対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。 作:槍刀拳
Episode43 『昇降口にて』
眞田先輩と黒田先輩との生徒指導から翌日の出来事。
今日は! ついに! “課外授業”から帰ってきた3人が学校に登校してくる日だ!
五車学園の地下に備え付けられた病室を飛び出して『休んでいる暇はない! 室井 光彦先生、すぐに出撃だ!』と青空 日葵が前の学校で使用していたと思われるジャージを片手に今日は無理やり登校にこじつけたのだ。もちろん、あの室井先生が首を縦に振るわけがなく、また病室に軟禁しようとしてきたため『私には学校で授業を受ける権利がある! 学ぶ権利があるー! 日本国憲法-第二十三条、二十六条 知らねぇなら調べろやオラー!!!』と叫び散らしながら〈法律〉を振りかざし強行突破したところ今度はあの押し問答に勝つことができたのだ。突破口を見つけてしまったな。
無理やりエレベーターに乗り込んだ際に、室井先生は力なく首を横に振っていたが私の知るところではない。これは私の持つ当然の保証された権利なのだ。権利を主張して何が悪い!!! やはり〈法律〉は強いな。くっ……眞田先輩の時にも爆発物を教室で放った際に思い出してさえいれば……。
だが、後悔してももう遅い! 今はそんなことよりも、このわずかな時間でも一般人枠の生活として普段の日常を取り戻そうと3人を長袖長ズボンの上下ジャージ姿で昇降口で出迎えるため、他の生徒にジロジロと見つめられながらも番犬ハチ公のように今か今かと彼等を待つのだった。
「おはよう! みんな!」
「よぉ! 日葵! なかなか、いつもの場所に来ないから お前の家に寄ってお前の母ちゃんから——ウォオアアアアアアア!!?!?」
「え、鹿之助ちゃん何かあったの……日葵ちゃん!!!?」
「えっ!? 青空さんっ!?」
やがて3人が昇降口から姿を現わしたので、現状可能な限りの大きな声で気が付けるように挨拶をする。
しかし……なんだろう。このやり取りは約2週間前にやったようなデジャヴがある。
このまま流れで合流して、のんびりと教室まで雑談をしながら一緒にと歩いていきたかったのだが……開幕そんな余裕はなさそうだった。
でも彼等は目を見開き、持っていた荷物を落とすほど……鹿之助くんに至っては『漂流教室』の恐怖顔で驚くのも無理はないだろう。
現在私の顔は、熱膨張でパンパンに膨れ上がったパンの生地のように顔面がはれ上がり、露出している顔面の1/3は内出血で真紫色に染まっているからだ。唇の端が到底見せられる姿でもない重症化した口角炎のように千切れてしまっているため、テープで固定しその上からマスクで覆い隠しているものの……。それでも昨日の眞田先輩との第三回戦目によって発生した側頭部のたんこぶに溜まった血が降下し、下瞼に溜まった結果。まるでパンダのような出で立ちになっていたのも衝撃として大きいのだろう。
でも3人と会いたかったんだもん!!! また私が入院している間に課外授業に出かけちゃって、暫く会えなくなっちゃうのは寂しかったんだもん! こればっかりは不可抗力! しかたないよね! 痛みはコントロールできる! それは前世で学んだこと!
「えっ、えっ? えっ、えっ。え? 何があった? 俺達の居ない間に一体 何があったんだ!?」
「ねぇ?! 冷やした?! ねぇ、日葵ちゃん! ちゃんと眼窩を冷やした!? それはあまりにもひど過ぎるよ??!?」
「わぁはっはっはっはっはー。大丈夫、大丈夫。所詮、内出血です。死んでないので、かすり傷ですよ。かすり傷」
余程ひどい有様なのだろう。私より身長の低い2人が、まるでしばらくと会っていない子犬のように飛びついてきたので、爽快に笑いながら抱きしめ返す。鹿之助くんは無い胸の中にすっぽりと埋まる形で捕まえられたが、蛇子ちゃんは機敏な動きでこちらのハグを避けるとポケットからハンカチを取り出して、近くの蛇口で濡らした後に血がたまってパンダのようになった眼窩付近をペタペタと冷やしてくれる。
「……青空さんはさ。俺の中のイメージだと、いつも突拍子もないことをしでかすような破天荒的なキャラな位置付けだったんだが……本当に今回は何をしたんだ?」
「とある御仁に強くなれるように戦闘訓練を付けて頂いたんです。……いやぁ、クッs……とても。とても強いのなんの。私なんて全く足元に及びませんでしたね。ですが、最高に燃えます。彼女と戦って、戦闘技術に関しては自分にはまだいくらでも伸びしろがあることがわかったんですから」
あたふたとする蛇子ちゃんと、私の腕の中で引き剝そうともがいている鹿之助くんとは一足遅れてふうま君も近づいてきた。流石に彼は私との久方ぶりの再開であっても飛びついては来なかったが、彼の性格らしくまじまじと舐めるようにこちらの全身を眺めてくる。
こちらとしては蛇子ちゃんに託されたハンカチで患部ではなくデコを冷やしながら、笑って片目を瞑って後頭部を掻いて何事でもないように振る舞ってみせた。そんな私を彼は、正気とは思えないと言いたげな顔で見た後にそっぽを向いて何か考え事を始めてしまう。表情や仕草から〈心理学〉を用いて推察するに恐らく今頃『一体誰と殴り合ったのだろう……』とそんなことを考えているに違いない。
「日っ葵ちゃーん! おっはよー!!!」
そんな昇降口でのバタついた朝の登校時間に背後から誰かが抱き着いてくる。背中に質量と張りのある巨大な2つのはんぺんが張り付き、あすなろ抱きのように首の付近を小麦色の腕がマフラーのように巻き付いてくる。
それに目前に氷水の入った蛇子ちゃんが駆け寄ってきているのだ。となると、私を日葵ちゃん呼びしてくれる友人は1人しかいない。
「おはようございます。陽葵ちゃん。今日も朝から元気ですね」
「えっへへー♪ 元気なのは昨日、私を日葵ちゃんが……うひぃやあっ! ひ、日葵ちゃん……昨日よりは青あざとか腫れは引いていると思うけど、それでもすごいね……。でも担架で運ばれて行ったのに、もう動ける回復力もすごいけど……」
デコを冷やしている私に蛇子ちゃんはひったくるようにハンカチを回収すると、私には任せられないと言った様子で氷水を持った手で私のパンダになった眼球付近を冷やし始める。滴る冷水がマスク越しの口の中に入ってくるが、拭く訳にも取るわけにもいかない。
背後から私の事を抱きしめている陽葵ちゃんは、更に背中に体重を乗せてこちらの顔を覗き込むようにほぼゼロ距離で眺め、それから目をぱちくりとさせてほっぺたを人差し指でぷにぷに突いてきた。はっはっはっ。陽葵ちゃん。あの……地味に痛いです。あの……?
その隙に鹿之助くんが私の腕の中から抜け出す。でも鹿之ニュウムは充分補充できた。満足。
「担架で運ばれて行ったのか!? 日葵?!」
「担架で運ばれて行ったのぉ!? 日葵ちゃん?!」
「担架で運ばれて行っただと!? 青空さん!?」
「わぉ。息ぴったり」
流石に担架で運ばれて行ったのは想像にもしていなかったのか、3人は同タイミング音程の異なる音声で調和のとれたハーモニーで目を丸くして私の背中に抱き着いている陽葵ちゃんに迫る。私に出来たことは、片目を瞑り後頭部を掻きながらはにかむことぐらいだ。
今の叫び声で昇降口に居た生徒の数人が視線をこちらに向けて来てはいたが、どいつもこいつも私が視線を返すや否や片っ端から目を逸らしていく。意気地なしめ。
「うん! 眞田先輩と地下に続くエレベーターに乗って行ったから、私もあとを追いかけて行って一緒に戦おうとしようとしたんだけど……日葵ちゃんが自分一人で戦うって言って」
「え? 眞田先輩って……あの、
「そうだよ! それで30分後ぐらいかな? 流石に酷い蹂躙だったから止めたんだけど、その時には昏睡した状態で……シュミレーションルームからそのまま病院のベッドに担架で運ばれて行ってね! 室井先生が、頭を抱えてたね!」
「え? 待ってくれ。青空さん……。
「えぇ、まぁ。絡まれまして。私は別に(慣れているので)いいですけど、流石に陽葵ちゃんが
「でもね、でもね! 日葵ちゃんはもっとすごいんだよ! 眞田先輩の他にも黒だ——「おっと陽葵ちゃん それ以上はNGです。思い出したくない記憶なので言わないで頂けると助かります」
『おっと、それ以上はいけない』と背中から抱き着いている陽葵ちゃんを、まるで柔道の一本背負いするかのようにゆっくりと背中に乗せて前屈姿勢となる。それからロデオマシンや土木で用いられるタンピングランマーが起動したかのように彼女を背中に乗せたまま、その場で何度か屈伸運動をして更なる言葉を余計な一言を3人。特に眞田先輩の名前を聞いただけで驚愕のあまり既に固まっている鹿之助くんには、これ以上の情報を暴露してしまわないように努める。
眞田先輩の名前を聞いただけで、この状態なのだ。黒田先輩の名前を聞いた日には昏倒してしまいかねない。
「あははははははっ! やめてよぉ! くすぐったいよぉっ!」
「……今、なにかもっと “すごいこと” を言おうとしていなかったか?」
「ははは、何言っているんですかふうま君。こうなった要因は、眞田先輩 “だけ” に特訓をしてもらったからですよ。それ以上でもなければ、それ以下でもありません」
そのまま誤って投げ飛ばしてしまわないように加減しながら、屈伸振動する私に陽葵ちゃんは脱力状態で全身を私に委ねご満悦のようだ。
ふうま君は陽葵ちゃんが言いかけた追加情報に気が付いてしまったようだが、背中に乗せた彼女をタンピングランマーロデオマシンの刑に処しながらも、鹿之助くんにはこちらの表情が見えないように角度調整後、頭だけを持ち上げて「それ以上はやめろっつってんだろ」と言いたげに下瞼を持ち上げる形で目を細める。
……ふうま君って、蛇子ちゃんからの猛アタックに気が付けないほど、鈍感メンズなんですけど……こういう気配の察知は早いので感心しつつも、同級生の方の蛇子ちゃんにももっと関心を向けて欲しいとは思う。
まぁ他の生徒達のあの狼狽ぶり、今の鹿之助くんの信じられないと言った反応から、私が『成り行きで』昨日やらかしたことを聞かれるわけには行かないし、眞田先輩に加えて黒田先輩とも同時にやり合ったなんて暴れまわった話は。いち乙女としてされたくはない。
でも……鹿之助くんには、簡易爆薬を〈製作〉してカルティスト17人を〈爆破〉一網打尽にした女として認識されているかもしれないけど……。悪人を吹き飛ばしたのと、学校の先輩方とやり合ったことではきっとまた別の衝撃を与えかねないのは避けたかった。
「蛇子、室井先生の心中お察ししちゃうな……。数日前に元気に退院して行った日葵ちゃんが、その数日で戻ってきたら頭を抱えちゃうのわかるよ……」
「あ、あぁ……多分、そういう意味で頭を抱えた訳じゃないと思うが」
「
今、お前が言った言葉。私は聞き逃さなかったぞ。ふうま君。
にっこりと笑って〈威圧〉を込めておく。
「い、いや、なんでもない」
うん♪ 分かって頂けたようであるならば、もう何も言うことはあるまい。
「そ、そうだ! 青空さん。話題が変わるんだが……
「桐生先生……というと。室井先生が以前、話していた……私の身体の治療のために【魔科医療】を施してくださった人ですかね?」
「ああ。間違いないだろう【魔界医療】を施せるのは桐生先生しかいないからな」
「でしたら、喜んで! 結局、桐生先生とは退院したその後も、お会いできなかったですし……お世話になったのにお礼の1つも言えてなかったので……是非とも今度紹介してください」
「そうか……。それなら、俺も助かる。また時間のある時に声を掛けるよ」
「宜しくお願い致します」
そんな会話を交わしながら、ふと昇降口に備え付けられた時計を見上げると時計は8時10分を指していた。荷物を拾い上げたのちに揃って各教室を目指して、階段を上る。
その際新しい友人を紹介するも、4人は既にお互いのことを知っているようだった。どうやら学年総合授業の体育の体術に関する戦闘授業の際に顔を一度は見合わせたことがあるらしく、聞く限りまだ私だけが入院などの兼ね合いで他のクラス合同の戦闘授業に出席できていないらしい。いつかは参加してみたいとは思う。
………
……
…
~あとがき~
対魔忍小説。新規執筆しようかと検討しています。
既に白雪聖女様と7人のオーク達に加え、対魔忍世界に転移したけど一般人枠として人生を謳歌したいの2つも抱えているのに、3つ目も展開したら他の趣味とか、いよいよ仕事との兼ね合いで死んでしまいそうですが……なんか、新しいの書きたい気分ではあるんです。
次回作、対魔忍冷蔵庫か、また新しい対魔忍かは未決定ですが 次の小説は現行の2つみたいな堅苦しい小説ってやつじゃなくて、もっと軽めのセリフが多め、感情描写や周囲描写が少なめのタイプを検討しています。
既出の対魔忍二次創作の小説を私も読んでいるのですが、あまりガチガチの描写をしている人が少ないなって思いました。……私の文体って異端では?と。
新規決まったら、また告知するかもです。