対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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Episode148 『最終勧告』

 

「では、その気になってからまた来よう」

 

「ブラック様が慈悲を与えてくださったというのに……人間とは、実に……愚かだな」

 

 

 席を立ち、ギラギラとした性欲に塗れたかのような目の色をした群衆の中へフェードアウトするエドウィン・ブラックと桃色髪の痴女。

 

 

「♪」

 

 

 彼等が群衆の中に消えたのを見送って、私の表情をジトジトと確認してから席を立ち上がる蛇子ちゃん。

 

 

「♪」

 

「……蛇子ちゃんは行かないのですか?」

 

「勇ましいゼラトシーカーちゃんの姿は、ここで見納めかもしれないから目に焼き付けとこうと思ってね♪ 明日には忘れているだろうけど♪」

 

「ハッ、お望みなら()()()()()()()泣かして忘れられない思い出にして差し上げましょうか?」

 

「ウフフ♪ 焦らないでゼラトちゃん♪ また遊び相手になってあげるかどうかは、凌ぎ切れたら考えてあげる♪」

 

 

 蛇子ちゃんも逃げるように群衆の中に消えていく。

 

 さて——

 

 

「っと。そうだ。素人質問で恐縮ですがあなた方はオーク?なのでしょうか?」

 

「…………」

 

「…………」

 

「私の知っているオークという種族よりも、かなりお肌が濃いガングロたまごちゃんですけども」

 

「…………」

 

「…………」

 

「あと、その額のパイロット?メカニック?ゴーグルですか? なかなかイカしてますね。私も欲しいのですがどちらで購入されました? 普通に通販プライムでポチりたい」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 両肩を鷲掴みにされ前腕を除いた腕どころか振り向くこともままならないため、夜景を見上げるようにして深緑色の巨体のオーク達と視線を合わせる。

 

 私の知るオークとは、目前のオークよりも建物からぞろぞろと姿を現したような全体的に丸みを帯びていて肌の色も宇治抹茶色をしていたと思うのだが……生憎にもオークの種類は知らない。

 

 だから今回を期に自己紹介でもしてもらおうと思ったのだが——

 

 ……返事はなかった。

 

 無視されて不機嫌そうな顔を作り、ジャケットの中で腕組みをするフリをする。

 

 さらに暴徒から示談金として譲ってもらった2挺〈拳銃〉をホルスターからゆっくりと抜く。

 

 

「まぁいいです。一度しか言わないので耳をよくかっ穿って聞いてくださいね。今、私は最高潮に機嫌が優れません。なぜなら無視された挙句。トイレに行って手も洗ってねえような輩に両肩を掴まれているからです。今なら見逃して差し上げられます。とっとと、森へお帰りなさい」

 

 

 ここでやっとまともな反応として私の言葉に両肩を掴むガングロオークちゃんどもはゲラゲラと下品な声で笑い始めた。

 

 その笑い声に釣られて共鳴する様に他の群衆たちも爆笑し始める。

 

 十分だ。彼等にも3つの警告を済ませた。

 

 

1.敵意のある笑顔

 

2.不用心にも懐へ腕を入れさせた。

 

3.最終勧告

 

 

 殺していい。

 

 

——バンッ!

 

 

 ジャケットの下から〈拳銃〉を完璧に引き抜き、“未照準”“二丁拳銃”“ゼロ距離”での〈射撃〉として肩を掴んでいる右オークの心臓へと1発ぶち込む。

 

 マズルフラッシュが私の顔を明るく照らす。

 

 1発目を右オークのだるんだるんに伸びきった腹部にブチ当てた時点で、左の肩を掴むオークが怯みながらもその巨躯を活かし私を引きずり倒そうと力任せに引っ張る。

 

 

——バンッ!

 

 

 だがこちらも椅子ごと引き倒されながら左側のオークの心臓に目掛けて発砲する。

 

 枝が突き刺さった風船のように、銃弾は柔い肌と破裂させて的確に心臓めざして皮膚に潜り込む。

 

 鉛玉は脈打つ肉の膜を破壊するだけでは飽き足らず、呼吸器をつかさどる袋も貫通。

 

 粘液入りの水風船が破裂したように出入り口から赤紫色のドロドロの液体を噴出させる。

 

 肩を掴む力が弱まり、2体は失神でもしたかのように不自然な姿勢で仰向きに転がる。

 

 

「だから言ったでしょうに」

 

 

 引き倒された勢いで後転をして立ち上がり——

 

 

——バンッ! バンッ!

 

 

 心臓を狙った程度の一撃で意識を失い、倒れ込んだ2体のガングロオークへすかさず更に1発ずつ、『新クトゥルフ神話TRPG116頁 “ゼロ耐久値の効果” として気絶し無抵抗な彼等を確殺する試みをダブルタップとして顎下から脳に目掛け弾丸を追加する。

 

 私の肩を掴んでいたオーク達が二度と起き上がることはなかった。

 

 弾丸が処女膜をぶち破る亀頭のようにぶち抜けたところで、奴等の四肢が電気ショックでも受けたかのように大きく跳ねたのが最後の生命活動だった。

 

 代わりに彼等の生命活動を維持していた体液が穴から吹きこぼれる。

 

 こぼれちゃったプルシュカのように。

 

 足元に転がった肉塊を足蹴にしながら、陽葵ちゃんから貰ったジャケットの襟を整える。

 

 両手の拳銃を素早くジャケット内のホルスターへ片付け、左手で〈改造した釘打ち機〉へと持ち替える。

 

 一方で右手はリュックサックに突っ込み背負い直す。

 

 数発の銃撃で目の前のオークが大した抵抗も成す術もなく倒れ込んだことで、周囲で私を嘲笑う声は水を打ったように静まり返っていた。

 

 この場にいる群衆の誰もかもが目の前で起きた出来事を信じられないとでも言いたげな顔をしている。

 

 硝煙の臭いに刺激された魔獣共が警戒した犬のような唸り声を上げ始める。

 

 だからここで元々の低声よりもトーンを2、3オクターブ下げて周囲を〈威圧〉する。

 

 まえさき市で鹿之助くんに説明した時のように、言葉を区切ってわかりやすい言葉を用いて。

 

 

「——今なら殺さないでやってもいい。見逃せる。だが一線を越えたらもう後戻りはできない。そちらは私を痛めつけるだけの簡単な仕事、こちらは簡単な殲滅活動。依頼を続けるか、それとも逃げ帰るか。好きな方を選ばせてやる」

 

 

 私の周囲へ赤い霧が漂いつつある。

 

 だからこそ、最終警告を入れてやる。

 

 彼等の命を〈値切り〉、考え改めさせる。

 

 不要で無駄な命のやり取りをせずに済むように。

 

 

「ど、どうする?」

「ど、どうするって言ってもよ……」

「金ももらっちまったし、やるしかねえだろ?」

「ここで逃げ帰ったら俺達が殺される」

「でもアイツの目つき、普通じゃねえよ」

 

 

 命を〈値切り〉され、まごつく一部の魔族達。

 

 このことから、目前の群衆が軍隊のように練度の高い特別な存在には到底見えなかった。

 

 金という単語や練度から言えば雇われたオークや魔族の集団なのだろう。

 

 まごついている間に、360°の狙撃地点へ不審な人影が現れていないか一通りの〈目星〉をつけるが、まだ人員は配置されていないようだ。

 

 

ビ、ビビんじゃねえ! 依頼の話じゃあ、相手は人間の小娘だぞ!銃を持ってるからなんだ!あの格好を見ろ!奴は対魔忍じゃねえ!どっからどう見ても銃で武装しているだけの非力な人間の小娘だ!!!今のハイオークチーフを殺したのもただの偶然!ビギナーズラックッ!数で囲んでたたんじまえっ!」

 

 

 足並み揃わない傭兵部隊の後方、群衆の中で待機している魔族が叫ぶ。

 

 なるほど、なるほど。

 

 足元で転がっているガングロオークちゃんは『ハイオークチーフ』というオークの種類なのか。

 

 勉強になった。

 

 それはそれとして。

 

 うぅん……なんだか、あの魔族の集団が気の毒に見えてきた。

 

 きっとただの金で雇われているだけの傭兵なのだろう。

 

 アーマード・コアで見たことのある展開だ。

 

 『騙して悪いが仕事なんでな……』と核心的な情報は何も伝えられず、ただ集められただけの傭兵一団。

 

 油断をして人間の小娘だと侮ってくれることに越したことはないが……。

 

 

「ウォオオオオォォォオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」

 

 

 殺したハイオークチーフの亡骸から、戦闘ではない証拠となる示談金として破損していないゴーグルを拾い上げる。

 

 もう一体のハイオークチーフの亡骸と、和平交渉となる示談金を支払ってもらうか話しかけている間に*1こちらが隙を見せたと思ったのか。

 

 あの場の誰かの煽動で近接戦を得意としてきそうなオークが斧を背負って威勢よく飛び掛かって来る。

 

 オーク共の雄たけびと濁流によってこちらも共鳴してしまう。

 

 これまでに我慢して堪えていた暴力破壊の噴流に抑えが利かなくなる。

 

 

「哀れだな……お互いに」

 

 

 静かに呟いて〈改造した釘打ち機〉の銃口を先頭のオークの瞳へ突き付けた。

 

 

*1
グランド・セフト・オート5でブーツの裏にこびりついた脳ミソに話しかけるトレバーと類似




~一方、その頃……①~
日ノ出 陽葵「ちょっと待って!」

「今更、命乞いかぁ?」

「遅すぎるでやんす」

日ノ出 陽葵「うぅん。そうじゃなくて……。日葵ちゃんなら叩かれて悦ぶ私と、叩かれることで悦び始める私どっちの方が好いてくれるかなぁ……って聞きたくって……♥♥♥」テレッ

「…………何を言ってるでやんす?」

日ノ出 陽葵「だってここに日葵ちゃんはいないけど、日葵ちゃんと会ったんでしょ!? おじさんが見てどっちの方が喜びそうだった?!」

「ゲ、ゲヘ、兄貴。こいつ頭までピンク色だ!きっと高値で——」

「そりゃおめえ——」

「アニキ!?」

「あのタイプは調教することを悦び方でゲス。まず鞭を見る目の色が濁りつくしていた点で、ありゃあ——」

日ノ出 陽葵「」トゥンク
日ノ出 陽葵(ひまりちゃん、そんなに私のことを……

「これで心置きなく覚悟はできたでゲスね」

日ノ出 陽葵「うん!ばっちり!」

「ヒャッヒャッヒャ! それは心がけでやん——」

日ノ出 陽葵「陽遁! 太陽目潰しっ!」ペカーッ!!!!!!!

「ギャアッ!?」

「何の光ィ!?」

日ノ出 陽葵「よしっ! 今のうちに脱出っ! こんな縄の拘束なんて私の忍法で焼き切っちゃえるもんね!」


~一方その頃……②~
SR/【偵察任務】八津(やつ) (むらさき)の回想シーンの続き。
 『対魔忍世界に転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したいX』でのみ解放されます。


~あとがき~
 陽葵ちゃん、ヤられちゃうと思いました?
 残念。まだ大丈夫でしたー。

 でも個人的に対魔忍RPGで謎ポイントは、R/日ノ出陽葵ちゃんの自己紹介だと『(忍法を)使うと倒れちゃう、最後の手段』との発言があるのですが……回想だとバンバン使っちゃってるんですよねー……。
 「使うと倒れちゃう(使うと倒れちゃうとは言っていない)」とは?
 やっぱりここは忍法の出力の問題のお話なんですかね?

 それと、明日。
 ついにアーマード・コアⅥが発売されますね! 私は予約注文しました。
 長年ネタとして言い回されてきたアーマードコアを全力で楽しみたいです!

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