対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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30章 『対魔忍世界の夏休み』(最終日)
Episode210 『夏休み最終日といえば……』


 

 夏休みも最終日がやってきた。

 

 二車との一件があったものの、不思議なことに二車の方から報復行為のような出来事は家族ぐるみで被害にあっていない。陽葵ちゃんの所も問題ないようだし。

 一応、陽葵ちゃんには何か問題があったら私へすぐに電話をかけるように伝えている。結果、ラブコールが増えたけど。

 でもラブコールができるのは彼女の安全が保障されていることの裏返しでもあるので、ほどほどの頻度であるならば付き合う。

 

 綴木さんが動画に二車の醜態を記録しておいてくれたことがこんなにも利益をもたらすなんて。いやはや、未来でも動画で撮影してそれを脅しとして扱うというのは有効なんだなぁ。でも時代が時代だからAI技術なんかで動画編集とか偽造とかもありそうな話なんだけどな。やっぱ、即座に効果を適応させる程度ならまだ強いのかな?

 

「うぃー……」

 

 今日で8月も終わる。

 最終日だからって慌てて作業をするのは素人のやること。玄人ならばドーンと構えて、準備を既に整え済ませているもの。

 今日は稽古をつけている3人の愛弟子にも身体をゆっくりと休めて、2学期の始業式に備えるように告げておいた。

 

 …………そういえば、鹿之助くんとアベック*1の間柄になったのだけど。結局、アベックらしいことは何もしなかったな。

 3週目は五車組と主に陽葵ちゃんと夏休みのイベントを消化して、4~5週目はほとんど鹿之助くんと陽葵ちゃんと綴木さんの組手と格闘技の訓練に付き合ってたわけだし。

 午後もほとんど研究に割り当てたから……。

 

「2学期に入ったら、鹿之助くんと恋人っぽいことをする……」

 

 枕で顔面を潰しながら呟き、それから枕を胸元で抱きしめる。

 でも恋人っぽいことってなんだろうか?

 お恥ずかしながら前世では恋愛なんて余裕はなかったから人生二週目でもわからない。

 それに心の深部では『本当に良かったのか?』『この選択肢は誤りでは?』と自問自答が続いている。

 

「…………」

 

 自問自答を振り払うように手足をバタつかせて邪念を振り払う。

 恋人っぽい行為について思考のリソースを割いて余計なことを考えないようにする。

 

 恋人っぽいことって……陽葵ちゃんと普段、遊びに出かけているようなこと?

 買い物を2人きりで楽しんだり、夏祭りみたいなイベントごとに参加したり、2人きりでレストランに行ったり、プレゼントを送ったり? プリクラとか撮ったり、ホテルとかで1発——

 

「……んっ

 

 そのまま左手でショーツの上から割れ目をなぞるようにそっと触れる。

 

「……触れたらムラムラしてくるじゃん……

 

 肉体が10代のせいからか自発的に性的興奮を促さない限り、自家発電に至ることは無くなったがそれでも中身がアレだからか当時の湧きあがる性欲を思い出して悶々とし始める。

 男性の身体についてのグラフを知る限り、性欲に関しては10代中盤が最もピークになるというらしいじゃん? その性欲グラフの高さは30代中盤の女性の2倍っていうじゃん? 鹿之助くんも私のことを考えてマスターベーションに至っているとか想像を膨らませていくと安心感が助長されて、豆のあたりも根元から先端を一方通行でなぞるように撫でて皮をむく一段階前の始動に入る。

 右手で抱えている枕を彼の頭だと連想させてぎゅっと抱きしめて彼の頭頂部を嗅ぐように――

 

ピンポーン

 

「…………」

 

ピンポーン

 

 人がオナニーをしようと思っているところにインターホンとか、一番現実に引き戻された挙句に性のボルテージがだだ下がりだからやめてほしいんですけど。

 

ピンポーン

 

 10代の女性のオナニーは貴重なんだぞ。

 

ピンポーン

 

 こっちは過剰なストレスでまな板なんだから、ちったぁ女性らしい部位の発育をオナニーで女性ホルモンを促して豊胸しなきゃ——

 

ピンポーン

 

 はいはいはいはいはいはい。聞こえてますって。分かってますって。

 行けばいいんでしょ。行けば。

 お母さんもいないからこんな調子で連打されているんだろうね。そうなんだろうね。さっさとドアスコープで相手を確認してからオナニーの続きをしますよ。

 おう、鹿之助くんをオカズにした正統派オナニー、あくするんだよ。

 

………

……

 

ピンポーン

 

「はぁぁぁぁぁー……」

 

 出たのはクソデカ溜息。

 ドアスコープの先でインターホンを連打している犯人は陽葵ちゃん。

 窓から玄関扉の(ひさし)を覗いても姿が見えないから誰かな?とは思ったれども。

 8月のうち16日しか鹿之助くんと過ごしてないのに、陽葵ちゃんだけは23日ぐらい一緒に居る換算になるのだけれども? 通学している時より多いって何?

 

 でも連打に至った理由もわかる。

 陽葵ちゃんの両手には山盛りの宿題の山を抱えている。重さにこらえながら早くあけてほしい一心で連打をしているのだろう。

 

 寄りにもよって様式美とも言える夏休みの最後らしいイベントを持ち込んでくれたね。

 恋人より恋人らしいイベントの消化を陽葵ちゃんとほとんど終わらせているような気がするよ?

 

「はいはい……」

 

 ろくに身支度を整えることもせず、ボサボサの髪の毛、タンクトップ、ショーツ姿で扉を開ける。

 自室は冷房を付けていたとはいえ部屋を出たら暑いし、オナニーで身体は火照っているし、何もまたわざわざ2階の階段を昇って自室まで戻って髪の毛を梳かして化粧をしてズボンを履くのがシンプルに面倒くさかった。陽葵ちゃんなら下着(ショーツ)姿でもいいかなって。

 襲われる危険性はあるけど、両手に宿題の山で機敏に私を捕まえに来られるとも思わない。

 

「だから言ったでしょう。『課題は初日に片付けて後顧の憂いを断っておきましょう』って、できないなら毎日少しずつ処理していって――」

 

 クドクドとした説教混じりになりながら扉を全開放にして、親友を招こうとする。

 

「だってー……」

「そんなこと言ってもさぁ」

 

 扉を全開放しにして両手いっぱいで扉を開けることのできない陽葵ちゃんを招いたはずだった。

 やれやれ系みたいに視線を床石に降ろして扉を開けたせいで、すぐには気づけなかったがもう1人聞き覚えのある声が聞こえる。

 

「……!?」

「おじゃましまーす!」

「お邪魔するぜ……えぇっ!?」

「ぱぁぁぁぁああああああああああ!!!?!?」

 

 鹿之助くんの驚きの産声すら掻き消しかねない自動車のクラクションのような、私の甲高い悲鳴が玄関口に響き渡る。

 まるで雪山の人間喰らい/ウェンティゴのように大股を開いた滑空のポーズで自室までの階段を3段、2段飛ばしで駆け上がり自分の部屋に逃げ込む。

 簡易的な化粧で眉毛を書いて、無難なカーゴパンツを履いて、正統派潮吹きオナニーで使おうと思っていたペットシーツを隠して、ボサボサの地毛を梳かしてポニーテールで結って、研究用ノートを本棚にしまう。

 

………

……

 

「今日は来るって予定なかったじゃん!」

 

 あまりにも不意を突かれすぎて半ギレのまま、私の自室に大量の夏休みの宿題を持ち込んだ2人――特に鹿之助くんへ剣幕が凄いまま怒る。

 きっと私の顔は真っ赤だろうが、自慰行為の余韻か、鹿之助くんに見られたという恥辱のせいか、はたまた怒りによってなのかは不明だ。

 

 だが私にも恋人に会うならば、それなりの準備ってものがあるのだ。流石にアポイントなし……でもいい*2けど、せめてドアスコープ越しに顔ぐらいは、顔ぐらいは見せて欲しかった。

 思いっきりすっぴん顔見られた上に、タンクトップ、ショーツで出迎えちゃったし、髪の毛ボサボサ、ズボラの国士無双。役満状態で出迎えちゃったんですけどぉっ!?

 

「今日も日葵ちゃんに電話したんだけど……」

「で、電話に出なかったし……」

 

 正座をしながら申し訳なさそうな顔をしている2人の言葉に、布団の上に投げられたスマホを見る。

 充電ケーブルは繋がっているが、2人からの着信はなかった。

 ――もしや。と思い、スマホを確認すれば…………。

 

「あ。根本が抜けてる……!」

 

 顔が(>_<)こうなる。

 うーん! これは2人とも悪くない! 事故だ。

 二車側の襲撃がなくてよかった!!!!

 

 あと最近のバッテリーの減りが早い原因はだいたい陽葵ちゃんのラブコールと高位魔族の蛇子ちゃんのせい。

 アイツもストーカーみたいなレベルでめっちゃメールを送り付けてくるじゃん。陽葵ちゃんを簡単に越えていくレベル。返信がないってことはそういうことなんだから諦めろよ。こっちも暇じゃないんだよ。社会人の女性高位魔族ならそれぐらい察しやがれ。お前は高位魔族と社会人何年目だよ? 私はお前とは遊びたくないんだよ。

 

日葵ちゃん。夏休みの宿題が終わってなくて、助けてもらいたいんだけど助けてもらえる?

お、おれも……。いくつかは昨日片づけたんだけどさ……。数学とか物理とか難しすぎてよ」

 

 2人は私に烈火のごとく怒られた反動で、甘えたような猫撫で声・命乞いでもするような上目遣いで尋ねてくる。

 

「…………優等生の心寧ちゃんやヘヴィ子ちゃんには教えてもらえなかったの?」

 

 意地が悪い質問だが、素朴に見える疑問を2人に投げてみる。

 でも2人は私を頼って来ているわけだから、何となく理由は薄々察せないこともない。

 

「心寧ちゃんは最近ずぅーーーーっと朝も昼も夜も鹿子ちゃんに付きっ切りで、忙しそうでとても聞ける状況じゃなくて……」

「組手もそうだけど、日葵は勉強とかも教えるのが上手いから……」

 そういう部分もあるよ!駒水ちゃんも日葵ちゃんのこと上手いって言ってたから!」

 

 嬉しいこと言ってくれるねぇ。

 鹿之助くんの理由陳述に照れる。そんなことを言われたら断れないじゃないか。

 陽葵ちゃんは正直に答えてくれてありがとうね。そういうところ嫌いじゃないよ。

 私の表情筋が緩む。

 

まったく……。世話の焼ける2人ですね。どの課題が終わってないんですか?」

 

 ちゃぶ台を広げて2人の山積みの課題に目を通す。

 時間も限られているから写せるものはさっさと解答を写させる形で時間短縮を狙う。

 特に歴史とか古典とか公民とか英語とか関連付け・暗記系統のものはサクサクと——

 

………

……

 

 文系の課題を済ませ、残りは理系に分類される課題となった。

 こちらは私の答えを丸写しさせることなく、2学期で流用するであろう範疇は本人たちに問題を解かせるようにしている。この手の問題は複写するだけでは本人たちのためにならないからだ。

 2人とも知恵熱が出そうな勢いだが、鹿之助くんには渡している書式での教科書とは異なり解説者——今回は家庭教師の私付きなので、2人の分からないところや理解力に合わせて個人指導ができている。

 

 言っては難だが人に何かを教えるという行動に私は活き活きするらしい。駒水ちゃんの報告書作りの時のようにワープロとプリンターを起動させメガネまで持ち出し、方程式やら法則やらを印刷してまで解説に没頭している。前世では感じられなかった新たな欲求に半分支配されていると言っても過言ではない。

 

 2人は学生さんだし、人間の集中力における15分45分90分の法則に2人を当てはめて、45分で問題を解かせたら15分休憩のスパンで課題を順調に片付けていく。

 もちろん、解説をする際は2人を勉学に対して飽きさせないように工夫を施しながら解説を行う。人が記憶を維持しながら話を聞ける時間は20分、人が受け身の状態で興味を持って話を聞ける時間は8分なのだから。

 

………

……

 

「やっぱ、五車学園の教育システムに疑問を感じざるを得ない」

 

 休憩時間中に学校教材として配られている五車学園の教科書をペラペラ捲り、寝転がりながらボヤく。

 私のボヤきに鹿之助くんと陽葵ちゃんがゴロゴロして休む私の方を見て首をかしげる。些細な独り言なので聞き流してもらっても良かったのだが、私の発言に興味を持ってくれたのならポツポツと語ろうと思う。

 

「この宿題を形成するに至った教材元は、少なくとも学習用としてこの教科書を作ったものか怪しいものということです」

「例えば?」

「とにかく問題を小難しく考えさせようとか、例題もやけに引っかけ問題が多すぎるんです。運転免許クソ問題試験のような……」

「日葵ちゃんから見てこの教科書は変なの?」

「ええ。こんなんじゃ一握りの人間しか勉学に興味を持ちませんよ。持ったとしても、半数以上が覚えやすい暗記や読解力が試される文系に流れるでしょうね。何が目的で、こんな——まるで意図的に学習に嫌悪感を抱かせるような……」

 

 上半身を起こして片膝を立てるようにしながら、片手でも教科書を開きながら見つめる。

 ブルーライト95%カットの伊達メガネの中心部を人差し指で持ち上げる。

 

 〈数学〉や〈物理学〉と言うものは、理解が追いつけば楽しいものなのだ。そして同時に人生を豊かにし、想像もしていないところで命を救う一手にもなる。

 東京キングダムにて短時間で自分を巻き込むことのない大爆発を引き起こせたのは〈数学〉があったからだ。東京で鹿之助くんが本物だと確証に近づく一歩を得られたのは体幹移動に対する〈物理学〉があったからなのだ。

 

 それなのに……この五車学園の教科書はどうして…………。

 

「こんなんじゃ問題を解く楽しみを見つける過程の段階で嫌になって、勉強から学生が離れるばかりですよ……」

「でも俺は!日葵に教えてもらっている間は、少しは勉強が好きになったぞ!」

「私も!私も!五車学園で習っている方程式以外のやり方も教えてもらったりして、それをゲームをみたいに教えてくれるし!こんなやり方があるんだーって知れるきっかけを持てたよ!」

 

 立てた片膝に肘をつき手のひらに顎を乗せて愚痴のようなボヤキに2人がフォローしてくれる。報われたような気がして心が躍る。

 ……おっといけないいけない。自分の機嫌は自分で取らなければ。子供じゃないんだから。

 

「……ありがとうございます」

「お礼を言わなきゃいけないのはこっちだよ! ありがとうね!日葵ちゃん!」

「そうだぜ! 今日も俺達の勉強を見てくれてありがとな」

 

 2人のお礼に私も微笑みで返事をする。

 ここでピピピッと休憩終了のアラームが鳴る。

 音に反応して2人が勉強に戻るのを嫌そうな顔をするが、時間帯的にもいい塩梅だし私も2人の機嫌とモチベーションが上がる魔法の言葉をささやく。

 

「そろそろ15時ですね。あと1時間頑張ったら30分の長めの休憩を取りましょう。あと頭を柔軟にさせるための糖分摂取でおやつを持ってきますよ」

「ほんとか!」

「ええ」

「わぁーい!日葵ちゃん大好きー!」

 

 自信満々の私の提案に喰いつきが良くなる。

 陽葵ちゃんが大胆な告白と共に私に抱き着いて来ようとするが、華麗に〈回避〉する。

 彼ピの前で、この親友は……油断も隙もあったもんじゃない。

 

 

*1
死語:カップルの前身。恋人や夫婦のような男女の組み合わせを指す

*2
陽葵ちゃんは基本アポイントなし




~だそく~
日ノ出 陽葵「日葵ちゃんが教えてくれたやり方って、五車学園で習った解き方じゃないけど大丈夫かな?」

上原 鹿之助「それを聞いて俺も心配になってきたぞ……大丈夫なのか?」

釘貫 神葬「大丈夫です。採点する教員に依りますが五車での問題の出題傾向と採点方式として最終的に答えだけ合っていればいいので、過程はそんなには重要視してないっぽいんですよね」

上原 鹿之助「そうなのか?」

釘貫 神葬「ええ。統計学で見るとその傾向が強めです。それに外へ(社会人として)出たら結果と人間関係だけが重要視されるようになりますし、様々な方法を知っておいた方がのちのちに有利に動きますから。将来性を加味すれば気にしなくても大丈夫ですよ」

日ノ出 陽葵「おぉ~!」


~あとがき~
 今度はバジリスク〜甲賀忍法帖〜とコラボするみたいですね。
 どうやら一部のキャラクターにはCVがついていないそうなので、CVなしには寝室はなさそうですが……。4月コラボから各イベントごとにバグ祭りをたたき出しているのに、そんなイベントを開いてLiLithは大丈夫なのでしょうか?
 そしてソシャゲ低迷期“コラボが多くなった作品はサ終が近い”みたいな傾向がありますし、9月の7周年祝い、五車祭りまでは持たせる延命措置じゃないといいですね……。

 そして穂稀なおくんの学園証購入しました!
 届いていたものをよくよく確認したら、穂希なお印字されてて笑いました。

 “希”と“稀”……公式も俺みたいなミスするやんけッ!
 じゃあ、二次創作勢の俺とは誤字コラボしようか?!
 ではうちからは理遁の【探索者】釘貫 神葬を出しとくわ!w
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