対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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Episode167 『無敵の再武装』

 

「…………」

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うわっおっかねえ顔。……アンタ人間なんだよな? …………言っちゃあ悪いがこの状況で人間がするような顔じゃなかったぞ?」

 

 

 唐突な足元からの声に我に返る。

 

 視線を降ろせば先陣をきって私へ司令塔になるよう進言していたオークが、息を切らせながら依頼していた狙撃ライフルをまるで木の棒でも握るように引っ提げて帰ってきたところだった。

 

 所々に切り傷があり、その様子から狙撃用ライフルの強奪は簡単なものではなかったことが見て取れる。

 

 物資回収で生き残った何人かは地面に寝転がって一息ついている様子が見られた。

 

 ヨシヨシ。あの傷では助からない瀕死のオークもいるな。

 

 

「ご苦労」

 

 

 オークの言葉には耳を貸さずに目的の品だけ受け取り、試しに構える。

 

 駒水ちゃんの目も気にして、おぼつかないような手さばきで弾倉を引き抜いて弾薬を落としそうになりながら装弾数を確認。さりげなくチャンバーチェックも行って状態を把握する。

 

 

——3+1発も入っていれば十分だ。

 

 

 スコープ付きのかなり手入れが施された狙撃銃だが、私との争いか……それともオーク達による強奪によるものか、肝心のスコープは壊れている。

 

 通常の照準器だけで狙えるようにアタッチメントを外して、トリガーには指をかけずにひとたび構える。

 

 恐らく銃の反動によって空中で回転することにはなるだろうが、この球体は直径200ⅿ程度。このライフルの基本射程が110ⅿだとして、220ⅿまでは私の通常時の命中力での狙撃は私にとっては造作もない。

 

 

「よし」

 

 

 再装填を済ませる。ライフルスリングで肩から掛け——

 

 

「ところでよ、いくら夏場とはいえ裸にジャケットはどうかと思うぜ? そっちのお嬢ちゃんは、服をどうしたんだよ?」

 

「ぁ、えっと……これは……」

 

「ここらの娼婦ですらマシな格好をしているし、東京キングダムでそんな恰好でうろつくなんざ『犯して欲しい』と言ってるようなもんだ——あいてぇ!」

 

 

 …………これだからオークは。

 

 ドラゴンクエストに登場する腐った死体のような卑しい手つきで駒ちゃんに唾を付けようとするオークの禿げ頭を銃口で小突く。

 

 もちろん奴は振り返る。

 

 トリガーには指をかけて、弾丸で大脳を貫通させられそうな経路である柔らかい眼球を狙う。

 

 

「…………」

 

「ひっ……」

 

 

 振り返ったオークが銃口を突きつけられていることに気付いた途端、伝令の魔族のように縦長に細く伸びあがる。

 

 私が目を放した途端にコレだ。油断も隙もあったもんじゃない。

 

 

「ち、違うんですよ!」

 

「…………何が違う? 言ってみろ

 

「あ、あくまでもアンタの付き人が夏場とはいえ、娼婦よりも酷い恰好をしてたから……適当な廃墟から人間の娘っ子用の服を持ってきたんですよ! 別に手を出そうってわけじゃ——証拠!」

 

 

 奴の懐からぐしゃぐしゃの何着かの衣服が取り出される。

 

 銃口をマジックハンドの代わりにして引取り、検品を行う。

 

 当然、銃口は向けたまま引き金には指をかけている。

 

 全裸よりも淫猥に見える衣服を投げ捨てて、無いよりはマシな衣服をオークへと投げ返す。

 

 

「ほ、ほら! あと、えづいていたから水も持ってきたんでぇ!」

 

 

 オークは汚いものでも放り投げるように選定した衣服と未開封のペットボトル水を駒ちゃんの足元へと投げつける。

 

 そのまま生着替えを眺めるようなことはせずに両手を挙げたまま私の方へくるりと振り返った。

 

 

「良い心がけですね。それに気も利くようだ」

 

「へ、へへっ」

 

 

 肩へライフル銃を乗せたところで、ゆっくりと手を降ろして手揉みをしながら愛想笑いを浮かべるオーク。

 

 されどオークだ。こちらの形勢が逆転した途端にてのひらを回転させるに違いない。

 

 

「…………」

 

「だ、だから、そ、その目。ゴミでも見るような目は止めてくれよ。最初からアンタを頼るつもりがないなら、アンタの指示であっても銃なんて物騒なモン渡すわけがないだろ……?」

 

「ええ。そうですね?」

 

 

 ここまでのやり取りで出払っていた魔族達が続々と指定した物品を持って帰って来る。

 

 あの場にいる誰も彼も私とオークとの揉め事の仲裁をするつもりはないようだ。全員が気の毒そうな顔をしている。

 

 オークから視線を放して、戻ってきた魔族達を集める。

 

 オークは許されたと思ったのか、肩の力を抜く。

 

 さて。

 

 宙に浮いている以上、私に出来ることは少ない。

 

 持ってきた材料を確認して上空から簡易ガスマスクの作り方を伝授し、劣悪な環境下でも活動できるように装備を整えさせる。

 

 まさか空っぽの業務用の次亜塩素酸ナトリウムを主成分とした塩素系漂白剤のケースと透明のマジックテープ、スポンジでガスマスクができるとはこの場にいる誰もが想定していなかったようで物品を持ってきた時の怪訝な表情が意図を理解した途端に納得しているような表情になる。

 

 1つを駒ちゃんに装備させて延命治療を計る。

 

 彼女はオークから受け取った服を纏い、先ほどよりは幾分かマシな格好にはなる。

 

 と言っても渡された簡易ガスマスクを被ったことで首から下はちょいえっちなのに、顔面が残念な事になっているジャックオーランタンのようだが。

 

 また投げ渡されたペットボトルには手を付けず、封だけ開けて眺めていると言った様子だ。

 

 

「いいね。ありがとう。これは良い武器だ。ありがとう」

 

 

 更にリストアップされた物品の中から更に〈ショットガン〉も受け取る。

 

 これだけの大混乱な現場なのだ。武器はゴロゴロと手に入るし、〈ショットガン〉は狙撃銃よりも入手は楽だったようだ。

 

 2連式のダブルバレルショットガン。

 

 これは良い。本当に良い武器だ。ほれぼれする。

 

 

「ご報告申し上げます! 指定のあった物品を目的地に配置が終わりました! 指示のあった物品の超過分は可能な限り地下へと移動も済ませました!」

 

「ご苦労様。では皆さん? 指定のあった地点に移動を開始いたしましょう。ほら負傷者に手を貸してやりなさい。防御陣を張れる魔術師の方々は手製のガスマスクを着用して、他の方々を内側に囲うに展開を。私の付き人は円陣の中央へ」

 

 

 指示でぞろぞろと魔族達が1つの生命体のように固まって移動を開始する。

 

 伝令の魔族がソワソワとしながら時折、チラチラ顔色を窺ってくる。

 

 ヘリウムガスでプカプカと浮かぶ風船のような私をオークが紐づけて引っ張ることで移動する状況に至っている、このみっともない移動方法に物申したいわけではないだろう。

 

 そうだ。ここからが正念場だ。

 

 

………

……

 

 




~あとがき~
 投稿時間ギリギリに執筆してしまったので、一方その頃イベントは無しになります。
 今年の最後の話ぐらい陽葵ちゃんもクラブ・ペルソナで『青空 日葵』の情報をちゅーちゅーされながら、ジュースをちゅーちゅーして過ごしてもらいましょう。

 さぁ、今年も残り4日ですね!
 来年も投稿はする予定です。(2024/01/03 or 2024/01/10には1本)

 みなさま、今年も『対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。』をご愛読いただき誠にありがとうございました!

 それでは良い年末を!
 オリ主も笑顔で皆さんを見送ります!
【挿絵表示】

 また来年お会いできるのを楽しみにしております!
 それではごきげんよう~!!!

 ところで来年は鹿之助くんの新キャラは登場するのかな?出て欲しいですね。出て欲しいです。NTRして作者の脳に火をつけて欲しい。燃え残った(理性の)すべてに。でもふうまとくっつけられてしまうと本当に私の脳が壊されるのでまたNTR系がいいですね。純愛やめて。

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