対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。 作:槍刀拳
9月の残暑が残る屋上にて一度日陰に移動し、陽葵ちゃんから対魔忍の専用科目であろう『基礎忍術論』の基礎中の基礎を学ぶ。
私が普段持ち歩いている手記を黒板代わりとして活用し、寄せ書きのような状態で情報収集を行う。
彼女の講義によれば、忍法はまず大きく分けて2つあるようだ。
・1つ目が異能系忍法。
術者自身の肉体能力を強化して、一般人を遥かに上回る運動能力を得たり精神に作用する能力を発現することが可能な忍術が分類される。
これまでに遭遇してきた対魔忍を分類するならば、紫先生、津島先生あたりがあてはまるだろう。
紫先生は運動能力系の異能系忍法、津島先生は精神作用の異能系忍法だ。
・2つ目は自然系忍法。
火遁・水遁・風遁・木遁・土遁のような陰陽道における五行(実際の五行では風遁の位置に金遁が加わるものだが、金遁は珍しいものに分類されている)のような自然に由来した力を司る忍法が分類されてている。
割合的には上記5種類の忍法使いの対魔忍が多く。加えて、五行の概念に値する忍術使いの他にも細かく細分類化すると金遁、雷遁、電遁、空遁、影遁、煙遁、鎖遁、波遁、獣遁などといった珍しい遁術もあり、これらも自然系忍法に分類されるとのこと。
もし水城 ゆきかぜちゃんの忍術を分類するならば、彼女の忍法は自然系の珍しい忍法、雷遁か電遁の術者だと思われる。
秋山凜子さんの忍法は皆目見当もつかない。瞬間移動系、忍術的な《縮地》や縮地技が該当しそうなものだが私も格闘技術の縮地を取得している身としては、異能系忍術の取得者と考えていいのだろうか?
そして目前の陽葵ちゃんは養豚の術使い、ではなく……。陽遁の術使い。
珍しい自然系忍法の忍術使いの対魔忍見習いといったところらしい。
「私の場合は、そこまで力が強いわけでも使いこなせているわけでもないんだよね。昔には太陽くらいの熱を放つ使い手も居たらしくて、でも強力すぎて、敵を焼き尽くしたものの、自分も燃え尽きちゃったって話だけど」
「なるほど。でも使いこなせていなくても使える分には使えていらっしゃられるんですよね? 具体的にどんなことができるのですか?」
「そうだなぁ。船の上で話したように今の私なら光の球で目潰ししたり、火の玉で敵を焼いたりするのが精いっぱいかな。出力を上げて使うと倒れちゃう最後の手段でもあるし……」
だから『焼肉ができる』『必殺技の扱い』と適当に流した時に同意してきたってわけね。
テキトーにあしらって陽葵ちゃんには悪いことをしたなぁ。
「陽遁の術はまだまだ修行中だから、普段は振り回せる式神ハンマーとか、あとは体術で戦ってるかな!」
彼女の忍法紹介にこれまでの出来事や〈近接戦闘(格闘)〉術の技量が、鹿之助くんや綴木さんよりも頭一つ分飛びぬけていたこと。洋館事件の際に持っていたアルティシア・フレイルハンマーが点々として繋がり様々な理解に至る。
「本当はね。夏休みに忍法について日葵ちゃんから改善案を聞こうと思ってたんだけど、上原君から止められちゃって……」
ほう?
気になる話が陽葵ちゃんの口からポロリしてきたぞ?
「……ふーん? ちなみに鹿之助くんはなんと?」
「俺達の忍法を使ったとしても未熟だから、まずは組手で強くなろうって言ってたよ! 2学期が始まったら小テストされるかもしれないって!」
うーん……?
これは、
この情報だけだと私のことをはじめから一般人として対魔忍側の隠匿していた側の発言には見えないが……。
一応、彼の言い分は理に適っている。1度に2つの訓練実施し、まちまちの結果が出てしまうぐらいなら1つを極めて成長を促した方が最も効果的であることには違いはない。
「2学期は合同訓練とかも増えるし、組手の訓練みたいに忍法のことも色々と日葵ちゃんに聞いてもいいかな!?」
私の考え事をよそに彼女は鼻息を荒くしながら顔を寄せてくる。
「お力添えできる範囲ならば」
「やったー!」
私は探索者という括りの一般人だから対魔忍の忍法に関して口出しができる立場や人種ではないが、それでも陽葵ちゃんの立場から彼女の生存率を考え、世情で生き残るにはやや難易度が高くなった世界で彼女の能力を最大限に生かして危機を〈回避〉できるならば、と二つ返事で承諾する。
肯定的な反応を見せれば、彼女は体全体を使って喜びを表現してみせてくれる。
「ちなみに対魔忍って、この学園の教員・学徒全員だったりします?」
「そうだよ!でも“ほぼ”全員かな~?」
「ほぼ?」
「うん。例えば室井先生とかは陸上自衛隊あがりで軍医をしてたんだって!」
彼女の言葉に目線を上に持ち上げて考えてみる。確かに言われてみれば、室井との関わることになったエピソードはどれも忍法らしさなど感じられない出来事ばかりだ。身体拘束は科学系統特化だし、忍法らしいものは見たことがないし。大体鎮静剤とかも薬物に頼っていた気がする。
「となると沼津さんも?」
「沼津さん?」
「ほら用務員で緑色のジャージを着て、妊婦さんみたいな立派な太鼓腹をしている――」
「よく私たちの訓練を見学にくるあの用務員さんって“沼津さん”っていうんだ?!知らなかった! でも、あの人なら泥遁の術者だよ!」
「ああ。泥遁の術者、だから用務員さん……たしかに忍法に適した職種かも。ちなみに他の人たちはどんな忍法を持っているのか知ってたりしますか?」
「えっとね――」
私の問いに陽葵ちゃんは彼女の知っている範囲での全部答えてくれる。
恋愛クソ強女こと
速水 心寧ちゃんは迅遁の術者
登山大好き女子
持田 めぐみちゃんは風遁の術者
言いくるめの貴公子
穂稀 なお先輩は、光遁の術者
超能力少女である
死々村 コロ先輩は、魂遁の術者
鹿之助くんの憧れ
神村舞華は火遁の術者
パンチが重い
相州 蛇子ちゃんは獣遁の術者(蛸に変化)
神村の姉御であるOB
眞田 焔さんは、火遁の術者
平成初期ギャルコス
篠原まりさんは土遁の術者
エセお嬢様語弁の
弓走 颯さんは風遁の術者
クラスの委員長こと
磯咲 伊紀は水遁の術者
突っかかってくる
二車 骸佐は邪眼
(ふうま一門の専用忍法)
ふうま宗家である
ふうま 小太郎は邪眼
(ふうま一門の専用忍法)※未開化
教員でありふうまの姉でもある
ふうま 時子先生は邪眼
(ふうま一門の専用忍法)
私の恋人である
上原 鹿之助くんは電遁の術者
鹿之助の従妹で教員
上原 燐 先生も電遁の術者
公民館の管理者
臼橋 乃々さんは水遁の術者
高位魔族に囚われていた
駒水 幸子ちゃんも水遁の術者
「はぁぇーー……」
『開いた口がふさがらない』とはまさにこのことだろう。
井河アサギ校長先生から対魔忍であることをネタバレされている上、かつ。陽葵ちゃんが挙げてくれた人たちとは5カ月もの関係性を持っていたにも関わらず、微塵にも……自己申告の解説付きであれば、磯咲さんと駒水ちゃん、コロ先輩ぐらい?でしか各々の忍法を見たことがなかったけど、ねぇ……。
解説なしだと、なお先輩、神村、ドドン太郎*1あたり?
改めて知覚すると何も気づいていないことに気づけた。
「日葵ちゃんは!?」
「んにぇ?」
「日葵ちゃんも対魔忍なんでしょ? どんな忍法を扱うの?」
陽葵ちゃんの素朴で純粋かつ興味津々な眼差し付きの問いかけに、両目を瞑って後頭部を掻く。
「えっと、ですね」
「?」
私は対魔忍じゃないから忍法なんか使えないし、特別な能力のようなものを使えるとすれば一族伝来の得物である〈改造した釘打ち機〉や、あの世界での忌まわしき力である《魔術》になるわけだけど、アレらをこの世界に落とし込んで漢字1文字で表すとしたら何になるのだろうか?
〈物理学〉……。〈物理〉遁……。
ともかく事前に校長先生へ口止めしたように、ここで一般人であることが陽葵ちゃんへ露見すれば押し倒される予感しかない。
特に現在地は屋上の日陰になのだ。人目が届かない自ら作り出した環境であるが状況としては非常にまずい。
「私は、たぶん、異能系?の忍法です、かね? その、陽葵ちゃんたちみたいに、
左手を口元へ当てて右手の指先を左手に添えながら、適当な同じ対魔忍として見られそうな、それっぽいことをポツリポツリと言及して〈言いくるめ〉に入る。
「お父さんとか、お母さんから何か聞いてないの?」
「聞いてないですね……。りょ、両親は対魔忍ではないと思います。そう言った能力的なものは見たことも聞いたこともないですし……」
「おじいちゃんとかおばあちゃんとかも?」
「ええ、まぁ、はい」
「そうなんだ」
陽葵ちゃんが青空 日葵の両親やその他親族へ事情聴取しにいかないように工作を加えておく。
会話が一区切りついたところで瞑った片目をそっと開けて陽葵ちゃんの様子を窺う。
彼女は何かを言おうか言わないでおこうか迷っている顔をして私のことをまじまじと見つめていた。
「もしかしてさ」
「…………なんでしょうか?」
「私が対魔忍かどうか改めて尋ねてきたけど、自分だけが対魔忍とかって思ってた感じ?」
「おっ……あっ」
「違ったらごめんね! でも2人きりで相談したくて、他の人に聞かれたくなくて、私に東京キングダムで伝えたことを再確認してきたから。もしかしたらその特別な力の件を日葵ちゃんが昔、住んでたところでは周りにいなかったのかな?相談できなくて私に聞いてきたのかなって思って!」
おおっ!
なんかいい感じに解釈してくれた!
私としては最悪の方向に発覚したかと思ったが、それは良い解釈だ!
さすが陽葵ちゃん! 私がこの世界で気軽に相談のできる親友! こっちの期待を裏切らない解釈をしてくれた!
こちらも陽葵ちゃんの反応に同意するように人指し指と親指以外を閉じて指鉄砲を作り、銃口側を陽葵ちゃんに突き付けて首を縦に振る。
「そう! そうなの! いや~!おっしゃる通りですよ!流石ですね!
「…………急に怪しくなったけど、それはほんと~?」
おい急に鋭くなるんじゃない!
いつもの純粋一心みたいな調子の様子、そのまんまでいいんだって!
いい感じの解釈をしていたのに、なんだその目は! 怪しむように下瞼を持ち上げて目を細めて! そのままの解釈でいいんだって! その話題は私にとって都合が悪いから、できることなら、それ以上は絡んでくるんじゃない!
「本当ですよ?!逆にどこに疑う要素があるんですかね?!」
「…………仕草?」
「しぃぐさぁ?!」
「えっと、焦ったりすると日葵ちゃんって早口になって多弁、饒舌になるところがあるじゃん」
「ファッ!?」
左手で口元を〈隠す〉。
そんなつもりはなかったのに、そんなクセがあったことに恐れおののく。いつの間にかに親友の〈心理学〉力の向上に目を見張る。片目を瞑って後頭部を掻いてしまう。
でもやっぱり陽葵ちゃんは人の動作とか、細かく観察できる能力があるのだから対魔忍じゃなくて何か子供たちを相手にする職業の方が似合っていると私は思うんだよね……。
沼津さんの一件を踏まえて忍法を活躍させた職業なら、日焼けサロンの経営者とかさ……。
~あとがき~
来週は対魔忍RPG 7thですね!
また今年も対魔忍RPG専用ソングとか出るのかな……。
あれ大好きなんですよね。
タイトル画面も変化して……。……!?
な、なんだね!? タイトル画面、向かって中央右側にいる女性は!?
黒のムチムチのレギンスパンツに白髪眼帯とかほしくなってしまうではないか!
連続ログインは1500日達成したので、区切りにはしましたがこの娘が気になるのでまだ続けます。
だが今回の五車祭、テメーは見送るぜ。