対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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Episode141 『東奔西走』

 予測した通り裏路地に入った瞬間に、〈聞き耳〉(シックスセンス)で脳が危険アラートをけたたましく響かせる。

 

 危険なサインは既に要所要所から滲み出ていた。

 

 あのネオン街のような煌びやかさは一体どこへやら。

 

 裏路地ではスナック看板など小さな出店の看板などこじんまりしたものがぼちぼちと並んでいるのだが、プラスチック製のそれらは廃墟街のように面白半分に叩き割られていた。

 

 最低限の建築法に乗っ取って窓らしい窓はあるが、いずれを覗き込んだとしても内部は闇が広がるばかり。

 

 壁なども中途半端に引き剥がされた痕の残るチラシ跡やグラフィティ(エアロゾールアート)が至る所に施され、とても先ほどまで異種族が蔓延る賑わった繫華街が広がっていた街とは思えないような光景だった。

 

 当然、地面も酷い有様だ。

 

 かつては舗装されていたアスファルトも適度な感覚でひび割れ、穴が開き、ヒールのような不安定な靴ではさぞかし歩きにくいだろう。

 

 電動キックボードに乗ろうものなら間違いなく走行距離20ⅿも持たずに激しく顔面から逝く。

 

 清掃員なども居るはずがないので辺り一帯にゴミが散乱している。

 

 この光景を私の時代で例えるならば、まるで夏祭りやキャンプ場でバカ騒ぎするDQNやウェイ達が去ったあとのような…………。従業員による掃除前の競馬場などの賭博場における建物内の床のような…………。超大型台風の暴風雨が過ぎ去ったかのような有様だった。

 

 

「……えーっと、こっちかな?」

 

 

 おまけに『釘貫 神葬。東京キングダムの裏路地にて迷子になる』という惨状。

 

 スマホを持ってきていない以上、あらかじめググールマップの地図を拡大印刷して代用品として持参してはいる。

 

 持参はしているが……。政府一大プロジェクト『東京キングダム・シティ』は公開以前より破綻していることから、グーグルマップ地図では大通りしか衛星映像として地図に掲載されていなかった。

 

 ならば現地や魔都 東京などで『観光るるぶ』などの冊子を購入し、地形やルートの把握しようと検討していたのだが…………まぁ……。

 

 様々な勢力が対面切っての大勝負を仕掛けている繁華街に、そんな敵対勢力の保有土地情報を知られてしまいそうな地図が堂々と売られている筈もなく……。

 

 土地勘の把握に関してはハッキリ言って詰んでいる。

 

 ましてや私が目的地にたどり着けない、土地勘の把握がままならない他の理由として——

 

 

チィッ! あの(アマ)!どこ行きやがった!?」

 

「こっちに逃げて行ったぞ!」

 

「居たァッ!」

 

「逃がすな!とっ捕まえろ!!!」

 

「あー……もう。なんでこうなっちゃうかなぁ」スタコラ

 

ゴラァ!逃げるんじゃねえ!!!」

 

「……………………」サササササッ

 

 

 追われる身に転身していた。

 

 いや。誰に弁明するわけでもないが今日は本当に何かきっかけになるようなことはしていない。

 

 裏路地を平然と歩いていただけなのに。

 

 背後から屈強な魔族がニヤニヤして近づいてきたから離れようとしただけなのに。

 

 すれ違いざまにブルーハワイシロップみたいな薬液色をした注射を身体にぶっ刺されそうになったから脱兎の如くその場から逃げ出しただけなのに。

 

 今や追われる身ですよ。追われる身。おかげさまで東奔西走なんのその。

 

 今回ばかりは私に何の非はないはずなのだ。

 

 でも捕まったら良からぬことになるのは、魔都 東京で経験済みなのでひたすら走って逃げる。

 

 本当は迎撃して殲滅した方が早いのだろうけど、出席停止期間中(インフルエンザ・タイム)に鹿之助くんから “力強く” 釘を刺された以上、約束は護らねばなるまい。

 

 これまでの逃走劇から察するに、相手はチンピラレベルの相手なのだ。

 

 したがって、ゴミ箱の中身を路上にばら撒くなどをして障害(ハザード)を作り上げては逃げるの繰り返し。

 

 されど流石は魔族といったところか。

 

 私の『新クトゥルフ神話TRPG』における139頁 “キャラクターがハザードを作り出す” を用いて時間稼ぎしているにも関わらず力技で全て突破してくる。

 

 あの突破力を例えるならアレ。

 

 陸上競技でハードル競争における『飛び越えずハードルを片っ端から薙ぎ倒しながら暴走列車のように駆け抜ける選手(この時、走行速度は常に維持されるものとする)』みたいな感じ。

 

 フィジカルでゴリ押し。

 

 

 ……対魔忍かな?

 

 

 おかげさまで夜の蛇子ちゃんに遭遇する前から、現在の追っ手である怪物姿の脳筋対魔忍達をどのように撒くか “頭を使って” いるハメになっている。

 

 やがて導き出されたのは、滑りやすいタール液状のもの——就活生が自己PRで大好きな潤滑油(ローション)を床に転がすなどをしては相手をすっころばせては距離を取るという面倒くさい方法での対策だった。

 

 〈幸運〉(さいわい)にも最後尾を走っていた白い追跡者は、私の突破した時に生まれる隙を許さぬ二段構えの潤滑油(ローション)障害(ハザード)に巻き込まれて割と激し目に転倒して無事にチェイスからリタイアして行ってくれた。

 

 魔族も人間らしいところがあるのだな、と思った。

 

 

「あ、ここなら撒けるかも」

 

 

 逃走開始から早10分。

 

 撒けそうな路地を見つけて速度を落とす。

 

 慣性の法則によって荷物と身体が進行方向に引っ張られるも、角を急カーブで曲がる。

 

 曲がった先は地上を走って逃げるには行き止まりにしか見えない構造の袋小路だった。

 

 しかし今なら私は奴等の視界から逃れている。

 

 そのままハリウッドの映画のアメリカの街並みでよくみられる屋外式の非常階段目掛けて〈跳躍〉し、よじ登りにかかった。

 

 こちとら助走もついているならば〈跳躍〉にて垂直方向に身長分飛び上がり、頭上3ⅿ上にあるのハシゴを掴んで非常階段の踊り場に辿り着くことなど何の造作もなかった。

 

 登った勢いのまま駆け上がろうものなら金属音が反響して居所がバレてしまいそうなので、なるべく壁際。陽葵ちゃんのくれた橙色で目立つライダースジャケットを脱いで息を潜めて〈隠密〉行動を取る。

 

 鹿之助くん達と遊びに行った『くさぶき城-海水浴場』で、ほんのり焼けた肌の色は私を闇にとけ込ませてくれることに違いない。

 

 ただ、私を一方的に追いかけてきている魔族の熱狂的なファンが私を発見し再度追いかけてくるかもしれないので、リュックサックの中から〈改造した釘打ち機〉を取り出して『CALL of CTHULHU クトゥルフ神話TRPG69頁 “火器のスポット・ルール” 慎重な標準。新クトゥルフ神話TRPG109頁 狙いを定めるルールを用いて現れるであろう対象に狙撃の姿勢に入る。

 

 〈改造した釘打ち機〉をもっと改造してアタッチメントを増やしたり、追加機能を加えたり、ライフル改造を施したかったのだが……こればかりは時間が足りなかったのだから仕方がない。

 

 

「チッ! あのアバズレ、ちょこまかちょこまかとォ……ッ!」

 

 

 一歩遅れて魔族の集団が到着する。

 

 彼等は私が大通りで見たような首が1つ分足りないケルベロスのような畜生を連れてはいかなった。

 

 赤い肌の鬼族の話では “ブラッドドッグ” という名称だったか。

 

 ゆえに彼等の頭上に位置する非常階段によじ登って〈隠密〉することは得策だと判断したのだ。

 

 既に私が作り出したハザードの影響によって彼等の衣服はボロボロだが、あくまでも衣服だけの話に限ったものだろう。

 

 1名は既に脱落済み。その他+1名を除いて、他の4人はピンピンしているように見える。

 

 

「いってぇ……」

 

「大丈夫か?」

 

「捕まえたら、まずは俺が真っ先にブチ犯してやる……」

 

「ああ、捕まえたらな。今日はお前に最初を譲ってやるよ」

 

「ガゲゲゲッ!この先は袋小路だぜぇ?逃げる場所を誤ったなぁ?!お嬢ちゃん!?」

 

「鬼ごっこはお終いだァ♪」

 

 

 一行はジリジリと距離を詰めてくる。

 

 こちらも最もMOV値の最も高い奴(足の速かった影のような存在)に標準を定めながら、いつでも引き金(トリガー)が引けるよう指を掛けつつ〈隠密〉状態を継続していた。

 

 しかし彼等は頭上にいる私を通過して、そのまま袋小路らしい通路ばかり警戒している。

 

 やはり人間らしい面も兼ね備える彼等もまた、頭上は絶対の死角であったか。

 

 

「お嬢ちゃん? 逃げ込む場所を間違えたなァ♪」

 

「人間の小娘風情が!逃げられると思うなよッ!」

 

 

 私のせいで派手に転んだ魔族が、鼓膜がビリビリと震撼するほどの怒りに震えた声で叫ぶ。

 

 うん。まぁ。でも……。

 

 そっちには誰もいないのだが。

 

 このまま物音を立てずに彼等を観察し狙撃の姿勢を続ける。

 

 いきなり注射器を突き立ててこようとした連中だ。

 

 チェイスの最中での武器のお披露目会はなかったが、懐に別の武器を持っているかもしれない。

 

 と、思った矢先に何人かが懐から銃のようなものを抜いた。

 

 2020sのアメリカで警察官が所持しているスタンガン(射出型)のような得物。

 

 ……やはり隠れていて正解だったかもしれない。

 

 火器など現代日本の日常からは掛け離れた思いがけない武器だが、まぁ無法地帯だしそれぐらいは当然なのかもしれないと思う。

 

 前世ではよく魔術を扱うカルティストが拳銃や自動小銃を所持していたし。

 

 現世でもネズミ色の工事用ヘルメットとガスマスクを被った路上強盗がカラシニコフ系の自動小銃を携えていたし。

 

 つまりあいつ等はカルティストなのか。

 

 カルティストなら装備に納得できる。

 

 な る ほ ど カ ル テ ィ ス ト か 。

 

 

「分かれるぞ。俺とお前はこっちの通路を調べる。お前とお前はそっちの建物内だ。負傷したお前はここに残って、炙り出しで逃げてきたアマをとっ捕まえてくれ」

 

「ああ」

 

「あんな大荷物で全力疾走だったんだ。物音も立てずにそんな遠くまでは逃げられやしないさ」

 

「ああ」

 

「またすり抜けて逃げられないよう、怪我の手当てしとけよ」

 

「ああ」

 

「ガゲゲヘッ、先に楽しんでても良いからな」

 

「ああ」

 

 

 彼等は見当違いの地点(ところ)で分散する。

 

 リーダー格と他3人はそのまま通路の角や、近場の建物内に侵入していく形で姿を消してしまった。

 

 

 




~一方、その頃……①~
日ノ出 陽葵「先輩方!ありがとうございます!」

「いいの。いいの、丁度センザキに用事があったから」

「東京キングダムならヘリで寄り道できるしね」

日ノ出 陽葵「ありがとうござます!!!」

「でも1人で私服のまま行く気?」

日ノ出 陽葵「安心してください! ちゃんと対魔忍スーツは下着に履いてますよ!」バーン!!!! ブルルンッ!!!!

「み、見せなくていいから……」

「じゃあ、もしかして諜報任務?」

日ノ出 陽葵「はい! 詳しいことは現地の同級生が知っているので、まずは合流してから任務内容を聞きます!」

「なるほど、だからこの時期にあの東京キングダムにね……納得」

日ノ出 陽葵「?」

「やめろよ。怖がってるじゃないか。……気にしなくていいよ、ごめんね」

「でも私の友達の話じゃ、東京キングダムの動きが怪しくて前々から対魔忍の失踪者も続いているって言ってたから……注意はしときなよ?」

日ノ出 陽葵「はい!わかりました!気を付けます!」

「ははは、元気いっぱいなのは良いことだね。頑張ってね」



~一方、その頃……②~
上原 鹿之助「ん?!」ビクッ

相州 蛇子「鹿之助ちゃん、どうかしたの!?」

上原 鹿之助「なんか、誰かに後頭部をつつかれたような気がして……」キョロキョロ

相州 蛇子「もしかして敵!?」キョロキョロ

上原 鹿之助「それは違うと思う。俺のソナーには何も変化ないし……気のせいかも…………ごめん」

ふうま小太郎「…………」ジロジロ

上原 鹿之助「な、なんだよ、ふうま。そんなにジロジロ見るなって……」

ふうま小太郎「すまん。だが鹿之助が感じた感覚はもしかすると “虫の知らせ” かもな。と思ってさ」

相州 蛇子「それは、よくないことが起こりそうである感覚……悪い予感のこと?」

ふうま小太郎「ああ」

上原 鹿之助「悪い予感……はぁっ、まさか日葵!? 日葵のことか?! まさかまた魔族の店に嬉々としながら入って!?」キョドキョド

ふうま小太郎「ン。…………それは……。……どうだろうな……?」

相州 蛇子「うふふ♪ 鹿之助ちゃんはすぐに日葵ちゃんを心配するんだから♪」

上原鹿之助「だ、だってよぉ……」オロオロ

相州 蛇子「でも今頃は紫先生が日葵ちゃんに追いついて同行している頃合いだと蛇子は思うな~♪」

上原 鹿之助「そ、そうかぁ?」

相州 蛇子「そうだよ! だからそんなに心配しなくても大丈夫!」

上原鹿之助「そ、そっかぁ……」



~一方、その頃……③~

八津 紫「人拐い共に襲われていたが私が奴の保護に回らずとも監視してきたヤツならば、いとも簡単に突破するに違いないだろう」

八津 紫「…………」*1

八津 紫「蓮魔の言い分も分かる……ヤツは本当に小癪だ。完全に見失った」

八津 紫「闇雲に探しても仕方ない。セーフハウスに立ち寄って情報を集めるか」



~あとがき~

やったぜ。


 対魔忍RPGの方で【サニー・ザ・バニー】日ノ出 陽葵ちゃんが実装されましたね!
 まさか約半年前……Episode-Inside16-3『雲隠れゆきかぜちゃん孤軍奮闘ヘロヘロ大作戦!』のあとがきで話した“夏休みの海イベントで配布SRとかで出て欲しい。” とか言ってたら、本当に夏休み中に実装されるなんて……(畏怖)
 しかも本イベントで準主役の立ち位置でシナリオで活躍してくれている……!(卒倒)
 ありがとうございます! ありがとうございます!!!

 これで通算、3人目の陽葵ちゃんの参戦です! 即入手しました!
 曇りのない太陽のようなにこやかな笑顔が素敵! 袖の太陽マークとか絶対にオーダーメイド品だし……! 腰布のシースルーがまたえちちなんだよなぁ!
 無論、本小説と同じように稲毛屋のソフトアイスクリームを4本ぶち込んで信頼度MAXにしましたとも!

 …………ところで陽葵ちゃん、更にお胸が大きくなってない?
 気のせい? 初期の日ノ出 陽葵よりも更に大きくなっているような……?
 回想シーンで揉まれすぎて乳腺が肥大化か、まだ発達してるって言うの???
 思春期と女性ホルモンとストレス面の医学的観点でも、陽葵ちゃんはストレスに対して強そう(性格的にストレスを感じにくそう)だしね……。

 そして明日から本小説約3日おき投稿に戻します。
 2年前の狂ったかのような投稿速度ですが、
 公式様が出してくれて、旭先生も陽葵ちゃんを描いてくれたんだ。私も頑張らなきゃな!

*1
釘貫が仕掛けたハザードに巻き込まれ、全身真っ黒なタール液まみれ

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