対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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・『犠牲者の手記1』
 発見場所:暖炉の中の手記
  著者 :おそらく15年前の五車学園の生徒
  日付 :不明(最短15年前)
  解読者 :穂稀 なお

・『犠牲者の手記2』
 発見場所:コンロ下に隠されていた手記
  著者 :現場監督
  日付 :15年以上前
  解読者 :釘貫 神葬

・総括
 著者:釘貫 神葬

◇『犠牲者の手記1・2』
┣○『犠牲者の手記1〈手記〉』
┣●『犠牲者の手記2〈手記〉』
┣○『犠牲者の手記1〈総括〉』
┗●『犠牲者の手記2〈総括〉』




Episode53-Tips 『犠牲者の手記1・2』

○『犠牲者の手記1』 暖炉の中の手記

 著者:おそらく15年前の五車学園の生徒

 日付:不明(最短15年前?)

 

 洋館に入ってから何時間経過したことだろう。

 否、実際にはもう何日も経過しているのかもしれない。

 外は相変わらず雨が降って、窓に打ち付ける音が休憩を取る俺の睡眠を妨害する。

 最初はちょっとした肝試し感覚でこの洋館に来ていた。雨の日にしか現れない不思議な洋館があるって。先生方も入っちゃいけないなんて注意喚起していなかったし、俺達としてはちょっとした冒険感覚だったんだ。

 それにその洋館で何かがあっても俺達の力で何とかできると思っていた。

 結果はこの通りだ。出られない。みんなともはぐれた。今もなお、扉の向こうで友人の誰かが右から左へとずっと走っている音と悲鳴、首のない亡霊の嘲る笑い声が聞こえている。

 窓を破壊する試みは、どんな武器で殴っても技を使ってもヒビすら入らなかった。それどころか銃弾1つ通さない。意地になって破壊しようとすれば物音で亡霊が寄って来るおまけつきだ。どうやったらここから出られるのかも想像がつかない。

 ある時、救助隊らしき人達や学校先生がこの場所に来た。でも俺の事は見えていないらしい。窓を叩いても呼んでも叫んでも、まるで興味のないものを見るようなそんな動きで俺を無視して居なくなってしまった。代わりにやってきたのはヤツだ。感動的な出会いだよな。

 でもおかしなこともあった。外は雨が降っているにも拘わらず、先生や救助隊の人たちは雨合羽を着ていなかった。それに衣服も濡れていなかったような気もする。

 もしかしたらもう出られないのかもしれないという絶望感から見てしまった希望の夢なのだろう。それか幻覚を見たに違いない。

 あぁ、寒い。でも幻覚のせいで、裂かれた背中の傷だけが異様に熱い。でも雨に打たれた身体が洋館の中の冷気に晒されて震える。おかしい。夏なのに。傷口からばい菌でも入ったのか? おなかの調子も悪い。

 今日洋館探検なんかしていなかったら、きっと今頃、こんな場所でシャリシャリぬちゃぬちゃする蟲なんかじゃなくて、家で暖かいご飯を食べていたに違いない。苦い赤い水なんて啜らなくても良かったのかもしれない。

 お母さん。おなか減った。会いたい。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

●『犠牲者の手記2』 コンロ下に隠されていた手記

 著者:現場監督

 日付:15年以上前

 

△月×日

 洋館の地下に魔界と繋がる門が存在するとの話を聞きつけて、我々はこの廃墟へと訪れた。

 実に不気味で、いつからこの場所に建っているのかは、こちらとしては知ったこっちゃないが今も十分な形を残した廃墟だ。

 おまけにここの家主は高度な幻術を使う幻術師であったことが推測できる。我々の中に魔術に長けた者が居なければ危うくこの建物を……現場の無能共の言葉を借りるなら “どこにでもありふれた、取るに足らないような” 家屋として見過ごしてしまうところだった。

 何しろ、ここは五車町内都心部の近くだ。我々が何度も気軽に訪れることのできるような場所ではない。今回の調査で発見ができてよかった。

 気づかれでもしたら一巻の終わりだ。

 

△月〇日

 我々は我々の計画の為、廃墟を調査および拠点化の為、生活基盤を整えるように改築をしている。

 しかし、いずれは奴等もここの存在に気が付いて調査に乗り出してくるかもしれないことを危惧し、既に家主がかけた幻術の他に別の幻術を掛けることにした。

 それは雨の日に限り、この建物が具現化し、その建物が豪勢な洋館に見えるという幻術だ。豪勢な洋館として決定したのは我々の雇い主がえらくこの場所を気に入ったようで、魔界への門を発見した暁には侵略のための駐屯地拠点にすると望んだからであって、我としては目立ちにくい廃墟で済ませたかった。

 また雨が止むのと同時にこの廃墟は瓦礫だけが散らばる草原変更。焼け落ちたチャペル地帯に見えるようになっている。またその際には何人たりともこの洋館に侵入することはできない。誤ってここの館内に迷い込み事情を知られてしまったものには、逃げられてしまわぬように鍵がなければ脱出することができないよう細工を施しておく。

 

△月◇日

 この建物は元々1階に6部屋、2階に4部屋、地下に小さな倉庫が1つの構造になっていた。

 駐屯地拠点としてはあまりにも小さすぎる構造ということで、雇い主の意向の元、空間を歪めることで地上1階部分の室内を50倍へと増やした。空間を広げた分、下等な人族に近い魔族にとっては迷いやすくなってしまったようだが我々であれば些細な問題にしか過ぎないだろう。2階の増築はまた今度の時間のあるときで良いだろう。

 地下の倉庫に魔界の門を発見する。しかし、残念ながらこの門は百数年前に閉じられたままのようだ。それでも時間と手間暇さえ掛ければ再び開くことも可能だろう。

 

△月◎日

 今日の深夜、作業員であるハイオークと魔族の女が窓ガラスを突き破る形で叩き割って、二人そろって地面に叩きつけられ首の骨を負って死んだ。

 ハイオークは普段から素行の悪い奴で、女の方は運悪くヤツに掴まったのだろう。痴情のもつれで無理心中と言ったところか。

 毎晩ベッドでギシギシ、窓に女を押し付けてガタガタ激しく露出プレイしていた罰だろうよ。

 窓のすぐそばには体液の染み付いたベッドがあったらしいが、今夜は立ちバックではなく、ベッド上で騎乗位プレイでもする予定だったのか?

 窓の修理費は奴の財布から支払った。もう奴には必要のないモノだ。

 

△月△日

 最近、作業員から幽霊が出ると噂をしているのを聞いた。聞くところによるとハイオークチーフほどの背丈((約3m))をした毛むくじゃらの黒人のような大男の姿を見て、女がすすり泣く様な声が聞こえたとのことらしい。

 バカバカしい。ここは五車町だぞ。そんな亡霊が居れば今頃、五車学園のガキどもの話題になって教師共が対策に出ているはずだ。

 

△月●日

 今日、現場作業員の死体を発見した。何者かと争ったように肉がズタズタに引き裂かれていて頭がなかった。……まさか、対魔忍がここを嗅ぎつけたのか? とも思ったが、諜報員の話では対魔忍どもに動きはないようだ。

 奇妙なのは奴はオークの体液を全身に浴びているはずにも関わらず、この惨殺死体を作った相手は媚薬効果が効いていないようにも見える。となると米連の兵士だろうか? アイツ等はパワードスーツを身に纏っている分、発情しにくい。

 今日は総出で忍び込んでいる侵入者を捜索することになった。何も発見できなかったわけだが。

 

☆月◆日

 今日、作業員が消えた。きっとあんなことがあったから逃げ出したのだろう。

 この前、現場作業員の死体が上がった時、そいつは消えた作業員の友人だったこともあった。きっと嫌気が差したに違いない。

 

☆月×日

 数日後、消えた作業員が戻ってきた。ソフトクリームを片手に、腕には大量の駄菓子を抱えて。

 話を聞けば、わざわざ五車町にまで観光客を装って赴き、この廃墟での作業の息抜きのための駄菓子を『稲毛屋』とかいう店で買うために、全財産をはたいていたらしい。とりあえず勝手なことをして計画がご破算しかねない行動だったが、今日の我は気分が良い。厳しく怒鳴って半殺しで済ませてやった。

 殴られて怒られているのにヘラヘラしやがって。ま、次、ミスを犯した上でそんな顔をしたら適当な口実を付けてぶっ殺してやる。

 

☆月◎日

 戻ってきた作業員だが、以前と比べて人が変わったようによく働くようになった。

 ぶっ殺してやろうと思っていたが、気遣いもできるようになって低級魔族のオークにしては使える奴にはなった。どうやら我の説教が余程聞いたと見える。

 それでもたまに奇妙な行動をするが、ミスしたわけでもないゆえに殺すことはできない。この前、遊びで作業員を一人殺したら上から減給のお達しが来ちまったからだ。作業員なんて変わりはいくらでも見繕えるだろうに。

 まぁ、前よりも道具として使えるならいいだろう。もっと馬車馬のように働くがよい。

 

☆月▽日

 地下から銅色の肌を持つ小汚いおっさんが見つかった。この廃墟に棲みつき根城としていた浮浪者と思われる。

 発見経緯は作業員が壁に寄りかかった所、脆くなっていた壁が崩落し、隠されていた部屋とおっさんを見つけたという寸法だ。

 おっさんの身ぐるみを剥いだところ、物陰から顎が4つに裂けた猿のような巨大な黒い蟲と人が融合した3mもの実態が襲撃してきた。作業員であるザコオークどもが恐怖のあまり気絶するような一言では名状しがたい不気味な奴だったが、鉛玉を大量にプレゼントしてやったところ、そいつは銅色の肌を持ったおっさんを抱えて点滅しながら消えやがった。何十発も弾丸をぶち込んでやったし、きっと今頃どこかで野垂れ死んでいるだろう。それに邪魔者が同時に消えてせいせいした。ざまぁみろ。

 ここに魔界の門が開通するんだ。こんなところで邪魔されてたまるか。

 

×月▲日

 今朝から作業員の様子がおかしい。どいつもこいつも、朝礼が終わった直後から青ざめた顔で身動き一つ取らねえ。全員、目が虚ろで何処を見ているのかも分からねえような視線だった。数人をぶん殴って床に昏倒させたのに、他の奴等はまるで電源が切れた人形のように突っ立ったままだった。

 ぶっ倒れたやつもおきやしねえ。試しに数人のオークの前でぶっ殺したのに動かねぇ。

 何が一体全体どうなってやがる!?

 

×月□日

 なんだ! なにが起こっている!

 突っ立ったままの作業員たちを放置して、次に俺があいつ等の元に来た時、アイツ等の半数以上がカサカサに干からびて死んでやがった! それに話で聞いていた女がすすり泣く声が聞こえたかと思えば、我の目の前で作業員の首がビンに詰められたコルクを栓抜きで捩り開けられるように次々に首が飛んで。血液がスプリンクラーのように周囲へ撒き散らされて……。

 

◎月×日

 我は今、クローゼットに隠れながらこの手記を書いている。

 どいつもこいつも皆死んだ。ここで魔界の門を開くための作業をしていた作業員はもちろんのこと、本部からバケモノ退治に来た応援も、見えない亡霊に首を捩じ切られて、カミソリのような刃で引き裂かれて、天井や壁に叩きつけられて、腕が4もある不気味な怪物に腕を捩じ切られて、みんな、みんなしんじまった。

 隙間から覗いていて分かった事だが、あの虫と人が融合した怪物と亡霊はグルだ。頭の回る本部の連中が怪物同士をぶつけたが、あいつらはグルだった。

 遠くから仲間の悲鳴が聞こえる。もう銃撃は聞こえない。走り回る音。命乞いの声。断末魔。

 殺したはずのおっさんの声も、耳を塞いでいるのに聞こえるようなそんな気がする。

 

わからない

 何もきこえなくなった。

 だれかがコンロでもやしていた。

 かくにんしたら、出るためのカギだった。だれかが我らのカギをもやしている。

 我は、われはちかの倉庫ににげる。

 出るためのカギ、ふん失にそなえて2枚はつねにもっているが、正面玄かんなんてまち伏せされているに決まってる。

 

 地下へつづく、とびらせじょうされていた。なんきんじょうのカギをさがさないと。

 まかいの門さえ、ひらけばにげられる。にげられる。にげるんだ。

 

………

……

 

 手記を読み終わり手記に書かれた内容の情報共有も済ませる。読み終えて互いの顔を見合わせたときの第一印象としてはなお先輩もきっと良からぬことが書かれていたことを薄々察することができた。

 

 それぞれの手記の要点を総括すると……

 

○『犠牲者の手記1』

・おそらく15年前にここに訪れた五車学園の生徒によるものの手記

・暖炉の中にあって、それが燃えかけているということ=暖を取ろうとしていたか。

・時間の感覚を失うほど長時間滞在していた。

・通路はループしている可能性がある。

・窓からの脱出は不可能。それどころか首のない亡霊を引き付ける可能性がある。

 

●『犠牲者の手記2』

・洋館の地下倉庫の魔界の門を開こうとしていた魔族の現場監督(仮)が執筆したもの

・『◇雨降洋館』の資料同様に壁田 鋼人は魔術師の類であった。

・雨の降る日にのみ姿を現わすのは、この魔族達が掛けた幻術によるもの。

・洋館から出るには『鍵』が必要。

・部屋が増えたのは空間が歪んで増設された部屋に迷い込んだか。

・首のない亡霊の存在は、この時点から確認されていた。

・外の熊や蛇と同じようにカサカサになって干からびた死体が出た様子。

・顎が4つに裂けた猿のような巨大な黒い蟲と人が融合した実体は今もいるかも。

・現場監督(仮)は鍵を2枚持っている。その鍵が脱出のキーとなる。

・地下への道は閉じられたまま

 ↳肝心の現場監督(仮)は洋館で骸を晒している可能性が高い。

 

 ということらしい。

 ひとまずは次に私達が為す必要のある脱出のための小目標は見つけることができた。

 準備を整えたら蓮魔先生達が異常に気が付いてこの洋館に侵入してしまう前に脱出を目指す。

 きっと自分から入るようなバカな真似はしないとは思うが……脱出時間を間に合わせなければ、今度は蓮魔先生達が次の犠牲者となり得てしまう可能性も出てくるだろう。

 

 




~あとがき~
 投稿が早いと思った閲覧者兄貴姉貴! これが毎秒投稿です!
 Xデイにつき乱数調整します。
 前回約3700文字だったけど、今回約5200文字あるし、実質8000文字で多少はね?

 そして1時間おきに投稿時間をズラしていたのですが、今日を持って24時間分の工事完了です……。
 次回は色々統計取ってから決める予定なので、2時37分投稿になると思います。

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