対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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Episode215 『最大級の問題、無事解決!』

 尋問はまだまだ続く。

 結局、私の誤魔化しは熟練の対魔忍達に通じることは無かった。

 エドウィン・ブラックとスネークレディの名前を出してから東京キングダムでの出来事は根掘り葉掘り聞かれることになったし、最終的には津島先生のご興味が8割による質問責めで私が何を行ったのか最後まで話しきってしまう。

 

 最初の見積もり段階から逃走する手筈だったが、包囲されて逃げ場を封じられてしまったため〈改造した釘打ち機〉と〈手斧〉で魔族共を露払いにしたこと。

 高位魔族の蛇子ちゃんが駒水ちゃんを人質に取りやがったので、彼女の尻を〈竹刀〉で引っぱたいて折檻プレイ(ギャンなきあそび)させたこと。

 ズボンちゃん*1によって一時的に空中へ囚われるが、大爆発の事件発生時にわずかな()を突いて逃げ出したこと。

 また包囲されたがアレクトラなる女魔族の角を〈ライフル〉狙撃したこと。

 ()()()()発生した〈科学(化学)〉現象でアレクトラ部隊側が壊滅してしまったこと。

 駒水ちゃんとは、自作のオークと武装難民の()を纏って離脱したこと。

 蛇子ちゃん側には一時的に捕らえられたが、見逃すことを条件に友達になることを強要され現状は友人の間柄であること。

 友人の間柄にはなったが、本心から心底友人関係など不本意であること。

 現地人(魔族)を味方につけて“大きなボート”を作り出し、“オール”を漕ぎながら東京キングダム大橋を死角の隠れ蓑に東京キングダム湾を渡り切ったこと。

 “大きなボート”での湾渡りの最中に陽葵ちゃんを回収したこと。

 最後は東京のホテルで陽葵ちゃんと駒水ちゃんと一緒に鹿之助くん達と合流して五車町に戻ってきたこと。

 

 1から10まで一番言いたくなかった東京キングダム脱出の手段と経緯、時系列について津島先生経由で話してしまう。

 駒ちゃんへ行った根回しが完全に灰燼に帰した。だから途中から半ば開き直ったような滑らない話・冗談話のように軽快なイントネーション、そして駒水ちゃんの正規文章を私の手で〈製作(文章偽造)〉したこと、彼女が上記の出来事で一時的な記憶障害を患っている件も重ねて伝える。

 これで学生の身である彼女へ公文書偽造罪の責任が負わされることはなくなり、罪の矛先は私へと向くはず。

 

 私が赤裸々に話せば話すほど津島先生の苦笑いは強固に引きつっていくし、紫先生は小さい疑問付とため息ばかり吐いて髪の毛やら身じろぐ音しか聞こえないし、校長先生が私を見る目が殺気ありきの鋭利になっていく。

 彼女たちにとっては信じられない出来事の数々だろうが、嘘・偽りの可能性は津島先生が尋問官を担当することで、すべて排除している。

 不服ながら、ここまで出来事を正直に話せて清々しい気持ちでもある。

 

「まっ。以上が東京キングダムで、親友と友達を引き連れて高位魔族から逃れることのできた大まかな道筋ですね」

「…………」

「他にご質問は?」

「…………」

 

 シンッとするような重い沈黙。

 

「無いようですので、私への尋問はここまでということでご容赦頂けないでしょうか? 喋り続けたことも相まって喉も渇きました。皆様のご反応から私の立場が相当に取り返しのつかない立場に居ることも把握いたしましたし、いつでも出頭尋問にも応じさせて頂く所存でございます」

 

 愛想のよい笑顔を向けながら諦めから湧き上がるような笑い声を上げつつ、両手をわきの横で軽く広げてサビを歌うアカペラ歌手のようなポーズをとる。

 

「私としては『対魔忍世界へ転生したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい』だけですからね」

「…………」

「えーっと、あっ。そうだ。不躾ではあるのですが、私からもお願いがございまして……」

 

 対魔忍側から返答はないが、私にとっては大事なことなので続ける。

 

「私が一般人であることは、他の学生対魔忍には秘密にしておいて頂けませんか?」

「……それはどうして?」

「駒水ちゃんや磯咲さんの反応から察するに、私は他の学生たちから対魔忍だと思われているのでしょう?」

「そうね」

 

 ふむ……。

 間髪を入れない返事に断言。

 鹿之助くんと、ヘヴィ子ちゃんと、ふうまへの言及はなしか。

 まぁいい。こちらに関しては自分で調べ上げる。

 だから何食わぬ顔してそのまま続ける。

 

「いえ、ね。私が一般人だと露見してしまうと要らぬ心配をかけさせてしまいそうな盟友が1人、強行に走りそうな親友が1人、自尊心がズタボロになりそうな人物が1人、約束がないがしろになってしまいそうな好敵手(ライバル)が1人居るんですよ」

 

 脳裏に過ぎる鹿之助くん、陽葵ちゃん、二車、神村の顔が浮かぶ。

 

 鹿之助くんとは既に恋仲だが露見していない以上、この場では対魔忍達に悟らせない方がいいだろう。

 ふうま家の話を聞く限りだと因習村らしい古い仕来りが残ってそうだが、対魔忍と一般人が付き合うのはどうなんだろうか? やはり問題があるのか? だがこれまでの鹿之助くんの反応。私のことを一般人と知っている上で付き合ってくれているのだとしたら問題ないのか? でも学生だし、その場の勢いで過ちを犯している可能性は否めない。

 ともかく仕来りの仕様が判明していない以上、こちらから個人的な関係性を暴露しないほうが良いと思う。

 されど彼との恋愛関係については、対魔忍側もこちらを洗ってくる以上、遅かれ早かれ彼女等も察知することになるのは違いない。ただ私自らがこの情報を今、おおやけにする必要がないと判断したまでだ。このカードは別のタイミングで切りたい。

 

 陽葵ちゃんの場合は私が一般人だと露見したら、普通に押し倒してきそうなんだよね!

 これまでに私が鍛えているにも関わらず陽葵ちゃんによく押し倒されていたのが、『陽葵ちゃんが対魔忍だったから』で説明がつきそうだし。私とは身体構造が違うとか、そういう忍法だとかで原理は十分だし。

 

 二車はただでさえ脱糞と見事な敗走したものだ。

 だから、そりゃ私が一般人と知った時の彼側の衝撃は計り知れない。逆恨みの確率がポケモソの技みたいにぐーんと上がってもおかしくはない。特定の土地絡みの有権者は恐ろしいからね!

 既にもう色々と手遅れかも知れないけれども。

 

 神村の場合は再決闘(リベンジマッチ)は私が挑戦したいことの1つだ。

 私が一般人だからって手を抜かれたり、勝負事から手を引かれたくないことにある。対魔忍だろうが関係ない。鹿之助くんと恋人関係になろうが、神村は私が張り倒す。引っ叩く。

 こちとら高位魔族の蛇子ちゃんを3回も泣かせてるんだから、1回ぐらいは神村も泣かせる。

 

「…………」

「順番に、上原鹿之助くん、日ノ出陽葵ちゃん、二車骸佐くん、神村舞香さんのことですね」

「……承知したわ」

「ご配慮感謝致します」

 

 深々と頭を下げて席から立ちあがる。

 背後にいる困惑顔の紫先生が手出ししてこないことから、尋問は一区切りを迎えたと考えていいだろう。

 

「ところで……」

 

 紫先生と津島先生に身構えないほどゆったりとした速度で紫色の対魔忍側を向く。

 

「校長先生のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか? 流石に在学5カ月目なのに自分の学園の校長先生の名前も知らないのは問題でしょう?」

 

 いつものニヤリとした顔ではなく、にこりというような穏やかな練習した笑顔で尋ねる。

 

「それもそうね。私は井河(いがわ)アサギよ。釘貫さん、ようこそ五車学園へ」

「井河校長先生ですね。ご丁寧なご招待感謝いたします。私は一般人風情ではございますが引き続き在学を許可して頂けるならば、これからもよろしくお願いいたします」

 

 なるほど、井河アサギ——という名称なら前世でも多少なら耳にしたことぐらいはあるかもしれない。コミックマーケットの第103回目で浮世絵風みたいな顔面で爆乳と共に巨大な看板として掲げられていたのをTwinterのタイムラインで見たようなことがある。対魔忍音頭とかいう音が爆音で響いていたような記憶もある。2025年の夏には精霊魔人とかナスの姿が晒されて居たような……。

 恐らく、組織の顔か?

 

 テロリストとの対峙の際には物陰からしか覗けなかったが、こうして正面から確認できさえすれば新たな発見を得られるものだ。

 私の正面に居る井河アサギ校長先生はウキヨエとは異なり、細目で碧色、もしくは翡翠色をした美女だ。対魔忍達の老化現象が表面上に現れるのか差し測ることはできないが顔つきから年齢を推察するに大凡30代中盤、前世の私より年下かもしれない。

 それにしても彼女の髪の毛は年齢に反していると言っても過言ではないほどに艶やかで蛍光灯の光で髪の毛が反射するほどだ。だが、その艶やかさは何日も風呂に入っていないかのような油での光沢感とは訳が違う。髪質が良いと感じられるような鹿之助くんと同じ艶やかさだった。

 彼女は長い髪を後頭部で結びオシャレな団子のようにしている。髪の毛の左右からのびり2本の触角のような髪の毛が彼女の個性を引き出している。

 服装は校長と呼ばれるだけには相応しい気品さを引き立てるようなフリルが付いた中世のブラウスのような衣類を身に纏っている。

 

「私の顔に何かついているかしら?」

「いいえ。何も」

「では何かまだ言いたいことがあるのかしら?」

 

 流石に彼女の顔をまじまじと見つめすぎたか。

 新たな目標である本命*2は未だ発覚してはおらず、津島先生の忍法の裏付け証拠も得られた今、対魔忍達にとって私はグレーに近い白の立ち位置に居る。

 しかしやはりその白となった立ち位置も先ほど認識を変えられたばかりだ。そのような人物がまじまじと顔を見つめて来たら何か頭の中で思惑を張り巡らせているかもしれないと警戒するのが普通だろう。

 

「……ご相談させていただいても宜しいでしょうか?」

「どうぞ」

「きっとご存じでしょうけど、私、何度か長期入院して欠席していた時期があるのですが、その期間中の休学願の届け出って校長先生に直接提出した方がいいでしょうか? それとも学園ですし、五車学園って大学みたいに学生課みたいな事務対応してくれるところってあります?」

 

 映画:『隣のヒットマン』で歯医者で主人公のオズが、ヤンニ・ゴーゴラックへ仲介手数料を尋ねたときのようなへっぴり腰な姿勢と上目遣い、それとジェスチャーで休学届けの提出先について尋ねてみる。

 

「…………」

「……」

「…………」

「……」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 微妙な沈黙の間が空間を包み込む。

 しかも映画の役者ように誰も笑って答えてはくれない。

 

「…………提出先です」

 

 だから念のため、もう一度ポツリと尋ねる。

 紫色の対魔忍にとっては高位魔族から逃げ延びた私がこんなことを尋ねるのは信じられないかもしれないが、私にとってはとても真面目で重要な相談だ。

 大学進学に出席日数は大きく響いてくる。成績や出席率によってAO入試資格などだって関わってくる。将来を見据えるならば聞いておかなければならない最重要事項の1つだ。

 

「……休学届けのよね?」

「休学届けのです。一応、室井先生が私を自主退院させない旨についての録音データは保持しているのですが、そちらも状況証拠として添付した方がよろしいのでしょうか?」

「いいえ、その必要はないわ。事情なら私も知っているし、休学届けなら書類一式さえ渡してくれたらこちらで受理するわね」

「いよっっし!!」

 

 井河校長先生の目前で小さなガッツポーズを作り出し、ウサギのように小さく細かく飛び跳ねながら歓喜を表現する。

 今までの立場を考慮し、大きな動作には至らないように配慮しつつも嬉しさのあまり腕で上半身までを振るわせながら背後を振り返る。

 背後では紫先生、津島先生、蓮魔先生が各々かなり引き気味な表情、私に対してこんなに厳重態勢を作る必要があったのかと困惑するような顔、白い目を向けてきていたので、歓喜のポーズはその時点で中断した。

 

「解決したかしら?」

「はい! もう進学に関する出席率の内申点が心配で心配でしょうがなくてですね!」

 

 完全に真面目な空気で強張っていた表情筋が緩み、自然とふにゃりとした安堵で満たされた笑顔がこぼれる。

 彼女らの表情から察するに余程、よっぽど対魔忍にとって高位魔族と殺り合った人間が出席率程度に怯えているのは、おかしなことかもしれないが……。将来性を考えたときに『高位魔族<進学のための出席点』の方が私にとってはよほど重要性が高い。

 長い人生で換算した時、一般社会での多大なる影響力を及ぼしてくるものは学位や職歴、資格、肩書だし。高位魔族なんか縁を絶てば人生には何も関係なくなるし。

 

「夏休みの間に書類の方は作成しましたので、今すぐ持ってきますね!」

 

 心底ウキウキしたような声色で背後に居た先生方の間をペコペコ会釈程度のお辞儀を繰り返しながら、仏壇で祈るような手の合わせ方で間をすり抜け出口を目指す。

 

 五車学園が対魔忍学校だったことはイレギュラーで大失点だったかもしれないが、高位魔族に目を付けられていることに比べれば霞む霞む! それに五車町でおとなしくさえしていれば高位魔族に襲撃を仕掛けられる心配はないわけだし、私が直接手を下さずとも卒業までの間に対魔忍側が高位魔族をなんとか退けてくれるだろう。

 

 ダメそうなら私の方でなんとかすればいいし、ありがたいことにズボンちゃんことエドウィン・ブラックの種族特定についても済んでいることだし。これから情報収集を重ねて対策を練れば問題ない! 要するに神話生物と一緒だ。

 平穏な生活を邪魔してくるのならば、私の未来のために宇宙の彼方へと消えてもらうだけだ。

 それに地球が邪神に破壊されるわけでもないし、些細な出来事にしかすぎない!

 

 おまけに休学届けで内申点保留ができることが判明したことや、私に関する情報は秘密にしてくれるのならばまだまだ学生生活謳歌・人生謳歌・挽回のチャンスは残されているという結果にもなったはずだ!

 

「イヤッフーッ!」

 

 赤い帽子の配管工みたいな歓喜の声を高らかに挙げながら〈跳躍〉する。

 天井に〈頭突き〉をタッチさせて最大級の問題の1つは片付きそうな現状を喜ぶ。

 

「なーんとか、なるさぁー!!!」

 

 そのまま『心配ないさー!』もしくは『なんくるないさー!』のイントネーションで自身を鼓舞する。

 なーんか家や私の部屋に誰かが侵入した形跡とかあったけど、あれは蛇子ちゃんじゃなくて対魔忍達の仕業だったのかぁ!高位魔族じゃないなら許す!許す許す!対魔忍は仕事だからね!しょーがない!

 

 今日からは対魔忍だらけの学園生活になるけど、逆に言えばまだまだ飽きない新鮮さが豊富な学生活を送ることもできそうだ!

 見方を変えれば私の未来は明るいぞい!

 

 がはは! ははは……。

 はは……。

 

 ところで対魔忍学校から一般入試とかできるの?

 そもそもAO推薦枠とか持ってる? 大体、それは一般学生枠なの? 推薦校の裏で暗躍している悪を打ち倒すヒーロー的な役割求められたりしてない?

 

 

*1
エドウィン・ブラック

*2
対魔忍ではなく他の職を斡旋すること




~あとがき~
 やっと小説本文の出来事とリアル時期が一致しましたね……!

 そして原作の方も対魔石配布が10/2まで毎日2個ずつあるようですし、ランキングも1位を維持しているのでサ終に怯えなくていいことにホッとしています。
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