対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。 作:槍刀拳
「はぁぁぁー……、あはっ、あはっ…………ぁはっはっはぁ……」
東京キングダムに訪れてからというものの、眼下へと広がる光景に圧倒に圧倒を重ねられ驚きが隠せず情け無い声ばかり吐露してしまう。
この街では “百鬼夜行” と称しても何ら誤りではない数多の魔族が我が物顔で表通りを通過していくのだ。
まるでドリームランドのレン高原……いいや、ドリームランドのダイラス=リーンの街と評するのが正しい景色だろう。
裏側には不健康そうな建物ばかりが乱立し、右を見ても左を見ても恐ろしく危険な生物ばかり。
正気度こそ削れるような遺伝子に刻み込まれた邪悪な素質は微量ではあるものの魑魅魍魎が跋扈する姿は、それだけで日常世界の裏側として東京キングダムを観光するのに見所として十分な機能を果たしている。
2、300万円の札束片手にぶいぶい言わせながら、時代錯誤の足軽甲冑を着用したとキャラが濃すぎる笑い声を上げ続ける青肌やら赤肌の顔面を能面で覆い隠した頭に角の生えた鬼。
並みの男を欲情させるのには十分すぎる豊満なバストと美貌、ただし背中には蝙蝠のような翼、両側頭部からは悪魔バフォメットのような羊角が生えたサキュバスのような女性。
子牛ほどの体格をした犬っコロ。勿論ただの犬じゃない。全身から青白い炎を燃え上がらせ頭が2つに1つの頭部につき2対の目が3つ、鋭い牙と爪の他にも屍肉を漁るハゲタカのような荒れ放題の剛毛な毛並みと灰色の皮膚を持つ、牙のような角を生やしていた。
筋肉だるまの人間の皮を剥いで炭火焼きにしたようなチアノーゼ色の肌をした紫色の鋭い爪を持つ、つくねの集合体に似た鉱石の怪物。
頭部は人の形と顔を模っているにも関わらず、胴体や腕は鳥類に酷似した人語を僅かには理解できている素振りを見せる歪な生き物。
二足歩行で筋骨隆々、上半身は牛なのに下半身は人の姿をした〈ギリシア神話〉に登場するミノタウロスまで、古今東西あらゆる怪物が揃っている。
さらには、いずれこの世界から一掃する予定のオーク族もあった。
チラホラと人間の地元住民の姿もあるが、鹿之助くんが話していたようなギャングっぽい半グレ集団だったり……。
人間の女性の大多数のグループがあると思えば、みな娼婦だったり。彼女たちは自らが娼婦であることに対して何の疑念も湧かない……頭のネジが外れたかのような顔をして
彼女達は『娼婦という職業に誇りを持って従事している』や『お金がなくて仕方なく』とは言い難い、どこか勤めていることに対して
価値観の相違とは異なる……あの表情を例えるならば……そう————
催眠アプリで常識改変されて、自身が白昼堂々と露出度の高い衣服を纏っていることや秘部を晒していることに疑念を持たない・持てない顔——と例えるのが一番近いような気がする。
他にはアサルトライフルを抱えた2020sでは最新鋭だった装備をした兵隊の用心棒。
全身を鼠色で覆い隠し顔には粗悪なガスマスク、手にはAK47シリーズ系統の武器を持った路上強盗だって存在している。
あとは本土から訪れた男性客だとか。自分は可能性に満ち溢れていると疑うことを知らない若者だとか。そのあたりの姿だった。
この地を簡潔に纏めて例えるならば漫画『BLACK LAGOON』のロアナプラを舞台として、道行き交う人々の中に魔族を混ぜたような感覚が適切かもしれない。
この例えならばドリームランドに詳しくない人々に説明する上では伝わりやすいかも。
つまるところ……。
「ゲヘヘ。姉ちゃん仕事先をお探しかい? うちの店はどうだい? 1人お客を取るたび9割の取り分があるよ*1」
「俺、こういう地味系の子を探してたんだよ!なぁ、一晩。俺と甘い夜はどうだい?」
「可愛子ちゃん、僕達とミッドナイトを過ごすつもりはないかい? ああ、まって僕は怪しいものじゃないよ。そこのクラブでホストとして働いているんだけど、上司に『客を獲るまでホールに帰ってくるな』って言われちゃってさ……。そこでかわいい子猫ちゃんな君にお願い。哀れな僕を助けると思ってクラブの同伴してくれないかい?*2 店の中では基本飲み放題*3だし、3000円ポッキリ*4で済むし、クラブ限定の肉料理や美味しくて甘いジュース、高級ワイン、表では購入できない気持ちよくなれるおくすりなんかもあってね。豊胸作用もあるんだ……♡ 面白い話で君を絶対に退屈させないよ?*5 ぜーんぶ実質無料*6の特典付きさ♡」
「うきょきょきょきょきょっ! アタチのブラッドドッグを恐れず興味津々で観察してくるとは!あなた観光客でしゅね! そのデカ尻でアタチの股間の
「ウェーイ♪ ウェーイ♪ ウェーイ♪」
「このロンギヌス槍に突かれて堕ちなかったオスは居ねえ。よう、あんちゃん。俺に抱かれてみねえか。S字結腸強制
こうなる。
こうなった。
どうしてこうなった?
どうしてこうなった???
この状況が3~5分おきに発生する。
最初こそまともに対応していたが、どいつもコイツも認知症患者、酔っ払いのように同じ内容を繰り返しながら代わる代わる勧誘されて宿泊施設探し・楽しい観光どころの騒ぎではなかった。
楽しかった思い出なんて表通りがラスベガス以上のネオン街の景色と、魑魅魍魎の姿をまじまじと間近で観察できたこと。
あとは表通り側でSMショップに立ち寄って、修学旅行生を誘惑するような木刀……の代わりに草津市名物品の竹鞭が我が物顔で傘立ての中に突っ込まれて販売されていたことに目を丸くしたぐらいか。
思わず竹鞭を修学旅行のノリで手に取ってしまった。
どこからともなくオークの店員が現れて『お客さんはそっち側ですかい? 総受けっぽい顔して攻め側とはとんだお客さんもいたモンだグヘヘ』『こっちの竹鞭なんかどうですかね? 妖精の羽のように軽くてしなやかでゲス。生意気なメスの大事な部分を強弱付けて
その他にこの都市で唯一満喫できたことと言えば、フィルムカメラを取り出してうまく取れているかもわからない自撮り写真を撮影したこととか?
自撮り写真を一枚撮影するだけでも、変な輩が割り込んできて撮影の邪魔をしてきやがる。
でもだいたいそういうことをするのは、
気安く私に肩組みしてくるな。
さりげなく手を胸に当てようとするな。
当たらなかったからって故意に胸を揉みに来るな。
あまつさえ揉める胸が無くて露骨にがっかりするんじゃねえ。
男水着チャレンジができる程に
親父の転勤で訪れた五車学園では周囲が見渡す限りの巨乳だらけでどれだけ絶望したことか!!
ヘビィ子ちゃん!陽葵ちゃん!心寧ちゃん!駒水ちゃん!彦四郎さん!石蔵さん!持田さん!神村!磯咲!弓走!篠崎!眞田先輩!黒田先輩!紫先生!蓮魔先生!燐先生!ふうま君のお姉さん!私のクラスメイトォ!
そしてトドメの——
おかしいだろぉ!?
溢れんばかりの巨乳、爆乳、魔乳率ゥ!?
日本人の平均バストはB~Cカップなのにさぁ!
左見てもおっぱい!
ちなみにこれは〈医学〉関連の雑学となるが『おっぱいの大きさを決める大きな要因はストレスの有無』にあるとされる。
当然両親から受け継ぐ遺伝子も関係はあるものの、思春期時代に女性ホルモンの分泌が増えることで女の子のおっぱいは大きくなる。
つまり、おっぱいを大きくするには成長期にどれだけ多くの女性ホルモンを出せるかポイントなのだ。女性ホルモンとは普通に生活していれば脳下垂体より分泌されるものであるが、それを分泌を阻害する要因なるものがストレスなのである。
そこから “青空 日葵” の肉体から考えられることは、目覚めた瞬間から1人ぼっちで屋上にて他者を寄せ付けなさそうな魔族語の書かれた本を読み、容姿に執着しない陰キャタイプな上、学校ではいじめに遭って両親には相談できない環境にいたことから相当なストレス負荷が掛かっていたと推測できる。
それこそ自殺を考えても何もおかしくないような……。
隔世遺伝を考慮しながらも、とにかくストレスの方向からの断崖絶壁が形成されたことに分からなくもない。
一方で五車学園の面々はさぞかし、ぬくぬくと温室育ちなのだろう。
あとは一族伝来でお胸は大きいか、だ。
でも、きっと今の私には目前の百鬼夜行の魑魅魍魎集団のように亜人らしい外見的特徴がないから絡まれるのだ。
だからこその小娘風情が反抗してきても簡単に力でねじ伏せられるとでも思われているのだろう。
話が二転三転してしまったが、最終的に。
客引きなどは片っ端から無視して最初から存在しないものとして扱うことにした。
だが正直、東京都ほどの治安悪化ではないのかもしれないと思うところもあった。
あっちは軽犯罪が幾度となく繰り返され、時には警察と結託して強姦行為に及ぼうとしてきたものだが……こっちではそういう経験をしていない。
例えば、私がそういう輩を片っ端から無視しても——
「チッ。もしかして “唾付き” か? とっとと行っちまえよ貧祖な売女」
とか。
「ギャァーッハッハッハ! フラれてやんのー!」
「うるせぇ! 次行くぞ!次!」
だとか。
「あぁん。つれないなぁ……。でも今はそういう気分じゃないんだね?わかるよ。僕はいつまでもここで君のために待っていてあげるから、街のことで何か困ったこととか匿って欲しい時があったら、僕に会いにきて欲しいな……♡ 外での辛い思い出なんか永久に忘れてしまいたくなるほどに溺れさせてあげるからね♪」
だとか。
「もほぉきょぉっ!??無視するなでしゅ?!?」
だとか。
「ウェーイ……」
だとか。
「え?メス……? でもその胸はどっからどうみても
だとか。
たまーに面倒臭いタイプが混じっているし、この都市ではフリーの女性の立ち位置は社会的に低いものとして扱われている弊害からか罵声を浴びせられることはままある。
Twitterだったらフェミさん激おこ案件ですよ。
だが魔都 東京に滞在していた時ほど、物陰や裏路地、ホテルに連れ込んで強制レイプ⇒GOのような流れや行為には遭遇していない。
それに私が段々と様々な出店で食べ歩きやら、アダルトショップに立ち寄り商品を眺める(冷やかし)行為ばかりを続けていたら、娼婦化への勧誘の頻度は減っていった。
きっと
あるいは廃棄都市を女1人で彷徨く相手に言い表せぬ違和感を抱いたか。
客だと理解してもらえれば直接、手を出して来ないあたり、ここら一帯の街の支配者は個人ではなく団体様なのだろう。
元締めがしっかりと和平交渉を行い締結しているからこそ、表沙汰では利益をもたらす相手に不要なちょっかいは出して来ない。
ゆえに。
ここで私が注意するべきことは、東京キングダムZ街Y丁目X番地までの道中。
裏路地に侵入してからの身の振る舞いだ。
表では他の組織や他者の目がある。
ゆえにこれまでは強引な勧誘は見られなかったのかもしれないが、裏では他者の監視が消える。
私を新たな駒として既に目をつけている組織もいることだろう。
東京キングダム大橋よりも向けられている視線はより多くなっている。
それもそうか。
こんな初潮直後ピチピチの16歳——生娘の肉体が金にならないわけはないのだから。
つまりそれらに警戒し、目的地点まで向かわなければならない。
………
……
…
~一方、その頃……①~
ピンポーン
日ノ出 陽葵「こんにちはー! 日葵ちゃん居ますかー?」
青空 八雲「あら日ノ出ちゃん、いらっしゃい。日葵なら2階にいるけど、どうかしたの?」
日ノ出 陽葵「お義母さん! 今日、日葵ちゃんと遊びに行く約束をしたんですけど、なかなか来ないからどうしたのかな?と思って迎えに来ました!」
青空 八雲「そうなの? それなのに、あの子ったら部屋に籠もりきりで……ごめんなさいね。ちゃんと叱っておくから」
日ノ出 陽葵「いえいえ! だから直接来ました! お邪魔してもいいですか!?」
青空 八雲「ええ。ひまりー?お友達が来たわよー?」
日ノ出 陽葵「おじゃましまーす!」
………
……
…
日ノ出 陽葵「ふふふふ♪ きちゃった♥」
ベッド「……」
日ノ出 陽葵「今日は東京キングダムに行くんでしょー? もちろん、私も同行するよ! タブルひまりなら怖いものは何もないもんね!」
ベッド「……」
日ノ出 陽葵「もー♥♥♥♥♥おはよう!ねぼすけちゃん♥ 新妻が来たのに寝たふりばかりしてるとこうやって襲っちゃうぞ!がおー!♥♥♥」
ピョン! ……ボフン!
日ノ出 陽葵「え?」
ベッド「」
日ノ出 陽葵「あれ? あれ? あれ? ……携帯だけ? え? それって……」
日ノ出 陽葵「わー! 置いてかれたー!!!」
~一方、その頃……②~
八津 紫(ヤツとすれ違った "何人か" は既に青空 日葵がただ観光客でも、自殺志願者でも、就労希望者でもないことを見抜いているな……)
八津 紫(……魔族の絡みをのらりくらりと躱して……並の一般人でないことは確かだが、一般魔族どもがヤツを魔族だと見ていないとなるとヤツは一体 “何” だ?)
八津 紫(……まさか。…………東京キングダムまで訪れて、アダルトグッズの嗜好品を買いに来たわけでは…………ないよな? …………。だが、あり得ない話では無さそうなのがまた……)
~あとがき~
次回はまた月曜日です!
22:00追記。
先ほどから作者の好きなEpisodeを読み返していたのですが……。鹿之助くんは1番オリ主のことを理解しているんだなって思いました。
Episode121で『東京キングダムで良さそうと思っても魔族の店に入るなよ?』って釘を刺されているのに、このヒト、性懲りも無くSMアダルトショップに立ち入って魔族から竹鞭のセールスを受けてますよ……。