対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

173 / 261
Episode146 『そこのお前!高位魔族1人に含まれる脅威は邪神1体分だぜ!』

 

 エドウィン・ブラックさんとやらが私の同人誌を蛇子ちゃん経由で受け取った。

 

 コミケのブースにやってきた客のように、同人誌を興味深そうな顔をしてペラペラと早読している。

 

 その間することもない私は、彼の容姿や仕草へ注意深く〈目星〉をつけながら並行作業として感情の動き(〈心理学〉)に注視して観察していた。

 

 目の動きを見る分に、蛇子ちゃんの時と比べて要所要所に視点が留まって読み解くことができているような素振りが見受けられる。

 

 だが私が文字列を自由自在に並べ替えている以上、おおまかな内容は把握できたとしても正確な情報は入手できないだろう。

 

 されど妨害があったとしても彼は書物の単語の意味を捉え、時には立ち止まり頭の中でたちまち文章を組み替えて読める文章に組み替えているようにみえる。

 

 彼が文字を追う目つきが時折興味深そうに眼を細めていることから、そう察することができた。

 

 

「…………」

 

 

 彼がページを巻き戻しながらもじっくりと読みふけっている間に、更に情報収集を加速させる。

 

 ごく自然な手付きでリュックサックから鹿之助くんを盗撮した伊達メガネを取り出し、メガネクロスで噴き上げるふりをしながらエドウィン・ブラックさんと桃色髪の痴女の姿を〈写真術〉で捉える。

 

 これで五車町に帰還したあとでも撮影した映像の現像。

 

 からの肉眼では見落としてしまった彼の仕草や情報を再分析することができるだろう。

 

 彼の容姿は蛇子ちゃんのようにサラッと一見する分には人間に見えてしまう。

 

 でも瞳は蛇目ではないからナーガ族ではないし、頭に角が生えていないことから鬼族って訳でもない。

 

 更に言えば興味の惹かれる美貌と美声。

 

 一睨みされただけで下半身が恐怖で濡れる——ンン゙ッ……知的好奇心がくすぐられたものの。

 

 渋おじ系だとしても、鹿之助くんほど心が揺さぶられる感情の隆起が起こり得ないことから淫魔族である可能性も排除できるだろう。

 

 もともと鹿之助くんは淫魔族ではない。

 

 鹿之助くんは私と対極して輝かしいキラキラとして内面に女の子のような可憐さを持ち合わせた少年だが、淫魔族ではないのだ。

 

 このことからエドウィン・ブラックさんは淫魔族ではない。

 

 はい。Q.E.D. 証明終了。

 

 されど先ほど初見時に直感した際の背筋が凍るような異物感から人間ではないことはわかる。

 

 元より私の肉眼では瘴気とやらを確認することはできないが、そもそもの話。

 

 蛇子ちゃんほどの高位魔族ナーガ種が、ただの人間と親友の間柄で群れているとは考えにくい。

 

 蛇子ちゃんにとって “有益な情報を持つ” 私は例外かもしれないが、明らかに私が彼の登場を眺めていた時に蛇子ちゃんとの会話をしていた彼は蛇子ちゃんと対等——否。

 

 ()()蛇子ちゃんよりも格上のような立ち振る舞いだった。

 

 ゆえに残された高位魔族の種類から考えられるのは3種類。

 

鬼神乙女

レイス族

吸血鬼

 

 の3種族だ。

 

 鬼神乙女も乙女の二文字から候補から除外……したいところだが、私には彼が男に見えているだけであの闇の衣を剥いでみたら女である可能性も考慮して、候補には加えたままにしておく。

 

 鹿之助くんや藍野先輩の件もあるし。

 

 男装系女性って可能性もある。

 

 闇から出現したことや、やせ細った髑髏のようなやせ細った容姿は神出鬼没なレイス族——亡霊や幽霊らしさがあるものの、彼には完全に足が地に足のついた2本の足があった。

 

 残りの候補とされる吸血鬼ならば口の中に牙でもありそうなものだが……。

 

 口数が少ない寡黙な彼は口の中を見せるほどには喋らず、この種族も候補として残るだけの微妙な分類だ。

 

 

「………………」

 

「如何でしたでしょうか? この言語、蛇子ちゃんの御友人であるブラックさんなら何か分かりましたか?」

 

 

 ある程度の時間をおいた段階で興味深そうに熱中している彼へ声をかける。

 

 私としては彼が私の同人誌の言語について理解していることを既に察知しているが、ここは敢えて気づいていないかのような素振りで尋ねてみる。

 

 

「ふむ……」

 

 

 彼は私の同人誌をゆっくりと閉じ円卓(テーブル)へ乗せると、右手を顎に当てて考えるような素振りをする。

 

 それから隣の桃色髪の痴女へと片手で指示をし同人誌を回収させる。

 

 彼女は私が書いた同人誌を返却してくるわけでもなく、石油王から指示を受けた側近のように自分の懐へと忍ばせてしまった。

 

 

「…………」

 

 

 こちらからの質問に対して何も答えることはなく、大胆不敵な態度で足組を始めたかと思えば、あまつさえ両目を閉じてしまった。

 

 

「……」

 

「♪」

 

 

 返事が無いため、右側——円卓の3時の方角へと座った蛇子ちゃんの方に視線を移す。

 

 彼女の表情は相変わらずだ。

 

 私がエドウィン・ブラックの様子を観察している私を見つめていた時と同じような微笑を浮かべて、こちらを見つめ続けている。

 

 前かがみ姿勢のため、衣服でより強調された豊満なバストが机上へ腰をかけていた。

 

 これには無言のまま肩を竦めて顎で『蛇子ちゃん(そちらがわ)から何か話しかけて欲しい』とジェスチャーを送る。

 

 にもかかわらず、彼女は彼女でペットを観察する飼い主のような笑みを浮かべたまま私から視線を離そうとしない。

 

 

『…………』

 

 

 しばらくの間、沈黙が続く。

 

 周囲から聞こえてくる外野の魔族達の談笑の声だけが円卓周囲を包んでいる。

 

 

「あの……」

 

 

 沈黙に耐え切れず片目をつぶりながら後頭部を掻きつつ、もう一度彼へと声を掛ける。

 

 

「興味深い」

 

「へ?」

 

「実に興味深い書物だった」

 

「ああ、はい。それは良かったです。…………それで。何の言語か判明したのであれば、ぜひ教えて頂きたい所存でございますが……?

 

 

 彼はまるで私の質問など最初から聞いていないかのような感想を聞かせてきた。

 

 致し方ないので再び同じ質問を、先ほどよりも力強く強調した声で尋ねる。

 

 同人誌の方も返却して欲しいところだが、返してくれる様子が皆無なため諦めの域に達していた。

 

 

「——この書物の原本は何処ある?」

 

「……。…………。はい?」

 

 

 ……なんだろう。

 

 話が通じてない気がする。

 

 私、いま確実に『言語が判明したなら教えて』って尋ねたよな……?

 

 その返事が原本の所在?

 

 

「あー……すみません。言語と原本の所在、なんの関係が?」

 

「……はぁ」

 

「えっ?」

 

 

 え? えっ? ため息つかれたんだが?

 

 しかも会話に参加していない “桃色髪の痴女” から。

 

 質問を質問で返されて、ため息をつきたいのはこっちの方なんだが?

 

 会話の文脈が繋がってなくて困っているのもこっちなんだが?

 

 それとも話の繋がらない会話になっているのは、互いのIQが20離れていることによる弊害か?

 

 私の方がIQを20落として話さなきゃダメなやつか?

 

 いちからか? いちからせつめいしないとだめか?

 

 むほうちたいでも ヒトのカチカンと ブンカでは セイジャから モノを ぬすんだら ドロボウってところからか?

 

 

「…………」

 

「♪」

 

 

 助けを求めるのは癪だが、今回の仲介役である蛇子ちゃんへ再び視線を送る。

 

 されど私の方をニタニタと笑ったままで彼女側の動きはない。

 

 それどころか両手を組んでその上に顎を乗せて困惑する私を視姦してくるばかりだ。

 

 使えねえなぁ!

 

 こっちのレスバクソザコ高位魔族は!

 

 

「……貴様が書物の言語を知ったところで何かできるわけでもあるまい」

 

 

 話が再び凍結したところで彼から『理解力の及ばない私のために』と。

 

 百歩譲っての精神を滲みださせながら説明をされる。

 

 

「まぁ……そうかもしれませんが……」

 

 

 え? なんで?

 

 なんで『私が悪い』みたいな流れになっているの?

 

 またもや片目を瞑って後頭部を掻く。

 

 

「もう一度だけ聴いてやろう。原本は何処にある?」

 

 

 彼は足を組んだまま横暴で高圧的な態度のままうっすらと目を開け、膝の上で指を組み、眉をひそめる。

 

 この期に及んで情報を出し渋る私と視線を合わせてくる。

 

 その目を見た瞬間、脳内で張り巡らされた私の強気は忽ち萎縮してしまった。

 

 視線を合わせただけにも関わらず、グレート・オールド・ワン以上の神格と対峙したときのような嫌な汗がドッと流れていく。

 

 

「あー……中華連合国の船の上——

 

「…………」

 

「と、言いたいところです。言いたいところですが、あいにく原本は私にとってこの会合を穏便に済ませる保険ですので、どこにあるかなんて……言えないですね。一旦、お話は持ち帰らせて頂きます。まぁ、ご希望ならご住所を教えて頂ければ後日ゆうパックで郵送しますよ(※本物を郵送するとは言っていない)」

 

「…………」

 

「分かりました。負けましたよ。負けました。着払いじゃなくて元払いにしておきますね。わはは。私ってやっさしー。出血大サービスです」

 

 

 蛇子ちゃんの時のように、適当に誤魔化そうとした瞬間に彼の眼力が強まり逆らえない圧に圧倒される。

 

 辛うじてできたささやかな抵抗は、軽口を叩きながら逃げの姿勢に移行することだけだった。

 

 お話持ち帰り社会人ムーブ!

 

 99%の確率で断る常套句!

 

 前向きに検討してやるぜ!

 

 

「分かってない様だな……。ブラック様は “今すぐ、素直に吐けば命だけは助けてやろう” とおっしゃられている。あまり私達をおちょくるなよ人間の小娘」

 

 

 ここで軽口に耐えかねた桃色髪の痴女が口を挟んできた。

 

 この女も眼力が凄まじい。

 

 明らかに海の家で囲まれたときのような人間による眼力ではない。

 

 下手に数人ばかり人殺しに関与したことのある探索者の眼力すらも凌ぐ目力だ。

 

 その姿は非常に人間そのものと酷似しているが、恐らく本質は魔族とかなのだろう。

 

 外見から考察するに痴女の魔族——淫魔族とか?

 

 それに『命だけは助けてやろう』ねぇ……。

 

 たぶん、本物の在処を正直に話せば本当に “命だけ” は助けてくれるのかもしれない。

 

 でもその先の処遇は——

 

 対魔忍世界だし、口封じなどで肉便器やら奴隷娼婦堕ちがなんとなしに予測できる。

 

 




~一方、その頃……①~

青空 日葵「陽葵ちゃん

日ノ出 陽葵「日葵ちゃん

チュッチュ


………
……


日ノ出 陽葵「んふふふ ひまりちゃん…… すぴー」Zzz……

「アニキー、このメスブタすっごい幸せそうな顔して寝てるでやんす」

「寝かせとくでゲス、寝かせとくでゲス。あの拘束台に縛り上げたら叩き起こして鞭で叩かれるだけで絶頂できるマゾ豚に調教してオークションに売り飛ばすんゲスから。ほらさっさと拘束するでゲス」

「へーい……」

日ノ出 陽葵「あっ♥♥♥ そんな落雷ばかりじゃなくて、はじめてはひまりちゃんのぐるぐる台風……んふふふふふふ♥♥♥」Zzz……

「ア、アニキ! 大変でやんす!」

「ど、どした!?」

「このマゾ豚、何もしてないのに既に防波堤(ショーツ)が決壊、拘束台(三角州)が大洪水でやんす!?」

「これは……ッ! マゾ豚ガチャ神引きしちまったか………………?」

「しかもさっきから災害用語がポンポンでてくるでやんす……。いったいどんなドスケベな夢をみていることやら……」

日ノ出 陽葵「ひまりちゃぁん……余震が続いちゃうよぉ♥♥♥」Zzz……

日ノ出 陽葵「あっあっひまりちゃん!大陸プレートを激しく突き上げちゃダメ……ッ……Zzz…………ぴ、P波をそんなに強くしたら♥♥S波が長引いちゃ……ぅ♥♥♥」Zzz……

「「………………」」


~一方、その頃……②~
SR/【偵察任務】八津(やつ) (むらさき)の回想シーンの続き。
 『対魔忍世界に転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したいX』でのみ解放されます。


~あとがき~
 夢あるある。
 超理論なのに、なぜかそれに納得して物語が勝手に進んで行っちゃう奴。
 きっと陽葵ちゃんの脳内では、オリ主と一緒に東京キングダムの防災センターで〈科学(地質学)(気象学)〉をマンツーマンの講義をやってるんだろうなぁ()
 大陸プレートも陽葵ちゃん自分のことだって言ってないし、今回の寝言の段階ではえっちな強度検査のはずが、普通に防災センターでオリ主と共に講義を受けていた説がありますねぇ!
 R-15禁(えっちな文面)なのは前回のマンゴージュースに何か混入してたからだろうな!

 安全ヘルメットをすっぽりかぶって、エンジニアスーツで災害体験する陽葵ちゃんよき……。

 日本国って地震大国じゃないですか。
 基本的に対魔忍達って魔との争いで派遣されますけど、災害などの救助活動とかで第一線を張る対魔忍もかっこよさそうじゃないですか?!

 彼等が活躍するのは、自衛隊とは違って人の身では立ち入り不可能な現場!
 火災現場に炎を操って突撃できる火遁衆(消防署所属)!
 土砂災害で土やガレキを除去できる土遁衆(警察官)!
 海のシーズン、沖に流された人を救助する獣遁衆(サメ化)、水遁衆(水難救助隊)!

 ただ人類は愚かなので、忍法を操る異質な存在を排他しそうなのがネック……。
 それと対魔忍組織と五車町の在り方って、日本各地に異質な集団が散らばっているよりも、一カ所に纏め任務を与えることで(てい)よく隔離しているだけなのが実情ですし。理論的にはバケモノにはバケモノをぶつけるやつ。

 でも救助されて身の程を弁えた人間から感謝されて生きがいになってるのすこ。
 『バケモノのくせに、どうして全員助けられなかった!』と無理難題や心のない怒声を投げかけられて落ち込む姿、すこ。
 被災者を魔族が無慈悲にもカモにして回想シーンになるのもすこすこ。

 ただ二次創作でしか許されない気がする。それこそ、現実で災害が実際に起きたら見せられなくなっちゃうし。
 公式にやるならヨミハラの探偵団ぐらいがちょうどいい。架空の存在。魔族と戦っているだけの方が一番説。


~おしらせ~
 少しの間、評価必要文字をチキるのを取りやめます。
 ただ無言低評価爆撃は嫌なので文字数は設定はします。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。