対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。 作:槍刀拳
「御用があるなら1人でいらっしゃればよろしいものを。ぞろぞろと引き連れて大名行列のおつもりですか?」
「そういう貴様こそ愛人、ザコチビ、落第生を引き連れてお山の大将にでもなったつもりか?」
空気がヒリつく。
だがこの挨拶は、ただのジャブだ。
身長180㎝はあろうコイツを下から見上げるように睨みつける。気に喰わなさそうなドドン太郎の口の造詣。
それを私は嘲笑うように上目遣いでニタニタとした笑みを向ける。
「嫌だなぁ二車くん。私は夏休みに『友達と』遊んでいただけですよ。君もそんなところでしょう? いやぁ……友達が多いって素敵ですねぇ」
彼の配下をじっとりと全体的に眺めるように見渡してから、ドドン太郎の顔を見る。
無論、皮肉だ。
この男共は鹿之助くんの話ではドドン太郎の友達でも何でもなく、実家のお太い彼に連れ添っている子分だってことは知っている。『“私とは違って”、君には
「で、まぁ何のお話ですか? 午後は午後で予定があるので手短にお願いしますね」
「貴様のせいで俺は面目丸つぶれだ。てめえの作戦に従ったばかりに目抜けに勝てなかったどころかチーム戦でも負けやがって」
心の中で????とデカめの疑問符が湧き上がるも喉の途中で押しとどめる。
「でも期末試験には合格できたでしょう? お互いに学生の貴重な夏休みを浪費せずに済みましたし、成果としては十分ではありませんか」
「俺はあの試験で目抜けを潰してどっちが当主に相応しい存在か知らしめるチャンスだったんだ。それをテメエがあの目抜けの言葉に誑かされやがって!ぶっ倒れたせいで俺も神村にやられるハメになったんだろうが!」
『それは機会を宛がう作戦を展開したのに、〈回避〉行動しかなかったふうま君をさっさと仕留めなかったのが悪いんだろうが!』と口の中に満たされるも上唇と下唇を噛みしめて言葉を堪える。
今日は最初のジャブのような売り言葉に買い言葉のような罵詈雑言を浴びせる気にはならなかった。
「それは残念でしたね」
目をそらしてポツリと呟く。
「残念……? 残念だとッ!?」
ビリビリと怒鳴るような声で頭の上から殺気までもが込められた声が浴びせられる。
「テメエにとってはただの期末試験の合否判定だとか、そこのザコチビの憧れの切り替えだとかチッセェ目的のためでしかなかったんだろうけどな! 俺にとっては一世一代の機会だったんだよッ!」
歯が半開きになってこちらも負けじとドドン太郎へ正論パンチを浴びるための呪詛が漏れ欠けるが、下あごから喉に力を踏ん張ることで罵声を押しとどめる。
ヤツがザコチビと鹿之助くんをなじったことで、公民館側に押しやった鹿之助くんが怯えているようなそんな気がする。それに神村への“憧れ”を私へと向けようと裏計画を期末試験に持ち込んでいたことも同時に伝わってしまった。
でも——
今日は冷静に。あくまでも冷静な大人の対応をとる。
今日は私だけではないのだ。鹿之助くんに、陽葵ちゃん、綴木さんだっている。
私1人だけだったら全員返り討ちにできるが、3人を護りながら返り討ちは不可能だ。だから今日のところは堪える。
前回警告をしたにもかかわらず、ふうま君を『目抜け』って言ったコイツの眼球に左ストレートをぶち込みたいのも押さえる。
「…………それで?」
「あ゙ぁ!?」
「それで、その話をして。貴方は私にしてどうしてほしいのですか?」
絞り出した言葉の合間で深呼吸をして心を落ち着ける。
淡々と。穏やかな口調で。彼が私に求めていることを尋ねる。
パワハラクソ上司のように永遠と罵声を浴びせて自分はすっきり相手に不快な思いを植え付けたいのか。それともカスハラ理不尽クレーマーのように怒りの快楽性脳内麻薬にアヘりながら、こちらの謝罪を求めるのか。またはこの時代では中華連合国の属国となり果てた可哀想なチョン共のように過去を蒸し返しての永劫の賠償を求めているのか。
「謝れよ。テメエのせいで負けたんだからよ」
そうか。
謝罪がお望みか。一番簡単だやつだ。社会人の時によくやった。
心を押し殺して無にする。私は悪くないが適当に謝っておく。無にしながら内心では鼻をほじってガムを相手の髪に絡める地獄の想像を広げる。私が謝罪をすれば相手は満足して終わる。
高位魔族の蛇子ちゃんの条件の方がよっぽど意図が掴めなくて厄介だった。
散々殴り合ってきたくせに今更『友達になりたい』とか意味わからん。今もよくわからん。わざわざ条件まで譲歩してきて、一体なにが目的なのやら……。
「申し訳ございませんでした」
「謝り方も知らねえのか?」
「余所者はこれだから」
「所詮、噂だけがやべえ奴だよ」
「あのなぁ、こういう時は土下座が妥当だろうが!」
二車の子分たちからヤジが飛ぶ。
ははぁ(失笑)
土下座、ね。
ああ、安いものだ。プライドを捨てるだけで穏便に3人までもに危害が加わることなく話を終えられるならば、それに越したことはない。
東京キングダムのように魔族やオーク共に眼前で犯されるわけでもない。
前世のように神話生物に遊ばれ惨殺されるわけでもない。簡単な動作。
申し訳なさそうな顔をしながら、両膝を地面に着く。
二車の取り巻き達からゲラゲラと嘲笑が浴びせられる。
そのまま、まるで軍隊に投降する敵兵士のように――
身を屈め頭を下げた土下座に入ろうとしたところで、公民館側に押しやったはずの陽葵ちゃんが私の前に飛び出して、かつ未だかつて聞いたこともないような早口言葉の大音量で捲し立てるように怒鳴りながら割って入ってくる。二車の取り巻き達の嘲笑すら制止させるほどに圧倒した勢いで。
な……なんで出てきちゃったかな?
気持ちは嬉しい。嬉しいんだけど、穏便に済ませようとしているのに穏便に済まなくなっちゃうから引っ込んでてほしいな。
嬉しいんだけどさ。やめてほしいかな? 多勢に無勢、二車の取り巻き、刃物を持って暗に脅している頭のやべー奴等……もとい集団と戦う方法は教えてないからやめてほしいな。
わたしはボコボコにされても構わないけど。陽葵ちゃんが目の前でボコボコにされるのは私がこたえるから止めて。お願いだから。
私が謝れば済む話がこじれちゃうよ……。
ダメだよクレーマーには理論が通じないんだから、もっと面倒くさいことになっちゃうよ。
「あの~ですね? 陽葵ちゃん?」
「日葵ちゃんはもう謝ったでしょ!?」
陽葵ちゃんの怒声が勢いづいたままこちらに矛先が向けられたおかげで、いつもの貞操の危機とは異なる恐怖で身が強張る。
彼女は本当に怒っている。目頭がひそめられて、目じりが極めて吊り上がっている。
「ぁ、あの……と、とは言ってもですね? あの1件は確かに私が指揮をしたので責任は私にあ——」
「日葵ちゃんの作戦だとしても!私は実況席で最初から最後まで見てたモンッ!そもそもふうま君を倒せなかったのは
「ッ!」
「」
あー。
言った。
言っちゃった。
私が制止する前に陽葵ちゃんの熱意がドドン太郎に伝わっちゃった。
私が言いたかったけど、喉の奥で押しとどめていた言葉を陽葵ちゃんが代弁しちゃった。
代弁ありがとう。
でも『ありがとう』って言える状況でもないんだわ。今日のところは堪えて適当に流すところだった。流すところだったんだよ。
でも陽葵ちゃんはやっぱり若いなぁ。自分のためじゃなくて、誰かのために本気になって衝突も
いやぁ、でもこの選択肢を選んでしまった自分の老化現象に物悲しくなるね。あったあった、おばさんにも陽葵ちゃんみたいに若かったそういう頃。
二車の奴が1人ならその正論パンチは爽快だったけど、でも今日は彼の取り巻きちゃん達もいるから彼の顔をある程度立てとかないと有権力者だから敵が一気に増えちゃうのと公衆の面前で恥晒させた憎悪とかでヘイト管理が後々面倒なことになっちゃうんだって。
今ので同時に二車の怒りを刺激する起爆点となる越えちゃいけない一線を悠々と越えていっちゃった。
気持ち良すぎる正論パンチだったけれども!
タイミングが致命的に悪いことを除けば完璧!
「……俺が……ッ!弱いって言いたいのか!?」
「実際そうでしょッ?!日葵ちゃんの作戦に乗せてもらっただけで二車くんは何か結果を出したの!?キルスコア
「ふっ、ふざけんじゃねえッ!」
「!」
二車が右〈こぶし〉を振りかぶる。
奴の声が震えている。〈心理学〉上、完璧に奴が負い目を感じている図星点に突き刺さったのだろう。
身体が強張り頭を下げようと腰を曲げ膝をついている状態ではできることは少ない。咄嗟に出来たのは、陽葵ちゃんの普段着を背中から引っ張って2人がドドン太郎から殴られないように引き放そうとする。
でも流石は陽葵ちゃん、びくともしない。組手の練習の成果が裏目に出た。
流石じゃないんだわ。体感が強すぎる。よろけてよ。
「見切ったッ!」
「なっ!?」
「えいっ!」
バキッ!
「ガハッ……!?」
「!?」
「「「「骸佐様?!」」」」
だが——それはこの場に居た誰もが予想外だったのだろう。
目の前で起きた現象に本人を除く全員が目を丸くする。
彼女はドドン太郎の一撃を、〈受け流し〉するように彼の手首を掴み脇に逸らしたのだ。勢いあまってバランスを崩したところに、腕を引き寄せながら脇腹目掛けて鋭い膝蹴りが炸裂。
ドドン太郎の口から粘液交じりの唾液が飛んで、うつ伏せに倒れる。
あーあーあーあーあー……。私が教えた護身術が混ざっちゃった。ダメって言ったのに。アレは完全に下部肋骨(第11肋骨)に入ったでしょ。
「~~~~~~ッ!!!!!」
打撃としてはこちらの予測通り、ドドン太郎は立ち上がらない。
いや、立ち上が
脇腹を押さえて尺取虫のように背中を丸めて蹴られた患部を両手で押さえている。
「次は誰っ!?まだ寄ってたかって日葵ちゃんを虐めるつもりなら絶対に“絶対に!”許さないよッ!」
五車学園では、明るくて誰にでも距離感が近くて怒ったところなど見せたことのない“あの”陽葵ちゃんの見たこともない覇気に当てられ、おまけに総大将も一瞬で伸されてドドン太郎の取り巻き達は及び腰になっている。
私もびっくりしすぎて動けない。いや、もうなんか、いろいろと……。能ある爪は鷹を〈隠す〉(混乱)っていうし、もしかして虎視眈々と狙ってたとか?
「ほら日葵ちゃんも立って!」
「ぁ、ぁうん」
その間に土下座に入ろうとしていた私を、陽葵ちゃんが手を差し伸べ立ち上がらせてくれる。
私の彼女の覇気に押されてなされるがままになる。
そしてそのままこれまでに私が親友にやってきたように、手で私を遮って公民館側に後ずさりしていく。後退に合わせて、陽葵ちゃんもガルガルガルと猛獣のように周囲を〈威圧〉し取り巻き達をけん制ながら公民館側に下がって来る。
こちらが公民館に入ったあたりでドドン太郎は取り巻きに助け起こされ、蹴られた患部を押さえながら陽葵ちゃんを睨みつけている。
陽葵ちゃんもまた一歩も退くことなく、ドドン太郎を睨みつけている。
今や陽葵ちゃんが先陣を切って、その背後に私がいる。
公民館内では鹿之助くんも私の前に入って、一歩出遅れたけどドドン太郎一向に立ち向かおうと戦列に加わる。
綴木さんは見当たらないがどこかに隠れたか裏口から逃げられただろうか……? 素晴らしい。ちゃんと指導した逃走術に従ってくれている。
「
「……!」
二車も相当頭に来ているのだろう。
陽葵ちゃんのことを
こっちの頭に血が上るが、奴の行動で頭に昇った血の気は即引く。
ヤツはあろうことか背中に帯刀していた大太刀を背中から引き抜いてこちらにやってくる!
……怒りで我を忘れているようだ。
取り巻き達も小刀のようなナイフを取り出す。集団心理も働いてしまっている。
「ちょちょちょちょちょ」
いよいよ本当にまずい。
一歩遅れながらも私を下がらせようと護ろうと動いてくれた鹿之助くんには悪いが、即座に入れ替わって早く逃げるように伝えて追い払う。これはもう火災報知器だとか非常ベルを押して第三者を召喚しなきゃいけないレベル!
刀を抜かれて危機的状況なのに下がろうとしない勇猛果敢な陽葵ちゃんを羽交い絞めにして引っ張る。
「来るなら来いっ!」
『来るならこい!』じゃないの!
逃げなきゃダメなの! 立ち向かわないで! 相手は武器を持ってるんだよ!!!
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬっ!」
でも動かねえ!まるで大木のように足が動かない!陽葵ちゃんの力が強すぎる!
一般人でムチムチな体つきをしているくせに、どっからこの力が出ているんだ?!
火事場の馬鹿力の使い所さんを間違えてる!間違えているよ!陽葵ちゃん!!!!
最初の組手の説明会で『実戦で武器を持った相手からは逃げる』ように指導したでしょうが!!!
「この状況は逃げましょう!」
「……」
「陽葵ちゃん!?」
「…………」
「陽葵ちゃんっ?!!」
駄目だ! 微動だにしねえ! こっちを見もしやしねえッ! 意地になってやがるゅ!
ええい!陽葵ちゃんの命には替えられない!かくなる上は——
陽葵ちゃん用の切り札——ッ!!!
「今すぐ指示に従ってくれるなら、キスしてあげますよ」
諸刃の剣すぎる言葉をそっと耳打ち。
でもこれぐらいしないと目の前のオレンジの対魔忍モドキを動かせる
咄嗟の判断でできた最も効果的で最悪の最善策だ。
「!!!!!!!」
首がぐるりんとドドン太郎から私へと向けられる。
女同士で親友なのに背筋が凍るような興奮に支配された2つの眼が私へ注視される。ちゅーしようとするだけに。
ドドン太郎を征した後は、今度は陽葵ちゃんへの対応策を練らねば。あーあ。
あと敵が得物を構えている時は、目を逸らすのはダメだって言ったでしょ……。
その途端に今まで足の底面から根が張っていたんじゃないかと疑わしくなるほどに硬直していた陽葵ちゃんがすっぽ抜ける。
まるで童話『大きなカブ』がクライマックスで引っこ抜けた場面の如く、スポーンと私側に引き抜かれる。
……願わくば今回で味を占めないことを祈る。
「のんきに逢引してんじゃねぇッ!」
ドドン……否、二車の凶刃が迫る。
だが問題はない。
この状況まで持ち込むことができれば対処に切り替えられる。
陽葵ちゃんをジャーマンスープレックスのように引っこ抜いて、立ち位置を入れ替える。
公民館の出入り口に通じる通路の横幅はせいぜい2.5ⅿ程度。床から天井までの高さは3.3ⅿ前後。奴が背中から引き抜いた大太刀は2ⅿほど。そんな奴が私達に危害を加えるなら方法はいくつかに限られる。
地の利は私達にある。
ガキィイィンッ!
最初の斬撃は、咄嗟に手にした最寄りの道具——近くに立てかけてあった来客用のパイプ椅子で弾いて〈受け流し〉する。
いくら10㎏程度の重量を持つ物干し竿のような大太刀であれ、その動きを制御している人体の中心から離れれば離れるほど剣先のブレは大きく、遠心力が加えられた斬撃の流れに沿われるとより制御できないものとなる。
だからと言って大きく振りかぶろうものなら、奴の凶刃は公民館のコンクリート壁に阻まれて攻撃を繰り出すことを阻害する。
最初の一撃を弾いて陽葵ちゃんを押しやりながら通路、2階へと通じる階段のある廊下側に逃げるように促す。
『陽葵ちゃんを護る』
『両方』やらなくちゃあならないってのが
…………いや、これ探索者のやらなきゃいけないことか?
前者はともかく、後者に関しては探索者の領分じゃないな?
いずれにせよ。この時点において裏口への逃亡は愚策だ。二車の取り巻きの何人かが居なくなっている。もう裏口は封鎖されているだろう。
私は対処できるが挟撃は避けなければならない事態の1つだ。
そのまま2階への部屋への避難と待機をジェスチャーで指示する。第三者勢力の加勢も含めて、2階まで逃げ切ることができれば親友と恋人を連れてこの包囲網を突破できる策があることにはある。
――きっと骨が折れる。ドドン太郎の子分の。
「約束だよ?!約束だよ!!?」
ほんと、陽葵ちゃんは……。
でも責めたりはしていない。行動に対しては怒る気もない。判断に関しては叱ろうとは思うけど。
だって彼女はまだ子供だし、彼女なりに私を護ろうと想って動いてくれたのだ。
今日は有難迷惑感もあるけど、その心遣いはとてもうれしい。本当に嬉しい。
そっちの気はないけど、惚れてしまいそうだ。
これまでの人生。護ることはあっても、護られることなんかなかったし。
鹿之助くんも私を『護りたい』と言ってくれたのは嬉しかったな……。
でも実力が身についてからにしてね!
まだまだ実地戦闘に関しては赤子同然でしょうが!
さぁて護るために、ひと暴れしましょうか!
~今後について~
X(Twitter)でも言及しているように1500日までは原作の対魔忍RPGを継続する予定ではあります。
ちょっと最近、運営に対してTLにて愚痴をこぼしているように看過できない面持ちです。
個人の範疇でもAI事件でもいろいろありましたが、企業がやるのはちょっと……ね。そういう契約書でもやり取りしているのであれば、部外者が口をはさむ余地はないですけどね!
まぁ、私が課金を辞めたところで他のPLたちが課金をするでしょうから、大丈夫でしょう。
さて次に予定されている新たな佐〇急便コスチュームでの会見、楽しみですね!
おいUNEI、お前さっきから(向かって左上のカンペ)チラチラ見てただろ!嘘つけ絶対みてたゾ。
対魔忍と対魔忍RPGは好きなので、内容を確認しながら本小説は引き続き執筆したいと思います。
アップデートが本作も終わっていませんが、原作対魔忍RPGも6月終えてまだまだバグ修正中ですし、そこは原作
こ、今年中までにはルビの表記バグは修正します…………!