対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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~ご挨拶~
 今年も新年あけましておめでとうございます。
 既に新年開幕と同時に色々見舞われておりますが、私は無事に生き長らえております。

 ひとまずは本編をどうぞ。




Episode168 『作戦は奇をもって良しとすべし』

 

…………!(アレクトラ様!) ……!(あれを!)

 

……、……。(ヤツが『青空 日葵』か)

 

 

 球体上の端。

 

 壁の向こう側で部隊を展開するアレクトラ部隊との初顔合わせを行う。

 

 

……。(はい。)……………………。(報告書にあった通りの似顔絵です。)………………、……………(ですが、どうして魔族に)………………?(囲われているのでしょうね?)

 

……!(ふんっ。)……………………。(そんなこと私の知った事ではない。)………………(『ブラック様の能力で)………………(浮かせられているところを)………………(地元民に捕えられた』)………………(その程度の実力だっただけだ)

 

……………………(狙撃銃も所持していますが……)

 

…………。(所詮は人間の娘。)………………。(多勢に無勢だっただけだ。)…………(実にくだらない)

 

 

 などと壁の向こう側で会話でもしているのだろう。

 

 私達を捕えている壁は、あらゆる音も遮断しているようだ。

 

 しかし五車学園の洋館事件で、コロ先輩から〈読唇術〉を鍛えあげられた私に死角はない。

 

 伝令の魔族が位置情報を教えてくれたアレクトラという部隊長の姿には妙な既視感があった。

 

 彼女に似ているキャラを例えて表現してしまえば、葬送のフリーレンに登場する断頭台のアウラをベースとして、髪の毛を明るい鮮血のような赤毛にして、下半身の露出度を限界まで高め紐ショーツ1枚のみのヘソを囲うように淫紋のある痴女と言った方が伝わりやすいかもしれない。

 

 手には身の丈以上の大鎌のような形のハルバードを持っている。

 

 キリッと吊り上がった目尻や威風堂々といった態度。こちらを嘲るときに見せた顎をしゃくっての笑みから、彼女の気の強さも感じ取れる。

 

 そして彼女の胸は爆乳だが、五車学園の蛇子ちゃんや陽葵ちゃんよりは小さい。

 

 上には上がいるのだ。魔族と言えども胸のレベルは五車学園勢には敵わない。

 

 

「それではみなさん。ラストスパートです。私が指示するのと同時に魔術師の皆さんは人類史におけるローマ軍の歩兵戦術テストゥドを組んで下さい」

 

「……?」

 

「あー……テストゥドを存じ上げない? 人間の方もいらっしゃるので伝わるかな……と思ったのですが……。比喩がマイナー過ぎました?」

 

「…………」

 

「ゴホン。要するに、私や他の方々のように魔法盾が使えない者ののために全員をすっぽり覆えるドーム状の防御盾を張ってほしい訳です」

 

 

 アレクトラ部隊を目前に身振り手振りでフードを深くかぶった魔術師——カルティスト候補生たちに指示を送る。

 

 しかし反応としては悪く、いずれも何故そんなことをしなければならないのかよくわかっていない顔をしている。

 

 

「………………まぁ。できなければ、脱出を目前にしてこの場にいる全員死ぬだけですが

 

 

 淡々と結論を説明する私に、この場ではなんの役にも立たない魔族達が魔術師たちのケツを蹴り上げて詰め寄る。

 

 私が指揮するよりも肉体言語を含んだ詰め寄りは実に効果的だったようで、何故そんなことをしなくてはならないのか分かってはいないが実行することだけは渋々、承諾してくれる。

 

 

「よろしい。これより脱出の最終作戦に入ります。魔術師の皆さんは私の合図————背後にいる赤毛の牛みたいな痴女の魔族に対して発砲したら即座に防御陣を展開してください。その他の魔族の方々は魔術師の方々の耳を塞いで、合図もお願いします。腕が複数本ある方は自分の耳じゃなくて魔術師の耳の保護を優先してください」

 

 

 背後をチラリと見やる。

 

 アレクトラ部隊も私達の一団が何かをしているのは確認しているが、何をしようとしているのかはまだ把握は出来ていないらしい。

 

 ただし何か起きても、壁が消失したのと同時に私を取り押さえられるような配置についていること。またアレクトラの部隊も壁の破壊に専念し始める。

 

 ああ。それでいい。

 

 愚直に(目標)を目指して突き進んで来ればいい。

 

 そのまま動くな。理解に至る前に死ね。

 

 

な、なぁ?」

 

 

 肩にかけたライフルに手を伸ばしたところで、足元から最初に共闘を申し出てきたオークの声が行為を遮る。

 

 なんだ。

 

 これから《魔物を捕えし見えざる球(ナーク=ティトの障壁の創造)》破壊のに入るというのに……。

 

 

「別に俺はアンタの作戦にケチをつける訳じゃないんだが、今アンタが説明した作戦だとアンタはオレよりも高い位置にいる。デカいオレは屈めがめばコイツ等が展開するドームの中に入れるけど、オレよりも高い位置で宙に浮いているアンタは入れないんじゃないか……? 今までの様子から、どんなに引っ張っても一瞬しか地面には下りられないんだろ?」

 

 

 ああ、良い質問だ。

 

 オークによる疑問は、部隊の全体内の数人を動揺させるだけの十分な揺さぶりをかけるだけの発言力を持っていた。

 

 さて、彼等がどのような魂胆にせよ。これである程度、二重スパイが誰かまでは判明したな?

 

 だからこそ、私は何事もないかのような屍山血河を築いたときのような快活な笑顔をにんまりと浮かべる。まるで死など恐れていないかのような、背陣のアレクトラのような自信の表すように。

 

 

「それが何か問題ですか?」

 

「え? …………いや、よ……でも、よ? ……え……?」

 

あなた方の目的は私に協力して生き残ること。その結果さえ得られれば、私が生き残ろうが死のうが関係のない話でしょう? だから——どうでもいいでしょう。そんなこと」

 

 

 吐き捨てるような言葉を足元の集団へ投げて、ライフルを構える。

 

 先ほどの揺さぶりで動揺しなかった連中のうち、追加で更に何人かが動揺する。それは〈心理学〉など不要な程には。

 

 

「——」

 

 

 潜り込んでいたスパイが動くよりも先に〈ライフル〉のトリガーを引く。

 

 目標物は直線距離の200ⅿ先にあるブタンガスの集合物だ。

 

 問題ない。

 

 『CALL of CTHULHU クトゥルフ神話TRPG』68頁 “長い射程” に基づいて、有効射程範囲内だ。

 

 

ざまぁみろ(・・・・・)だ」

 

 

パァーンッ!!!

 

——キンッ!

 

 BOOOOOOOOOOOMMMMッ!!!!

 

 

 〈ライフル〉の狙撃が目標物に直撃。

 

 ガスの集合体に火花が飛び散って無事に起爆。激しい爆発。

 

 爆発他の爆発物を誘爆させ効果の影響範囲と爆発威力を底上げさせる。安全圏である私達から約2ⅿ範疇を除く一帯の建造物やら地元住民、高位魔族もろとも吹き飛ばす。

 

 例え建物を遮蔽や掩蔽にしたとしても爆心地から半径165ⅿ範疇は何処に逃げても無意味だ。

 

 期待値で考えたとしても、これは神格ですら強制的に退散させるほどの高威力。

 

 間違いなく人間風情に2度も泣かされた蛇子ちゃんと桃色髪の痴女は消し炭だろう。

 

 

 今度こそ——さようなら、蛇子ちゃん。

 

 

 さて……。エドウィン・ブラックこれにどのような対処をしてみせるのだろうか?

 

 こちらの目論見通り抹殺することが叶えば御の字なのだが……。

 

 ブタンガスへの射撃による反動と爆発の衝撃波で、サマーソルトでも繰り出したように私の視界はひっくり返る。

 

 反転しながら手際よくボルトアクション〈ライフル〉の再装填を行い、突然の爆風に呆気に取られているアレクトラ部隊——逆さまの視界で大将首である彼女へ向けてそのままトリガーを引く。

 

 

パァーンッ!!!

 

 

ガァッ————?!

 

「アレクトラ様!?」

 

 

 Critical(クリティカル) Hit.(ヒット。)

 

 ライフル弾は彼女の眉間————ではなく。

 

 左側の角に突き刺さる。

 

 まだ彼女には、ここで死んでもらうわけにはいかないのだ。この場では角への衝撃で脳を揺さぶり動きを止める程度に留めなければならない。

 

 こちらの計略通り彼女は顎を殴られたボクサーのようにガクンと両足の膝をつく。指揮官が狙撃されたことで周囲の部下の足並みが一時に崩れる。

 

 指揮官を守るために駆け寄る者。壁の消失を把握した者。指揮官がやられたことで戸惑う者。壁が無くなった事に驚く者。

 

 これから起きる事象(・・)を知っているのか、逃げ出す賢い者もいるが——()()()()

 

 魔族ならば地獄の業火に焼かれたことはあるか?

 

 ん?

 

 さぁ、死ね。

 

 消し炭の時間だ。

 

 

「青空ちゃん!!!」

 

「あぶねえっ!!!」

 

 

 アレクトラ部隊-最後のあがきを確認したところで、突如として浮遊感が消失し自由落下を得る。

 

 なるほど。これはエドウィン・ブラックは爆発の後の悲劇(・・)がきっかけで力尽きたと考えることもできるだろう。

 

 良かった。

 

 このまま一生、3ⅿ上空に浮いた状態の人生など考えたくもなかった。

 

 ただでさえ五車学園では周りから浮いているのに物理的にまで浮いていたら、そのうちどこかに飛んで行ってしまうところだった。

 

 

 ともかく。

 

——この勝負はもらった。

 

 

 勝ち誇る私を他所に、落下姿勢はジャーマンスープレックスを掛けられた人のような姿だったが、私の真下に居たオークと駒水ちゃんがキャッチしてくれたおかげで硬いコンクリートに頸椎を打ち付けるには至らずに済む。

 

 私が1人と1匹に抱えられた途端に、上空へ青白いミズクラゲの傘に見たこともない文字がつづられた半透明の盾が展開される。

 

 

「来ますよ! ここが正念場です!」

 

 

 まんぐり返しの不自然な姿勢のまま抱きかかえられた状態で声を張り上げ、魔族達を鼓舞する。

 

 格好が決まらないなぁ……。

 

 

ゴォォォオオオオオオッ————

 

 

 

カッ!

 

 

 

 少し遅れてフラッシュ・バンのようなまばゆい閃光と同時に、衝撃波が可視化されたかのような龍状の赤い波が防護壁の外へ襲い掛かる。

 

 あれはバックドラフトだ。

 

 バックドラフトとは、熱された一酸化炭素に急速に酸素が取り込まれて結びつき、二酸化炭素への〈化学〉反応が急激に進み追加の爆発を引き起こす科学現象。

 

 飲み込まれた人物は魔族とはいえど、ただでは済まされない。激しい熱風が表皮や肺を紙のように焼き尽くす。

 

 伝令の魔族が教えてくれた朧忍軍も、この事象を知らなければ何人かは犠牲になって混乱状態にあるはず。

 

 生き残れるのは爆心地から166ⅿ以上離れている地下に避難した奴と、私たちと行動を共にした奴以外には居ないだろう。その他に生存者が居たとしても今頃、地中深くでモグラのように震えて隠れているに違いない。

 

 防御盾内の魔族達は追加の閃光と爆発に対して恐怖しおののく。

 

 魔術師たちは炎の龍に飲み込まれないようにと必死に詠唱を続ける。

 

 駒水ちゃんはひっくり返ったままの私を抱きしめ続ける。

 

 伝令役の魔族は震えながら祈るように私の手をかたく握る。

 

 オークも駒水ちゃんに習って覆いかぶさるように抱きしめてくる。

 

 お前は抱き着くな!気持ち悪いっ!

 

 

「お前は抱き着くな!やめろバカ!退けよッ!臭いんですよ!このデブゥ!!!」

 

「くさい!? デブぅ!?」

 

 

 〈近接戦闘(格闘)〉による銃底での殴打で覆い被さっていたオークが、もぞもぞとノロノロとした動きで離れていく。そこに私の〈キック(あしげり)〉も混ざる。

 

 しかし奴としては気にすることもなく、学内でいじられる年下のように身をよじらせるだけで反撃してくる様子は見せない。

 

 むしろ私の暴言の方がよほど傷が付いたような顔をしている。

 

 オークが私から離れたあたりで、バックドラフトは消失していた。

 

 

「魔術師部隊! 防御壁を解除!」

 

 

 声を張り上げて身を守っていたドームを解除させる。

 

 そのまま魔族達を掻き分けるように押しのけて、閉じ込めていた円球体の壁があった場所に手を伸ばす。

 

 

『…………』

 

 

 魔族達は食い入るように生唾を飲み込み、立案した作戦の行く末を見守る。

 

 まぁ、既にアレクトラに対して狙撃が通った時点や私達が何事もなく呼吸ができていること、バックドラフト現象が起きたことを考えるなら間違いないだろうが……。

 

 

「——ご照覧あれ」

 

 

 手を伸ばすのをやめて微笑みの表情を浮かべ、身体を使って壁が消失したことを指し示す。

 

 背後にいる彼等の方へ振り返って、リズミカルなバックステップを踏み国境線を跨ぐように境界線を越える。

 

 一時的な私の忠実な(しもべ)達に、これ以上のない報酬として目標の達成を知らしめる。

 

 

「ぉ、ぉぉ……。おおお……っ!」

 

 

 私に続くようにして幾人かの魔族が外側へと歩む。それはまるで生者へとにじり寄るようなアンデッドのような足取りだ。

 

 やがてそれは水面に滴った水滴が作り出した波紋のように次々に他の魔族達にも伝染していく。

 

 生を実感し、振り上がる拳、湧き上がる歓声。

 

 無事に小目標達成と言ったところだ。

 

 




~途中経過、生還報酬~
 正気度報酬 1D6
 新クトゥルフ神話TRPG 選択ルール:幸運ポイントの回復(95頁)
 成功した技能の成長ロール


~一方、その頃……。~
 今年もいつもの3組の一方、その頃はおやすみです。
 陽葵ちゃんも、紫先生も、鹿之助くんも三箇日ぐらいはゆっくりと休んでね。
 てんやわんやするのは現実だけで充分だから。


~あとがき~
 心苦しいのですが、皆様にお知らせがございます。
 これより作者は多忙に追われることになるのと執筆環境が危ぶまれる状況となりまして……。

 一旦、『対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。』を休載とさせて頂きます。

 ただし無期限の休載にすると作者が音信不通になることは見えているので、時期を決めての休載です。【再開】は今年の抱負でもあります。

 本小説は2024年06月12日の17時34分 or 20時37分には「投稿」もしくは「活動報告」で現状のお知らせをさせて頂こうと思います。
 それまで約半年間の別れとなってしまいますが、気長に続きを待って頂けたらなと思います。

 次回は新章です。東京キングダム編は3章仕立てにします。
 200話記念も何かやりたいですね……。

 それはそうと去年『そろそろ新鹿之助くんが欲しい』とは言いましたけど、本当に【正月】水城不知火で鹿之助くんが竿役の回想がくるなんて聞いてないんですけど?新年早々にNTRをぶち込んでくるの止めてもらえます???脳が無事に破壊です。
 2024年、超波乱ですね……。
 超五車祭では新規限定五車系SRが21人も手に入るし、本州全体が揺れるほどの大震災が2024年1月1日の元日に起きるなんてマ?
 1月2日には航空機事故も起こるし……。


〜よだん〜
 蛇足とも言います。
 新年早々にオリ主が大爆発を引き起こしましたが、具体的な数値は神格:アザトース(6版)の初期ステータスを上回る300越えのダメージ火力を叩き出しております。

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