対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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~クトゥルフ神話TRPG世界線~




手帳 『閑話休題』
Episode224-Inside 『契の一族』


 椅子の代用品としてベッドに腰を掛けつつ、ゲーミングパソコンに向かい雑務活動に没頭する。

 作業用BGMをランダム再生させて、部屋全体に聞こえる状態を維持する。

 今日はこの前、“神話事象”で亡くなった先代から頼まれたデータの総括を行っている。先代が亡くなってから既に1年以上経過しているが、つい先日やる気が沸いて託された義務の残りを片付ける気になったからだ。

 

「こちらバード38、そちらの状況、ザ*1オクレ」

 

 纏めている最中に机上へ備え付けている無線機からノイズが走り、身内からのニワカ自衛隊用語が混じった通信が入る。

 

「チッ」

 

 どいつもこいつも一族間で結ばれた盟約を守ることに必死になっているが、これまでの戦没者を踏まえる限りある日突然死は訪れることが分かっているクセに、クソみたいな世界で何を律儀に契を果たそうとしてるんだか。

 だが誰かが狂った奴を止めなきゃならないウロボロスの輪の概念と構造については理解できる。されど四六時中それだけを考えろってのは違うだろう。

 

「はいはい、こちらオウル306。ザ、自室。故人の祈願達成に没頭中だが? どうぞ」

 

 ひと休憩を入れるつもりで肩甲骨を伸ばし背中の骨を鳴らしながら、無線からの問いかけに応じる。

 そのまま立ち上がり、自室に備え付けている小型冷蔵庫の中からお茶とオレンジジュース、桜味の甘味飲料をそれぞれペットボトルを1本ずつ取り出した。

 お茶は故人である先代の遺影の前に供えて、桜味の甘味飲料は近くの金属ロッカーの棚に置く。

 オレンジジュースはそのまま蓋を開封して、口へと運ぶ。甘い。うまい。

 

「オウル306何をしている!? お前の任はどうした?! オクレ!」

「はぁ~……」

 

 馬鹿みたいに怒声を放ってくる身内に辟易した溜め息を吐きながら、輪ゴムを手首に巻き付けて弾く。手首に走る鋭い痛みに意識を逸らしながら、個人的な私物の音楽再生機器を用意する。この通信先にいるカタブツに何を言ったところで、一族の契に固執して話にはならないからだ。

 

「困ったな」

 

 ふと棚に視線を向けると桜味の甘味飲料がなくなっている。

 

「ああ、それ、バッチェ冷えてますよ~」

 

 部屋の中央で自嘲するように頬をはにかみさせながら呟く。

 一呼吸を置いてから無線機に向き直る。

 

「お言葉ですけど、俺が担当になった(いかづち)家の(ともえ)さんに動きはないですよね? 本件に関しては頭領も認知していたと思いますが? どうぞ」

「それがなんだ!? オクレ」

 

 『オクレじゃねえよ。バカが』と内心毒づく。

 俺はお前等よりも、ちゃんと自分の担当に対して分析を済ませて予後も観測済、しかも上層も認可済みだってことが今の短い会話の中で理解できないらしい。

 ライフルの弾頭をコイントスのように親指で弾いては、片手で掴む遊びを展開する。

 やめたくなりますよ~一族ぅ。

 

「つまり俺の観測と推測結果では、藤宮家の神葬さんも動いてないと思います。契うんぬんは別として。先代からの情報や彼女等の交友関係を考えたら、神葬さんが1年も巴さんを放っておくことは考えられませんね。どうぞ」

「神葬が死亡して貴様のように代替わりした可能性は思いつかなかったのか!? オクレ」

 

 背後を振り返って、通信機から発された声に対して肩をすくめながら鼻で小ばかにしたように嘲笑う。

 どこからかクスッとした物音が聞こえてくる。

 

「それはないですよ。だって藤宮家当主が動いてないですから。神葬さんが死んだにしろ、失踪したにしろ、何かあれば()()()()()()は動くはずです。“神器”が作動していないことは諜報済みですし――それこそ神葬さんに何かあれば、巴さんが先に動きますよ。例えば訪問とか。バード38が考えているより、あそこの結束は強いですし」

「…………」

 

 こちらが『どうぞ』と通信を回す言動を語尾に付けていないせいか、バカ38は何も言ってこない。ただ無言の中に押し殺して唸るようなカタブツの発語が混じっている。

 その間に手首に巻いた輪ゴムを淡々と音楽機器と無線機を括りつける。

 次の発言でバーカ38が引き下がらないようなら、俺にも考えがある。いつまでもこの水掛け論に付き合っている暇はない。

 

「神葬さん以外の一族。分家である釘貫家も含め、もとい本家の藤宮家を筆頭とする一族には()()()最高傑作品は何人かあるのでしょうけど。先代の情報によれば“あの先祖”、神葬さんにそこそこ目をかけていたらしいじゃないですか」

「…………」

「まだ分かりませんか? ともかく俺は自分の仕事は熟してます。バード38は自分の仕事をしててください。通信終了」

「待て話は○×◆&%$!!!」

 

 怒号じみた声が無線機から流れるが音量を落として、こちらも音楽機器のボタンを押す。

 終わり!閉廷!以上!解散!解散!

 さぁさ!ほんへの開幕や!

 

『俺は変態オナニー青年アキラ。今日もカメラの前で晒すぜ』

 

 最新の淫夢ファミリーボイスを流してやるぜ!

 マゾチュウじゃなかっただけ感謝してほしいね。

 

 今頃バーカ38の通信機は大変なことになっているだろう。

 おう、お前もホモガキになるんだよ。あくしろよ。

 

「やったぜ」

 

 できるだけ変態糞土方の低音イケボの声を作って勝利宣言を下す。

 現代日本において淫夢は必須科目だってはっきりわかんだね。

 淫夢は見る抗うつ剤。純粋無垢だったころ、俺もブラック企業勤めの時に精神的に助けられた。

 てか現代の淫夢、知らなかったらツッコミ不在からの大惨事になるしね。SNS大爆炎。金曜ローショーのTwinter公式ツィーント(『耳をすまして』)や呉市の生牡蠣ニコちゃん郵便ポストみたいにさ。

 

「そういえば……」

 

 先代からの情報によれば、ここに神葬さんがいるとオールインワンDJシステムと繋いでRimixアレンジにしてくれるらしく、バイブスが上がるとか言ってた。

 神葬さんとは実際に会ったことはないが、絶対気が合うホモガキだと俺は睨んでる。

 たぶん巴さんとは(つがい)の間柄なんじゃないかな。

 

「さて、先代から残された仕事片付けるか」

 

 再びノートパソコンに向き直る。

 

「『対魔忍世界から流通してきた感度3000倍になる薬:対魔忍世界の人物』を纏めないと」

 

 対魔忍RPG Wikiと睨めっこしながら人物関係図をまとめ上げる。

 既に作業開始から2日が経過している。

 社会人である以上、俺も家庭の付き合いだけではなく仕事にも出かけなければならない。そんななか貴重な余暇の時間を先代からの雑務処理に充てるというのはまぁ、そこそこ面倒でもある。

 

 しかしながら俺がこの作業に踏み切った理由も当然ながら存在する。

 

 常識で考えればこの世界が対魔忍世界とつながっているとは非常に考え難いが、〈クトゥルフ神話〉を踏まえると可能性をゼロとも言い切ることができないこと。備えあれば憂いなしという性分によるものだ。

 ……あと偶然、回ってきた活力のリソース処理。

 

 このデータのまとめは誰かしらの役には立つだろうという希望も込めて。

 

*1
座標




~あとがき~
 お久しぶりです。槍刀拳です。
 皆様は如何をお過ごしでしょうか。
 私は近況報告といたしまして、TRPGのキャンペーン沼にハマってしまい出ることができません。(二車家訪問 謝罪編は何も出来上がってません……! 5話ぐらいでまとめたいとは考えてます)
 いましばらく休暇を頂戴致しますことをお許しください。
 ただ初めてこの作品を投稿した記念日には1章分は製作したい意欲と、この前イベントで新しい日ノ出 陽葵ちゃんと綴木 みことちゃんの2人がピックアップされた素敵なイベントがあり意欲が沸いたので、間に合わせました。
 カッコイイねぇ、でも対魔忍スーツは見直そうか?陽葵ちゃん。
 忍法開花してよかったねぇ、綴木ちゃん。

 さて、今回はクトゥルフ神話TRPG世界線上のお話になります。
 オリ主が今回の主観視点で物語を紡いでいた人物について言及していたかについては、親友の雷 巴ほどではないですがチラリと言葉にしていました。(ただこちらは時期的に、こちらの世界線では故人となっているようです)
 彼が登場するのは全体プロット上だと、かなり後の方になってしまいますね……。
 少し構成を漏らしますと、対魔忍世界2学期中には少しは登場させたい方針はあるのですが、そこの話に辿り着くまでがいつものように長くなりそうで……。
 てか彼等を安易に登場させていいのか? この探索者一行『契りの一族』の面々を登場させたら対魔忍世界で暴れ始めるのが目に見えるんだが? オリ主の影が薄くなるレベルで暴れ始める物語の方向性が見えるんだが?のような葛藤も残ってます。

 長くなりましたが、皆様もお体に気を付けてお過ごしください。
 対魔忍RPGがサービス終了する前には再開したい(DMMランキング1位にいる間は大丈夫かな?)

 明日も投稿します。(18:22予定)
 明日の内容は設定資料集ですね。

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