対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。 作:槍刀拳
その時、不意に正面の一角にスポットライトが灯る。
位置的に、私達がいる場所から数メートル離れた広間だ。電球に三角錐型のカバーの付けられた天井からつるされるようなシンプルなタイプのライトで、何者かが電気をつけたらしい。
「あああああ……っ!駄目駄目駄目!! 来てしまった!もうダメッ!ごめんなさい!ごめんなさい!!!日葵さんはせっかく外に逃げられたのにッ!私のせいでっ!ごめんなさいぃぃいっ!」
あの心寧ちゃんが両目にいっぱいの涙を浮かべて、私の肩に抱き着くようにして泣きじゃくり始める。あの感情をあまり表に出さないことで定評のある心寧ちゃんが、私の肩に抱き着くようにして泣きじゃくっている。大事なことなので2回も描写するぐらいには、感情を露わにして泣きじゃくっている。彼女の熱い涙が肩を伝って横腹へと流れていく。
怯えた鹿子ちゃんのように、縋り寄ってくる心寧ちゃんの頭をそっと撫でながらも、ゆっくりと立ち上がってスポットライトに対して身構える。座ったままの心寧ちゃんは私の掌をハンカチのか代わりのようにして、好戦的な私を宥めるように手を引っ張り、顔を必死にこすりつけて来ていた。細かく震えながら泣いているのか、ビクンビクン震えるたび掴まれている手の甲に温かい雫がじっとりと広がっていく。
「Ladies Annnnnnd? Ladies!!! Welcome To The 水龍敬ランド! 今日も! 明日も!
「誰だッ!」
スポットライトの中には誰も居ない。
しかし、ひょうきんそうな男の声だけが、何処からともなく聞こえて来ていた。発声地点を模索するが無駄なようだ。声は四方八方から聞こえてきている。
こちらとしても立ち上がり、声を荒げ、身構え、視界を左右に忙しなく移動させて声の主の位置を探る。
奴の声が聞こえるのと同時に、心寧ちゃんの悲痛な鳴き声が一層強くなる。先ほどまでは掌に縋り寄っているだけだったのに、今は震えながらも私と同じように立ち上がって、顔を手の甲、前腕、上腕、肩へとこすりつけて、指を絡めあって握りしめてきていた。
「Meの名前は、
麻呂の屋敷? ミーの名前は織田 鋼人? ……やはりコイツ。
「にょっほっほっほっほ♪ Youのそのface! 理解したでおじゃるな? それにしても撒きエサにこんなに早く食いついてくるとは思わなかったでおじゃる。それにそちらのMy first ハニーは『こ・こ・ね』ちゃん♥というでごじゃるか! オッホッホッホーッ! 心寧ちゃーん♥♥♥」
——ブシャッ♥ ブシャッ♥♥♥
「イッ♥……イゥッ♥」
「!?」
なんだ!? 今の水っぽい……凍結した氷が詰まった蛇口から水が吹き出る音は!?
真っ暗で何も見えないが、腕にしがみ付いている心寧ちゃんが艶っぽい声を出した音に、ちょっと一線超えたような音が聞こえたんだが!?
…………大きく息を吸って、スゥー……。あと……なんか、私の下半身。大腿部から足先にかけて暖かい液体が掛かった気もするんですけど。心寧ちゃん? ねぇ、心寧ちゃん? 今、私に何をした? ナニした? 怒らないから言ってごらん? ねぇ、このしょっぱい液体はなに? 涙? 涙にしては、ちょっと——かなり。かなり粘性が高い気もするけど。涙だよね?
「ひ、日葵ひゃ……♥♥♥♥ ご、ごめんなひゃ……♥♥♥」
あ、ごめん。やっぱり皆まで言わなくていいや。そのまま黒塗りされた視界で達していていいですよ。なんだか何かにしがみついてないと勢いよく尻もちついてしまいそうだし。
そんなことを口に出せば本人の尊厳に関わりかねないので考えはしながらも、腕にしがみついてくる心寧ちゃんの腰にそっと手を回し、倒れてしまわないように引き寄せる。……うん、すっごいガクガクしてんなぁ……。すっごいガクガクしてる。足も。腰も。尻も。そんな私に心寧ちゃんは腕にしがみついた状態から首に腕を回してきたが……。く、首に温かい生息が……。
ま、ま、ま。私としては、ひとまず言うことは言わねばなるまい。
「……心寧ちゃんに何をした?」
大体、想像はつくけど。
「心寧ちゃん♥「あああああっ♥♥♥♥♥」とは “勝負” をしただけでおじゃる。麻呂が勝って、心寧ちゃん♥「がはッ♥あっ♥ あッ♥」が負けたから代償を支払って貰っただけでおじゃる。でもその代償にはちょっとしたMy first honeyの
うん。なんか織田 鋼人がなんか言っているけど、となりの心寧ちゃんのおかげでまったく頭の中に内容が入ってこない。でもふわっとは何を言っているのかわかる。わかるけど……。ってやつ。
今すっごい、心寧ちゃんが私の半身を抱き枕みたいに掴みながらガクガクしてる。何が起こっているか、詳細には言わないけど、すっごいガクガクブシャブシャしてる。すごい細かくて暖かい吐息が、たくさん、私の肩に、鎖骨に、脇にかかってる。
でも何も見えていない。辛うじて心寧ちゃんの艶のある髪が見えるぐらい。私の視界は真っ暗なままだ。だから感覚的な描写しかできない。
でも、まるでテレビアニメ『異種族レビュアーズ』の黒塗りムービーを見せられている気分だわぁ……。音声のみでお楽しみくださいのテロップを見ている気分だわぁ……。これは台湾に高飛びして無修正版を見なければいけないやつだ。
迸る汁に関しては、ふなっしーが連想される。アダルト業界に居そうなふなっしーだなぁ。TENGAカラー。レッドドット・デザイン賞2021を受賞。○○汁ブッシャー!
すげぇ。やっぱり私、今は対魔忍世界に居るんだなぁ。なんかこんなところで、すごい実感を覚えてる。対魔忍世界だなぁ。対魔忍世界だわぁ……この世界。クトゥルフ神話的事象に巻き込まれているのに対魔忍的事象にも巻き込まれているなぁ。私。
あれ? 今回、対魔忍世界に訪れてから初めてってこともあるけど……この状況。なかなかにレアなケースでは?
「……勝負で負けたから代償を支払ってもらった? 一つ疑問があるのですが……私と鋼人卿、私達は勝負もしてないのに、私の持ち物はすべて没収されているようですが?」
「にょっほっほっほっほ♪ それは麻呂の屋敷に2回も不法侵入した入場料でごじゃるよー♪」
「
「麻呂の屋敷で持ち主が死んだので、ぜんぶ麻呂の物でおじゃる~。麻呂は自分の物を窃盗犯から取り返しただけでごじゃるよ~♪」
「
「にょっほっほっほっほ♪」
さて、ここからどうするべきか。闇の中で目だけをギラギラと光らせて考える。
心寧ちゃんを連れて脱出するには、あのカードキーが必要不可欠だ。つまり、私と心寧ちゃんがここから脱出するには、奴と最低1回は勝負しなきゃならない。だが、1回アイツに勝利したとして……カードキーが手に入っても、心寧ちゃんを蝕んでいる肉体改造はそのままだ。それに、カードキーを手に入れたとしてもやすやすと逃げる私達をこいつが見逃すとも思えない。ゆえに完全に見逃すことを条件に、もう1回勝利する必要が出てくる。
話を聞いている限りでは、心寧ちゃんは奴に敗北した。これは揺るぎない事実だ。
そして支払った代償とその効力は、術者に名前を呼ばれるたびに累積的な性的緊張からの突然の解放……つまりオーガズムに達するようなヤツだ。心寧ちゃんを蝕んでいる肉体改造された状態から元に戻すにはカードキーと見逃しとは別に追加で1回、勝利する必要もある。
つまり3回。コイツと悪趣味なゲームを3回もしなければならない。
でもこいつの性格を分析するに、いきなりえっちな方の肉便器や対魔忍になること強要するせっかちなタイプじゃない。対魔忍の初期過程はいきなり与えてくるかもしれないが、主な傾向としてはじっくりじわじわと苦しめて、従順にしていくようなクトゥルフ神話側らしいネチネチとしたやり方を好む黒幕タイプだ。
逸話通りなら、きっと希望を見せて、浮かれたところをつけ狙って私の心を折ってくる。
(……1回でも敗北すれば、恐らく私も心寧ちゃんと同じ状況にされる)
私は『青空 日葵』という肉体に転生した『釘貫 神葬』という一介の異世界転生者の為、名前を呼ばれたからと言ってオーガズムには達しない……とも言い切れなさそうだ。
……あの状況。あれは肉体の無差別かつ強制的なオーガズムだ。肉体の持ち主が『青空 日葵』という個体名を持つならば、あの呪術に反応してしまう可能性は……無きにしも非ず……だ。
(……チッ。これだから、
これでは、一回敗北した時点であとは芋づる式に、例え奴が敗北しそうになっても、私の名前を呼びまくってオーガズムに達せさせ強制的に敗北を認めさせればいいだけの事だ。
「ひ、ひまりひゃ……♥♥♥♥ たたひゃ……♥♥ ら……め……♥♥♥」
今、心寧ちゃんは座り込んだ状態で最後の力を振り絞りながら、私の腕を引っ張るようにして警告をしてくる。
闇が完全に覆い隠しているため、彼女の表情は分からない。しかし声や瞳を閉じれば、目元が垂れて、甘い瞳。だらしなく半開きになった口でこちらを見つめている様子が想像につく。
でも、目を開ければ文字通り真っ暗で何も見えないんだけど。
「大丈夫です。約束したでしょう?『必ず
「ひまり……ちゃ……ん」
「心寧ちゃん。世の中にはこんな言葉があります。私は
「……」
「……」
「…………」
「……逆転は……好き。ですか?」
「逆転は……好き……です……」
「逆転がお好き? けっこう。ではますます好きになりますよ。さぁさぁ、どうぞ。
「…………」
「えっと。つまり……。大丈夫ってことです。私に任せてください」
「……?」
やはり彼女は私の言葉にキョトンとしている気がするが、片手で握りこぶしを作って、親指側をドンっと自分の心臓付近の胸を一発叩く。たぶん心寧ちゃんには、一切このネタが伝わってないんだろうな……。
五車駅での鹿之助くんとまえさき市で3時間もウンコしていた方の蛇子ちゃんとのやり取りでもそうだったが、ジェネレーションギャップがつらい。
彼女に対してウィンクをするが、無反応ってかそもそも見えていないだろう。
だが私には若干の賭けも混じるが勝算はあった。だからこそ力強い声で、心寧ちゃんの胴体にもう一方の片腕をまわして強く引き寄せ心寧ちゃんを励ます。
「最高でおじゃるね~♪ これこそ、百合! あぁ~麻呂もあの百合の間に挟まりたいでおじゃる~♪」
姿の見えない織田 鋼人は、ふざけたことを余裕な様子でほざくが今のうちに笑っておけばいい。最後に笑うのは私……私達だ。
~あとがき~
へーい! 半年前の感想欄でちょっとえっちな展開をリクエストしてくれた幽姫兎兄貴、今も見てるぅ~?!
今回はそっち路線で執筆しろってダイスの女神様が指示してきたので、R-15を攻めていきます。
今回はセキシキ様作の『その対魔忍、平凡につき』を参考にしてR-15とR-18ラインを参考にしながら執筆させて頂きました。
本番がなく、大事なところは『異種族レビュアーズ』を参考にして黒塗りにしました。つまり、これはR-18じゃない。
セキシキ様、1話目から最高の女の頭を掴み、道具として用いた素敵なR-15展開でございました。ありがとうございました。
別件として【サンライズチアー】日ノ出 陽葵のボイスをこの度、改めて聞きました。
信頼度MAXのボイスにがんばれ♪ がんばれ♪ がーんばれっ♪というボイスが加わっていることに気が付いたとき、涙が出ました。……ありがとう、陽葵ちゃん。明日も頑張る。