 

 念のため東京キングダムの情報を調べる片手間に今回の浜辺町について調査をしたが、これと言って怪しい点は見つからなかった。

 

 このことから地域に根付いたローカルな問題はないのだろう。

 

 仮にこの手の〈図書館〉の情報検索で引っ掛からない情報があるとするならば、既に現地で活動しているナニカを警戒した方がいいということだ。

 

 怪しい宗教団体にしかり、神話生物にしかり、ヤリモクの男共にしかり、盗撮魔にしかり。

 

 

「やはり一年に1回ぐらいは海へ遊び来るのは娯楽として外せない要素だよな」

 

「夏休み期間に開放される五車学園プールとかでは得られない解放感と気分転換だよねー!」

 

「なあなあ、早く海辺に行こうぜ!」

 

 

 爽やかな青一色のキャンパスを目前に考えふけっている間に、通学を最も共にする3人も私の両隣りに並ぶ。

 

 彼等の言う通り、五車町は内陸の群馬県である以上……海はない。

 

 だからこそ彼等はそれぞれの仕草で海へ来たことに対する感情を爆発させていた。

 

 ふうま君は左手で目元に影を作って広大な海水に目を見張り、まえさき市で3時間ウンコしていた蛇子ちゃんは陽キャさながらなインヌタ栄えしそうなジャンプで喜びを表現し、鹿之助くんは私達よりも一歩リードした砂浜に躍り出て大手を振りながら目的地の方角へと催促する。

 

 

「鹿之助ちゃん、急ぎすぎだよー! まずは水着に着替えないと!」

 

 

 今にもその五車学園の制服姿のまま、海辺まで駆け出してしまいそうな鹿之助くんを蛇子ちゃんが制止する。

 

 ふぅむ。

 

 それにしても鹿之助くんは、私を含め3人がラフな私服で来たというのに彼だけは何故、五車学園の制服姿なのだろうか?

 

 いよいよ本当に外出先に来ていけるような服を持っていない説が脳裏を過ぎるぞ。

 

 あるいは持ってはいるものの着用することに抵抗があるか、だ。

 

 確かに、人間風情に泣かされた高位魔族の方の蛇子ちゃんと殴り合った時に購入した衣服は私の大喰いの泥濘による一撃で血反吐に塗れてしまったわけだし……。

 

 またこの夏休みの期間で、私の方から彼の私服を購入するためにどこか旅行計画を立ててみるのもありかもしれない。

 

 たまには誘われるばかりの外出より、こちらから勧誘するのもアリな筈だ。

 

 そのためには刻々と着実に近づいてくる()()()()を突破しなきゃ。だけど。

 

 

「あ……あ……あぁ……!そ、そうだよな、着替えないと、だよな……

 

「?」

 

 

 それにしても鹿之助くん。先ほどから頬をピンク色に染め上げて私の方をチラチラと目配せしてくるが、これはどういう趣旨があるのだろうか?

 

 ざっくりと自身の身なりをチェックするが、今日のコーディネートは別段変な部分はないはずだ。

 

 いつもの()()に備えた衣服にアロハを混ぜている。

 

 サングラスなどのアクセサリーに加え、臨機応変な対応が可能なように2種類の水着と小物が入ったハンドバッグ。

 

 浮き輪、救命胴衣、熱中症対策に持参した冷たい飲み物が詰まったクーラーボックス、〈ブラックシャック〉兼スイカ割り用の小玉スイカ、活動拠点用パラソル兼〈大きな棍棒〉、塹壕を掘るための軍用スコップ兼〈大型ナイフ〉……。

 

 いずれも探索者として普通の、至って標準の『CALL of CTHULHU クトゥルフ神話TRPG』(152頁)“持ち物に頼る” に抵触する程度の標準的な装備だ。

 

 

「水着? ならどこかの物陰にでも隠れて、さくっと服を脱げばいいんじゃないか?」

 

「もーっ!ふうまちゃん!?」

 

な、なんだよ……」

 

「ふむ。ふうま君の案は実にお金をかけない方法として名案だと思いますが、海に限らず人の集まる場所には一定数の輩が現れるもの。私としては物陰ではなく更衣室で着替えたいですね。その近辺には貴重品を預けるための信頼できるロッカーなどもあるので、そちらで荷物も預けたいのですが……いかがでしょうか?」

 

「お、おおおおお俺は日葵の案に賛成だぞ! 俺は更衣室があるならそっちで着替えたい!」

 

「おぉ!日葵ちゃん!今日も事前調査はばっちりって感じだね!」

 

 

 私の案に鹿之助くんはふうま君の元に走り寄って来ては激しくキツツキのように首を縦に振り、蛇子ちゃんは私がハンドバッグから取り出した手帳の中身を背伸びしながら覗き込んでいる。

 

 ふうま君の方も、乙女心をちょっとよくわかっていない様子の表情を浮かべているが、まぁ下に水着を仕込んでいるとはいえ、こんな世界ならば生脱ぎ動画や写真も加工次第で金になるだろう。

 

 私の時代でさえAirDropを用いた盗撮動画や画像の共有やporno hubやらEXVIDEO、FC5などによく流出していたのだから。

 

 微銭をケチったせいで、自分のつゆ知らぬ場で回りまわっての痛い目を見るのは避けたい。

 

 まぁ、それでも更衣室内部に盗撮機が隠されていないとは限らないだろうが。

 

 

「まぁ、お前達がそういうなら俺は構わんが……」

 

「じゃ、決まりですね。更衣室はこっちです」

 

 

 初めてまえさき市に訪れた時のように3人を先導する形で、メモを片手に引率する。

 

 これもまたインペリアクロスの陣形を取り、今回はまえさき市よりも人通りは多いため3人……(特に小柄で簡単に人の波に飲み込まれてしまいそうな)鹿之助くんと蛇子ちゃんがすぐに目に入る位置でお守をすることになった。

 

 

「こういう時、日葵ちゃんが居ると頼りになるよね」

 

「だな」

 

 

 蛇子ちゃんと鹿之助くんがヒソヒソ話をしているので、視線は向けずに〈聞き耳〉を傾けて会話を盗み聞く。

 

 どうやら2人は私を称賛してくれているらしい。

 

 これには、思わず口角が上がることを押さえるにはいかなかった。

 

 

「な、なぁ……蛇子。やっぱどうしてもあの水着じゃなきゃダメか?」

 

「何言ってるの。あの水着だからこそ、鹿之助ちゃんらしさがあると蛇子は思うな!」

 

「ぅぅぅ……でもよぉ……」

 

「でもアレ以外の水着は持ってないでしょ?」

 

「そ、そうだけど……」

 

「大丈夫だよ。もう一人の陽葵ちゃんの話では『日葵ちゃんは多様性に特化してるから理解力もある』って言ってたし」

 

「そ、そうかなぁ……?」

 

 

 続けて2人はまたもや何か気になる話を小声で続けている。

 

 間違いなく話題としては、鹿之助くんの水着に関する内容らしい。

 

 私が五車学園で拝観できなかった鹿之助くんの水着のお話である。

 

 そして陽葵ちゃんの情報、私が多様性に特化しているから理解力があるって話は一体何のことだろうか?

 

 も、もしや鹿之助くん、見かけによらず露出癖があって際どいブーメランパンツの水着を持って来たとか???

 

 鹿之助くんのアレの大きさは当然のことながら知らないが、アレがクッキリわかるぴっちり水着パンツとか?????

 

 い、いけない……想像を膨らませすぎて口角が上がるレベルじゃない。

 

 歯がむき出しになっちゃうほどに口から笑いが零れてしまう。

 

 い、いったい、鹿之助くんはどんな水着を持ってきたのだろうか?

 

 もう既にwktk(ワクテカ)が止まらない。キター( ゚∀゚)ー。ギヒッ。ギヒヒヒヒヒッ。

 

 

………

……

 

 

「日葵ちゃーん。着替え終わったー?」

 

「えぇ、こちらは問題なく」

 

 

 設備の行き届いた建物内の更衣室前にて、男性陣である鹿之助くんとふうま君と別れ、私と蛇子ちゃんは女性更衣室で水着に着替えを済ませる。

 

 当然のように盗撮カメラらしきものは備え付けられていたが、ネジ山を(つつ)いて破壊、あるいはカメラ自体を回収させてもらった。

 

 全部、必要な部品だけ引っこ抜いて海水に浸して粉にしてやるからな。

 

 

 さて水着の話をしよう。

 

 

 本来であれば、お胸が断崖絶壁(マリアナ海溝)であっても肌の露出がちょっと過激なマイクロビキニ系の露出が際どい水着を着て鹿之助くんを脳殺したいと思っていたのだが……。

 

 私は何分、悪い意味で洋梨体系なものであること*1

 

 身体の至る所に古傷である銃創やら大喰いの泥濘に貫かれた刺突痕が残っていること*2

 

 ゆえに元来の身体の持ち主である『青空 日葵』が所有していた中学生時代に使っていたと思しき色気のかけらもない競泳水着をやむなく着用していた。

 

 マイクロビキニは止む無く青空家でお留守番である。

 

 実のところ……当日直前まで陽葵ちゃんの勝負服である橙色ジャケットの下に着用しているような、メッシュ系素材のモノキニビキニの着用も検討したのだが……。

 

 やはり皮膚に残された銃創痕が隠しきれないことや、一緒に海へ訪れた鹿之助くん、蛇子ちゃん、ふうま君が、そんな傷だらけの私とつるんでいるところを第三者から見られてどのように思われるか考慮した結果として、着用を断念せざる負えなかった。

 

 しかし、この古傷はなかなかに周囲への威圧感が出ているので、小心者なチンピラ程度の不埒な輩を露払いするにはうってつけかもしれないが……。

 

 わざわざ生傷を晒さずとも世間一般には紋々(もんもん)タトゥーストッキングなる便利な道具が存在しているのだから、生傷痕ではなくそちらを周囲への〈威圧〉用代用品として利用すればよいし……もう一種の水着とは別に持ってきてもいる。

 

 準備は万端だ。

 

 

「おぉー。日葵ちゃん、意外とシンプルな水着だね!」

 

「…………」

 

「日葵ちゃん?」

 

「う、うん?」

 

「ぼんやりしちゃってどうかしたの?」

 

 

 更衣室内で蛇子ちゃんと合流する。

 

 いつもなら何かしらの返事ができるのだが、この日ばかりは蛇子ちゃんの水着に釘付けになり何も言い返せることはなかった。

 

 彼女の水着は至って普通の……。

 

 

 普通の?

 

 

 私の時代ではハレンチな水着でも、この時代では普通なのか? ……普通のフリル付きホルターネックのビキニだった。

 

 白い肌が黒色の水着を強調し、その腹部のくびれ具合と縦割れのおヘソ。

 

 ちょっとばかりの腹筋によって引き締まった腹部は、プロポーションは道行く男共の視線を独り占めできることだろう。

 

 挙句の果てにはその約150㎝の小柄な身長にD~Eカップもする二つのたわわが…………。

 

 もう……なんか、なんていうかね……。

 

 水面張力が働いている、コップから零れそうな水。

 

 暴力的であった。もはや暴力である。これは青空日葵(断崖絶壁の貧乳)に対する暴力である。

 

 

「いえ……。えっと……」

 

「?」

 

「いえ……すみません。思わずしなやかで綺麗なそのスタイルに釘付けになってしまいました。そのホルターネックの水着も素敵ですよ。蛇子ちゃんは背中も綺麗なので肩甲骨とかも丸みを帯びていて撫でたくなるような肌ですね」

 

「えっへへー♪」

 

 

 フィジカルおっぱいに殴られて半分思考停止しながらも、彼女を褒めると嬉しそうに笑顔を見せる。

 

 さぁ、私はこの紋々のタトゥーストッキング(腕)をいつ着けるべきだろうか?

 

 こう言っては何だが、まえさき市で3時間ウンコしていた方の蛇子ちゃんはあどけなさの残る童顔のカワイイ女の子だ。

 

 五車町にいるときは周囲の顔面偏差値が全体的におっぱいと合わせてインフレ気味だからさほど気にならなかったし、まえさき市ショッピングの日はさほど周囲を気にしていなかったから気づきに遅れたのだが……。

 

 要するに周囲からひときわ目立つほどに、彼女はかわいい。

 

 てか、鹿之助くんもかわいい。

 

 ふうま君はそこそこカッコイイ。

 

 私は彼等と比較したらビミョーかもしれないが……。

 

 とにかく、チンピラ・輩に囲まれたら面倒な事になりそうなのは何となく察した。

 

 『鹿之助くんと2人きりで海を楽しめる瞬間があったら良いな』と思っていた時期が私にもあるけど、今回ももしかすると洋館事件みたいに団体行動を心がけなければならないだろう。

 

 

*1
ケツがデカい

*2
歴戦の戦士みたい




~あとがき~
 オリ主も自覚している通り。刻々と近づいてくる高位魔族との約束ですが、(小説内における時間で)近日中にイベントを発生することになるでしょう。
 お楽しみに。

 でもしばらくは楽しい楽しい海での歓楽をオリ主を含め、彼等に満喫してもらいましょう!
 クトゥルフ神話TRPGは、恐怖とリラックスを交互に味わえる素敵なシステムですからね!今はリラックスタイムの時間です!
 『CALL of CTHULHU クトゥルフ神話TRPG』(29頁)“プレイの目的”第一段落 参照。


 穏やかな日常があるからこそ、非日常における恐怖は更に際立つことになるのです。


 ところで本小説のタグに『シリアス』を増やしました。
 ハーメルンに限った話ではないのですが、紹介されたときに内容が “シリアスで面白い” と感想を貰ったことがありまして……。
 152話目にしてタグを追加しました。

本小説は、シリアスをしていますか?

  • シリアスしている。
  • そんなことはない。
  • ギャグ要素の方が強め。
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