対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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Episode151 『人間風情が高位魔族3人に勝てるわけないだろ!』

………

……

 

 さて。

 

 人質にされた対魔忍を見捨て、逃げ出した私の顛末を話そう。

 

 最終的に逃走ルート先で、二進も三進も行かなくなってしまいました。

 

 やむなく元の屍山血河の牙城に逆戻りとなった釘貫 神葬です。

 

 2体の魔族の胴体に死体を引っ提げて裏道から退却しようとしたところ『待ってました』と言わんばかりの〈アサルト・ライフル〉やら〈アンチマテリアルライフル〉を構えた私兵部隊の待ち伏せに遭遇し、死体が肉盾として機能しなくなってしまいました。

 

 私兵部隊ですが、私がそうであるように彼等もまた確実に戦いの中で成長しているようです。

 

 根城から持ち出した死体が使い物にならなくなったため、示談交渉で新しく得た〈ショットガン〉を用いて私兵部隊を6人前後殺してまわりつつ、肉壁の補充に動いていたのですが……。

 

 私が転がした私兵部隊を肉盾を補充する前に、彼等は後方へと仲間の死体を片付けてしまい。

 

 破損して〈投擲〉するには丁度良い大きさとなってしまった肉盾から露出した部位を正確に狙撃してくるようになってしまって……。

 

 バカ野郎!

 陽葵ちゃんがくれたジャケットの存在と、私が探索者じゃなかったら死んでたぞ!!!

 

 

「ハァ……。困ったなァ。まさか肉盾技(タンクわざ)を克服しちゃうなんてェ……。包囲網を狭めているみたいだから、急いで逃げ出したいけど、もう疲れちゃって 全然動けなくてェ……」

 

 

 これまでの示談金でパンパンになったリュックサックを人をダメにするクッションのように扱い、死体の天窓から紫白い月を見上げる。

 

 このままだと、私の牙城が私兵部隊に解体されてしまうのも時間の問題だろう。

 

 というか、こちらも情報の出し惜しみをしている状況ではなくなりつつある。

 

 マダムには『情報のバーゲンセールを開いてやるつもりだ』とかイキっていたところもあるけど、情報のバーゲンセールを開くのはエドウィン・ブラック蛇子ちゃん桃色髪の痴女3人の情報を引き抜く()()()()こちらの情報も差し出すことを想定していた。

 

 それがどうだ。

 

 今じゃ彼等の力の一部を見ることもなく私だけが情報開示しているではないか。

 

 

「…………よっこら瀬戸の内」

 

 

 ブラインドシャッターを指で広げるように、淫魔族の皮膚を捲り上げて外の様子を観察する。

 

 

 ……刻々と状況は悪化している。

 

 

 どこからともなくわらわらと現れた私兵たちが、手際よく乱戦会場で地面へ転がっている魔族やら武器やらを片付け始めていた。

 

 これでは盾を取っ替え引っ替えしながら正面突破することすら厳しい状況に立たされている。

 

 それに彼等の装備は一体なんなんだ?

 

 目に狂いがなければ、彼等の装備は2010sにおける陸上自衛隊が装備していた89式自動小銃に見えるのだが。

 

 更に彼等が着用している戦闘服もまた、特殊な構造の防弾チョッキのような役割を果たしているようにみえるのだが。

 

 こちらの武装が〈ショットガン〉(2連)や〈改造した釘打ち機〉である以上、『殺しにくい強敵』なだけであって決して殺せない集団ではないのだが……。

 

 私の味方が誰もいない以上、連携し統率の取れた連中はとにかく殺りにくいったらありゃしない。

 

 とにかく死体を意地でも引き渡そうとしないところが厄介。

 

 仲間を引き渡さない・回収しようとする習性があるからこそ、救助隊の何十人かを行動不能・戦闘不能にする大腿部を狙った狙撃を喰らわせたら、鬼のようなアンチマテリアル〈ライフル〉の反撃・一斉砲火の報復行動を喰らったし。

 

 

「あーあ」

 

 

 でも私としては傭兵団を交えて戦っていた時のような、獣じみた狂奔の方が命の輝きがあって楽しかったのに。

 

 ちまちま引きこもって籠城戦は他の同胞(探索者)が居なければ盛り上がらない。

 

 絵面も地味だし。

 

 

「♪」

 

「…………」

 

「……」

 

 

 こちらが追い込まれていることを良いことに、蛇子ちゃんに加えてエドウィン・ブラックと桃色髪の痴女までもが私兵部隊に護られる形で顔を見せてくる。

 

 彼等が現れた時点で淫魔族製品のブラインドシャッターから離れ、椅子に座る。

 

 まだ私は “切り札” をいくつか隠し持っている。

 

 こちらの情報のカードを切って全て手の内を明かせば、この場から離脱……あの場の高位魔族の1人ぐらいは葬ることはできるだろう。

 

 できるだろうが……。

 

 現状の情報では高位魔族の力を知り得ない以上、達成率は極めて低いものとなってしまう。

 

 それに手の内を明かしたが最後、いずれは死体の肉盾作戦のように対策を練られてしまうに違いない。

 

 情報は力なのだ。

 

 本をつけ狙ってくる以上、今後の衝突も考えて身の振り方を考えねばなない。

 

 

「ゼラトちゃーん♪ どうかしらぁ? そろそろお話する気にはなったぁ?♪」

 

「…………」

 

 

 カラカラとした笑い声を上げながら蛇子ちゃんが催促をしてくる。

 

 その声はまるで駄々をこねる子供を目前にして、子供が駄々をこねるのを自発的に辞めるのを待つ母親のような声色だ。

 

 

「ゼラトちゃんの大暴れのおかげでこちらも大損害……と言っても主にエドウィンの損害だけど♪ ウフッ♪」

 

「余計なことを言うんじゃない!」

 

「彼は気にしてないのだから、別にいいじゃない♪ そうよね? エドウィン♪」

 

「………………」

 

貴様ァ……!ブラック様が我々に対しても冷酷無比だとでもいうのか?!ブラック様の友人と言えど限度があるぞ!ブラック様は亡くなった兵士1人1人に——」

 

「はいはい。愉快な仲間達のノロケ話をしたいなら余所でやって頂戴」

 

 

 ふむ。

 

 あの統率の取れた私兵達はエドウィン・ブラックの兵士だったのか。

 

 蛇子ちゃんが傭兵達について言及しないことから、彼等の雇い主もエドウィン・ブラックだと考えるのが妥当だろう。

 

 あの高慢な桃色髪の痴女の反応を見る分には、蛇子ちゃんが本当のことを話しているようにも見えるが確証はない。

 

 私が追い込まれている以上 精神的な余裕は向こう側が勝っているのだ。

 

 現状況では〈心理学〉で見透かせるような状態ではない。

 

 仮にその話が本当ならば、再度新たな情報のカードを切ってエドウィン・ブラックさえ葬ることができれば……あるいは葬れずとも再起不能にすることができれば、私兵達の足並みは崩れるに違いない。

 

 違いないのだが、殺せるに至るまでの道筋が見えない。

 

 エドウィン・ブラックに対する情報不足だ。

 

 

「お友達としての助言としてそろそろ降伏すべきだと思うわよ♪ 女中ちゃんもカンカンだし? 強情なゼラトちゃんのことだから、今この瞬間もどうやってこちらを出し抜こうか考えていると思うけど♪」

 

 

 蛇子ちゃんの心情を見透かす発言に、ぐうの音も出ない。

 

 こちらはいつものような軽口を叩かずに、左手を口元、右手を左肘に当てて思考を張り巡らせている真っ最中だった。

 

 なんならブラインドシャッターを閉じてこちらの表情すら見せていないのに的確に思考を読み取って、人間では敵わない高位魔族らしい格の違いを見せつけてくる。

 

 

「大人しく降伏して……♪ 本物も渡せば悪いようにはしないわ♪ お友達同士の仲介役としてエドウィンとも話をつけてあげたし、命を助けてあげるだけじゃなくて特別待遇も約束して、あ・げ・る♪」

 

 

 彼女の言葉が甘い毒のように私を〈誘惑〉する。

 

 されど殴り合った経験から “特別待遇” という甘露の響きに、私の直感が従ってはならないという警告を常時発している。

 

 

「そうね♪ ゼラトちゃんにはカオス・アリーナ専属の女戦士として、たっくさん稼がせてもらわなきゃね♪」

 

 

 ほら、やっぱり。

 

 ろくでもない将来が約束されてますね。

 

 邪神の誘いなんて所詮そんなもんですよ。

 

 彼女の言葉を前世の言葉で翻訳するならば……。

 

 カオス・アリーナ専属の女戦士(我が謁見の間で神楽を舞続けよ)ってことですね。

 

 

 分かるんだよ!こちとら邪神共と世界の命運を賭け何年目だと思ってる?!

 

 

 あと、この隠語のやり取りは3カ月前のまえさき市でもやった気がする!

 

 あの時は蛇子ちゃんから司祭の勧誘をされたっけなぁ?!

 

 

「…………」

 

 

 再び死体のブラインドシャッターを開けて高位魔族の様子を伺う。

 

 私の反応に、蛇子ちゃんは飛び切りのご満悦だ。

 

 勝ち誇った残酷な笑みを浮かべて私が屈服する瞬間を今かと待ち望んでいる。

 

 エドウィン・ブラックは腕組みをしたまま無防備な姿勢でこちらを見つめ。

 

 桃色髪の痴女は既に臨戦態勢だった。腰に差していた西洋の剣を抜いて、私が覗いていることに気付くと、西洋の剣から黒炎をほとばしらせている。

 

 もちろん彼等の周囲にはエドウィン・ブラックの私兵が89式自動小銃を突きつけていて——

 

 

「——降伏すると思いますか?」

 

 

 まぁ、この状態ならまだ突破口を考える時間が残されていると思って要求を突っぱねた。

 

 

「じゃ、時間切れ(タイムオーバー)ね♪」

 

 

 しかし私が牙城に引きこもるよりも先に、蛇子ちゃんは投げキッスでもするかのような仕草を取り、ふぅっと息を吹く。

 

 

「!?」

 

 

 その吹き出された息は冬の息のように白く、またたく間に拡散して霧のような形態となって牙城を包み込んできた。

 

 こちらも死体のブラインドシャッターを閉じて白霧から逃れる。

 

 浴びこそしなかったが冥王星(ユゴス)の科学者/医学的甲殻類による噴霧器の攻撃行為に対策としてできたことは〈回避〉することだけだった。

 

 ただちに気温の変化や凍傷の状態を確認するが、どこも変化はない。

 

 

「…………良かった」

 

 

——ボトッ

 

 

 そう思った矢先に、天井から何かが落ちてきた。

 

 

——ボトボトッ

 

 

 背後を振り返って、落ちてきたソレが何であるか確認する前に、今度は半身を翻した背後から半固形のカレーが地面に叩きつけられるような音が聞こえる。

 

 

——べちゃ

 

 

 今度は目の前に。

 

 何が落ちてきたのかは一瞬では理解できなかった。

 

 それはアボガドの表皮みたいに黒くて、大小様々な大きさでありながらも一塊はパンぐらいの固形物。それらは石鹸をストーブで熱したような異臭を漂わせながらブクブクと沸騰したかのようにあぶくを湧き上がらせている。人が死体が腐っていくような甘い匂いに化学製品を混ぜたような、一言では表すのは難しい異臭がして、ときどき爆ぜたバブルからカビた膿腫のような緑肌色がチラホラと散見できた。毛細血管のような虫喰い穴だらけの断面図は、宿主が死してなお呼吸をするかのようにいやらしくくぱくぱと弁を開いては閉じてを繰り返している。

 

 次第に私が形成した牙城が腐食して崩落していることを理解するのには、さほど時間はいらなかった。

 

 

「ああっ!!クソがッ!!!」

 

 

 悲鳴に近い絶叫を上げて脱出経路を探す。

 

 このまま閉じ籠ろうものなら私が肉塊に押し潰されて城の一部になってしまう!

 

 城の一部になるだけならまだしも、城の肉と一緒にジワジワと時間をかけて溶かされてしまう!

 

 

「げぇっ!」

 

 

 ああ、最悪だ。

 

 スネークレディのヤツ、正面以外の経路を腐食の霧で塞ぎやがった!

 

 その最後の脱出口である正面も上空にふわふわとした白霧と同じ成分の霜が、時間をかけて降下してきている。

 

 外に仕掛けた罠の数々が、滞在地点のように崩壊している。

 

 あの人質作戦の甘々オークとは違い、こっちは考える時間すら与えないつもりか。

 

 銃弾も防いだ陽葵ちゃんのジャケットのジッパーを閉めて、防御を固める。

 

 全方面・完全に地面へ霧が接着する前に、無事な肉盾を引っ張り剥がして背中の盾として構え外へと転がり出た。

 

 天井が降りてくるサンドウィッチトラップから逃れるようにな姿勢で逃れたため、全身に汚らわしいオークの血を纏うことになるが知った事ではない。

 

 命あっての物種だ。

 

 脱出の間際。

 

 私の視界へ映ったのは、あの白霧のせいで瞬時に何もかもを溶かす強烈な災害のような毒霧だった。

 

 彼女の毒霧は城の固定に使っていた金属製の釘すら再利用できないほどにシロアリの巣のような形状にしている。

 

 

「ッ!」

 

 

 牙城を飛び出し背中を守った肉盾すら溶ける。

 

 正確には()()()()()()がする。

 

 ただちに盾をウェポンパージし、正面の脅威に生身一つで対峙しようとする。

 

 

「動くな」

 

 

 だがそれよりも先制攻撃として冷徹な女の声と、全身のあらゆる血にまみれた皮膚に空洞の筒状の物体が力強く押し当てられた。

 

 

「——チェックメイトだ」

 

 

 そこから私ができたことといえば押し当てられたブツが、近づいてきたエドウィン・ブラックの私兵による銃口だと肉眼で確認を取ることだけだった。

 

 




~一方、その頃……①~
日ノ出 陽葵「はぁっ……はぁっ……はぁっ……あっ!」


ガラガラガラガラッ!


日ノ出 陽葵「て、店頭の竹鞭を蹴り倒しちゃった! け、けど……!」

「火を消せー!」
「もうだめでやんす!もう手に負える勢いじゃないでやんす!」
「うわわわっ!火の手が!火の手がこっちにも!」
「あのバカが炎に撒かれたときにいろんなものを触ったからでゲス!」
「隣の店にも知らせろ!対魔忍が放火したって!」

日ノ出 陽葵「た、建物が大変な事になっちゃった……。でもこのチャンスで逃げちゃおう!」

「やられた!対魔忍だ!対魔忍に放火された!水を持って来てくれ!」
「なんだって!?」
「対魔忍?!」
「おい、手伝ってやれ。こっちまで火が回ったらたまらん」

日ノ出 陽葵「ひー! アサギ校長先生にまで話が回って怒られませんように……!」


~一方、その頃……②~
SR/【偵察任務】八津(やつ) (むらさき)の回想シーン②の続き。
 『対魔忍世界に転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したいX』でのみ解放されます。
 当分、回想シーンは終わりません。


~あとがき~
 釘貫ちゃんさぁ……。
 正面から殴り合っても勝てないのなんとかなりませんかね?
 搦め手でもなく正面から殴り合って負けるのは対魔忍以下ですね……。
 でもまともに殴り合うなら、探索者が10人前後ほど欲しいところ。

 オリ主がクソ長長文で物体を説明している時は、神話生物や恐ろしいものを見てしまった時に扱われる説明ですね。特殊タグのvibを使用したかったのですが、どこで段落変更があるか分かったものじゃなかったので断念しました。

 やはり舐めてた相手にボコられるシュチュエーションは心の平穏にとても良いですね!!!
 アブレラ兄貴姉貴の感想がわかるぅ!

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