対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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☆ざっくり前回までのあらすじ。
 夏休みに突入し、なお先輩とコロ先輩を筆頭する五車学園3年生の皆様方に対魔忍世界転移時に所持していた書物の言語解析を頼む。
 残念ながらわからず鬼崎きらら先輩を敵に回しつつ、東京キングダムでスネークレディのツテを使うことで言語の解析を行うことに。

 東京キングダムにて
 対魔忍世界のラスボスことエドウィン・ブラックとついに邂逅。
 されど言語解析について僅かな客観的情報を与えられた程度で、文脈を滅茶苦茶に入れ替えた写本は奪われてしまう。
 脅されても応じなかったことから実力行使に晒された挙句、輪姦されかけるも探索者の身体的技術やクトゥルフ神話TRPGにおける竹刀で、敵対してきたスネークレディをしばき倒す(2度目)。

 事態として最悪な事に五車学園で“転校”していったはずの駒水ちゃんが、人質作戦として現れるも無事(?)に奪還を済ませる。

 前座のスネークレディをボコした(2度目)ことで総本山と対峙する釘貫神葬。
 流石、ラスボス。重力を操る力には敵わず捕縛されてしまうが、同時に何者かの手によって高位魔族一同と探索者は球体上の強固な檻の中に閉じ込められることになってしまう。

 爆発と火災によって酸素が徐々に奪われ死が差し迫る中、重力拘束に囚われながらも、東京キングダムでの振る舞いで得られた〈信用〉を駆使して釘貫神葬は地元の魔族や傭兵を顎で使って脱出の算段を練る。
 最終的に起死回生の大爆発で障壁から逃れるのだった。

 余談として、大爆発に巻き込む形でスネークレディをシバき(3度目)、念入りにバックドラフト現象でエドウィン・ブラックと褐色肌桃色髪の痴女も焼いたと思われる。

☆一方その頃……。
 対魔忍勢である八津紫と、日ノ出陽葵、上原鹿之助、ふうま小太郎、相州蛇子は東京キングダムへ観光旅行へと言い出した問題児の調査、同行未遂、回収のため東京キングダムを東奔西走する事態になっている。

 ……魔族を率いていることなどつゆ知らず……。





23章 『家に帰るまでが遠足です』
Episode169 『烏合の衆』


 円球場の牢獄からの脱出による喜びのおかげで、魔族の注意が私から外れる。

 

 注目から外れている間に、既にこと切れてしまっている負傷したオークを背負い上げる。

 

 当然これも定番と化した肉盾装甲、そして脱出のために必要な材料だから背負っている。

 

 でもなければ死骸とはいえ、汚らしいオークを背負うはずがない。

 

 

「大将!」

 

 

 オークの亡骸を背負い、駒水ちゃんの手を引いてこの場から脱そうとする私に誰かが呼びかける。

 

 

「この女、まだ生きてます! どうしやす?」

 

 

 ふと視線を向けてみれば、焼死体となった配下に辛うじて助けられたアレクトラが両脇を抱えられる形でパワー系の魔族に引きずり起されている。

 

 彼女の瞳は、まるで彼女の故郷を焼いたかのような兵士に向ける復讐の炎で激しく燃え上がっている。

 

 ここで野放しにしておけば、確実に彼女は報復にやってくることだろう。

 

 この場合、彼女をここで殺すのが正解だ。

 

 しかし部下を犠牲にしたとはいえ、腐ってもバックドラフトを耐えた女魔族。これまでの東京キングダムの経験を活かして考えるならば、部隊長という立場から彼女も高位魔族の可能性も否めない。

 

 であるならば。きっと殺すのにも時間が掛かりそうだ。

 

 

「柱にでも縛り付けておいてください。バックドラフト現象に耐えた彼女です。手負いとはいえ、念入りに鎖で雁字搦めにです」

 

「へいっ!」

 

 

 指示通りに彼女は適当な電柱に縛り付けられる。

 

 相当に恨まれているらしい。

 

 縛られている間にも怒りに狂う2つの(まなこ)が私を捉えて離さない。

 

 その復讐に燃え狂うその目はかなり私好みだ。ぜひ手持ちのナイフで両目を繰り抜いて戦利品として持ち帰りたいぐらいだが……。時間が惜しい。

 

 

「おー、こわいこわい」

 

 

 身震いをしながら死骸のオークを地面に降ろして、壁のチラシを破り捨てる。

 

 それから仮にエドウィン・ブラックが生き残って彼女を見つけた時の文章を書き始める。

 

 破けたチラシの面積も小さいこともあり、なるべく煽らないように配慮しながら痛み分けということにしようという意味を込めて一言だけ記す。

 

 お手製簡易ガスマスクを脱いでいる魔術師のガスマスクにチラシの裏を丸めて放り込み、そのまま視界を塞ぐようにアレクトラに被せる。角がガスマスクを被せるのに邪魔ではあったが、適当に彼女の武器であるハルバードで穴を開けたらちょうどいい感じになった。

 

 

「ヴ~~~ッ!!!」

 

 

 簡易ガスマスクを被せられた彼女から不明瞭な唸り声が響く。

 

 

「ああ、ええと。弁明させて頂きますけど、辱しめようとか悪気はないのですよ? これから逃げるのに逃げた方向を見られるのは困るなって思いまして……。あの、頭の中に一緒に入れた紙は手紙なので、エドウィン・ブラックさんがお戻りになられたらお渡しをお願い致しますね?」

 

 

 今にも鋼鉄製の鎖を引きちぎって飛び掛かって来そうなアレクトラから、あとずさりしながら離れる。

 

 てか鎖がミシミシ実際に引きちぎれそうな音が聞こえてきているし……。

 

 高位魔族こわーい。

 

 さぁ、さっさとオークの死骸を回収して逃げなければ……。

 

 

「…………」

 

「……おおっと?」

 

 

 背後にはいつの間にか魔族達が弧を描くように私を取り囲んでいた。

 

 弧の中には駒ちゃんも居て、逃げられないよう彼女の肩に手を——

 

 

「…………」

 

 

 ……彼等は生き残り、目的は果たした。

 

 アレクトラ部隊を撃破してコイツ等がエドウィン・ブラック側につかないように時間稼ぎをするつもりだったのだが……。

 

 アレクトラが生き残っていたことによるゴタゴタで番狂わせ、私の予定が狂ったと考えるべきか。

 

 彼等は弧を狭めて寄って来る。

 

 その出方に合わせて、こちらも西部劇でホルスターからリボルバーを引き抜こうとするガンマンのように、ゆっくりと左手を手斧の近くまで持ってくる。

 

 

「おいおいおいおい!怖い顔すんなよ!ビビッて漏らしちまうだろうが!」ブチチチ

 

「うわはwくっせぇ!マジで漏らす奴があるかよ!w」

 

「アンタを信じて良かった!!!やっぱ人は見かけに因らないんだな!」

 

「ここまで来たんだ!ここで寝返ってブラックの野郎についても、どうせ俺達は使い捨ての駒さ!大将を裏切るわけねえだろ?!」

 

「てか、このタイミングで大将を裏切るやつなんか居るのか?」

 

「……。居たとしても数秒後には死んでいるだろうな」

 

 

 こちらの殺気を察して、必要以上に魔族側が誤解を解くために過剰に笑い始める。

 

 わざとおどける者。脱糞する者。称賛してくるもの。なれなれしい態度を示すもの。

 

 駒ちゃんに対する態度も、あくまでも彼らなりの親しさを込めた表現であったようであり、人質ではないことを示すように彼女を押し出して私の元へ返してくる。

 

 

「さぁ、大将。負傷者を背負って居たってことは、脱出して終わりじゃないんだろ?」

 

「俺達はどうしたらいい?」

 

「指揮してくれよ」

 

 

 当初の目的である捕縛から解放されたのだから、自由にどこでも行けばいい話だろうに。

 

 当然、この場で私の指示を仰いでいる魔族の中には最初のオークも居るし、伝令の魔族も居るし、何だったらブラックと内通しているであろう魔族も混じっている。

 

 どいつもこいつも自分の野望で目を陽葵ちゃんみたいにキラキラ輝かせやがって……。

 

 片目を瞑って、片手で後頭部を掻く。

 

 私としてはこのまま駒ちゃんを引き連れて東京キングダムから脱出できればそれで充分なのに……。

 

 

「ひとまずここで立ち話するのは危険です。離れますよ」

 

 

 魔族達を掻き分けて、オークの死骸を背負い片手で東京キングダムの地図を開く。

 

 一瞥する形で、走ってついてくる魔族の集団を見やる。

 

 まるで百鬼夜行のようだ。

 

 逆に目立つから散ってほしいのだが、素直に聞いてくれる未来が想像できない。

 

 

………

……

 

 

 

「……そろそろ、いいですかね?」

 

 

 ある程度、突破地点から離れた丁度良さげな裏路地に逃げ込む。

 

 ちょっとした短距離走で何人かの魔族を撒けると思った私はおろかだった。百鬼夜行は未だに継続している。

 

 駒ちゃんは途中から最初のオークに抱えられる形でちゃんとついてきている。

 

 

「さて、私としてもこんなことを告げなければいけないのは大変心苦しいのですが……。分散しましょう。それがお互いにとって最も安全にこの場から離れられる私の指揮になります」

 

 

 私の指示に何名かの魔族が驚いたかのような声を漏らす。

 

 

「そちらの伝令さんのお話によれば、朧忍軍なる集団が周囲へ展開していると聞きました。これは私の推測になりますが、その忍び共は無事に籠の中から逃げ出した私や皆さんを〈追跡〉してくると思われます」

 

 

 適当な地面に死骸を寝転がし、立ったまま話を聞く魔族達と目線を合わせるために適当なゴミ箱の上に座って話をする。

 

 

「捕まれば必然的に籠の中で何かあったのか、尋問されることになるでしょう。当然、私についても尋ねられるはずです。あなた方が素直に答えようが、秘密にしてくれようが最終的には同じ末路を辿ると思われます」

 

 

 死を仄めかしつつ、敢えて明言はしない。

 

 

「だ、だったらよぅ。分散なんかしないで俺達で一致団結した方が……」

 

 

 魔族の言葉にニヤリと笑って見せる。

 

 そう考えるのが至極当然な発想だ。

 

 確かに纏まっていた方が接敵した場合、生存率は高くなるだろう。

 

 

「よっこいしょういち」

 

 

 

 ひと休憩していたゴミ箱から降りて、蹴り倒す形でゴミ箱の中身をひっくり返す。

 

 内容物がぶちまけられ、ビニール袋で纏められたゴミやそのまま放り込まれたであろう生ごみが足元に散乱する。

 

 

「さて。例え話をしましょう。私達が地面に散乱したゴミと仮定します。このゴミ箱へ素手で片付けるとき、散乱したゴミと纏められたゴミどちらの方が片付けやすいでしょうか?」

 

 

 この場におけるゴミとは私達の事。ゴミ箱は尋問部屋、そして片付ける私の姿こそエドウィン・ブラックに仕える朧忍軍を指し示している。

 

 ビニール袋で纏められたゴミは、私達が集団で固まった時の未来の姿。

 

 確かに集団で固まった方が全員捕縛するならばある程度の力を必要とするが、今の私達は烏合の衆。ひとつまみするだけで、ゴミ箱の中へダストシュートすることなど何の造作もない。これはそれだけ相手側も強大で敵わないことも指し示している。

 

 一方でその他の散乱した生ゴミは、私達が分散した時の未来の姿。一つ一つつまみ上げながらゴミ箱に戻していく。しかしゴミ箱に戻す時間は纏められたときと比較して時間はかかる。

 

 …………でも、分散したところで片付け人の数は向こうの方が多いことを踏まえると、分散してもしなくても然して変わらないのは内緒の話。

 

 しかし私としては分散した方が都合がいい。秘密を公言しない自由を行使することでこの場にいる魔族達を〈言いくるめ〉る。

 

 

「如何でしょう? 分散した方が生存率は高いことは理解して頂けましたか?」

 

「……」

 

「ではここで分散と致しましょう。互いの生存率を高め合うためにも」

 

「…………」

 

「それにご存じの通り、私はただの人間の小娘。一般人でございます。あなた方を統べるほどの器ではございません」

 

 

 率いてきた烏合の衆へ、うやうやしく頭を下げて解散を促す。

 

 私の言葉に何人かが離れていくのをきっかけに。

 

 ばらばらと、砂糖の塊が紅茶の中で溶けるように散っていく。

 

 




あとがき
 6か月間休載している間に怒涛の変革だらけですね!
 対魔忍RPGエクスタシーはサービス終了するわ、対魔忍RPGのプレゼントコード付きの放送はなくなるわ、スネークレディ(2枚目メイド姿)が現れるわ、のぞみくんのメイド姿が現れるわ、私が対魔忍RPGを開始してから1000日目を突破するわ、最近だと五車祭で天音CQCで前列と後列の概念が搭乗する等など。
 少しばかりいなかっただけなのに色々なものが変わっていく……。

 さて、本小説の再開の目途につきましてですが……。

 もうしばらくお休みを下さい!
 東京キングダム編、今年中に終わりますように……!

 そして不定期更新にはなってしまいますが、チビチビという形で本シナリオを書ければいいなと思っております。
 あまり芳しくない報告で申し訳ございません。よろしくお願いいたします。


ねえ!ところで鹿之助くんの新カードはまだなの!!!?いつでも課金できるように準備万端なんですけど!?!!?!?
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