対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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~まえがき~
 待ってくださった読者のみなさんお待たせしました!
 久しぶりに執筆再開しているので、また形式が初期状態に戻っています。
 見づらかったら、ごめんなさい。
 これまでのあらすじについては、前回Episode169の前書きをみたほうが早いと思います。




Episode170 『ひと休憩』

「…………さて、と」

 

 聞き分けのよい魔族達はすべて私達の元から去って行った。

 邪魔者が居なくなったところを襲撃するつもりなのか、内通者共が少し離れた位置で様子を伺っているが問題はない。

 この場に残されたのは駒水ちゃんと私、そして死後硬直が始まったオークの死体が1つだけ。

 裏路地で背中を大きく伸ばして背骨の音をパキポキと軽快に鳴らしながら、夜空を見上げる。

 上空に浮かぶ1等2等の星々ギラギラと明滅している。なんて邪悪で恐ろしい星々の瞬きだろうか。

 

「サッサと離れますよ」

「う、うん……」

 

 “マダム”から受け取った地図を片手で開いて、なるべく屋内を通るルートを選び追手を撒こうと攪乱行為に走る。

 目指すは東京キングダム大橋だが、恐らく封鎖……もしくは規制線か検問所が張られているに違いない。つまり今の私達がその地点もしくはその地点に至る道を突破するのに新しい身分証と顔が2つ必要ということになる。

 しかしその件については、問題はない。あの《魔物を捕えし見えざる球》から脱する時点で作戦は練ってあるのだから。

 

………

……

 

「……はぁっ、はぁっ、……はぁっ。ま、待って、青空ちゃん」

 

 東京キングダム大橋まで残り1/3の距離を切った所で駒水ちゃんが先に根を上げる。

 こちらとしてもオークの死骸を背負っているため、容易に背後を振り向けない。だから180度身体を反転させて駒水ちゃんの方を確認することになる。

 彼女は身体をくの字に曲げて両手を両膝に付けて息を上げていた。

 流石に着の身着のままの一般人といえど、少し走らせ続け過ぎたか。それについ先ほどまで彼女は危機的状況にいくども直面したのだ。精神的な疲労も大きいに違いない。

 

 推測にしか過ぎないが、恐らくこの事態もエドウィン・ブラックの計算のうちなのだろう。

 私は駒水ちゃんという友達を、最終的に切り捨てることができなかった甘ちゃんだ。

 だからこそ、あえて駒水ちゃんという人質を護衛しながら逃げる分だけ、私の逃避行は鈍いものとなる。

 

 だが彼も桃色髪の痴女もろとも大爆発に巻き込まれた挙句に、バックドラフト現象で焼かれたのは想定外だったに違いない。幾分か先手は打てていると信じたいが……。

 

「すみません。……どこかで少し休憩しましょう」

「……ごめん……ごめんね。足でまといだよね……」

「いいえ、そんなことないですよ。お気になさらないでください」

「でも…………」

「——私は」

「……?」

「駒ちゃんが私の味方でいてくれるからこそ、油断しただけで闇に呑まれてしまう街で人としての矜持を保つことができているのです。これは気休めではなく、味方である駒ちゃんの存在を本当に欠かせない存在だと思って言っています」

「…………青空ちゃん……」

 

 洋館事件の時に陽葵ちゃんを励ましたときのような笑顔を浮かべ、駒水ちゃんに自分の存在価値への自信を持ってもらう。

 本来であれば、オークの死体など投げ捨てて彼女を背負って行軍を再開した方が早いかもしれないが……。突然のアンブッシュを考えるとこの肉盾は捨てられないのだ。

 

 途中で適当なアパートに侵入して出入り口を封鎖する。

 駒ちゃんには出入り口で待機してもらい、私が先行して〈近接戦闘(格闘)〉で住民妨害者の露払いを務める。

 短い時間だが休憩のために腰を落ち着ける必要があるのだ。これまでに追手を撒くためだけに建物内の住民を刺激するようなやり方は避けていたのだが……話が変わった。

 音もなく接近する〈隠密〉行動で背後から、住民邪魔者の頸椎を銃床で砕く。この街にいるのは、どうせ生きていたところで他人に迷惑をかけるような奴だ。悲しむヤツが居たとしても、弱肉強食のこの世界で淘汰される定めにあっただろう。

 

 いやはや、あのオークが拾ってきてくれた“エドウィン・ブラック派閥”のライフル銃は素晴らしい。このボロアパートで一族郎党皆殺しにしなくとも私が邪魔者を始末したという証拠は1%とも残らず、この武器で何人か殺すことで疑念と恨みは全て彼等の派閥へと仕向けられる結末が約束されている。

 

 転がった死体は適当な物置や納戸へ〈手さばき〉で見つからないようにして、騒ぎが大きくならないように努める。ときどき住民犯罪者の持つ大型ナイフで頭部を寸断する。頭部は踏みつけ、アメリカンフットボールのように蹴り転が(〈キック〉)してボットン便所の便槽へ沈める。犠牲者にさぞ憎しみがある者の犯行に魅せかける。

 血濡れた通路を適当な衣服で簡易的に掃除を済ませ、入り口に戻り彼女を誘導する。

 

「見てください…………どうやら誰もいない……。きっと留守なのでしょう。〈幸運〉(ラッキー)ですね! どうぞ、駒ちゃん。そちらの椅子で少し休んでください」

 

 彼女を怖がらせないようにと、二酸化炭素を吐くように嘘をつく。

 彼女のために整えた休憩室で彼女をフカフカのソファーへと座らせる。

 彼女はまるでクタクタとでも言いたげな動きでソファーに座る。身体が沈みこんでしまい、アレではしばらく自分の意志を持って立ち上がることはできまい。

 疲労感からか注意力が散漫になっていて、私がこの部屋の持ち主に住み着く邪悪な魔族を強制退去させ、今はバスタブの底で沈んでいることにも気づいていないようだ。

 

 食いかけの夜食が乗せられたままの机に荷下ろしを済ませ、さっそく工具を用いて破壊された〈改造した釘打ち機〉の調整に入る。

 先祖の方針で、私の一族は年端も行かない子供の頃から〈改造した釘打ち機〉の扱いを身体に叩き込まれている。今の私にとって解体、修理、組み立ての工程など九九を暗算するようなものだ。

 

——落ち着いた場所で36秒もあれば、ほら元通り。

 

 これなら鹿之助くんとまえさき市に遊びに行く前夜の服選びの方が複雑で難しかった。

 

 そんな様子を駒ちゃんは社会科見学に来た小学生のように食い入るように見つめている。

 その手には、あのオークから貰った未開封のペットボトル水が握られたままで。

 

「……飲まないのですか? 汗も沢山かいてますし、水分補給をした方がいいですよ」

「え、あっ、う、うん」

 

 私の言葉で思い出したように、パキュリと封が開封する。そのまま彼女は1口、2口と水分を摂った。しかしすぐに口を離して私の方を見る。容器にはまだ400mlも残されたままだ。

 

「もっと飲んだほうが良いです。この後も長距離移動することになりますし、熱中症で倒れられてしまうと……そちらのほうが状況として、とても困ります」

「…………えっと。あの……青空ちゃんも……」

 

 飲みかけのペットボトルが差し出される。

 

「……いえ、私は遠慮しておきます」

「そ、そう?」

「ええ」

 

 元は未開封品で別段毒入りでもなかったことは確認できたが、ペットボトルがオークから差し出されたものに手を出すことに嫌悪感があった。

 それに私はこのあとの現地調達の際に適当な水道で水分補給を済ませればよい話であり、わざわざ駒ちゃんから水を分け与えられる必要性を感じられなかったことにある。

 しかし少し気になることもある。水分補給を拒否したとき駒水ちゃんの表情が少し曇った。

 〈心理学〉上、それは残念も喜びともどっちつかずな顔色だ。私に対する怯えでもなければ、失望でもない。だからと言ってブラックのブラックホール時のような色ボケ的な表情でもない。まだ何かを迷っているような、口ごもっているそんな顔だ。

 

「…………」

「……」

 

 ……友達へこういう〈威圧〉する(おどしをかける)ことは大変よろしくないが——

 

「……おっと」

 

 ザクッ

 

「!」ビクッ

 

 拾ったファイティング・ナイフをうっかりを装って手からこぼれ落とす。

 落ちた中型ナイフは床で残飯をかじるネズミの頭部に吸い込まれるよう突き刺さった。

 

「あっ、あ……」

「あー、やってしまいました……驚いちゃいましたよね」

「あ、う、ううん。だ、だいじょうぶ。あ、あっ、青空ちゃんも疲れてるんだね」

「みたいですねぇ……足に落ちなくてよかったですよ。()()()()()()()()()()()()

「う、うん。き、き、気を付けてね……」

「はい」

 

 されど彼女も分かっているだろう。いまだにブラック側につくか気の迷いが残っているのだというならば、彼女にも敵対してきた魔族と同様の報いは受けてもらうことになる。

 足元で痙攣する——ネズミのように。

 裏路地にて私が彼女へみせた優しさや励ましの言葉は、あくまでも“私の味方”であることが前提条件だ。そこは嫌でも理解してもらわねばならない。

 この世界で友人を殺すのは初めての試みになるが、躊躇すればこちらがやられることは甘ちゃんでも理解できている。かつての世界では信じていた友人によって、邪神が招来され地球が滅亡しかけたこともあった。

 だがあくまでもこれは、一度は私を裏切った時の彼女への牽制。蝙蝠の選択肢や、二度目はない意思の表明。

 

「では私は準備があるので、駒ちゃんはここにいてください。こちらから合図するまでは、決して他の扉は開けないように。また窓にも近づかないでくださいね」

 

 身軽に行動ができるように荷物は部屋に置いたまま右手でファイティング・ナイフを逆手に持ち、左手でライフル銃を肩に乗せるように持つ。腰には完全復活した〈改造した釘打ち機〉を携えて部屋を出る。

 残念ながら連れてきたオークは、まだまだ盾として有用だが皮膚が硬直して使えなくなってしまった。これでは求めているものからかけ離れて、加工がしにくい。

 されどここは東京キングダムなのだ。

 このアパートにもまだオークの1匹や2匹ぐらい潜んでいるだろう。

 

………

……

 

 




~あとがき~
 対魔忍で学ぶR-15ラインを学ばせて頂いた『その対魔忍、平凡につき』作品と、最近ちょくちょく読んでいる大阪弁転移者『対魔忍転移憑依物語 綴木みこと』が更新され、
 転生者である雑賀孫一さんが登場する『転生対魔忍は平穏に生きたい』と同じ転生者である藤木戸=サンこと『ニンジャヘッズ・ウィズ・タイマニン』を読んで後遺症を覆すほどに創作意欲が爆上げ、湧き上がったので書きました。

 書き方と書式を忘れてしまったので私も初投稿です。
 でも評価はド・チキンになっておきます。

 本作品を待ってくれていた読者の皆さんも、ありがとうございます。
 やや復活です。無理せず毎秒週一で再開たいと思ってます。
 今日の所はもう一本投稿予定です。2237ぐらいかな?

 目標:今年中に東京キングダム編を終わらせるぞ!

 ………ところでまもなく200話達成するわけだけど、200話達成記念は何をしようか?
 実は何も考えてない上に、このままだとEpisode200を迎える方がはやいかもです。
 東京キングダムを半分以上占めているから、東京キングダム特集でも組もうかな……?

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