対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。 作:槍刀拳
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……
…
「館内放送してもらってありがとうございます」
「いいのよ。早くお友達が迎えに来るといいわね~」
東京百貨の店員さんに頭を下げ、蛇子と鹿之助の待つ待機室に戻る。
「な、なぁ、この方法なんかで日葵のやつ来るのかな?」
「鹿之助ちゃんがピンチの時は必ず颯爽と駆けつける日葵ちゃんだよ? 絶対に来るよ!」
室内では蛇子と鹿之助が用意されたパイプ椅子に座って足をブラブラと揺らしながら雑談していた。
周囲には親とはぐれた子供達の姿が殆どで、大人に近い俺たちが混じっているのは少し異質だったが鹿之助と蛇子は低身長なこともあって子供達からはすぐに受け入れられたようだった。
特に鹿之助は迷子たちから、ここ迷子センターにまつわる怖い怪談話をたっぷりと聞かされていた。聞きたがる割には話せば話すほど怖がるので、その反応が子供達にとってもハマったらしい。
「あっ、ふうまちゃん! おかえり~!」
「ふ、ふうま、お、おれ……子供じゃないのに、迷子でもないのに、迷子放送されて、今すっげー恥ずかしいんだけど……」
「我慢してくれ。俺達が青空さんと合流するには、これが一番手っ取り早いんだ」
「うぅ……だからってよぉ……」
涙目になっている鹿之助を、隣で蛇子が頭を撫でて慰める。
俺としてもこの手法は鹿之助の尊厳を粉々に粉砕してしまうことは分かっていたが、どういうわけか入れ違いになって青空さんを捕まえられない以上は彼女が犠牲者として失踪してしまう前に、合流して五車町に連れ戻すには最終的な手段を取りざる負えなかった。
まえさき市で鹿之助を正体不明の敵から救ったり、期末試験では恥を犠牲に蛮族スタイルで
一般人にしては暗闇に引き込まれた程度では簡単には拉致されてしまうような
しかし絶対無事という保証はない。
pipipipi……
「ん? 通信だ。誰からだろ? ふうまちゃん、日葵ちゃんがみえたら教えてね」
「わかった」
「蛇子です。…………はい、はい。はいっ?!」
「!?」
「?」
「分かりました!ありがとうございます!」
部屋の隅で電話に出た蛇子の声が裏返る。
俺と鹿之助もそちらに視線を移す。
蛇子は目を見開いて首をカクカクと動かして、電話の相手とは数秒も経たずに通信を終える。
落ち着きのある普段の蛇子らしさがなく、俺たちはその様子に釘付けになる。
「へ、へびこぉ?」
「……どうしたんだ?」
「提携しているホテルから電話があって、その3人組がホテルに帰ってきたらから当該人物を確認して欲しいって連絡がきて……」
「えっ! それって、こっちには来ないってことかよ! ……待てよ?ってことは、俺が辱しめられただけじゃんか?!」
「ふうまちゃん、どうしようか?」
蛇子の報告に少し考える。
宿泊するホテルの人物の名義としては使用されたものは、別人かつ難民指定にされたグループだが……。既に俺達が手に入れている情報と服装や容姿は一致している。
もしそれが青空さん達だとして、迷子センターに来なかったのはこちらの館内放送を聞こえない場所にいたのだろうか?
だがホテルの従業員の話では東京百貨店へ向かって行った姿について俺達は聞かされている。そしてホテル側からの連絡も放送があってからすぐのことだった。偶然もあるかもしれないがその上で、青空さん達が今の放送を聞えない場所にいたとは考えにくい。
では何故、彼女は立ち寄らずにホテルへ?
何かを警戒している?
それともこの前、みことのやつが言っていた『日ノ出さんは青空さんを恋愛対象として大好きだから、青空さんが好きな鹿之助を敵視している』……らしいから、彼女が合流を嫌がったとか?
「よし。念のため青空さんが確認しに来た時のために俺がここに残る。蛇子と鹿之助はそのホテルに向かって、3人組が青空さん一行かどうか確認してくれ」
「うん」
「おう!」
本人確認が取れ次第、電話をしてもらうようにジェスチャーで伝える。
「ああそうだ。それと蛇子」
「なぁに? ふうまちゃん」
「もしかすると青空さんは何者かを警戒しているのかもしれない。ホテルの方で彼女と会えて色々追求してくることがあれば、それとない嘘をついて自然を装ってくれるか?」
「ふふふ!鹿之助ちゃんじゃ、そこの誤魔化しは難しいもんね! その点は蛇子に任せて!」
2人と別れ際に蛇子を手招きして呼び、小声で蛇子だけに仮定と対策の話を伝えておく。
本来であれば鹿之助にも伝えるべき要点なんだろうが、コイツは意識をするとあからさまに態度が出るから伝えずに普段通りの自然体に任せる。
このままホテル側の連絡が誤りで、一足遅れてこちらに来てくれるならそれに越したことはない。
しかし普段の青空さんの行動から警戒の可能性が見いだせるならば、あらかじめ用意して心構えを備えておいても損はないだろう。
例え警戒心が彼女の中にあったとしても普段と何ら変わりない五車学園でのやり取りができれば、なりすましに対する警戒心を薄れさせ一悶着の可能性を減らすことはできるに違いない。