対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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~まえがき~
 12月中は内容が短くなります。
 よろしくお願いいたします。




Episode164 『空中で動けないなら、空を飛べばいいじゃない』

 エドウィン・ブラックと愉快な仲間達が立ち去ってから、早約3分(176ラウンド)

 

 既に立ち昇る黒煙は球体の1/3を覆い隠してはいるが、鎮火自体には成功したのかもしれない。映画『ミスト』の冒頭のように白い煙がまるで地上民を飲み込む事態には陥っていない。

 

 ただ酸欠の症状として前頭葉と後頭部によろしくない頭痛の症状がじんわりと響き始めていた。

 

 おまけに戦争でも始めたのか、あちらこちらから銃声や断末魔、命乞いまでもが聞こえてくる。

 

 夜勤明けの脳内で音が反響するかのような忌々しい音色だ。

 

 いずれにせよ、どの観点から観測しても非常によろしくないことには違いない。

 

 現状を楽観的に捉えるならば、またもや私はエドウィン・ブラックについて理解を深められた。私が未だに空中浮遊していること——すなわち彼が仕掛けてきた重力変動の魔術は、彼がその場から離れても効果は継続することを把握した。

 

 ——要するに魔術ではないのか? はたまたファストトラベル系の魔術のみを無効化させるものか。そこの原理が解明されていないが、ひとまずはヨシとしよう。

 

 ポジティブ娘の陽葵ちゃん流に考えるならば、彼のおかげで私の脱出のプランは導かれたようなものだ。

 

 人間である私や駒水ちゃんを死に至らしめようとしているこの空間から脱出することができた暁には、この空中浮遊状態のまま東京湾を走って渡ればいい。天草四郎も認める舞空術となることだろう。

 

 問題はないッ!! 10kmまでならッ!!

 

 

「さて、想定も済ませたところで……そろそろ脱出しないとまずいですね。窒息死します」

 

「………………」

 

「そこで駒ちゃんには五車学園の友達プライスで協力を仰いでもよろしいでしょうか?」

 

「………………」

 

「ああ、心配しないで。ちゃんとブラックさんからの監視の指示には逆らわない範疇のお願いですから、命令違反で怯える必要はないですよ」

 

 

 二人の状況に置かれ気まずさMAXな駒水ちゃんへ、裏切りなど気にしてないような表情を作って諭すような声色で懐柔に取り掛かる。

 

 こんな悠長な会話を繰り広げている段階ではないのだが、ここで激昂して駒水ちゃんを責めたてる愚行は避けるべきなのはわかる。

 

 彼女がブラックを裏切って一度は私側についてくれたのは献身的に彼女を救おうと動いたこと以外にも、もしかすると “私となら逃げられるかもしれない” と思わせることができたのかもしれない。

 

 当然だ。五車学園でも伊達に〈信用〉を積み重ねてきてないからな。

 

 紫先生の基礎能力試験、問答助け舟の一件、黒田先輩と眞田先輩相手の生徒指導、洋館事件。

 

 駒ちゃんが失踪する前。私について知っている案件と言えばこの辺りだろう。

 

 五車学園で彼女は私のことを良くも悪くも知っている。

 

 

「最初のお願いはブラックさんに吹き飛ばされてしまった私の筆記用具を取ってもらえませんか? あ、油性ペンだけでいいですよ」

 

「………………」

 

「マジックペン、油性ペンだけですよ?凶器でも何でもない。安全・安心です」

 

「………………はい

 

 

 すごく簡単なお願いの〈値切り〉に彼女はしぶしぶと言った表情であるが応じてくれる。

 

 彼女がオークやオーガ、トロールを〈改造した釘打ち機〉で鏖殺した現場を見ていなかったのは不幸中の幸いだろう。あの現場を見られていれば、先端の尖った油性ペンを渡した時点で暴れかねない女として道具を何一つ渡されることのない状況に陥りかねない危ういところであった。

 

 

「ありがとう♪ ……よっこらショット」

 

 

 学園で見せていた笑顔で彼女から物品を受け取り、辺りを見回す。

 

 挙動不審な私の様子に釘付けになる駒ちゃんを他所に、私は油性ペンの蓋を足蹴に空中で〈跳躍〉し最寄りの壁。アイボリーカラーの壁面キャンバスへと向かう。

 

 

「!?」

 

「?」

 

 

 空中浮遊状態のまま〈跳躍〉で空を飛んで移動しただけなのに、彼女は何をそんなに目を見開いて驚いているのだろうか?

 

 

「♪」

 

 

 ちゃんと逃げる意志はないことを見せるため、建物にへばりついた時点で油性ペンで落書きをはじめ、おどけてみせる。

 

 A.D.2078のバンクシーだと言わんばかりにこの時代では既に版権の切れたであろう●ッキーやマンパンアンを堂々と描く。

 

 ゆるせたかし。

 

 

「ハハッ! 今日も良いテンキー」(裏声)

 

「なんのつもりですか……?」

 

「……」

 

「…………」

 

「……すみません。学園の時みたいに和ませようとふざけただけです。真面目に作業します」

 

 

 マジレスに頭を下げて空中宙返りしながら本命の作業を開始する。

 

 私が刃牙流ではなく、ドラゴン〇流の舞空術で壁際までやってきたのは数式の構築が目的だ。

 

 本当であればエドウィン・ブラック御一行のように遮断している壁の調査に赴きたかった。

 

 だがしかし休戦が受け入れられなかったならば、この場から推測を立ててあの障壁がどのような手段を用いれば破壊できるのか、そのためには如何なる手法が必要なのか割り出す必要がある。

 

 状況から見て魔術的なものだろう。対魔忍世界の最先端の超科学的な技術や私の世界の〈物理学〉上では考えられないような出現の仕方だった。

 

 硬度としても高位魔族が3人出向いたとしても突破できないほど強固な代物。さらに先ほどから響く銃声から考察するに複数人が同時に四方八方からの銃撃を加えたとしても破壊できないらしい。

 

 やはりその中でも気になるのは魔術を無効化する術も発動している割には、私は空中浮遊したままであること。球体状の檻は正常に機能していることだろうか? こっちはいったいどういう仕組みで機能し続けているんだ?

 

 

「となると、やはり爆発……」

 

 

 下手を打つと1回の爆発で空間内の酸素を全て使い切った挙句、障壁が壊れた瞬間に外気の酸素を爆発的に吸収しバックドラフトすら発生しかねないという致命的な状況に陥りかねないが、遅かれ早かれ酸欠死に至るのであれば誤差の範疇だろう。

 

 ただちに必要な情報は、爆心地からの有効爆発範囲(爆発の影響範囲)、威力から導きだされる爆弾の必要数(個数)、爆発物の影響半径、爆発の期待値の算出、爆発物の形態だ。

 

 いずれも私の得意分野である〈物理学〉から値を算出できそうではあるが、それでも何分か時間が掛かる。

 

 こんな時、電卓やスマホ、欲を言えばExcelがあれば小難しい計算式を立てなくても自動計算式を済ませてくれるのにと思う。

 

 

「…………青空ちゃん……? ……青空ちゃんって、もしかして実は……?」

 

 

 らくがきじみた汚い走り書きで計算を始めたところで、駒ちゃんが猫を被っていることを見破ったかのような指摘をしてくる。

 

 無視すればいいだけの話だが、気になるものは気になってしまう。

 

 

「駒ちゃん、大変申し訳ないのですが……。この計算式を間違えると死に直結しかねますので、今は話しかけないで頂けますでしょうか?」

 

「………………」

 

 

 建物の壁に一心不乱で数式を並べるさまはまるで、ドラマ『ガレリオ』のワンシーンのようだが、そんなドラマのようにカッコよくはいかないものだ。

 

 まぁ、私の生死が掛かっているのだ。多少みっともなくても仕方がないだろう。

 

 

………

……

 




~一方、その頃……①~
?? アスカ「お願いだから落ち着いて。中に友達が取り残されていることはわかったわ」

日ノ出 陽葵「でも——」

?? アスカ「でもじゃなくて、落ち着いて周囲の状況を観察して欲しいわね。あなたが、彼女のニイヅマだとしてもよ? あの壁がある限りこちらから彼女に介入することはできないし、こちらから彼女の声が届くこともないの」

日ノ出 陽葵「……」

?? アスカ「それに今特にこのあたり色々と物騒だし……。そんな一般人っぽい恰好でうろついて、その友達の名前を呼んで大騒ぎするなんて人質に自己推薦して襲ってくれといっているようなものよ」

日ノ出 陽葵「……」

?? アスカ(あからさまにションボリしているわね……少しキツく言い過ぎたかしら? でも分かってもらえるとありがたいのだけど……)


~あとがき~
 対魔忍RPGの『紅き血の鎮魂歌』楽しんでいます。
 レイドボスを倒した時にドロップする証のメダルの数少なくなった気がしますけど気のせいでしょうか? 前回遊んだときは、金2000 銀3000 銅2500ぐらい集めた記憶があるのですが……。
 四ツ腕夜冥さん、手段を選ばぬ無法なやり方や必要に応じて敵を肉盾装甲にして好き勝手暴れる姿が、オリ主と被る部分があって好きですね。
 しかもセリフの「アタシら下っ端の忍が魔族と殺し殺されしてる間に、てめえらは魔族と仲良しごっこかぁ!?」がグッと来ました。
 最近のふうま御一行の行動を見ていると気持ちが良く伝わってきます。
 でもふうま一行のやり方は、政治家における外交として見る分では素晴らしいのですけどね……。独立遊撃隊という対魔忍の1部隊で担う必要があるのかな?とは思うところが作者もあります。

 あと眼がね。夜冥の眼が、修羅のそれでして……。
 すべてを恨み、ただ敵を切り捨てるだけに特化した殺気しか感じられない狂気の眼。
 きっとオリ主も鹿之助くんが傍から居なくなった時の未来は彼女のようになるでしょうね。
 黒髪でポニテで殺意の表情筋がそれとなくイメージと合致している……。
 本小説では一人称で基本的に語られているので、オリ主の気づかないうちに同じ眼になっているかもしれません……。

 次回も続きます。

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