対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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〜まえがき〜
 本当は夏休みあたりに差し込もうかなと思っていた話です。
 ただ五車の夏休みは前半、後半に分けてしまったので今更、後半を中盤、これ1話だけを後半にしてダラダラと続けるのもアレかな?と思い省きました。
 尋問編も2025年9月3日に合わせて、リアルと夏休み明け感を一致させたかったものもありましたけどね。




Episode221 『セーフハウス確保』

 

「お邪魔いたしました」

「わざわざありがとうね」

「いいえ。こちらも突然の訪問と不躾なお願いを聞いていただいて、ありがとうございました」

 

 対魔忍だらけの五車町にて、かつて鋼人洋館へ侵入し散々な不幸に見舞われかろうじて生還できた対魔忍の生き残りの自宅から退去する。

 今回の訪問目的は鋼人屋敷で入手した取得物を本人達の各家庭への返却。つまるところ当人たちの親御さんたちへ遺留品を届けることだ。

 それも今の家で無事に終わり、私の週末の休日1日分は遺留品の返却だけで終わる。

 

 だがそれでも十分な成果は手に入れることができた。

 

 あくまでも“遺留品の返却”は建前の目的だ。

 本来の目的は生還できた家庭に訪問し、その対魔忍が持ち帰ったとする“お守りの中身”の回収であった。

 洋館事件については私達のグループは誰一人欠けることなく脱出することに至り、洋館へ避難していた少女も保護する形で解決した話だ。

 

 なぜ私が終わった出来事に対して、そのようなことをしているかといえば。

 実は井河アサギ校長先生との謁見以来、どうも私は四六時中監視されているような気がしてならないのだ。神経質になっているだけかもしれないが、それでもそれが自意識過剰からの錯覚でもない証拠はいくつか浮上している。

 しかしながら、その監視の目が実際のところ井河アサギ校長先生の手によるものかは一切不明だ。

 何分、夏休みでの出来事を踏まえた上で想定できる私を監視してくるであろう敵対勢力が多すぎる。

 私の記憶の中で思いつく範疇で、先ほど挙げた井河アサギ校長先生の一派、2学期から登校していない二車くんの一派、高位魔族どもの尖兵。……大穴で陽葵ちゃんだ。

 

「…………」カシュッ

 

 されど私は何も気づかないふりをして自動販売機で買った炭酸飲料を飲み干す。

 こちらが気づいていることを気取られて、より〈隠密〉活動が巧妙になっても面倒臭いからだ。

 ゆえに私が私らしくいられる場所、対魔忍にも魔族にも手出しができないセーフハウスを確保することに決めたのだった。

 

(……判断が遅い)

 

 でも何もしないまま状況が悪化するよりマシだ。

 セーフハウスの獲得は難易度としては妨害も見込まれるが、予定で1日で確保できる想定でもある。

 

「ぷはー……。……げぇぇぇぇっぷ」

 

 鹿之助くんには聞かせたくない特大のゲップを虚空へ放って、二の腕で唇を拭う。ごみはゴミ箱に投函して再び歩を進める。

 小目標を達成した以上、次に目指すのは自宅だ。

 

………

……

 

 自宅にて準備を整えて、母親が作ってくれたホクホクのパンケーキを頬張ってから出発する。

 持ち物は工具類と鋼人屋敷のカードキー2枚、幾つかの材木、飲食類、消火器、熊避けスプレー、対魔忍に見られるとまずい書籍もろもろ、そして〈竹刀〉と〈改造した釘打ち機〉だ。

 既に外見が完全に登山家のそれだが、善は急げということわざがあるように私としてもセーフハウス獲得は今後の立場を踏まえる上で避けられない安息地になりえるだろうと踏んでいる。

 当然ながら私の動向は対魔忍側も観測しているだろうし、職質されたら一発アウトなものを持ち運んでいるが、幾度も往復しその中で証拠品を押収されるぐらいならば一度に運搬してしまい少しでもリスクを減らす。

 

 こればっかりは私の〈幸運〉に賭けるしかない。

 ここからは一直線に鋼人屋敷目掛けてクマ避けスプレー片手で自転車を扱ぐ。

 

 そうだ。

 私が確保するセーフハウスとは、対魔忍にも魔族にも気取られない無敵の鋼人屋敷のことだ。

 

……

………

 

「GRRRRRRR……」

 

 即落ち2コマ。

 ごらんのとおり私の〈幸運〉の賭けは早々に失敗した。

 鋼人屋敷手前で野生生物の群れに囲まれる。前門の熊、後門の蛇といえば今の状況を端的に説明できるだろうか。

 これが熊のみであれば熊避けスプレーを駆使するなり、ゆっくりと後退してその場から逃げ出す選択肢を取ることができたかもしれない……。

 

「SYAAAAAAAAAA!!!」

 

 後ずさりをしたところで、茂みから挟撃の戦法を取ったかのように大蛇が現れて威嚇してくる。

 

「……」

 

 内心では舌打ちをしながらゆっくりと自転車から降りて、挟み撃ちにされた状況からどちら側から攻撃されても対処できるように身構える。

 監視者が井河アサギ校長先生率いる対魔忍であった場合、彼女やその他の共謀者へ私への判断指示を仰がれる前に決着させてしまおうと企んでいたのだが……。

 

 状況の打開のため武装は左手に〈竹刀〉、右手に熊避けスプレー、同時に相手ができるように体の側面を向けて2つの対象を視野内に確保。まるで映画:大脱出(2013)にて通路で看守を迎え撃つジャレドのように構える。

 左右へ意識を逸らしている間に“背後からの奇襲”をされてはたまったものではないため、背中は大木に密着させて死角を少しでも減らす。

 確実にこの獣どもは普通ではない可能性が高い。

 その証拠に何者かのペットである証のつもりか、熊の左前足と蛇の東部にはくすんだ赤色のバンダナが巻かれている。

 それに既にクマ避けスプレーを1回噴射したにもかかわらず、生成された毒霧スモッグを迂回して立ち去る様子が見られない。

 仮にコレが対魔忍側の遅延行為だとして、いずれも致死性が高そうな獣を仕掛けられるとは思わなかった。

 もしかするとどこかの派閥か差し向けてきた刺客部隊なのかもしれない可能性や、判断指示を仰ぐまでの遅延行為ではなく対魔忍側が私の情報を引き抜こうと画策しているのかもしれないと思考を巡らせる。

 

「入院よりマシですね」

 

 熊とヘビがどのような動きをするのかつかめない以上、高かった熊避けスプレーを手首だけの動きで熊側へ放ち続ける。

 そのまま鋼人屋敷側へと2体が正面へ配置されるように私の方向を転換して……—-

 

「ゲェッ!?ガッ?!」

 

——これなら無事に抜けられる。

 

 そんな安堵の言葉が脳裏でよぎり、獣どもの脇を抜けた時に何かが頭上から何かが落ちてきた。

 

 どさり。と……

 

 それは肩へと直撃しこちらの重心が崩されるほどの重量を持っていた。ソレが何であるか確認するよりも先にソレは素早く首へ巻き付き、クマ避けスプレーを持っている右手にも捻り上げるように巻き付いて締め上げてくる。

 

「カ……ハッ……!」

 

 助けどころか悲鳴を上げることも許されず、何かが私の骨をメキメキと軋ませる音を立てながら意識を落としにかかる。

 〈STR〉を込めてなんとか逃れようともがく。かろうじて確認できたことといえば、巻き付いているものは正五角形の模様を持つヌラヌラと怪しく光る肉厚な蛇のウロコが見えた。

 

(グェゲ…ッ。……なんだ……?こいつら……?妙だと…………思っ…… ガッ… 誘導……された? …………知能はヒト……並み?)

 

 頸動脈が圧迫されて気道も潰され、今頃私の顔は赤紫色にうっ血したような色合いに染まっているだろう。

 脚をバタつかせてもがくが意味はない。

 これは柔道における締め技がキマっている状態、すべては無駄に体力を消耗させるばかりだ。視界の端が黒ずんで集中線のように意識をぼかしていく。

 

 獲物の身動きを封じ毒牙で〈噛みつき〉を追撃として加えるには絶好のタイミングにも関わらず、巻きつき状態にある肉厚な蛇は朦朧としている私を観察し、落ちるのが今か今かと観察するように頭をもたげてチロチロと舌を出している。

 

 そうだ。明らかにおかしい。

 

 この締めは捕食が目的ならば抵抗できない無防備な私を仕留めるには手が混みすぎている。トドメなどなんの造作でもないはずなのに。

 他の獣どもも同じだ。明らかに最初から私を木下へと誘導することが目的だったように熊と蛇が争う様子もなく、徒党でも組んでいるかのように私を見つめている。

 

「コォッ…………クギッッ…………」

 

 頸動脈どころか喉仏もゴリゴリと押しつぶされ、鈍い声しか上げられない。

 左手の2本ひゅびをつかって、頸動脈の完全圧迫から逃れはしたが……左手の指ごと絞殺してこようとさらに力が加わる。

 

「なめ゙っ゙……るな゙ぁ゙っ!」

 

 だがやられているばかりの私ではない。ただちに伏せ状態に入り全体重を乗せながら、圧迫してきている蛇の胴体を地面にたたきつけ、僅かな緩みの瞬間を利用して『CALL of CTHULHU クトゥルフ神話TRPG』における72頁“素手の攻撃”■4つ目の〈噛みつき〉攻撃を行う。

 陽葵ちゃんにやったような甘噛みではない、歯茎をむき出しにし犬歯を突き立て本気で肉を絶つ勢いで噛みつく。

 すぐに巻き付いている蛇が胴体をのたうたせ、こちらへ〈噛みつき〉の応戦行動に出てくるが、左手の2本指を引き抜き肉厚な蛇の首根っこを掴み締め返してやることで〈噛みつき〉自体を阻止。

 そのまま右腕を引き抜き、地面をまさぐり手ごろな石を掴む。そのままこの世界の生物共通の弱点であろう脳目掛けて石を叩きつけ撲殺。

 

「ハァーッ!ハァー!ハァーッ! ゲホッゲホッ……ゲェーッホッ!!!!」

 

 荒々しい呼吸で酸素を胸に一杯取り込み、ずるりと締め付けを緩んだ蛇の亡骸を地面にたたきつける。

 彼らの目的は一切不明だが、私の捕縛を過程に加えてきたことでだいたいの推測はできる。

 

 やはり私の不審な動きに五車側が動いたと考えるのが自然だ。もしくは鋼人屋敷へ近づかなせないための守衛なのか。

 それに蛇等の紋様は五角形のまだらはいかにもであり、五車と関連していないと考える方が難しいだろう。

 

 偶然にしてはできすぎている。

 3つもの出来事が偶然として重なるなどありえない。これには何らかの必然が絡んでいる。

 

 こちらの復帰に合わせて、熊と蛇が挟撃として熊〈パンチ〉と牙をむき出しにした〈噛みつき〉をも放ってくる。

 まともに熊〈パンチ〉を受けようものなら、皮膚がまるで鉋で引き裂かれた木の皮のごとくベロリと剥がれることは必然。入院どころの話ではない。なんとしてでも〈回避〉しなければならない。

 体制を立て直し、即座にまともに受ければ顔の皮など人皮本のように削いで来そうなカミソリのような一撃に対して寝袋を犠牲に〈受け流し〉、〈噛みつき〉はしのぎ切った。その隙にとある荷物目掛けて飛びのく。

 

「…………ッ!」

 

 監視されていることに配慮して、おびえた声にならない悲鳴をあげているように振る舞いながら、釘貫家——先祖代々に受け継がれてきた一族伝来の得物へと飛びつく。

 取り出したのは〈改造した釘打ち機〉。神器に程近い最終兵器を手にしながら、まるでガスガンを打っているかのようなエアコンプレッサーが射出する音を響かせ、“ゼロ射程”の間合いで冷静に熊の後ろ両足目掛けて釘を放つ。残り1発分はそのまま蛇の頭を狙う。

 

「GRUYAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」

 

 熊の痛みに悶える咆哮が聞こえるが十分だ。

 その場で突進からのもう一撃を私に加えてこない、となると加えることができないのだ。

 様子を観察するに私の〈改造した釘打ち機〉は少なくとも、厚い熊の毛皮や骨、筋肉を貫いて地面へと貫通させることに成功したらしい。

 

 この隙に必要な荷物だけ持って自転車に飛び乗り、鋼人屋敷目掛けてペダルを扱ぐ。

 あいにく私の自転車はママチャリで、そこまで速度は出ない。

 されど軽トラほどの速走を持つ熊であっても足を手負いにされ、足を地面に縫い付けられた直後では私に追いつくことはできず、熊が標本のように突き抜かれた足を地面から引き抜く前に、みるみるうちに引き離されていった。

 

………

……

 

 

「突撃!相続された私の別荘!」

 

 必然をこさえられた熊と蛇と蛇、獣3匹による襲撃をかいくぐり、そのまま自転車ごと何の変哲もない普遍的な廃墟に見える洋館内へと突っ込む。

 両開きの扉がきしむ音と館内へ衝突による爆音が聞こえたけど、誤差だよ!誤差!

 

「ッシャ!オラァッ!!!

 

 脅威が残っているセーフハウスに逃げ込んだ安堵から、ひとまず右手の中指を扉の外に向けて突き立てる。

 ひと段落ついてから荷物を確認する。

 

「あっちゃー……そりゃそうか」

 

 〈盾〉として用いた以上、寝袋がオシャカになっているがこれも誤差の範疇である。

 

「ま、いいや」

 

 あいにくベッドは屋敷の中に腐るほど配置されている。

 乾いた血が付着しているという不衛生な点に目を瞑れば……だが。

 だが、あれだけ残存しているのだ、掛布団、マットレス、骨組み、シーツ。それぞれを組み合わせれば使えるようにもなるだろう。

 

「さてと、やりますか!」

 

 ぶつぶつと独り言を呟きながら消火器を背負い、〈改造した釘打ち機〉を専用のホルスターに収納した状態で館内を徘徊し始める。

 あれほど驚異的な無限回路とも見て取ることのできた廊下は、()を所有しているからか時空が固定され合わせ鏡の中に迷い込んでしまったかのような精神が摩耗するような空間にはなっていない。

 

「なるほどね」

 

 それどころか無限回路が収縮して1階は部屋が6部屋、2階は部屋が3部屋、地下は過去に突入した通りの間取りのまま変化がみられなくなっていた。

 おそらくあの無限回路に侵入するには何かしらの行動が必要なのだろう。しかし、だいたいの予想はつく。

 前回と同じ手順を踏んで扉を通過する。神村と殴り合ったことなどは省いて、特定の扉を通過して検証を――

 

「ほらね」

 

 無限回路に到達。

 おそらく発動条件はもう1種類。

 きっと2階から1階に降りてくるとこの無限回路に迷い込むのだろう。

 

「よーし、部屋番号割り振っちゃうかー」

 

 持ってきた工具箱の中から鉄製のプレートを取り出して、〈改造した釘打ち機〉で固定し部屋番号を割り振っていく。

 

「ふむふむ。特定の境を踏むと本来の屋敷の中へ戻されて、地下と2階への階段へとたどり着く……」

 

 ついでの流れでそのまま2階へと足を踏み入れる。

 この区画は当時、なお先輩、コロ先輩が散策した区画だったはずだ。

 2階の突き当り3部屋は、南日が差し込む豪勢な寝室。残り1室は赤さびが滴るユニットバスが1つ備わっている。蛇口を捻れば水は出てくるが、ここぞとばかりに赤い水が放流されとても不衛生だ。

 だがここら辺は整備さえすればまた使えるようになるだろう。あいにく私の元職業はエンジニアだ。この程度のDIYはさしたる問題ではない。

 それに水が出るということは水道管は既に配置されている。ありがたいこった。

 

「でもなぁ、友達はなぁ……、呼べないよなぁ……」

 

 最も豪勢な寝室に荷物を置いて、埃の積もったビニールで包まれている未使用のベッドへと腰を掛ける。

 おそらくこの部屋は、魔族のお偉いさんが使うはずの部屋だったのだろう。

 血まみれの他の部屋とは異なって潤沢な家具備品がよくそろっている。よくわからない機械やコンセントなどの設備もあることから電気設備工事も不要そうだ。窓につけられた朱色のカーテンはベルベット製品の高級感あふれるものだし、戸棚を開けばよくわからない書物のほかに高品質なティーカップセットまで入っている。

 

 ひとまずこのセーフハウスを正式に稼働させるにはまだまだ課題は山積みだ。

 無限回路内にある死体の処理や地下に吊るされたままであろう死体の処理。

 水道管の清掃・交換、館の外にいる畜生共の対処、エアコン搬入や室外機の設置、Wifiセットもこなさなきゃいけない。極めつけは片っ端から掃除やらリフォームまでしなくてはならない。

 にしても……。

 

「妙だな」

 

 思ったことをすべて口にしつつ、左手を口元に右手を左手の肘へと当てて考え込む。

 私がこれまで大きな物音を立てたり、独り言をぶつくさと言いながら作業をしていたのは寂しさを紛らわせるためにしていたわけではない。

 第一、ヤツがまだこの屋敷の中に潜んでいるならば1回目の侵入と同様に物音を立てずに〈隠密〉行動をとらなければならない。

 

「不可解すぎる」

 

 ゆえに今回の一連の行動は五車町への新たな二次被害の防止のため儀式。

 セーフハウスの確保とは別に、この鋼人屋敷に残されたままであろう最後の我々の世界線の神話生物。ドレスを纏った首のない貴婦人/赤き霧を誘い出すための人身御供および駆逐作業のつもりだったのだが……。

 

「既に解き放たれてしまった? しかし、五車町の地域新聞で貴婦人が暴れ回ったであろう事件情報はみたことがない……。それに鍵がなければアレは封印された箱に閉じ込められたままのはず」

 

 こんなにも今ですらブツブツと独り言を呟いているにも関わらず、ヤツはまったくこちらの餌に喰らいついてくる様子は微塵にもない。

 奴らは常に生き血に飢えていて獰猛な種族のはずだ。私という餌がまたもやノコノコと現れたのであれば襲い掛かってくるのは当然の摂理であり、鍵がなければ出ることができないという特性上、絶対にこの屋敷の中に潜んでいるはずなのだが。

 

「ひとまず(たま)はあるし、一通り作業をしてから続きを考えよう」

 

 ドラムマガジン構造になっている〈改造した釘打ち機〉をリロードして、コッキングを済ませておく。

 再び1階へ降りて見れば無限回路に逆戻りするので、1枚1枚丁寧にナンバープレートを壁に縫い付けていき、無限回路3週目では各ナンバープレートの部屋の間取りを書き込む。

 

 また対魔忍側・魔族側共に回路に踏み入ったら最後、決して出られない無限回路の一室に貴重品を収納する。

 だが対魔忍のことだ。

 私に自分たちが対魔忍であることを白状する前段階から既に私の室内にあるものは一通り調査しているだろう。だからこれはあくまでも、これからのこれ以上の情報を盗み取られない為の措置。

 

「いやはや。しかしながら鋼人卿も良き物件を相続させてくれたものだな!」

 

 無限回路の中心で大声を張り上げつつ、両手を広げながらその場でくるくると回る。

 

 魔族が増築したこの完全キーロック式かつ認識阻害魔術がかけられたいわくつきの屋敷。

 雨の日に具現化してしまうことはやっかいだが、今のところこの屋敷にはドレスを纏った首のない貴婦人が存在していることになっている。自ら進んでこの洋館に侵入してくる無謀者はそんなにはいないだろう。

 そして残存している2枚の鍵は全て私が所有している。

 もし対魔忍達が私を尋問して、津島先生の力によってすべてを白状することになっても、リスクを天秤にかけた時この屋敷内に突撃するのはそれなりの勇気がいるだろうし、当然ながら私も自分の記した書籍すべてを暗記しているわけではないから彼女の忍法によって全てを明らかにすることはできない。

 

「…………」

 

 …………未だ襲われず。

 これだけ大騒ぎをしているのにも関わらず、私はいまだに5体満足のままだ。

 やはりドレスを纏った首のない貴婦人は既に屋敷の中には存在しないのか?

 

「そのうち、わかるだろうね」

 

 片目を瞑って後頭部を搔きながら、セーフハウスの改築作業を淡々と再開する。

 

「あ、そうだ。地下の《門》がどこに繋がっているかついでに調べるかぁ」

 

………

……

 

 明け方、身軽になった我が身1つと自転車(ママチャリ)1台、自転車に〈改造した釘打ち機〉を機械式で固定した状態で畜生共の包囲地帯を突破する。

 

 結果、地下にあった《門の創造》の行き先が判明した!

 これまでに取得した情報を精査するに、薄々は「そうなのではないか?」という推測を立てては居たが今回で確信に至った!間違いなく《門》の出口こそが今回のセーフハウス獲得の中で最も大きな成果であると言ってしまっても過言ではない!

 私の気分は半分絶望・半分有頂天だが徹夜明けのハイテンションで有頂天な気分が勝っている!

 

 少なくとも地下にある《門》を活用すれば、セーフハウス内の物資を五車町側から持ち込まずとも潤沢に備蓄や改修で活用することはできるだろう!

 

 




~だそく~
釘貫 神葬「別荘地の名前、どうしようかな……。無難にNook壮でいいかな」


~あとがき~
 前後に分けるかどうか悩みましたが、次回はEpisode222話なので一纏めにしました。

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