対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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Episode191 『意外なところにギャルモドキ』

「ねぇ、日葵ちゃんあの人って……」

「あー……」

 

 斜め背後で噎せ込んでいる人物について、陽葵ちゃんも気づいたようだ。

 

「声かけに行きます?」

「うん」

 

 陽葵ちゃんの頷きに応じて、トレーを持ってその激しく噎せ込んでいる人物のテラス席まで近づく。

 そこに居たのは——

 

「けほっ……けほっ…………」

 

 期末試験と屋上にて私と血みどろの殴り合いを繰り広げた相手、神村 舞華だった。

 流石に2週間も経てば顔面に負わせまくった怪我もある程度治ったようで、まえさき市に来られる程度には回復したようだ。

 

「神村ちゃん、だいじょうぶ?」

 

 陽葵ちゃんが噎せ込んでいる神村の背中をさすって、苦痛を緩和ができるように努める。

 私はそんな噎せ込む彼女の正面に座って、彼女が苦しそうな様子をツマミに昼食を頬張る。

 

「どこのバカップルが騒いでいるのかと思えば……。日ノ出、青空、てめえらかよ……」

 

 ギラギラと憎悪の籠ったような目で、彼女は愉悦に浸りながら昼食を頬張る私を睨みつけてくる。

 いやぁ、うまいうまい。最高にメシが美味いわ~。

 

 愉悦に浸りつつも、本当は内心では神村の言葉にハッと気づきを得る。

 そうだった。

 今の子達はアベックとは言わないのか。カップルだったね。

 

「カップル!? 日葵ちゃん、私達カップルに見えるって! 嬉しいね!」

「喜んでいるところ申し訳ないですが、『バ』が抜けているのと……それ、私に対する嫌味ですよ

「こんな白昼堂々と女同士イチャイチャしやがって……お前等には羞恥心ってのはねえのか」

「ないよ! 好きな人とイチャイチャして何が悪いの?」

「だ、だから女同士でやってるのが……」

「女同士でも私は日葵ちゃんが好きなことには変わりないもん!」

 

 私が答える前に陽葵ちゃんが先に答えてしまうので、私は神村からの何も言わずに自分の昼食を取り続ける。しかし逆に陽葵ちゃんが堂々と答えたあげく、恥ずかしいとも思っていない振る舞いのおかげで神村の問いを捻じ伏せる形になる。

 

 私は何も言わずに勝ち誇った笑みを浮かべて、苦しそうな神村をデカい態度で眺める。それだけで十分なのだ。

 

「青空てめえ、そろそろその笑みやめろ……。腹立つんだよ」

「おっとこれは失礼。スタバのサンドイッチが美味しすぎて自然と口角が上がってしまいましてね。いやいやいや、別に神村さんが噎せ込んでいる姿が面白いとかそんな理由じゃないですよ。ギッヒヒヒヒッ! 美味しい美味しいメシウマなだけで、ギェッヒャッヒャッヒャッ!」

「……姐御がやったみたいに、二度と笑えねえようぶっ飛ばしてやろうか?」

「別に構いませんよ? やれるものなら————ですがね」

「上等だゴラア!」

「二人とも喧嘩は駄目だよー!」

 

 私と神村による犬猿の仲の不和不和タイムの間に、陽葵ちゃんが仲裁に入って来る。

 ちょうど自分の分の石窯フィローネを食べ終わり、抹茶ドリンクを飲み始める。バイオプラスチック製のストローはやっぱ神だわ。トイレットペーパーの芯の味は御免被る。

 陽葵ちゃんもいることだし五車町での殴り合いの様には発展しないよう、こちらから笑みを浮かべるのをやめて澄ました顔で対処する。

 

「そういえば、いつもと服が違うね! 神村ちゃんも買い物に来たの?」

「っっっ!? そ、それは……」

「…………」

 

 陽葵ちゃんの指摘に神村が動揺した顔を見せる。

 私の方に視点を向けてすぐに逸らす。まるで私には言いたくないとでも言いたげな、それか何か本人にとって巨大な秘密の端をつつかれた様な〈心理学〉的な反応だ。

 陽葵ちゃんの指摘に従って、先ほどまでは噎せ込む神村しか眺めていなかった私も彼女の服装に注視する。

 

 ……言われてみれば、いつもの彼女の雰囲気からは離れた服装ではある。

 

 上半身にはアウターとして紅色の革ジャンパーを羽織り、インナーにはノースリーブで大きなVネック状の胸元がはだけた前開きのゼブラ柄のシャツを着ている。そのはだけた胸元のVネックからは白ミシンで刺繍された焦げ茶色のビキニが露出していた。

 腰にはバックルにイーグルが掘られた大きめ極太ベルトをして、スカートはベージュ色の膝上シフォンプリーツを履いている。

 脚にはサイハイソックス丈の30デニール程度のタイツを身につけ、ハイヒール型のスノーブーツのようなベージュ色のミドルブーツでのコーディネート。

 

 硬派なヤンキースタイルの彼女では考えられない……やや痴女よりの服装だ。

 

「おっ、お、俺の服をジロジロみてんじゃねえよ! お前等の格好だって、五車学園の制服とクソだせえ服じゃねえかっ!」

 

 まえさき市で、ほほ痴女服っぽい恰好でうろついている奴にクソダサいとは言われたくはない。

 私としてはそんな痴女服で街中を徘徊するぐらいなら、ダサい方が何倍もマシだ。私の服のコーディネートは活用機能性重視のメンズ服が半分ですし。

 そもそもワークスマンで買っている服だぞ? 奇抜なオシャレにはならなくて普通。私の価値観ではオシャレは二の次、まずは機能性が大事。

 

「そうだよ! だから今日はデートの一環で日葵ちゃんと一緒に服を買いに来たんだ! 私用の服をコーディネートしてくれるって言ってくれたからね!」

「私の服はいつも利便性や実用性で選んでいるので、ダサいことに関して否定はしませんよ。ですがデートに来たことについては否定します。陽葵ちゃんにも普通の服を着て欲しかっただけです」

「ええーっ!?なんでよー!? 今回は2人っきりのお買い物デートでしょー!?」

「デートじゃないです」

「デートだよ!」

「デートじゃないです」

「デートだよっ!」

「デートじゃないです」

「これはデートっ!」

「デートじゃないです」

「ぐぐぐっ……!貶したんだから少しは悔しやがれ……っ!」

 

 なぜか神村の方が悔しそうな声を上げる。

 きっと彼女としては私達が多少なりともダメージを与えられると思ったんだろうが……陽葵ちゃんと私のコンビですよ? いじるなら服装ではなく陽葵ちゃんを味方につける形で関係性を弄った方が、私だけが致命的な事になると思うのだが……。神村もまだまだ煽りスキルが低いですね。

 

「ところでそういう神村さんは、その服はどんなコンセプトとしてコーデされたんですか? 私の浅識ではちょっとよくわからなかったので説明して頂けますでしょうか?」

「はっ、はあっ!?」

 

 私の質問にヤツはたじろぐ。

 陽葵ちゃんが彼女の服装について触れた時の動揺から、すなわちこの質問は彼女にとっては嫌な質問であることには違いない。

 ……といっても、自身をへりくだった浅識以前に、本当に神村のコーディネートのコンセプトがわからない。頭の中をぐるぐる巡った後に、行きつく先は痴女しか選択肢がない。

 いや……痴女なわけがない。あのヤンキーが、裏では立ちんぼ女子でパパ達のチンポからザーメンを搾り取る裏垢女子なはずがないんだ。鹿之助くんの“憧れ”である彼女がそんなド変態痴女的な重きがあるはずがない。

 だからこそ個人的な興味を含めた上で、その服装の組み合わせは何を目指したのか本人の口から是非とも知りたい。

 

「あっ! 私もしりたい! 神村ちゃんを参考にすることで私も服の方針が決まるかも!」

 

 この痴女服を参考にするのは私が絶対に許さないよ?

 でもナイス追求アシスト。私には悪意が詰まっているが、陽葵ちゃんは悪意ゼロだ。

 私は最後まで悪意(チョコ)たっぷり。

 

「ぐ、ぐぐぐっ」

「神村さん」

「神村ちゃん!」

 

 まるで真綿で首を絞めているかのような苦しそうな声だが、逃がさない。

 痴女服ではないのであれば、説明できるはずなのだ。さあ言ってみろ!言わなきゃ五車学園で『神村さんが痴女服でまえさき市を歩いていました!』って言いふらすぞ! 鹿之助くんにも幻滅してもらうぞ!

 お願いします!痴女をコンセプトにしてないでください!

 

「ギャ……」

「ぎゃ?」

「ぎゃ?」

「ギャル、コーデだよ……ギャルふぁっしょん……」

「」

「!」

 

 ギャルぅ!?

 ギャルファッション!?

 マジで!?

 その服装でギャル目指してんの!?

 マジで言ってる!?

 陽葵ちゃん目をキラキラさせないで!これはギャルじゃないからね!?

 断じてギャルじゃないからね?!?!!!?

 

「お前等ッ、五車で他の連中に言ってみろ……っ。ぶっ飛ばすだけじゃ、すまねえぞ……ッ」

 

 地獄から響くような唸り声と、渾身で迫真の私達に対する脅し。

 飛び掛かってしまうのを堪えるかのようにテラス席のテーブルを鷲掴みにしているのだが、そちらからミシミシ、パキッパキッとプラスチックが割れるような音が聞こえてくる。

 

「日葵ちゃん!ギャルだって! 私にも似合うかな!?」

「」

 

 脅しに気づいていないのか……。お目目をキラキラに輝かせた陽葵ちゃんがこちらを振り向くが、神村のその服装でギャルを目指していた宣言に絶句して返事ができない。

 陽葵ちゃんにはギャルファッションは……性格的と合わないかな……?

 強いていえば、オタクに優しいギャルならいけるかもしれないけども……。

 

「おい青空、なんか言いやがれ」

「」

 

 いまだに言葉を発せない私に対して神村が睨みつけてくる。血涙を流さんばかりの勢いだ。

 だが私もあまりの衝撃発言を聞かされた結果。茫然としながら、まばたきを数回細かく行い口をポカンと少し開いて右手で下唇を弄ることしかできない。

 

「おい」

「」

「なんか言えよ」

「」

「おい」

…………えっとですね。神村さん、私の聞き間違えでなければ、ぎゃる……ギャル、コーデって言いました……?」

「言ったけどよ」

「」

「なんだよ。なんなんだよ、その表情」

「えーっと……? この表情は私も見たことないかなー……?」

 

 腕組みをしたあとに両目を瞑る。左手を口元に持って来て考え、右手で後頭部を搔く。

 

「……この仕草は?」

「初めて見る仕草に、考えこみ始めて、すごく困ってるかも……」

 

 神村の疑問に陽葵ちゃんが人の仕草から私の感情をズバズバと当てていく。

 

「な、なにか、おかしいかよ!!!!」

 

 正面から神村が立ち上がって、私に向かって怒鳴っているのが伝わる。

 目を開けて彼女の顔を見てみれば、顔を真っ赤にして……火でも吹き出しそうだ。

 怒り……というよりも、恥ずかしさが限界突破したかのような反応だ。

 ……そういえば、批判や悪口は『言った本人が傷つく言葉』を使っていると文献で読んだことがある。私と陽葵ちゃんの関係について、恥ずかしいとしてきたし、もしかすると神村の中では『恥ずかしい』と思われることが最も精神的ダメージリソースを稼げるのかもしれない。

 思わぬところで弱点発見。

 

「えーっと、ですね。神村さん。私の率直な感想を伝えてもよろしいでしょうか?」

「……やっぱ、やめろ。お前がよっぽどそんなため込むってことはロクでもねえ感想だろ……?」

「わかりました。ではオブラートに包みますね」

「やだよ!オブラートに包んでも変わんねえよ!」

「えー、ギャルというよりも風俗の……いえ、あー、キャバ嬢コーデですかね」

「」

 

 神村の顔が『聞きたくなかった……ッ! そんな感想……ッ!』と表現するかのような大ショックを受けた顔つきになる。

 そんな顔をしているが、これでもオブラートに包んだのは本当だ。

 

 1枚目のオブラートに包んだ時は痴女。

 2枚目のオブラートに包んで牝牛。

 3枚目のオブラートに包んでシマウマ。

 4枚目のオブラートに包んで売春婦。

 5枚目のオブラートに包んで水商売。

 6枚目のオブラートでキャバ嬢までやってきたのだ。

 

「」

「日葵ちゃん、さすがにそんな言い方は神村ちゃんが可哀想だよ……」

 

 膝から神村が崩れ落ちて、そのまま立ち上がった椅子に座り込む。

 まるでボクシングで真っ白になった男のように魂が抜けかけている。本人にとってはかなりの自信コーデだったのかもしれない。

 流石に隣に陽葵ちゃんも並んで神村の擁護側に回る。

 

「でも神村さんが私に何か言えって……」

「だけどこんなになっちゃったよ? 神村ちゃん、大丈夫だよ! あんなこと言ってるけど、ちゃんとアレンジすればもっと良くなるって改善の見込みがあるってことだよ!」

「……キャバ……」

 

 完全に神村が壊れてしまった。オーバーキルだ。

 椅子に座って半分仰け反っているために、胸元の陽葵ちゃんよりデカいスイカのような爆乳が私目掛けて精一杯に押し出される。

 ……ん? 陽葵ちゃんより、デカい爆乳?

 

——そうかッ!

 

「そうだ! 午後から神村ちゃんも、日葵ちゃんにギャルっぽいコーディネートを探してもらおうよ! デ、デートじゃなくなっちゃうけど……私は午前中にいっぱい日葵ちゃんと楽しんだし、午後は神村ちゃんも一緒でもいいよ!」

「……」

「……神村さん? すみません、まさかそんな大ダメージになるとは思わなくて(大嘘)……。お詫びとして陽葵ちゃんの言う通り午後は私達と一緒に来てもらえれば、ギャルコーデのお手伝いしますよ?」

「……本当だろうな?」

 

 私が近づいた途端、陽葵ちゃんが何をフォローしようが微動だにしなかった彼女に生気が戻る。ノコノコ近づいてきた私の胸倉に掴みかかり、あの眞田先輩を怒らせた時のような力強い殺気を当てられる。

 

「ええ、ええ。私もちょっとしたお願いがありますし……」

「あん?」

「大したことじゃないです。神村さんがその服を購入した店を教えて欲しいんです。……ほら、もしかするとギャルコーデに至るための服装がその店にあるかもしれませんし……」

「……ハンパな服装にしやがったら殺すからな?」

「分かってますって」

 

 息がモロにかかる位置で散々脅され、こちらが観念したような表情を作りながら納得した様子を見せてようやく彼女は胸倉から手を放してくれる。

 しかし、これは願ったり叶ったりだ。

 もちろん、神村のギャルファッションコーデのお手伝いはする。だが同時に神村のそのスイカみたいな爆乳が入るような服屋にも同時に招待してもらうことで陽葵ちゃんの乳でも入るインナーとトップスをチョイスできる寸法になる。

 おかげさまで夏コーデに加えて秋コーデも揃えられる。

 

 まさに一石二鳥。

 当初の目的であった陽葵ちゃんの服装は完成できる。

 

………

……

 




~あとがき~
 未来神村さんはまともなギャルコス(バレンタインイベント時に確認)になったので、現代編ではやっぱり自己コーディネートの結果かも……?

 五車祭事前情報で新ビジュアルの相州 蛇子ちゃんが来ましたね!!!!
 この流れで新鹿之助くんも来てほしい……!

 覚悟はいいか? 俺は出来ている。
 (出るまで臥者(ガチャ)350連天井フルバースト、稲毛屋のアイス*4、SR神楽鈴*19、スキルの書秘伝*4)
 天井でも鹿ちゃんが五車祭くれば、ここに事前勝利確定宣言を通達する。

 Episode200話記念で色々企画していたのですが、五車祭に新鹿之助くんが出てくることを考慮して投稿話を調整しようかと悩んでいましたが! 五車祭は25日からこの小説は毎週水曜日のためEpisode200を先行投稿しても、3/26にEpisode200が来ることになるので間に合わないな? と言うわけで順当に投稿するのでEpisode200到達は5月ぐらいになります。
 ちょっと早めのジューンブライド。

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