対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。 作:槍刀拳
~釘貫 神葬視点~
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ふうま君とも無事に合流し、押し入れで寝ている陽葵ちゃんを起こし、深夜だがお土産いっぱいの大荷物を持ってホテルをチェックアウトする。
そしてなぜか東京百貨の屋上に連れていかれ——
「大型ヘリで迎えに来たってマジ?」
大あくびをして寝ぼけまなこの陽葵ちゃんと、両手にお土産大荷物の駒ちゃんは、この盛大な送迎方法に対してあまり違和感を覚えていないのか平然と淡々とヘリコプターへと乗り込んでいく。
「えええええ? 誰がこれで私を迎えに行こうとか言い出したの??? え?鹿之助くん? これ鹿之助くんの家のヘリコプター????」
「そんなわけないだろ……」
「じゃあ蛇子ちゃん?」
「違うよー」
「残るは……」
グギギギギ……とまるで錆びついた機械が動くようにふうま君の方を向く。
「……ふうまくん?」
「ああ、遠慮せずに乗ってくれ」
疑問に彼は何食わぬ顔で私を誘導しようとする。
お前、そんなに金持ちだったの……?
いつもぼんやりしているのは金持ち特有のアレ?
実家が極太系?
そもそも前世の出来事を踏まえても、ヘリコプターに乗ったことは人生で1度たりともない。大型旅行自体の機会はあったから飛行機には乗ったことはあるが、ヘリコプターは初めてだ。
おまけに日中ならまだわかる。深夜にヘリコプターに乗る? 無理だ。上空にも恐ろしい神話生物がいくつもいる。大喰いの泥濘や首のない貴婦人の存在が実在することが認められてしまった以上、ビルドが5程度の紙装甲で夜間飛行なんて無謀が過ぎる……!
「い、いや、はっはっはぁ……あっ。あっあっあっ。やっぱり人間地に足をつけて生きてる生き物ですしー……? チェックアウトをキャンセルして、明日の朝いちばんにみんなで電車に乗って帰るのとかどうですかね……? あ、私の提案ですし……? お、お金、持ってるんですよ。全員分のお金は私が持つので……どう……あ、いえ、いや、そうしましょう? ね? ね?」
引きつった笑顔で妥協案を提案する。
ほぼ命乞い。
いやだ。こんな夜が更けた空を紙装甲の航空機で飛ぶのは勘弁して。
じわりじわりと後ずさりしてヘリコプターから距離を取る。
「日ノ出さん」
「んー……? どうしたの、ふうまくん……」
「逃げる青空さんを捕まえられるか?」
「うん♥もっちろん!」
「いやだッ!いやだぁあぁぁぁぁぁ……!!!!」
東京キングダムでも上げた記憶のない絶叫が、魔都にて響く。
夜間飛行という条件に足がガクガクかつ1徹というデバブを受けた私が、仮眠を取って少し元気になった陽葵ちゃんから逃げられるはずもなく……。
軽やかなフットワークで距離を縮められ、力技で捻じ伏せられ捕らえられる。
やめてっ!対魔忍モドキ!対魔忍モドキでも対魔忍を名乗るなら正義の味方っぽいことしようよ!?何ふうま君の指示で機敏に私を捕まえにくるだあああぁぁぁぁぁ!!
………
……
…
五車町に到着するまでの1時間。
私があんまりにも搭乗を拒否したせいでチャイルドシートのように座席へベルトで括り付けられ逃げられないような拘束具が取り付けられている。
「ヴブヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴブッ」
あまりの極度の恐怖によるチック現象、ジバリングのような身体反応によって全身を震わせながら、陽葵ちゃんに片手を握ってもらう。
心底、嬉しそうな顔をしているなぁ……この対魔忍モドキ。
私もしっかりと陽葵ちゃん手を握りしめて勇気を糧に恐怖に耐える。
鹿之助くんの手を握れるなら握りたかったけど、今の恐怖に耐える私の握力では鹿之助くんの手を握り潰してしまいかねない。あわや第三勢力と勘違いして傷付けそうになってしまったが、私が彼を傷付けてしまうとわかっている状態で損傷を与えることなど言語道断だ。
そこで陽葵ちゃんの出番である。私より力強い陽葵ちゃんならしっかりと抱き着いたり、手を握り絞めても痛みを与えることはないと判断しての選択肢だった。
あまりの衝撃で食あたりを引き起こしてケツからショットガンみたいな下痢をしたときのような祈り——まるで考える人の上半身のような姿勢で耐え忍ぶことを強要されるのだった。
機内にいる全員が私へ注視しているが……。
わかってない。なんにもわかってない。
夜闇をこんな紙装甲の航空機で空を飛び回るって危険性を完全に!まぁるで!わかァってなァいッ!
なのにどうしてっ!!! 鹿之助くんも、陽葵ちゃんも、駒ちゃんも、蛇子ちゃんも、ふうま君も平然と落ち着いて乗っていられるんですかねえッ!?!!?!!?
~最終生還報酬~
正気度回復基本報酬 1D20
高位魔族の蛇子ちゃんを泣かせた 1D8+2
対魔忍の駒水ちゃんを救助した 1D3
対魔忍の陽葵ちゃんと一緒 1D3
ふうま君達と無事(?)合流した 1
新クトゥルフ神話TRPG 選択ルール:幸運ポイントの回復(95頁)
成功した技能の成長ロール
発症:ストレス性胃腸炎
~蛇足~
Q.当時の青空日葵の惨状について
日ノ出陽葵「ヘリが加速するときとか揺れた時、がっちり抱き着いてくれて嬉しかった!」
上原鹿之助「日葵に苦手なものなんかないと思ってたけど、飛行機が苦手だったんだな……」
ふうま小太郎「尋常じゃない怯え方だった。あの半目が四角くなっていた」
相州蛇子「日葵ちゃん、輸送機が大きく揺れた時……たぶん何回か気絶してたと思う……」
駒水幸子「輸送ヘリ程度であの怯え方は……。獣魔や魔族は平気なのがもっとよくわかりません」
釘貫神葬「ショットガンみたいな下痢をした」
~あとがき~
インガオホー。
東京湾を泳いで渡ろうとした時の3人の気持ちを別の形で理解できてよかったと思います。
鹿之助くんに熱湯目潰し防御不可手斧コンボを叩き込もうとした報いです。
今年も本作をお読みいただき誠にありがとうございました。
来年もよろしくお願い致します。
復活以降水曜日投稿を続けてきたため、来年も元旦から投稿します。