対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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~まえがき~
 今回は、オリ主(釘貫 神葬)と一緒にコンドームの使い方を学んでいきましょう。
 実に対魔忍らしいですね! 対魔忍と言えば、根本はR-18ゲーム。対魔忍ユキカゼではラブホテルが登場して、当然そこにはコンドームが配置されているほどです。(使われるとは言っていない)
 対魔忍の『氷室(ひむろ) 花蓮(かれん)』パイセンも、対魔忍RPGXではコンドームの重要性ついて言及するほどですからね!

 作者も実際アウトドアでのコンドームの存在は重宝しています。




Episode70 『探索者の意地』

「ずっとこの状態で洋館を徘徊していたのですか? ひとまずはその水で患部を洗って、抗生物質をうちましょう。敗血症を引き起こしかねません。後のことは私がやります。そのまま楽な姿勢になれるよう寝そべって頂いて——」

「——室井先生」

「……なんですか?」

「洋館から無事に出られたのは誰ですか?」

「今度は何ですか? まずは君の——」

「最重要事項なんです! はぐらかさなくていいから、とっとと答えてください!」

「……。……わかりました。洋館から出てきたのは、と。君の背中に乗っていた日ノ出さん。君が引き倒した神村さん。君が放り投げた死々村さん、君の膝裏にしがみついていた穂稀くん。そして穂稀くんが連れてきた重度な貧血状態の少女6人だけですが……。全員無事ですよ。穂稀くんの背中に乗っていた少女だけが重症ではありますが……輸血さえすればあの程度の貧血はすぐに治ります。君の脚ほどではありません。さぁ、横になってまずは治療を——」

 

 義足で心寧ちゃんの存在を思い出す。

 そうだ。

 こんなことをしている場合ではないのだ。

 室井先生の洋館から脱出したメンバーを再度、頭の中に入れたことによって我に返った。

 僅かな可能性に望みをかけて、心寧ちゃんが一足先に洋館から抜け出せたんじゃないかと思ったが、やはりそんなことはなかった。

 ……地下へと続く階段の扉は蹴り破られていたのだ。きっと力任せの義足で無理やりに粉砕したため、最初に洋館へ入ったあの時には南京錠で封鎖されていたはずの扉から煙が立ち上っていたのだ。そうだ。きっとそうに違いない。地下への突入が煙が残るほどつい先程の出来事ならば、まだ追いつけるかもしれない。

 背後からの唐突な悪質タックルと外に出られた安堵。蓮魔先生、黒田先輩、眞田先輩とのやりとりで忘却しかけていたが、心寧ちゃんがまだ洋館に取り残されたままなのだ。

 患部を水で洗い流し終え、抗生物質の入った注射器の注射針を私に打ち込もうとする室井先生の手首を鷲掴みにして静止する。私の行為に彼はうっすらと瞼を開けて驚いているようだが、いま私は彼の悠長な応急処置を受けている場合ではないのだ。

 

「室井先生! 抗生剤とモルヒネ! ……あぁ、この際 鎮痛薬系なら何でもいい! ブプレノルフィン*1……いや、フェンタニル*2 あるでしょ!? 即放性の強オピオイドですよ! レスキュー剤として用いれる訳ですから、この場に当然持って来てますよね!?」

「え、えぇ……君の言う通り、問題なく常備していますが……」

「じゃあ、あと薬物性ショック状態に備えられる、備えるエピペン! エピペンも! なければボスミンやイノバン、ドフトレックス*3で構いません! 代用します! ああもう! 時間が惜しい! 自分でやります!!!」

 

 邪魔な室井を突き飛ばして、ストレッチャーの上から飛び降りる。彼が持ってきた鞄の中から必要な薬品の入った瓶を片っ端から必要分だけかっさらう。

 注射器だけは彼の手の中にあり、注射器の中に薬液が満たされているため使用できそうにないが問題はない。私は既に自分に使用した注射器を1本持っている。

 まずはかっさらった医療品の中から、エタノール消毒液を取り出して水で汚れを落とした傷口にぶっかけた。

 

「あ゙が゙ッ——ゔお゙ご゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙お゙お゙お゙お゙お゙っ゙!゙!゙!゙」

 

 予測できた激痛。

 でも悲鳴を上げればきっと人は集まってくると思って、咄嗟に身体の泥をぬぐい落としていたバスタオルを口の中に捩り込んで悲鳴を最小限に抑える。ショック状態に近い反応が出た際には、痙攣しながらもエピペンを即座に大腿部へ突き刺す。

 

(ははは……こんな絶叫と痙攣。鹿之助くんには聞かせられないな……)

 

 自嘲しながら、震える手でコンドームを開封し、完全に引き伸ばす。先端をハサミでカットする。筒状になったコンドームを足にリストバンドを付けるようにしてハリネズミ状になった足を保護するために、2重にしてかぶせる。ひとまずは、これで傷口から新たに細菌が入ってくるリスクを下げることができた。

 更に嚙みしめていたバスタオルでヒカキボルグの泥を拭い去ったあと、テーピングで再び折れた脚を聖剣ヒカキボルグで固定した。

 身支度を整えながらも、これまでの洋館脱出作戦で負傷した傷口に絆創膏やレーザーで焼かれた部位を氷で冷やすなどをして〈応急手当〉する。

 実に荒々しい〈医学〉と〈応急手当〉の連続治療だが、せっかく今この場に必要な治療機材が揃っているのだ。治療することに関して、この機を逃してはいけない。

 

「青空さん……君は……——」

「む、むろい……ぐっ……室井先生。室井先生の説教もあとで聞きます……! やることがあるんで! じゃ!」

 

 険しい顔をして、呆れ返っているような少し怒りに触れたかのような顔をしているまま出入り口を塞いでいる室井先生を押し退ける。それから、壁に立てかけてあった松葉杖と再突入用の武器を片手に外へと踊り出た。

 外では私が放り投げたことで泥まみれになったコロ先輩が、意識を取り戻して別のテント内で五車学園の教員やスーツ姿の警察関係者に事情を説明しているのが視界に映った。

 やった! 丁度良いタイミングだ。探す手間が省けた!

 

「コロ先輩!」

「……!」

 

 私の突然の乱入に周囲がざわつくが、構っている暇はない。群衆を押し退けて、彼女に抱き着くように、崩れ落ちるようにして彼女の正面に躍り出た。

 正常な群衆の9割は乱入してきた私に夢中で、名状しがたいことになっている私の左脚に気づかない理論だ。

 

「『鍵』を下さい! 再突入します!」

「!? ……!? ……?! …………!?!?」

「な、なんだね、君は——」

「すみません! 時間がないので!!!」

 

 明らかに動揺し戸惑うような表情をするコロ先輩の懐からカードキーを強奪するように手に取り、乱入したことを咎められるが全てを無視して踵を返す。コロ先輩は私に対して色々と話しかけていたが、何と言っているか等まったりと取り合っている時間などあるはずもなかった。

 時は一刻も争う。ここで、捜索隊や保護隊が去ってしまえば、僅かな生存の確率が残された心寧ちゃんは死亡扱いとなり、死が確定してしまう!

 だから、今だけなのだ。今しかないのだ。

 

「よしっ」

 

 転がるようにその場から離れ、適当な木陰に座り込み太ももを露出させる。エタノール消毒液に浸された脱脂綿で注射箇所を消毒して、室井から奪った鎮痛剤やらアドレナリン薬、抗生物質を適量。オーバードーズには注意して片っ端からぶち込んで行く。ボスミン……アドレナリン薬は多めに投与して意識を保ち続ける。心拍数が跳ね上がるのを感じる。まだ私は動ける。まだ動かせる!

 私の行為に、私の目の前を通り過ぎていく大概の大人たちは不思議そうな、信じられないような顔をしていたが……別段、何か邪魔立てしてきたり手を出してくるという事はなかった。所詮はNPC(モブ)ということだ。今日のところは、そこまで気を払う必要はない。

 私が歩くたびに泥水が跳ねて患部の皮膚付近に付着しているが、事前に固定したコンドームが絆創膏の役割を果たしていた。おかげで更なる汚染および細菌の侵入、出血を最小限に防ぐことができている。避妊具の誤った使い方だが、このコンドームによる防水機能、止血帯への転用可能性能は本当に素晴らしい。

 

「よしッ!!!」

 

 元気よく立ち上がり、松葉杖を付きながら洋館出入り口前まで急ぐ。

 洋館の扉は、今は完全に閉ざされてしまっていた。なお先輩の日大悪質タックルによって、私の20万7千985円はまたもやどこかに行ってしまったらしい。されど、20万7千985円の代用品は見つかったのだ。指輪やら護符は質屋に入れて、また新しいのを買えばいい。

 

「青空!そこで何している!?」

 

 ドアノブに手を掛け、身体の半分を洋館内に侵入させたとき。背後から蓮魔先生の声が掛かる。

 首だけ振り返れば蓮魔先生が、黒田先輩、眞田先輩、氷室先輩、大人しそうな顔をした巨乳の五車学園1年生、そして鹿之助くんの従姉である上原 燐先生を引き連れて私の事を注視していた。

 ……なるほど、あの衣服。先ほど膝をついて私に手を差し伸べてくれたのは、上原 燐先生(鹿之助くんの従姉さん)だったのか。

 今、私を見つめている誰もかもが傘も雨合羽も着用せずに、私と対峙していた。まるで映画のワンシーン。なんとも異様な光景だ。

 

「貴様ッ……なんだその足は!? 室井の応急処置はどうした?!」

「すみません。蓮魔先生、まだ洋館内の地下に心寧ちゃんが中に取り残されているんです。今は治療なんかより、助けに戻らないと」

「治療なんか? 治療なんか、だと? 貴様、自分で何を言っているか……いや正気か? 正気なのか!? 貴様はッ!? それに心寧……? 速水の事か! 速水の事は……問題ない。我々教師陣で向かう! だからお前が行かなくてもいい!」

 

 蓮魔先生の言葉に完全に振り返って、彼女を見る。

 これが教師として誰が聞いても素晴らしい判断を下している蓮魔先生の言葉に感激をして…………なんて理由だったらどんなに良かったことか。これまで探索を重ねてきたからこそ。知り得ていた情報があるからこそ。あからさまな動揺を見せる彼女の言葉の真意を〈心理学〉を用いずとも見抜いてしまったためであった。

 でも憶測にしか過ぎないが、教師としての彼女(蓮魔先生)の気持ちも分かる。きっと、これ以上の被害を広げたくないのだ。私まで死ねば、彼女は私……青空 日葵の両親に面目が立たなくなる。責任問題にも発展する。彼女は今厳しい立場に立たされている。

 

「——すみません。生徒指導ならば後でちゃんと受けます」

「私はそういうことがいいたいのではない! どうして貴様には私の意図が伝わらない? 人の話を聞く気がないのか、そもそも話を聞いていないのか——」

 

 やるせない表情を浮かべる私に、蓮魔先生のくどくどとした語り出しから、私が彼女に注意を向けている間に対面している6人のうち3人……。黒田先輩、氷室先輩、赤い服を纏った名も知らないし大人しそうな赤渕メガネのブロンドボブショートヘアの1年生に動きがあった。

 黒田先輩と氷室先輩は、私に呆れ返って興味がないようにそれぞれ別方向に離れようと動いているが、実際にはじわじわと距離を詰めつつある。一方で、大人しそうな赤渕メガネの1年生は靴紐が解けたのかそれを直すように前かがみになっていく。その動きは、交渉役の刑事が犯人に悟られないように警戒しながら銃を抜く……その仕草にそっくりだった。

 黒田先輩と氷室先輩が私を取り押さえるために分散しているのは、言わずもがなとして……。靴紐が解けたのであればすぐに結び直せばよいはずの1年生が、私の動きを注視しながら不審な動きをしているのが妙に引っ掛かりを覚える。

 

「——1時間で戻ります。先生方は私が1時間経過しても戻らなかったら、探しに来てください。……大丈夫です。出るための『鍵』はちゃんと所有しています」

 

 ここで敢えて洋館内で手に入れたカードキーを6人に見せつける。蓮魔先生と学生たちは無反応、私を捕まえることに躍起になっているため『鍵』に興味すら向けなかったが……燐先生と眞田先輩は私の取り出したカードキーに視線を向けていることに気が付く。

 『鍵』を左右に振ると、『鍵』の動きに合わせて瞳が細かく左右に動いている。

 

「私達はきっと地下に居るはずです。洋館入り口にある地下で何か逃げられないトラブルに巻き込まれているんだと思います」

「何を言っている!? 貴様は『鋼人洋館』について知っているという事は、その細部まで既に調べ上げているのだろう?! ならば、洋館に入った学生はどうなるか(・・・・・)知っているはずだ!」

「ええ。分かっています。分かっていますとも。ですが——」

 

 そしてやはり、大人しそうな1年生の挙動がおかしい。

 彼女はここでやっと私の視線に気が付いて、靴紐のない靴の靴紐を結ぼうと地面に蹲った。視線は靴に向いているが……たまにチラリとこちらを見てタイミングを計っている。何かが変だ。彼女がそんな姿勢になっているのに、蓮魔先生側のメンバーは誰も気にも留めない。

 ここから導き出される答えは……。泥に手をついて、泥を〈投擲〉して私の視界を一時的にでも塞ごうとしているのか……? そうすれば一時的に私の視界は塞がれ、その隙に左右へ分散した黒田先輩と氷室先輩が私の事を取り押さえられる。

 私の〈回避〉ロールの性質上、目で攻撃が見えていなければ〈回避〉は行えない*4。それに私の説明書(基本ルルブ)の戦闘ルールに基づいた〈回避〉ロールの細かな性質上、この状態・この状況で何度も〈回避〉行動を行いたくはない。

 これは……タイミングを見て、直ちに洋館へ再侵入しなければならない。

 

「この人食いの館で貴様や他の連中が生還できたのは、ただの奇跡だ! うぬぼれるな! 過信するな! 命を無駄にするな!」

「……すみません。約束……したので……」

「青空ぁっ——!」

 

 蓮魔先生が私の名を叫ぶのと同時に、1年が動くが私の方が早い。

 1年生が靴紐ではなく地面に手を突く前に、洋館の中に転がり込む。扉が閉まるのと同時に背後から何かの衝撃波。しかし、その衝撃波で扉は完全に閉まり、再び洋館内には静寂が訪れた。

 

「……さーて、もうひと踏ん張り。探索者の意地を見せてやりますか!」

 

 この世界では一般人枠で居たい私にとって、この救出行為はその目標からかけ離れた逆張り行為に通ずるものがあるが……。今回の事件は最初から探索者として始めたことだ。

 それに、他者の目という制限がなくなった今。私は好きなだけ自由行動を取れる。

 

——さぁ、最後まで “探索者の意地” ってやつを見せてやる。

 

 大きく伸びをして深呼吸。

 埃が喉に張り付くが、のどの痛みと共に準備を始めるのだった。

 

 

*1
薬効半減期2-7.3時間(平均3.5時間)

*2
モルヒネの約292倍の薬効、薬効半減期3.6時間

*3
アドレナリン薬

*4
〈回避〉の定義、6版-76頁、7版-57頁




~あとがき~
 閲覧者兄貴姉貴のみんなへ。
 長めの9章、最後まで付き合ってくれて、ありがとう。

~評価返信~
 『ハーメルンのチョコ様』
■ 自分は好きだけど、文章のエフェクトが揺れるのは読みづらいので多用しないで欲しいかも?
◇ 読みやすさと演出の調節の難しさですね。PC版では大したことなくても、スマホ版だと酷いことになっている個所をいくつか見つけました。可能な限り減らせるところは減らしたいと思います。希望の提言、ありがとうございます!

『wsb038様』
■ 面白いぞおおお。モチベ回復を願って10評価いれちゃう
◇ 感想に加え、評価を頂きありがとうございます! 隠れ夢もこの期間に叶いおかげさまでバリバリと執筆がはかどっております! 今後とも本作を楽しんで頂けましたら幸いです!

『Magi様』
■ 評価点感じるんでしたよね?
あ・あ・あ・あ・あああ↑↑↑ 10<ジュクッ 多幸福感には気を付けよう!
  よっしゃ!早く仕事終わらせて、帰って執筆でもするか!じゃあな!

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