対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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Episode199 『鹿之助くんの未来を案じて』

 テレビが聞こえていた部屋は台所だった。

 中央には一般家庭にあるような設備が整っていて、台所の開けたところにはダイニングテーブルがそのまま置かれていて、椅子が4脚並べられそのまま食事をこの場で家族そろって食べられるような作りになっている。

 

「日葵ちゃんは煎餅(せんべい)饅頭(まんじゅう)、どっちが好き?」

「いえ、おかまいなく……」

「どっちが好き?」

「お饅頭が好きです」

 

 対面側に座らせられ、目の前に来客用のコップと饅頭が山盛りにされた籠を出される。そのまま冷蔵庫からオレンジジュースが紙パックのまま出てくるとコップと共に机上に置かれた。

 同時に鹿之助くんのお母……様も私の対面に座り、視認できる範疇である頭の頂点から臍まで舐めるようにジロジロと見てくる。

 

「ほら遠慮しないで食べて」

「アッハイ」

 

 押し出された饅頭を一つ手に取り、1口。

 

「…………」

 

 味がしない。

 鹿之助くんのお母様の手前、笑顔をつくる。

 ぎこちなくなってしまったかもしれない。

 

「それね、五車の有名な和菓子職人さんが作ってくれたのよー」

「だ、だから舌触りが滑らかで薄皮が喉にくっつかないんですネ」

「おいしい?」

「オイシイデス」

 

 一見、和気藹々とした空間が流れているように見えるが、正直なところ違う。

 私は泣きたくなっている。

 もう完全に警察に通報されて、死刑判決が出て、最後の晩餐が振る舞われたような気分だ。

 

「んもー! そんなに緊張しないで! 私は別に鹿之助と一緒に秘密で入ってきたこととか怒ってないから!」

「ソ、ソウナンデスカ?」

「もっちろん! だって今日、私が家に居るのだって鹿之助からこの日に日葵ちゃんが遊びに来るって聞いたから、待ってたぐらいなのよ?」

「エッ?」

 

 えっじゃないわ。アッだわ。

 つまり待ち伏せされていた訳ですよね?

 あれ? でも鹿之助くん、訪問は伝えてないって言ってなかったっけ?

 

「なのに、鹿之助ったら…………。私も日葵ちゃんに会いたがっているとわかった瞬間に誤魔化し始めてねぇ」

「ァハイ」

 

 あー、もうこれだめかもしれない。

 

「ひとまず色々話したいことはあるけど、こうして直接会えたんだから」

「アッ」

 

 対ショック心構えの——ッ!

 

「最初は正式にお礼を言わせて。鹿之助を。うちの子を何度も助けてくれてありがとう」

「…………ホァェッ?」

 

 死刑宣告を告げられる覚悟をしていたのに、想定外な言葉がかけられてマヌケな声が意思とは無関係にこぼれる。

 鹿之助くんのお母様は両手膝について、私が土下座をしてみせたように深々と頭を下げてくる。駒ちゃんの三つ指を着いたお辞儀や、私の土下座ほど長い時間ではなかったが3秒ほど頭を下げたのちに再び私の目を見つめる。

 

「こんなことを言ったら、あの子に怒られるけど……鹿之助ね。日葵ちゃんが転校してきてからずーっと日葵ちゃんの話題ばかりしてたのよ。『自分のクラスに変わった転校生が来たんだー』『初日の訓練で八津先生を1人でやっつけたすげえやつなんだ』って、目を輝かせてね」

「…………」

「日葵ちゃんがくる1カ月ぐらい前だったかねえ? ふうま宗家の子と友達になったって話はしてくれたけど、同じクラスじゃないからやっぱり1人でいることも多かったらしくて……でも、日葵ちゃんが来てからは毎日が楽しそうだったわよ『友達が増えたー』『日葵が日葵が、日葵がさぁー』って」

「そう、でしたか……」

 

 伏し目がちになりながら、つらつらと楽しかった回想を振り返るように鹿之助くんのお母様は情景をつづる。

 上原家ということで上原 燐先生との関係もあり、聞いている様子だと鹿之助と私の関係に対して否定的ではない反応をしてくれたらしい。

 

 私としては鹿之助くんが、紫先生の基礎能力試験を行った際に“唯一鹿之助くんだけ”が紫先生に信念をもって反論意見を持ってくれて、それから心の支えになっていたのだが……。

 鹿之助くんにとっても私という存在程度が、あの大喰いの泥濘の出来事の一件以外でも同様に支えになっていたようだ。

 そんなことを思われていたなんて想像もしていなかった。

 

「それからまえさきでのあの事件」

「……」

「傷、カルテで見たわ。鹿之助を守るために——ごめんなさいね。嫁入り前にキズモノにしてしまって」

 

 鹿之助くんのお母さんが目線を私のみぞおちに合わせる。

 私も〈隠す〉ようにそっと手を伸ばし、服越しから横隔膜の傷痕が残る場所に触れる。

 

「いいえ、鹿之助くんのお母さん。この傷のことはお気になさらず。私は私の信念に従って五車学園、初めての大切な親友を助けただけですから。鹿之助くんの命と比べたらこんな傷痕は安いものですよ」

「……噂通り。ちょっぴり変だけど、対魔忍(なかま)を絶対に見捨てない希望を見据える素敵な子ね」

 

 私の言葉に、実物に出会って納得したかのような笑顔を見せてくる。

 ……ちょっぴり変という部分に引っ掛かりを覚えるが、褒められているような気がするので悪い気はしない。

 

「でもね、日葵ちゃんがいいと言ってもやっぱりそういうわけにはいかないわ。上原家として、ちゃんと責任はとらないと」

「責任、ですか……?」

「そうよ。鹿之助からあの日、何があったのか全部聞いているわ」

 

 鹿之助くんのお母さんの言葉で私が戦慄する。

 鹿之助くんが大喰いの泥濘/赤黒き花弁について、周囲の人に説明してしまったことを思い出す。

 その話はマズい——!

 

「こちらの過失による損失で嫁入り前の女の子を傷付けたんだもの。——日葵ちゃんにとっては突拍子もない話になるかもしれないけど、鹿之助はどう?」

 

 ……ん?

 

「……どう? と申されましても……」

「我が子ながら太鼓判を押せるような息子ではないけれども。鹿之助には興味はない? 日葵ちゃんが望むのなら上原家の母としては交際を許可します

 

 ここで思わぬ提案。

 思わず普段肩身の狭い思いをしてしまう噂の件のことなど、吹っ飛ばして普段のジト目が少し見開いてしまう。

 

「可能ならその先の許可とかも出したいところだけど、(ちまた)の噂の一件もあって親族を納得させるには時間がかかりそうなのよね。」

 

 鹿之助くんのお母さんは肩を竦める。

 まさに願っても得られないような提案。

 その()まで見据えられた上での交際許可。

 

「それにお互いのことを良く知るための時間も必要じゃない? それは学生生活と性活でしっかりと深めてもらって……」

 

 喉から手が出るほどの願っても簡単には得られないような誘惑。

 

 

 私は……

 

 

 私は鹿之助くんが好きだ。

 

 私は鹿之助くんが大好きだ。

 

 

 少し子供っぽいけど、キラキラした未来を信じて疑わない姿が好きだ。

 

 私とは違い(すさ)んでいない輝きと煌めきが好きだ。

 

 筋を通すためにみせる勇敢な部分が好きだ。

 

 実技授業で真剣に取りくむ姿が好きだ。

 

 体格差があっても諦めない彼が好きだ。

 

 信念を貫こうとする彼の志が好きだ。

 

 正義に対する情熱が好きだ。

 

 体臭のニオイも好きだ。

 

 一緒にいるだけで心が安らぐし、一緒にいると落ち着ける場面も多い。

 

 鹿之助くんが傍にいれば、居るならば普段より大人しいと言われていることに関しても自覚症状はある。

 

 少し、少しばかり加虐的な妄想のえっちな姿の彼を妄想して一人で至ってしまうぐらい、彼に降りかかる火の粉は全て叩き潰せるぐらいには彼のことが好きだ。

 

 

 

 そして、なによりも絶望的な差があっても果敢に立ち向かう彼が大大大大好きだ。

 

 

 

 しかしこの重大な決断をここで容易に下していいものか、私に積もった幾重もの問題が鹿之助くんとのより親密な間柄になることを阻む。

 

 交際の()とは……すなわち。

 要するに、いずれ互いに成人を迎えたら……彼と結婚する間柄になる可能性があるということだ。

 対魔忍世界ではあるが落ち着いた生活を送る、実に『対魔忍世界に転生したが、一般人枠らしい生活』の1つ。この現実がよくある物語だとしたらエンディングとなるような出来事だ。

 

 だが安易に承諾はできない。

 もし私が承諾することで、この前の東京キングダムの一件のようなことが鹿之助くんの身に降りかかったら?

 

 膝上に乗せている両拳に力が入り、肘が突っ張る——

 

——いいや、降りかかったら?じゃない。

 

 確実に降りかかる。

 私が“私”に嫌がらせをするなら、どんな犠牲を払ってでも復讐を遂げるならば——

 鹿之助くんをもっと残虐な方法で徹底的に拷問して私が二度と立ち上がれないように、歯向かえないように、自殺を促すように嫌がらせをする。

 もちろん、鹿之助くんだけじゃない。

 “私”が挫けなければ鹿之助くんと私との間に出来た子供も、その孫も、親族・関係者だって標的にする。鹿之助くんは常に傍に置いて守れたとしても、同時に次世代や子孫までは守れない。

 

 私は——私は“こちら側(やってきたがわ)”だから分かってしまう。それに、そんな陰惨な目にあった他の探索者を幾重にも見て来た。私が東京キングダムで恨みを買ってようが買ってなかろうがの話じゃない。いずれそうなる。そうなる運命にある。私は宿命に囚われている。

 既にこの世界でも駒水ちゃんが犠牲になっている。ただ私と親しい関係にあったというだけで。

 

 私は……。

 

 

 

 私は鹿之助くんのようにキラキラした側の人間じゃない。

 

 底辺層のいくらでも替えの効く、1つの駒にしかすぎない。

 

 

 

 それに私が今後も無事で五車に居続けることができる保証もない。何かの拍子でここから去らなければならなくなることだって考えられる。

 未来(さき)の人生なんて誰にも予見できない。

 

「————」

 

 ゆえに。

 

「……どう?」

 

 鹿之助くんのお母様の提案に対し、2つ返事で返してしまうのはあまりにも無責任で。

 

「…………私は鹿之助くんが、大好きです」

「なら——」

 

 本当に鹿之助くんを大切に想っているならば——

 

「でも恋人には相応しくありません」

「…………どうして?」

 

 鹿之助くんのお母様の疑問の声に脳内で様々な最悪の未来の想像が、植物のガマの綿毛ように、ねずみ算のように膨れあがる。

 予見できてしまう想像上の惨劇のせいで、こらえているつもりだったのに意に反し勝手に目から大粒の熱い塊がボロボロ(うつむ)く私の膝上に落ちていく。

 

「できることなら、ずっとそばで彼を護っていたいです。支えていたい、です。……でも、でもっ。それは現実的じゃない。私は、またいずれ、私は彼を護ることができない日が来るかもしれないっ。鹿之助くんだけじゃない、五車の他の友達だって、みんなっ……みんなッ!」

 

 前世で死んでいった仲間たちの死に顔が、未練がましい最後の遺言が、無念の言葉が、凄惨な遺体が、“真実”を直視した狂気が……——

 私の身には纏わり憑きすぎている——

 

「私は……その日が訪れるのがとてつもなく、とっても怖いんです。だから、もし、そうなるぐらいなら……っ」

「……」

「鹿之助くんには、私となんかじゃなくて、もっと彼を護れるだけ力があるっ、最近では、『べつのヒト』と結ばれてそっちで幸せになってほしいっ、と思っているところもあってっ」

「……」

「ごめんなさい……っ。ごめんなさい……私っ。……本当は弱い……っ。弱いっ、人間なんで、す……噂とかっ、振る舞いでっ……! 自分を、強く魅せてるだけで……本当はっ」

 

 正面の席から立ちあがる音が聞こえる。

 

 涙を堪えようと両手で化粧がグチャグチャになるのも構わずに泣き散らす。

 本心を言えば、鹿之助くんとそういう間柄にはなりたい。

 

 だが……でも…………っ!

 

 現実をわかっているからこそ、私一人ではどうにもできない問題だからこそ、ただ絶望に打ちひしがれて諦めるしかない。こればっかりは覆すことではできない。

 私と特別な間柄になったせいで彼が不幸になる確率が上昇するぐらいなら、最終的には私がいないことのほうがもっともな最適解なのだ。

 

 私はたくさん奪ってきた。

 前世でも。今世でも。

 命も。希望も。願いさえも。

 この身体だってそうだ。

 

 いずれ報いが訪れる。

 因果はめぐる。

 応報は訪れる。

 

 きっと幸せにはなれない。

 幸せになる資格なんかない。

 幸せは一時的に違いない。

 ならば、いっそのこと——

 

「大丈夫。大丈夫よ。その時は、貴女だけじゃない。その時は上原家もあなた“達”を護るわ」

「ぐすっ……ひっく……っ」

「まさか、貴女にそこまでの思慮があったなんて……いきなりあなたにとって重い話を切り出して悪かったわね。泣かなくても大丈夫、大丈夫よ」

 

 鹿之助くんのお母さんに優しく温かく抱きしめられて。

 穏やかに背中を摩られて。

 ゆりかごが揺れるように宥められて。

 

 時間をかけながら、少しずつ落ち着きを取り戻す。

 

………

……

 

「……落ち着いた?」

「すみません、お見苦しいところをっ、お見せっズズ…いたしました」

 

 恐らく数十分ぐらい弱い一面を見せてしまった。

 中身はいい年をしたおばさんのクセに恥ずかしい。

 鼻を啜りながら慰めてくれた彼のお母様に謝罪する。

 

「いいのよ。日葵ちゃんが鹿之助をどれだけ大切に想ってくれているのか知れたいい機会だったわ。ほら、ジュースでも飲んで」

「い゙ただきまずっ」

 

 ゆっくりと注がれたジュースをすべて飲み干す。

 

「っぷ……はぁぁぁぁぁ……」

「もう一杯、飲んどく?」

「大丈夫です。すみません」

 

 再び鹿之助くんのお母さんが正面に座る。

 

「ねえ、日葵ちゃん」

「はいっ!」

「こういうのはどうかしら?」

「……こういうの、とは?」

「“私個人としては”鹿之助の傍に居てほしいの。これは提案じゃなくて、お願い」

 

 また喉の奥がツンっと冷たくなる。視界がきゅぅっと狭む。目がうるむ。

 

「だから私には……っ、息子さんを護りきるだけのッ力が……ッ」

「みたいね。でも私は“日葵ちゃんに”鹿之助をお願いしたいのよ。変な噂こそあって、まだ非公式だけど五車学園1年生なのに色々な実績を持っていて、でもそれに(おご)ることなく自分の実力の限界を理解している子に。この五車町では、その『自己分析』ができる子は凄く珍しいのよ?」

「めずっ、珍しい……っ?」

「そう。大体みんな力に溺れて、本当に大事な時に痛い目をみるか……いえ、時には痛い目を見ても変に力がある子は自覚すらできないのよねえ。その中で日葵ちゃんは、自分に何ができて、何ができないのか。できる範疇で最善を尽くそうとする。これは素晴らしいことだと思うわ」

「……っ」

「それに鹿之助は、今こそ日葵ちゃんと居るからこそ色々しっかりしてきたところもあるし……あと、あの教科書! お手製なんですって? 勉強だってしっかり見てくれてるし、もう私としては逃がしたくないの——あらやだ私の欲望が出ちゃったわ~!」

 

 お嬢様のように手を口元に寄せてオホホと陽気に笑っているのが、うるんだ視界越しに確認できる。

 彼のお母様の欲望とは言っているが、私には分かる。彼のお母様は私を気遣って言ってくれている。励ましてくれているのだ。

 それゆえ応じるように、釣られたように少し笑う。

 

「だから、ね?……うちの鹿之助をお願いできない? ここで断られたら私も“今日は”諦めるわ」

「それ……。諦めないで後日くる奴じゃないですかぁ、ギヒヒヒ」

「あらバレちゃった!?」

「最近できた友達に同じようなことを言ってきた奴*1がいたので」

「それじゃあ、私は外堀を埋めに行っちゃおうかしら~?」

 

 私から引き出せた笑顔を継続させようとしているのか、目の前でドブ攫いのような動きを見せてくれる。

 その温かさも嬉しくて、幼少期や思春期には本当の両親から満たされなかったものが得られたような気になって、陰鬱にも脳にかかっていた暗雲のような不安が拭われつつある。

 

「やめてくださいよ~……。…………ありがとうございます。お義母さん」

「ん? それって……」

「はい。私などでよろしければ——鹿之助くんを尽力を奮って御守(おまも)りいたします

 

 願ってもない申し出や背中を押され、深々と(こうべ)を垂れて決意の表れを示す。

 

「も~!御守りじゃなくていいのよ!でも日葵ちゃんが鹿之助の傍にいて上手くヤッてくれるのなら、上原家は何処の馬の骨とも分からない名前だけの見合い相手を探さなくて済むわね!」

「ハハハ、お義母さん。青空家——いえ、()はどこからやってきたのかもわからない名前だけの馬の骨 ですよ」

「いいの!私が認めるんだから!現当主も絶対に納得させるし!親戚連中だって言いくるめちゃうんだから!」

「母は強しですねぇ」

「カカア天下だからねえ!」

 

 わはははははははっ!というお義母さんの豪快な笑い声が台所に響き渡る。

 とても。とても温かい。

 しかしここで、ふと気付くこともある。

 

「……そういえば、鹿之助くんが2階から降りてきませんけど……」

「それは私が2階で待つように伝えたからね」

「……? またどうして……」

「日葵ちゃん、うちの鹿之助にそんなぐじゃぐじゃの顔で会ってもいいの?」

「! ……いやぁ……それは嫌ですね。うわ、マスカラが……目の周り真っ黒、パンダみたい。僭越ながら化粧直しを失礼いたします」

「ほい! 手鏡使う?」

「おお。用意周到! ……お借りいたします」

 

 手鏡を借りて、涙で酷い有様になった顔面を綺麗にふき取る。

 最初より地味っぽくなってしまったが……まぁ、さっきよりは……よくないので更に上塗りで化粧を施す。五車学園に登校するときと同じぐらいのほんのり化粧……すこし地味かも?

 

 いいや、いつも通りだ。

 

「日葵ちゃん。これは本人からじゃなくツテで聞いたんだけど……」

「はい」

「……鹿之助と海へ泳ぎに行ったときの返事、してないらしいわねえ?」

「あっ。あ~……邪魔が入りましてね。伝えそびれちゃったかも……」

「今こそ伝えるときだと思うけどどうかしら?」

「……そうですね。伝えてきます。それに私たちだけで今後の関係について盛り上がるのはよくないですよね、鹿之助くんの気持ちも聞いてきます」

「それもそうだわ。だからと言って今後の付き合いを切り出すのは大変でしょう? それは私がやるから……日葵ちゃんは、鹿之助とお付き合いをしてもっと互いを知り合う・関係をより確かめ合うのはどうかしら?」

 

 コクリと頷いて同意を返す。

 化粧も整え、彼の居る部屋を聞き出し、昂った感情も落ち着いたところで鹿之助くんの部屋に向かうために台所の障子扉を開ける。

 

「待ちなさい!」

「ええっと……まだ何か?」

 

 開けたところで呼び止められ、振り返ると机の上に濃縮された色のオレンジジュースが再度注がれている。

 

「かーちゃんからの勇気と元気の出る最後に飲んでいって!」

「……すみません。何から何まで……ありがとうございます。いただきます」

 

 認めてもらったお義母さんからの差し出しを断るような無粋な真似はできない。

 

「……ご馳走様でした!」

「いってらっしゃい!」

 

 一気に飲み干して鹿之助くんの待つ2階へと上がる。

 

 

*1
(高位魔族な蛇子ちゃん)




~だそく~
鹿之助の母「私も昔は既成事実作りを姑にしてやられたねえ。でも、私の場合は騙してないから……」


〜あとがき〜
 本作品の大型アップデートは、5/14〜5/16あたりを予定しています。作品を読み続けられる状態は維持しますが、特殊タグがエキサイティンッ!しているのは、それまでとなりそうです。
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