対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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Episode132 『NTRするときは狂犬に気をつけろ』

………

……

 

 海水浴客でごった返す海辺で、小柄な鹿之助くんを捜索し始めてから早30分。

 

 結果から言うとまだ彼は見つかっていない。

 

 彼の足跡をたどる形で〈追跡〉をしたが、繁忙期のビーチはそもそも人だらけ。

 

 そんな数分前の自分自身の足跡すら他人の足跡で塗り替えられてしまうのに都合よく彼の足跡だけで追走することなどできるはずもなかった。

 

 一度は高台まで登って彼の姿を確認しようと、捜索方法を変えてはみたものの……高台では色とりどりのパラソルによって覆い隠されてしまい常人よりも更に小柄な彼は見つからない。

 

 本人は嫌がることを承知の上だが、迷子センターにも駆け寄り放送してもらう形で鹿之助くんを呼んでみたが反応は無し。

 

 蛇子ちゃん達の元に帰っていることもなかった。

 

 一瞬カルティストの存在が脳裏をよぎるが、これだけの海辺に潤沢な生贄の素材が湧き水の如く存在しているのだ。

 

 いくら彼が可愛い男の娘だからといって、肉付きの良い素肌を晒した女性がそこかしこに居る状況で彼が選出されるというのは到底考えにくい。

 

 そもそも彼の外見は “小学生” でも通じそうな外見をしているのだ。初潮すら迎えていない無垢な女児を狙うよりも邪神と交配させて安定的な母胎を選出した方が効率的だ。

 

 一部の神格は男体でも無差別に孕ませる個体もいることには居るが、その程度であればわざわざ生贄を調達しなくてもカルティストが自ら命を差し出すに違いない。

 

 以上から彼がカルティストにまた拉致されたとは考えにくいことだった。

 

 それよりも可能性として考えられたのは——

 

 

「……まさか、溺れて……?」

 

 

 身近に存在する最低最悪の想定が傍に迫る。

 

 他人は『考え過ぎだ』とすぐに嗤うが、ここが対魔忍世界であれ『死』など瞬く間、刹那、今この瞬間に起きてもおかしくはない突発的なものなのだ。

 

 両目を瞑って後頭部を片手で掻く。それから左手を顎に付けて、右手を左肘に付けながら思考を巡らせる。

 

 彼が行きそうなところは粗方探し回った。

 

 カルティストが潜みそうな暗部も調査した。

 

 だが、どこにも居なかった。

 

 やはり考えられるは海——

 

 

「あははは……ごめんなさぁい」

 

「いや時間とらせねぇし、ちょっとだけ。な?いいだろ?」

 

「でも友達も向こうで待っていると思うし……既に1人にしちゃいけない奴が暴走し始めている気がするから、はやく戻らないと……」

 

「大丈夫さ。そんなことはないね。その友達は今頃バカンスを楽しんでる筈だよ。そうだ、君にピッタリな “特別な” ジュースがあるんだけど “それだけ” でも飲んで行かない? 引き止めちゃったお詫びに、ね?」

 

「特別なジュース?」

 

「そう♪ 君みたいに特別なかわいい子にだけプレゼントしているものなんだけど、この近くの海の家で俺の知り合いが調合してくれる裏メニューでさ。ジュース飲むぐらいいいでしょ? ああ、もちろんお代なんかいらないし、すぐに友達の元に戻れるからさ♪」

 

「…………でも」

 

「あぁ!すっかり忘れてた!その特別なジュース特別な入手経路で仕入れているから大規模な在庫を確保してないって知り合いが言ってたなぁ!今すぐ行かなきゃなくなっちまうかもしれない」

 

「……。……ち、ちょっとだけなら……」

 

「いいねえ! わかるぅ♪」

 

 

 海底に沈むルルイエすら浮上させてカチコミを仕掛ける勢いで海中捜索のため全力疾走する私を他所に、ふと……どこかのチャラチャラしていそうなナンパ男と新たな被害女性と思われる会話が耳に着く。

 

 海の中を捜索するためフェイスタオルを投げだし乳首を世間に晒した私だが……この会話に思わず足を止め、慣性の法則で砂浜を滑りながらゾンビの首が捩じ切れるほどの勢いで首をひねり会話のあった方角を見定めた。

 

 普段であれば、世間知らずの女性がまたナンパ野郎どもの食い物にされていると傍観しながら海に突撃していたことだろう。

 

 だが今回ばかりは事情が異なった。

 

 その被害者の声は鹿之助くんの声に『そっくり』だったからだ。

 

 即座に人の波、人海の中から〈目星〉をつけながら彼を探す。

 

 

「……」

 

 

 けれども彼の声がしたはずなのに何処にも彼はいない。

 

 声のした方角に進路を変更、駆け寄りながら賑やかな海辺で彼の声だけを聴き取ろうと〈聞き耳〉をそばだてる。

 

 聞こえてきたのは、明らかに私やヘヴィ子ちゃん、ふうま君から離れていく彼の声とナンパ男の声。

 

 彼が向かう先、あの方面は岩陰が数多く人気(ひとけ)がないほうだったはず。

 

 海の家うんぬんと抜かしていたが、到底そんな売り上げに悪影響しか及ぼさない場所に海の家があるとは思えない。

 

 あるとすればカルティストの根城だ。

 

 

「…………」ギリッ

 

 

 口の中から奥歯を噛みしめるような音が聞こえる。

 

 心なしか顔面から滴る汗が震えで流れ落ちていくのが分かる。

 

 眉間を含めた顔面の中央が収縮して、むず痒くなる。

 

 鹿之助くんを食い物にしようとしているゲスの声を取り込むたびに、横隔膜が熱く波動がこみあげてくる。

 

 やはりあれはカルティストなのだ。

 

 鹿之助くんを食い物にしようとしているカルティスト。

 

 ナンパ男を装ったカルティスト達の一員(撒きエサ役)

 

 私がそう判断したのだから違いはない。

 

 

「ヒッ」

 

 

 大地を力強く踏みしめ、肩を大きく揺さぶりながら、駆け足で彼等の軌跡を〈追跡〉する。

 

 その他に時々聞こえてきたのは私とすれ違う人が悲鳴を上げた声だった。

 

 念のため振り返っても第二の刺客が私を狙っているという様なことはない。

 

 恐らくこの体中の弾痕や刺突痕が異様なのと、こんなこともあろうかと紋々のストッキングが海パンのすそからはみ出ているのが周囲の客の不安を煽ったのだろう。

 

 あとはビーチに破棄されたガラス瓶に反射する私の顔が般若のように歪んでいたことによるものか。

 

 

………

……

 

 やがて鹿之助くんの姿を確認できる。

 

 彼がチャラ男が案内した通りの海の家の内部に入って行くのが見えた。

 

 それも何処かおぼつかない足取りで、だ。

 

 即刻、彼等に追いついて彼を取り戻す面持ちで挑んだのだが、〈隠密〉すらしない秋山 凜子の如き正面突撃のせいでカルティスト一行の見張り役に遭遇し、即座に彼をカルティストから救助することができなかった。

 

 結果的に私が例の海の家(カルティストの根城)に到着した時には既に鹿之助くんは千鳥足で海の家の内部、2階へと階段を昇っている状態だった。

 

 鹿之助くんをナンパしたカルティスト(以下、チャラ男)は彼のか細くて艶やかな腕を肩に背負い、くっきりとしたくびれに手を回しながら彼を運んでいる。

 

 

わ゙だじでも、そんなことじだごどな゙い゙の゙に゙ぃ゙!゙

 

 

 例の海の家は海の家にしては活気がなく、非常に薄暗い……立地の悪い民家のように見えた。あらゆる雨戸という雨戸は締め切られ、1階の窓には錆びついた鉄柵がはめられている。電気も付けておらず、とてもこれが営業中の海の家だと言い張るには難しいものがあるだろう。

 

 しかしこれを海の家ではなく、カルティストの根城だと評するのであれば “如何にも” な もっともらしい民家へと認識の早変わりが可能だ。

 

 そして、この状況はこれは一歩、遅かったというべきだろうか? それとも間に合ったというべきだろうか?

 

 私が到着した時には鹿之助くんはゲスから提供された “特別なジュース” とやらを既に飲んでしまっていた。

 

 このワイングラスに残された飲み残しからは、ひどく甘ったるい匂いが漂ってもいた。

 

 酒入チョコのような匂いと似ているが、アルコールとは別の香りだ。

 

 詳しいことはこの液体を持ち帰って〈科学(薬学)〉や〈医学〉等で分析する必要があるが、言わずもがな真面ではないものであることは確かだ。

 

 私がカルティストの根城に近づき、何食わぬ顔で1階の男に鹿之助くんと同じ注文をしようとしたら撲殺されかけたのだ。

 

 されど私の〈組みつき〉に死角はない。最初の〈組み付き〉で手首を掴み、次の〈組み付き〉で攻撃を往なして、声をあげられる前にバーの男は締め落とした。

 

 警戒しながらカルティストの根城に忍び込み、彼等が消えて行った階段を覗き込む。

 

 ピシャリと閉じられる襖の音。

 

 姿が見えなくなる刹那、2本の足の一本には見覚えのあるフリル付きの黄緑色をしたリストバンドを着用しているのを探索者の鷹の目は決して見逃さない。

 

 間違いない。鹿之助くんで、間違いない。

 

 

「………」ゴキゴキゴキボキボキボキ

 

 

 軍用スコップを肩で担ぎ上げたまま、指の関節をスムーズな動きにするためクラッキングを行う。

 

 軽いストレッチを行って2つの眼で叩き潰す目標を見定める。

 

 穏やかに彼を取り戻すことができるならば、それはそれでいいだろうが。

 

 きっとそうはいかない可能性の方が高いだろう。

 

 既に2人戦力を削いでいるとはいえ、カルティストであることは明白であること。

 

 またゲス共の背丈は180㎝前後、比べて青空 日葵の背丈は160㎝程度。

 

 外見は男に見えるとしても、身長160㎝程度(ホビット族)のチビ1人が友達を助けに来たとして、奴等は何を怖がる必要がある?

 

 それに相手側が1人でなかった場合であっても数的有利につけ込み、こちらを畳んで来ようとしてくることも想定できる。

 

 仮にそのような事態に陥った場合、さしずめ目前NTRレイプが開催されるかもしれない。

 

 間違いなく私の性癖NTRによって粉々に破壊されてしまう。

 

 だが今回の乱闘騒ぎは前菜とさせてもらう。

 

 これから私は東京キングダムに赴くのだ。

 

 ウォーミングアップとして荒事に身体を慣らし、本番に備えたスムーズな戦闘を心がけよう。

 

 ここは人目のつかないカルティストの根城。

 

 周囲は海。

 

 私にとって、この地は好都合な独壇場と言っても過言ではない。

 

 




~あとがき~
 対魔忍GOGOのAD広告で流れてきたゲームが楽しすぎて止まらないのです。
 ゲーム内換算では104時間、20日遊んでいるらしいんですけど……。
 単純ながらにもやり込み要素に凄くハマっちゃって……。

 さて、オリ主にいつものスイッチが入ってしまいました。
 いつもなら親族もろとも根絶やし滅ぼすのでしょうけど、今回はそんな時間をかけているだけも余裕がないのに果たしてどうするのでしょうか?

 そしてここまでの流れで、原作を知る人は分かるかもしれませんが、今回は原作の話を取り入れた二次創作の構成になっております!
 本来の出来事には存在しない筈の異物(オリ主)が混じってしまった世界線ですね。

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