対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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Episode139+Tips 『廃棄都市 東京キングダム』

 

「おぉ……」

 

 夕刻。

 

 西日に照らされ公共バス内で揺られながら、東京キングダムに続く唯一の陸路である『東京キングダム大橋』を渡る。

 

 レインボーブリッジのような作りの大橋は私の冒険心を大いにくすぐった。

 

 相変わらず光化学スモッグによって視界は良好……とは言い難いが、それでも刻々と近づいていく東京キングダムの様相に好奇心が膨らんでいくこの気持ちを抑えることはできなかった。

 

 本土の魔都 東京から東京キングダム行バスで渡る直前、民間の観光地案内の書店から適当に冊子を1冊購入し、到着の間までに『東京キングダム』について理解を深めていた。

 

 

 

——Tips 『◇廃棄都市 東京キングダム』————

 

 東京湾上に浮かぶ東京キングダムは鹿児島県の桜島1/2もの面積を持つ人工島で構築されている。

 

 島と本土までの距離間は10㎞。

 

 そんな本土と島を唯一陸路で結んでいるのが『東京キングダム大橋』である。

 

 前回、私が〈図書館〉で調べた東京キングダムの情報は現在に陥る “以前” の姿にしか過ぎなかった。

 

 元は第二の首都として政府の一大プロジェクトである東京湾に建築された人工島。

 

 調べ上げた通り “昔は” 移転企業募集中をしている島だったようだ。

 

 当時の正式名所は『東京キングダム・シティ』

 

 しかし企業の勧誘に失敗したあげく、東京湾地下鉄工事が大幅に遅れたらしい。

 

 東京オリンピック2020(2021)の国立競技場建築時みたいに。

 

 どうせ中抜き大国日本国のことだ。様々な委託企業が中抜きをしたのだろう。

 

 

 で、この結果(ありさま)

 

 

 何だったら政府自体が中抜き*1が横行していた可能性も考えられる。

 

 でも不思議なもので、この世界を見ていると開催までにこじつけたところだけ見れば2020東京オリンピックの国立競技場はまだマシな部類だったのだと錯覚してしまいそうになる。

 

 あとは東京大震災時での耐久性次第ではあるが……。

 

 まぁ、最終的には『東京キングダム・シティ』は未完成のまま交通手段が不便な人工孤島となり果てて、定住者までもが減っていき……。

 

 沈みゆく泥船からまともな人々が去った代わりに、逃げ遅れたやつと密入国者や犯罪者、魔族などが住み着いた廃棄都市になったようだ。

 

 

——————

 

「次は、終着地『東京キングダム』『東京キングダム』。お忘れ物にはご注意ください。バス車内でのお持物の紛失、盗難。島での事故や負傷、行方不明等につきましては、本会社は一切責任を持ちません」

 

 

 強めの念を押された不穏なアナウンスで、視線を本からフロントガラスの先——目的地地点へと向ける。

 

 バスは東京キングダム大橋の端に設置されているバス停で素早く停車すると、搭乗ドアを開けた。

 

 少数しかいない乗客が急ぎ足でぞろぞろと降りて行く中、私も席を立ち運賃を支払い堅牢に隔たれた運転席のほうに目を向ける。

 

 運転手は両手でハンドルを固く握ったまま、緊張した面持ちで正面だけを見ていた。

 

 

「ありがとうございます」

 

「…………」

 

 

 支払いと同時にバスの運転手に対し、安全運転をして送り届けてくれたことにお礼を告げる。

 

 運転手は私のことを珍獣でもをみるような、それこそ自殺者……気の毒そうなものを見るような目で一瞥してきた。

 

 私が最後の客として降りた瞬間。

 

 

ガタン——バルルン! ブゥゥゥォォオオオオオン!!!

 

 

 自動ドアを私の荷物ごと挟みかねない勢いで閉じ、強盗から逃げるようなアクセル全開の乱暴な運転で本土行きの東京キングダム大橋の方へと走り去ってしまった。

 

 …………よほど治安が悪いのだろう。

 

 それこそ、魔都 東京でのヤリモク男、パパ活おじさんやら汚職警官の存在が霞んでしまうような……。

 

 

 

 降り立った私を最初に出迎えてくれたのは、真夏の熱波とジトジトとして生暖かい風。

 

 生ごみの腐った臭い。

 

 よだれが垂れてしまいそうな飯所の香り。

 

 生々しい事後のホテルルームのような香りが混ざり混ざって混沌としている。

 

 

 思わず腕で鼻を塞ぐも、数分もすれば慣れてきた。

 

 熱烈な悪臭の歓迎に圧倒されながらも、まずは帰りのバスを確認しに行く。

 

 

「……うーわ、バスないじゃん」

 

 

 悲報。

 

 帰りのバスなど無かった。

 

 東京キングダムから魔都 東京へ戻るには、10㎞もある東京キングダム大橋を徒歩で帰るか、心寧ちゃんが近づいてはいけないと助言してくれた港湾区から船を使う、あるいは泳ぐこと以外に本土に渡る術はないらしい。

 

 一応、東京キングダム大橋は “一般道路” である以上。

 

 ヒッチハイクをする形で自動車などに乗せてもらって、島を脱出するという手段をとれなくもないだろうが……。

 

 犯罪者だらけの人工島から魔都 東京へ出ていくような人々や物資が真面なわけがない。

 

 〈幸運〉にも本土行きの車へ乗せてくれる人がいたとする。

 

 だがきっと相応以上の()()を求められるか、あるいは私自身が商品として変換されかねない。

 

 ゆえに、そちらの方面では期待してはならないことは充分に承知している。

 

 ただ幸いにも東京キングダム大橋の電灯は整備されているようであり、夜に女性が1人で暗闇の中を渡らなければならないというような事態には陥ら無さそうだった。

 

 まぁ。その為にも職業病の一種とも言える所持品の中に『暗所を照らすための懐中電灯』を用意しているし…………想定の時点では問題はない。

 

 しいて言うならば大橋という逃げ場のない場所で囲まれると厄介だが。

 

 橋の端から身を乗り出して、橋げたから海面までの距離を測定するがおおよそ50メートル。

 

 これはオリンピック競技の『高飛込』における5倍の高さを意味し、集合住宅で換算すれば15階分もの高さになる。

 

 暴漢を肉のクッションにすると仮定しても、とても飛び込む気にはなれない。

 

 また別の方向性として、再び〈幸運〉を引き当て東京キングダム行のバスと再会したとてバスが暴漢に襲われる私を助けてくれる可能性も極めて低い。

 

 魔都 東京での出来事や、バス車内のアナウンス情報から客観的分析すれば、運転手視点から助けを求める行為は路上強盗と仲間。釣り餌にしか見えないだろう。

 

 きっと助けを求めても無駄、見て見ぬふり。

 

 私が運転手ならば『東京キングダム大橋』で車線上に暴漢に襲われ助けを求めてきた女が現れたら迷わず助けず轢殺。暴漢に捕まっても苦しまなくて済むよう車輪で頭を砕けるよう念入りに。

 

 救助を求めてきた人間が善良な存在だと、どこにも保証はないのだから。

 

 ならば平等な死を与えることこそが慈悲だろう。

 

 

「……帰りは徒歩かぁ……」

 

 

 嘆いたところでどうにもならない。

 

 〈聞き耳〉で周囲の状況を偵察してみれば既に誰かの注目を集めているような気がする。

 

 帰り道の事に関しては人間風情に泣かされた蛇子ちゃんによって大橋を封鎖されることも考慮して、今夜はどこか別の宿泊施設とか一時的な隠れ家になりそうな場所とかを探したほうがいいのかもしれない。

 

 これで宿泊施設が蛇子ちゃんと友好的なら詰みかもだけど。

 

 

………

……

 

 

 道中、娼婦やら男娼に絡まれながら東京キングダム大橋から続く大通りへとまっすぐに歩みを進める。

 

 繁華街まで訪れたところで日は完全に沈み、東京キングダムはアブノーマルな都市へと様相を一変させていた。

 

 

「はぁーー……!」

 

 

 かつての日本では絶対に見られなかったような景色に声が零れる。

 

 道路に面したビルのテナントには堂々と娼館やら、アダルトグッズ売り場、飯所などが入っている。

 

 更にテナントすら覆い隠してしまうほどに、お祭りの日のテキ屋のような屋台や公園のフリーマーケットのような店舗が立ち並び、売られているもの飲食物から、食べ物類のお土産品、ハズレばかりのくじ引き店などが所狭しと並べられていた。

 

 また散策している間に東京キングダムには、東京キングダム大橋のような街頭が設置されていないことにも気が付く。

 

 されどもそのようなインフラ設備が整わずとも、この都市は都心部のように明るかった。

 

 中国や台湾のネオン街のように至る所に眩いばかりの看板やら設置され、ネオンが辺りの照明として機能している。

 

 これも日本国の法律が及ばないところだからであろう。

 

 そのネオンの看板は、中国の増築に増築が加えられた九龍城砦の看板のように歩道を覆い隠すように宙に突き出して設置されている。

 

 建築法ですらこんな調子なのだ。

 

 刑法やら民法、日本国憲法など〈法律〉を振りかざした打開方法は一切通用しないに違いない。

 

 東京キングダムのためだけに原発を1機、稼働させているのかと疑わしくなるほど至る所に設置されたネオンの光はラスベガスのように虹色の色彩に放つ。

 

 そんな廃棄都市で身を引き締めながらも今日の宿探しと観光を兼ねて、あたりをうろつくことにした。

 

 

………

……

 

 

*1
正確には将来的な利益よりも、目前の取引で政府関係者に還元されるシステム




~一方、その頃……①~
日ノ出 陽葵「フーン♪ フフーン♪ 日葵ちゃん、今日は一日中ずっとお布団の上でゴロゴロしてるぅ トイレにも行かないし、ペットボトルとか使ってるのかな? んふふふ♪ 日葵ちゃんのベッドに寝転がったらいっぱい日葵ちゃんの匂いがするんだろうなー」(*´艸`*)


Pirrrrrr……


日ノ出 陽葵「あ、心寧ちゃんからだ。もしもし?」

速水 心寧『あの、陽葵ちゃん……』

日ノ出 陽葵「ん? どうしたの? ボランティア活動おわった?」

速水 心寧『それが……鹿子ちゃんのいる施設の雑務を任されてしまって……終わらなくて……』

日ノ出 陽葵「えっ!?」

速水 心寧『それで今晩一緒に東京キングダムに行けなくなってしまいました。申し訳ありません……代わりに今度埋め合わせさせてください』

日ノ出 陽葵「そっか!大丈夫だよ! でも、それって私と日葵ちゃん、マンツーマンになれるってことだよね!? つまりダブルひまり!? もー! 心寧ちゃんったらそんな気を使わなくたっていいのに!」

速水 心寧『え? い、いえ、ですので……今回2人きりで東京キングダムに行くのは危険ですし引き止めて辞めてさせて欲しいと——』

日ノ出 陽葵「埋め合わせするのはこっちだね! ありがとう! 日葵ちゃんといっぱい楽しんでくるね!」

速水 心寧『待ってく——』



~一方、その頃……②~
八津 紫「チェックアウトの際、青空 日葵は何処へ行くとか誰かと会って話してなかったか?」

「バス停の時間を調べられていらっしゃられるぐらいで、誰かとお会いしていた様子は見受けられませんでしたが……」

八津 紫「そうか」

「フロントでは東京キングダムについて調べたいとおっしゃられていましたし、まだ出立されてないかもしれません。お会いになられるならば東京キングダム行のバス停前でお待ちになられるのが良いかと」

八津 紫「そうさせてもらおう」

………
……


釘貫 神葬「……うーわ、バスないじゃん」

八津 紫「……」

釘貫 神葬「はぁーぁ……帰りは徒歩かぁ……」

八津 紫(安心するがいい、貴様が尻尾を見せた途端に制圧しヘリで直帰の護送してやる)


~あとがき~
 二分割します。
 別に長くなったから1/2にするわけじゃないです。
 実は今回の21章を展開8月企画に合わせて、狂気の3日投稿に戻そうかなと考えているので事前に身体を慣らして置こうかと。
 それと前回は設定資料だけで終わらせてしまったので本編も小出しに。

 というわけで、次回は2023/07/27、20:37~に投稿します。

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