対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。 作:槍刀拳
「どこでどうやって対魔忍については知ったのかしら、釘貫さん?」
最初で最悪のやらかしが判明し意気消沈しているところへ、校長席に座る対魔忍から次の尋問内容が飛ぶ。
「それは——」
私が対魔忍について知り得ているのは、前世で実際に対魔忍と出会っている経験があるからだ。
そしてこの世界で敵地に痴女みたいな衣装で、正面からカチコミを仕掛けに来たことや身体のラインやら乳袋やら乳首が浮き彫りになる変態的なラバースーツを着用して乗り込んでくると言ったら対魔忍ぐらいなものだ。
男性の本能に漬け込んだ合理的な服装ではあるがね。
でももっとほらぁ。近未来だし、なんかあるじゃん?
そういうのじゃなくて、アメリカの特殊部隊や自衛隊みたいなプレキャリ装備みたいなの。
私の元居た時代よりも半世紀も経過して技術進歩や魔族の介入による超科学が発展しているようにみえるけど、どうして正義の味方がそっちに方針を取りに行っちゃったかな……。
尻揺れとか、乳揺れとか、浮き乳首とか、シースルーとか、覚悟ガンギマリの鼠径部とか、網タイツで房中術の一環による男性の本能を刺激する合理さ、合理的ではあるんだけど……!
でもさ、なんかさ、違うじゃん?
そうじゃないじゃん?
「…………」
言葉に詰まっているようなフリーズしているような素振りをする。
隠し事をすればまたカーディガンを羽織って包丁を持っている既婚者の対魔忍から尋問を受けることになるだろう。
学園生活での問題行動が多すぎて、教師陣からの心象は最悪かもしれないが現時点で更に悪化させるのは悪手でしかないことぐらい私でもわかる。
ここは正直に答えるべきだ。何も後ろめたいことは無いのだから。
「……私が釘貫神葬であったころ、既に対魔忍と出会ったことがあるからですね」
「その対魔忍の名は分かるかしら?」
「ええ。忘れる訳がありません。水城ゆきかぜさんと秋山凜子さんです」
「その2人とは何処で会ったか覚えている?」
「ヨミハラという地名にあるアンダーエデンという店名の高級娼館内でした」
ピンク色のカーディガンを着た対魔忍を介さず私と紫色の対魔忍による単独のやりとりのせいで、視界の端ではピンク色のカーディガンを着た彼女は紫先生とアイコンタクトを取っている様子が反射した戸棚のガラス戸から観察できる。
されどもし私の発言を疑うのであれば、正面の彼女に同じ質問をさせたらよい。この質問に関して私が困ることは無いので、背筋を伸ばして胸を張りながら淡々と堂々としながら校長である対魔忍と話す。
「それはあなたが2人とは客として出会ったの?」
「いいえ。まさか。私がとある事件を追っていたところ奇襲を受けて気絶させられてしまったことがあって、目が覚めたら娼婦として調教されそうになっていたところを秋山凜子さんに助けて頂いた次第です」
「では水城さんとはどこで?」
「…………彼女は任務に失敗していたようで……。ですから、彼女と出会ったのは娼館の道中ですね」
私の含む言い方に引っ掛かりを覚えたのか、教員同士で短いアイコンタクトが交わされる。
またピンク色のカーディガンを羽織っている対魔忍に私が秘匿している情報を話させようとしているのか? だが私が見聞きしたことは決して彼女達へ話すべきではない。たとえ疑われる火種になろうとも、我が身かわいさで赤裸々にするなど言語道断。水城ゆきかぜちゃんにナニが行われていたかなんて。第三者の私が話すべきではないことだ。
駒水ちゃんの時もそうだったけど対魔忍ってやつは、本当にセカンドレイプが大好きな派閥だよな。それとも女の敵は女ってやつか?死ねよ。
そこが対魔忍組織の悪い部分だと私は思うね。
探索中にドジを踏んだ私達も悪いが、そもそも救助を行う任務はバックアップなしで子供にやらせるべきではなかっただろ。だいたい元を辿れば大人のテメエ等の仕事だろうが。
『質問するなら聞いてみろ。詳細は語るが、ただでは終わらせない』と正面のピンク色のカーディガンを着た対魔忍を〈威圧〉するような視線を送る。
私の視線に正面の彼女も警戒した顔持ちになる。
「…………そう」
「ええ」
対魔忍について知っている経緯に関しては、さらに詮索してくることは無く話題を変えるつもりなのか手元の資料を眺めている。
よかった。セカンドレイプは行われなかった。気を張り詰めた〈威圧〉するような視線を解く。
「…………それで、貴女は何者なの?」
それで、私が何者なのか……。
そっちの質問は……かなり難しい質問だ。伏せ目になりながら左手を口元に持って行き、右手の指先を左肘につけて考える。
私は一体、何者なのか。
「……わかりません」
「は?」
一呼吸を置いた私の回答に紫先生の〈威圧〉的な疑問符が飛ぶ。
「誤魔化しているわけではありません、本当にわからないんです」
紫先生の〈威圧〉行為にも負けじと振り向いて、眉をひそめながら応対する。
彼女の表情は戦斧を振り上げていつでも私の頭をカチ割ることのできる体勢に入っていて、前髪で目元に影を作ってはいたが後ろめたいことはないので逃げはしない。
その程度の脅しで屈すると思うなよ?
「そんな嘘でやり過ごせるとでも、本当に思っているのか?」
「いいえ。嘘はついてません。わかっているのであれば、この場できっちり答えます」
「…………」
怯えを一切見せず、紫先生の赤く爛々と光る両目を合わせたまま答える。
確かに私は(新)クトゥルフ神話TRPGというTRPG世界線に住まう探索者だ。しかし、探索者という呼び方はあくまでもクトゥルフ神話TRPGで定められている1つの定義にしかすぎない。
私も私自身の説明書を読むまでは、探索者という括りすら知らなかったし、認知もしていなかった。だから今の様々な出来事を状態で私が何者なのか答えることは非常に難しい。
「——ですので、お名前は存じ上げませんが私の正面にいらっしゃられる先生。私に校長先生と同じ質問をして頂けないでしょうか? 私はこの尋問についてどのようにお答えすればよいか分かりません。ですが先生から問いかけて頂ければ恐らく、私は何者なのか頭の中で混沌としても正確な情報をお話することができると思います」
紫先生と応対は一呼吸入れ、今度は睨みつけるのではなく真摯な態度で正面の対魔忍に向き直り話しかける。
もし私の推測と予想が正しければ、正面の対魔忍には忍法として催眠術のような術で、私の考えている情報、隠している情報を正確に話させてくれる——ある種の答えを画一させる〈精神分析〉のようなセラピー効果があるかもしれないと思ったのだ。下手をすると余計な情報を話してしまうリスクもあるが、この件に関しては私も何者なのか表現できない怪しいところがある。
だが探索者流として使えるものは使って、私も釘貫神葬という探索者の定義について再度認知を固めるべきだと判断した。あわよくば彼女の忍法について更なる情報を得られることにもなる。
彼女は一旦、校長の方を見てから私に視線を戻す。
「では貴女は何者なのかしら?」
「『私は……私は他の世界に居た転生者です。分類は人間と言う種族だと思います。転生に至ったのは、とある事件の解決で過ちの選択をしました。その過ちのせいで拷問を受け殺されたかして、気が付いたらある空間に居ました。そこに居た褐色肌の牧師に転生の話を持ち掛けられて、承諾した時には青空日葵の肉体に憑依してこの世界に居たという次第です』」
「転生する前も人間だったの?」
「『はい。前の世界ではエンジニア職に勤めておりました』」
「ちょっと待て。警察や探偵ではないのか?」
自己分析を進める質問の合間に、背後から紫先生が水を差してくる。
振り返りつつも紫先生の質問には首をかしげる。
私が警察官や興信所、私立探偵、ましてや公安の職業に就いていた経験は一度たりともない。
「警察や私立探偵だったことは1度たりともありません。……なぜそう思うのですか?」
「先ほどから話を聞いていれば、事件を解決だとか、事件を追っていたと言っていただろう? 貴様が前世で対魔忍でもないのであれば、それは探偵や公務員である警察の仕事じゃないのか?」
その素朴な疑問点から考察するに、対魔忍世界では機械エンジニア職は事件が起きたからと言って、事件の解決のために興味本位で調査を行わないのかもしれない。
「そうかもしれませんね。でも私がいたところでは、警察は民事不介入であまり役に立たず、事件が起きても仕事が増えないように事なかれ主義として被害者に〈言いくるめ〉たり、被害届を不受理処理にしたり、事件を隠蔽に至る傾向にありましたので」
「では警察は何をしていたんだ?」
「さぁ?私は警察官ではありませんでしたので。ただ加害者が日本人か、身内に警察官がいるか、SNSで動画やツイートがバズったりして大ごとになってから動くのが彼等の基本的な姿勢でしたよ。当時は既に警察に限らず通常手順では司法が機能してなかったんですよね」
「…………」
「……あっ、ごめんなさい。愚痴っぽくなってしまいましたね。ですので不可解な出来事に対して、個人とか友人達、時にはその出来事に興味を持った者同士での自力調査を行うことが多かったわけです」
「ふむ」
「それに手順を踏むことで時間のかかる警察の調査を待っていようものなら、手遅れで取り返しのつかない事態になりかねない事件もありましたし……」
「……」
「…………質問をして頂いて、ありがとうございました。おかげさまで踏ん切りがつきました。私も私が何者なのか」
「尋問しているのに自己分析を始められて、感謝をされるのはちょっと想定外かしら?」
正面の先生は役立って嬉しさと困惑が混じったかのような表情をする。
最初の対面ではニコニコと笑顔を作りながら臨戦態勢に近いものがあったが、今ではその険が取れている。
「つまるところ一般人になるのかしら?」
「『はい。転生者という分類にはなりますがね。お恥ずかしながら人生2周目です』」
「…………」
「まだ何か聞きたいことはございますでしょうか?」
ピンク色のカーディガンを着た対魔忍との対話を終え、校長先生に視線を移す。
その表情はどこか腑に落ちないとでも言いたげな顔だ。だから私としても引き続き答える意思を示す。
「では貴女の普段の振る舞いについていくつか聞きたいことがあるわね」
「普段の振る舞ぅ゙っ」
普段の振る舞いと聞いて、普段の蛮行が脳裏に過ぎる。
人生2周目が発覚した今、2周目の癖に稚拙な振る舞いがあまりにも多すぎる。
〈法律〉の少年法を盾に傍若無人に振る舞い続けた4カ月の出来事が責められているような気がして、大人にしては落ち着きのない問題行動の数々に後ろ指を指されているような感覚に陥る。
「…………見た目は子供。中身は大人のくせして暴れまわってすみませんでした……」
「自覚したようで何よりだ。今後は少し大人しくしろよ?」
「はい」
「話は聞いてはいたけど、この話を聞いたあとだとアレ等は大問題よねぇ」
かなり咎められているし痛いところを突かれまくっているが、事実ではある。
子供ならまだしも、大人がやるにはハっちゃけすぎてはいた。この身体の年齢を盾と武器にして傍若無人にやることはやっていた自覚は少しある。発覚した上で分析をすると明らかなカスの振る舞いである。
紫先生は威圧的だが、正面の対魔忍は寛容なのかケセラセラと軽く笑い流している。
「人生1周目の子供時代では、できなかったことがあまりにもやりたすぎて……」
「気持ちは分からなくもないかしら? ……私も子供に戻れたら~とか考えたらやりたいことはたくさんあるもの」
「
なるほど、正面のピンク色のカーディガンを着た対魔忍は津島先生と言うのか。
そして想像力を豊かにして同調してくれるあたり根は優しいのかもしれない。もしくは飴と鞭の役割の飴役。そして敵として対峙すると凶悪な対魔忍なのかもしれないが……。
それでも私が逃げ出すことを踏まえたとしても、《神速》な動作である目の前の紫色の対魔忍の前では私の逃走行為など全て無意味であったはずだ。あえて校長室に呼び出して教師4人に囲まれた状態で尋問を受けるとは歓迎があまりにも盛大すぎる。
ここから導き出される答えは——もしや津島先生の忍法は対象を1人に“しか”絞れないのだろうか? となると、私が何かの事件に絡んでいて複数犯である線も疑われていた? これだけ手厚い歓迎ともなると主犯すら扱いされているのかもしれない。
……では一体、私がなんの事件に関与していたと疑われていたのか興味が湧き上がる。
~やったぜ~
やったぜ。 投稿者:対魔忍二次創作作者(8月20日(水)20時37分00秒)
昨日の8月19日についに対魔忍RPGログイン回数が1500日を突破して盛りあったぜ。
2000日まで報酬があるそうだが、そこまで連続ログインは続けられないんや。
再来週には連続ログインも1500日突破できそうなので、そこを区切りに対魔忍RPGに本腰を入れるのはやめるぜ。
あとはキャラクタービジュアルファンブックで補完するぜ。
約5年間も楽しいひと時を与えてくださった対魔忍RPGに感謝。