対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。 作:槍刀拳
戦闘狂と鹿之助くんの
この部屋に私と心寧ちゃんに対して危害を加えてくるものは存在せず……。
チームデスマッチは私達の勝利で締め括られる。
織田 鋼人は燐先生によって途中から炎を噴き始めて炭化していたし……次元の蟲人/残虐な人攫いは眞田先輩に滅多打ちの滅多刺しにされ、蟹を茹でたかような生臭さを放つ銀色の体液を残して時間と共にしぼんで点滅したかと思えば、最後は溶けてその姿を消してしまった。
「眞田! 上原! 何処に居るッ!?」
「蓮魔先生、ここら一帯の足元は暗いので足の踏み外しに注意してくださ……ヒッ」
それから……。一足遅れる形で、蓮魔先生と黒田先輩もこの地下までやってきた。
死体姿とはいえ、次元の蟲人/残虐な人攫いを見た黒田先輩は少しばかり驚いて蓮魔先生の背後に隠れてしまったこともあった。
しかし、今では平常心を取り戻していつものように大好きな蓮魔先生の傍に寄り添っている。
勝利した私達に奴等が支払ったものは『死』だった。
こうすることで、心寧ちゃんの腹部に淫紋を刻まれていることは、私と心寧ちゃんだけの2人きりの秘密となり——術者も死亡したため淫紋が発動する条件を部外者に知られることや発動されることも、今後一切なくなった。
カードキーも、織田 鋼人は死亡したのだ。奴にはもう必要はない。相続として私がそのカードキーを貰えばすべて穏便に丸く収まる。
奴の思い込みにしか過ぎないが、私が奴の妻であるならば相続は当然の権利だ。相続税はこの館を売地に出して支払ってやる。なんて合理的で完璧な報酬だろうか。
「……青空、大丈夫か?」
「えぇ……。またもや顔面から地面に衝突したことを除けば、大丈夫です……」
戦闘の終わった部屋で、痛みによって顔面を抑え悶える私に燐先生はキンキンに冷えた濡れタオルを渡してくれる。私は全裸のまま受け取ったタオルで、強打した額から鼻頭までを冷やしていた。
いま燐先生は、全裸で強打した患部を冷やしている私と、オーガズムに達しすぎて気絶した全裸の心寧ちゃんの介抱をしている。
遅れて参上した蓮魔先生とおまけの黒田先輩、眞田先輩の3人は、そんな介抱されている私達を助けに来たことに関して大揉めし始めていた。
「ほらな? 私の言ったとおりだったろ? コイツが突入してから、ほぼ1時間後。私達を招くように扉が独りでに開いて、速水の悲鳴。続いて青空の雄たけび。雄たけびも蓮魔、お前の名前を叫んでいた。隠密ってのは好きじゃねーが……上原の奴が必死に隠密しろって懇願するから、言う通りに忍んで駆けつけて見ればあの状況。突入して大正解だったのは違いねぇよ」
「今回ばかりはそれを認めるが、本来ここに入ったものは
「いいじゃねぇか。元凶はぶっ飛ばしたんだしよ。脱出に必要な『鍵』は青空が持っているんなら、あとはそのまま無事に脱出できたら何も問題ないだろ?」
「そういう問題ではありません! 眞田さん! あなたはいつもそのような結果論を展開しますが、もしその方法が上手くいかなかったときのことは考えているのですか? それに蓮魔先生は最終的な結果についてではなく、
「うまく行かなかったときィ? はっ!!! だったらその時は、全て突破できる力で突破して解決すればいいだけの話だ。黒田お前はまだ現場にそんなに出てねえからわかんねーだろうけど、社会人は
「それは……。今は、たまたまうまく行っているだけであって……。今後もそうだとは——」
「あ゙? いま、『
「黒田。……眞田のいう事はもっともだ」
「ハンッ! ほら見ろ」
「は、蓮魔先生!?」
「黒田。——まだ私は最後まで話し終えていないぞ」
「………………申し訳ございません」
「……社会人になれば、過程は評価されず結果が全てを言うことだろう。これについては、私も十分に理解している」
「さすがは長年現場で働いて、その後に教師になった奴は違うな。ちゃんと理解してんじゃねえか。わかってねえのは、どっちだったんだろうなあ?」
「っ…………」
「だがな。過程を軽視して結果だけで成果を見ること、語ること。それは魔族やノマド、不正や汚職を働く外道どものやり口と同じことだというのを、
「!」
「……」
「私達は——」
「ケッ。あー、はいはいはい。人魔外道を外れねえ程度には過程も大事にすりゃあいいんだろ! わかった!わかった! 今度からは過程を大切にしながら全て突破できる力で解決するぜ! 私はあの怪物に用事ができちまったから行ってくる!」
「眞田さん! …………蓮魔先生……」
「今は放っておけ。ああは言っているが、きっとアイツも根底では理解しているはずだ。頭を冷やせば落ち着く」
「…………」
「それよりも、先ほどの眞田への咎め。なかなかに的確なものだった。褒めてやろう」
「あ、ありがとうございますっ♥」
「…………だが、今は眞田よりも、私としては問い詰めたい人物がいる」
「……! ……ギリッ……青空、日葵……ッ!」
(……。あ、やべ……こっちに歩み寄って来てるわ。怒りの鉾先がこっちにくるわ。その対象、間違いなく私だわ)
向こう側の揉め事が一旦お開きになったかと思えば、今度は蓮魔先生がこちらを向いた。続くようにして黒田先輩の鋭い視線と重々しい歯軋りが私に刺さる。
一難去ってまた一難。
死を覚悟しておいた方が良いほどの怒りの波動を纏い、接近してくる蓮魔先生に対して私は身を強張らせる。似たような状態の黒田先輩は、確実に私の顔面を見据えながら般若のような顔で背後に付いてきている。ポーカーに例えるならダブルアップ状態だ。
咄嗟に両手に持っていた濡れタオルで顔面を覆い隠し、説教に対する防御態勢を取った。
「——上原先生! あなたもだ!!! 五車学園の教師、臨時講師という身でありながら、眞田を止めることもなく、眞田よりも先に自ら率先して洋館に侵入するなどとッ! どういうつもりだッ!」
「!?」
しかし、そんな冷やして〈応急手当〉する私には触れられることはなく、蓮魔先生はそのまま私の傍らに立つ燐先生に対して食ってかかりに行った。
私はそれをそっと、タオルの端から覗き込む。
黒田先輩も、この
「蓮魔先生。同じ学園に勤める教師として、あなたの気持ちはよくわかる。しかし青空は過去に、その命を賭して上原家宗家の跡取りである鹿之助を助けてくれた。彼女には、感謝してもしきれない程の恩がある。今度はその恩人が助けを求めていた。それは上原家としても、教師としても、助けに行くのは当然の道理だろう?」
「そうは言ってもだな!教師である貴方という存在が、定められた規則を無視して個人的な私情や感情で動くことは、事態を更に悪化しかける可能性や対m——五車学園の生徒に対する示しがつかないだろう!上原先生はその部分をどうお考えか——」
それを燐先生は真剣な様子で受け止めながらも、自分の意思を伝えている。
これには私も驚かざるを得なかった。私の中では眞田先輩が、第一プランが失敗した時の第二プラン要員として釣れると見込んでいた。
しかし洋館の外で見せびらかした『鍵』に対して、同じような反応を示した燐先生が同伴するか・してくるかは、あくまでも同伴者という形で確率に組み込んでいたのだ。それが今、彼女の言葉によって、なぜそんな教師という身分でありながらも眞田先輩と共に突撃したのか理解に至る。
だが……まぁ。本件に関して私は、当事者として巻き込んだ側の思想だとは思えないような無責任な思考だとは理解した上で、実は蓮魔先生側の意見に賛同できる部分が多く蓮魔先生の意見は尤もだとも思っている。
15年前の鋼人洋館絡みの事件では行方不明者はすべて死亡扱いとされていたし、蓮魔先生の静止を聞かなかった『五車学園の生徒2人』と、『優秀な人材の喪失・犠牲者増加のリスク』を天秤にかけて考えた時、どちらを優先すべきかは明白だ。
それでも、言わせてもらいたいこともある。
彼女たちはきっと私に対して『馬鹿な学生が自分の実力を過信し、私情を持ち込んで死亡確定の洋館へ準備もせずに突っ込んで行った。あまつさえ、教師でも手がつけられない戦闘狂を扇動した上で』と思ったことだろう。
されど言い訳がましいが、元より有事を除き第二プランは最初から使用するつもりはなかった。あくまでも第一プラン『私個人のみでの心寧ちゃんの救出(制限時間:60分以内)』がうまく行かなかったときのプランが、第二プランなのだ。それがうまく行かなかったときの第三、第四、第五プランも当然考えていた。
それに……。鋼人卿も最後は気が付いた
今回の鋼人卿の討伐は、私の名演技と鋼人卿のMP調整があったからスムーズにいけたわけであって……。
確かに心寧ちゃんを諦めて、私があの場でおとなしく室井先生の手当てを受けて去っていれば、その場は更なる侵入自体は未然に防げたかもしれない……。
だが私が介入していなかったら、間違いなく心寧ちゃんは鋼人卿専属の
でも十数年後、あの小部屋にあった魔法陣や鋼人卿による呪文によって、心寧ちゃんの子供たち……いや、もしかすると心寧ちゃんまでもが闇堕ちののち、10年間かけて開発された親子丼の一味として、新たな禍を五車町に振り撒いていた可能性もあった。
(やはり……。改めて考えると私の『カルティストは一匹残らず抹殺』理論は間違ってなかった)
さらに私が先行する形で洋館内に潜入し鋼人卿のMPを削り切ったこと。1回戦目で
日を改めての救出作戦では、奴のMPも完全に回復しきってしまい更に状況は困難を極めたはずだ。
(………………)
でも。ここにいる誰も彼もが、そんな私の影の努力なんか知らない。
きっと、ただの『馬鹿な学生』だと思っている。だからこそ、あとで生徒指導は入るのだろうけど、この場で蓮魔先生が私に対して直接的に叱ってこないのだ。
私的には『馬鹿な学生』が
私は、よく頑張った。頑張ったよ。頑張った。えらい。ほめて。でも、ほめる人が居ないから自分で褒める。えらいぞ。ご褒美は何が欲しい? 今はひたすらに鹿之助くんが恋しい。鹿之ニュウムがほしい。OK. 準備しておく。あとでいっぱい吸おうな? うん。
さぁ、ラストスパートだ。もう少しだけ頑張れるか? 頑張れる。探索者としてここで詰めの甘さをみせて終わりにしてはいけない。そうだ、探索者として最後までやり切ろう。そのつもりで侵入したんだから。うん。
~あとがき~
あともう一話だけ続くんじゃ。
(1話にまとめるには話の内容が濃すぎたため分割)
そういえば、かれこれ、本小説の
むしろ、
登場順位的にはまさに以下のような状態でして……。
◇1位:斎藤 半次郎先生
◇2位:沼津 彦四郎さん
◇3位:室井 光彦先生
◇未登場:蓮魔 零子先生
そのうち、沼津さんや斎藤先生の話も書きたいですね。
でも蓮魔先生~!!! まずはメインストーリーにも出てくれ~ッ!
それまでは、TAMA先生の同人誌で我慢します。
おっ。蓮魔先生と黒田先輩パイセンが出とるんか。
どれ——
33-4
ふ、ふつくしい……。
~評価返信~
『うんどぅるむ様』
■ 神村舞華と眞田焔がめちゃすこなので、オリ主との絡みがあってとても嬉しい。
◇ 探索者はPL傾向によっては戦闘特化型にも化けるので、プロットに無くてもいずれは戦闘狂は戦闘狂同士惹かれ合う事にはなっていたと思います。それ以外にもオリ主は鹿之助くんが大好きなので、鹿之助くんが“憧れ”に設定している神村ちゃんとはいずれぶつかるのも確定してました! 今後も神村 舞華ちゃんは本小説に出てくると思います! 神村ちゃんが出てくるという事は、芋づる式に眞田先輩も……? 今後も1つの楽しみとして見て頂ければ何よりでございます!
『いーだぼ様』
■ 対魔忍知識0なのですが、めっちゃ楽しく読ませていただいてます!探索者のあたおかムーヴ好き、もっとやって♡
◇ そんないーーだーぼーさーまーのたーめーにー?次回とっておきのお話を用意してみました。探索者あるあるだと思います。今後も予定してます!楽しんで頂ければ何よりです!