対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。 作:槍刀拳
私、赤バーが夢でもあったのですが今回を期に迎えられました!
さらにUA(閲覧者数)200,000を突破しました! 20万とはたまげたなぁ……。こんなに見てもらったの初めてだよ……。いつも本作を閲覧していただき、ありがとうございます。
すべてが終わった室内で、ぼんやりとした頭の中とドッとする疲労感に呑まれながらもゆっくりと立ち上がって、濡れた冷やしタオル片手に蓮魔先生と燐先生の間に入るように向き直る。
私が洋館再突入時に定めた探索者としての意を貫くならば、ここでまだ休むわけにはいかないのだ。
「あのー……私のせいで揉めているところ大変恐縮なのですが……」
「分かっているのであれば、黙ってそこで大人しくしていろ!!!」
「すみません蓮魔先生。でも……どうしても聞きたいこともあって……。……あそこの鋼人卿の死骸を調査してもよろしいでしょうか?」
「………………。はァ~~~ア!? 死骸の調査ァッ?!」
私のほぼ真正面に居る蓮魔先生と燐先生の2人はもちろんのこと。いまの蓮魔先生の絶叫で、黒田先輩と眞田先輩を加えた4人が黙ってこちらに注目してきた。気絶した心寧ちゃんを除いた全員が信じられないものを見るような眼でこちらを見てくる。
特に蓮魔先生は、最初私が何を言っているのかうまく聞き取れなかったのか、ひと呼吸開けてからの反応だった。少しいつもよりも甲高いキーでのクールポンポコのような『は?』が出る。顔と上半身の動きもクールポンポコの動きと連動していた。『やっちまったなぁ!』なイントネーションで『死骸の調査ァ!?』と高らかに叫ぶ。
……でも、なんでさ? こればっかりは、私は何もおかしいこと言った覚えないんですけど?
この鋼人卿はこれまでの性格上。死んだふりをして、油断している私達に陰湿な報復を加えてくるタイプの奴だぞ。『新クトゥルフ神話TRPG』275頁“怪物を殺す”にも掲載されている至って真面で普通のことを話していると思ったんだけどなぁ……?
「えっ。……駄目ですか?」
「青空……1つ聞かせてくれ」
「はい」
「……どうして……どうして死骸の調査なんかするんだ?」
「え? どうしてって……。え?」
「えっ」
「お?」
「え?」
「は?」
「えっと……これは奴と対峙した上での感想なのですが、奴の性格からして今は死んだフリをしてやり過ごし、のちに陰湿な報復をしてきそうだなと感じまして。その場合に備えた死骸の調査と
「…………正気か?」
「しょ、しょ正気ですよ!? 失礼な——」
「「……」」
「「……」」
周りを見渡すも……あれ? 空気が固まったままなんですけど。
さっきまであちら側で揉めていた眞田先輩と黒田先輩までもが、マヌケな顔してこっちをガン見しているんですけど。
私になぜ蓮魔先生も質問してきて、最後の質問が私の正気を問いてくるんですか?
私は正気ですわよ??? 陽葵ちゃんみたいに人の耳を齧って愛の告白をして来たり、神村みたいにロケットランチャーぶっぱなしまくったり、なお先輩のようにコロ先輩に執着して人のことを殺そうとなんかしていない。
報復が怖いから、死骸を調べさせてくれって言っただけなんですが? 蓮魔先生。『は?』じゃないですよ? あまり〈威圧〉ばっかりしていると、私が今度は『は?』って言うぞ?
その〈威圧〉ロールが蓮魔先生の専売特許だと思わないでくださいね?
「……報告はしたんで……調べますね」
「……。上原先生、
「分かった。……待て、青空。死骸の調査か。私も同行する」
「……! 補教員!」
「…………?」
「
「……何かあった時、守ってやるためにもな」
「わぁ……! それは嬉しいです。ありがとうございます!」
「……」
「あ、それと先ほどはありがとうございました。おかげで、最後に鋼人卿へ『ギャフン』と一発言わせられました!」
「……青空、最後に『ぎゃふん』と叫んでいたのはお前じゃなかったか?」
「そ、それは言いっこなしですよ~! あ、今回のこと、鹿之助くんには言わないでくださいね?!
「あぁ、分かっている。そんなに必死にならなくても、同じ女としてそこのところは分かっているつもりだから安心しろ」
………
……
…
さて、インテリ眼鏡を取り外して頭を抱え始めてしまった蓮魔先生と、
上原 燐先生と一緒に黒人と化した鋼人卿の死骸を調査する。首元や手首に指を当てて脈をとるが……完全に脈と息は止まっていた。それどころか、触った部分から皮膚組織がボロボロと炭として零れる。
しかし、息は止まっているが、身体に浮かび上がっている性病のような不気味に輝く、斑点だけは皮膚を蠢いていて……。
「青空……? その斑紋は何だ?」
「なんでしょう……? 性病……ですかね? 不特定多数と交わうのが好きそうなタイプでしたし……。性病なら梅毒とか……。性病じゃなければ、
「……それらの病気は、光ったり、移動したりするのか?」
「基本的に膿めば、黄色がかった体液によってテラテラと輝きます。類天疱瘡は水ぶくれが大量にできるので、それが光の反射で煌めくってこともありますね。移動に関しては、転移はあったとしても、こんな目視で移動したり、蠢くって症状は聞いたことはないですが……」
「……」
「あっ! ……もしかして、“移動” を感染的な意味合いで聞かれていましたか? その場合、類天疱瘡は大丈夫です。本人の抗体組織が原因なのでうつりません。帯状疱疹はうつる人とうつらない人が居ます、燐先生が水疱瘡になったことが無いのであれば大丈夫です。梅毒は駄目です。うつります」
「……そうか」
「はい。参考になれば何よりです」
死体の傍らで細かく調査する私に、鹿之助くんの従姉さんは立った状態でこちらの方を感心するようなそんな様子で見守っている。
調査の結果。
鋼人卿は完全に死亡していた。
しかし、死んでいるにもかかわらず、皮膚の不気味な輝きを放つ斑点だけはまだ蠢いている……。いったい……なんだ? これは私のつたない〈医学〉知識、〈クトゥルフ神話〉技能でも分かりかねるものだった。
妙に気になるのは、死んでからも浮かび上がったまま左右に蠢くこの意志を持っているかのような気色悪い斑紋は、一体なんだというのだろうか?
是非ともこの部分の皮膚サンプルを切り取って更なる調査をしたいところだが……触れた瞬間から皮膚が崩れてしまう以上、残念ながらサンプルの回収は不可能だ。
それに背後を振り返れば、燐先生が私のことを感心しているような……興味深そうなものを見る目で監視している。ここで死骸をベタベタといじくりまわして、その行為を鹿之助くんに報告されるわけには行かないだろう。だからこそ、ここは調査の断念を決めた。
一通り調査を済ませたが、ほかに興味の湧くものとしては首から掛けられたチェーン状の黒い宝石ぐらいなもので……ひとまずこれは慰謝料として私がもらっていく。
チェーンごと引きちぎり黒い宝石を振り回す。これは好きでもねぇ男に尻を揉まれた慰謝料だ。
(精密調査して無害な物体だったら鹿之助くんにあーげよっと♪ えへへ、喜んでくれるかな?)
このネックレスを付けた鹿之助くんのことを想うと、ニヤけてしまう頬の口角を両手の指先で隠しながら、おもむろに冷やしていたタオルを鋼人卿の顔にかけて頭蓋を踵で踏み抜いておく。
炭化している分、最後の一撃はあっけなかった。まるで巨大ではあるが脆い
こうやって頭を入念に潰して置けば《魔術師の傀儡》としてよみがえることもないだろう。
うん、個人的にも気分が晴れてすっきりした♪
「燐先生。ヤツは黒焦げでしたが、案の定死んだふりをしてました。どこまでも
「ふむ……」
そしてさっくりと鹿之助くんの従姉さんに〈言いくるめ〉交じりの報告を済ませる。先ほどの死体調査宣言の時と比べ、私には彼女が落ちついているように見えた。
そう、これは私の行動について疑問を抱かないようにしなければ。大好きな鹿之助くんに余計なことを吹き込まれては困る。特に今の死体へ
………
……
…
「青空、帰るぞ」
「はーい」
死体の調査及び死体蹴りが終わった後は、蓮魔先生、黒田先輩、オーガズムに達し過ぎて疲れ、動けなくなった心寧ちゃんを背負った眞田先輩のグループと合流する。
「青空、お前さ。気になることがあるんだが1つ聞いてもいいか?」
「生徒指導でまたフルボッコにされる、してもいいか尋ねられること以外なら何でもいいですよ」
「私の事を何だと思ってやがる……? ……まぁいい。お前……恥じらいとかねーの?」
多少の戸惑ったような反応を見せる眞田先輩に、自分の身体を確認する。
左足は確かにぐしゃぐしゃだが、私は特に心寧ちゃんのように下腹部に淫紋を刻まれた訳でも、心寧ちゃんのように体液を飛び散らせ
……そりゃ蜜壺から汁をいっぱい
ゆえにどこが恥じらうべき部分なのか少し頭を捻る。……。
「……。……?」
「…………」
「???」
思い当たる部分が特に思いつかないが……。おそらくだが客観的に鑑みて、眞田先輩が言っているのは一糸まとわぬこの姿のことだろうか? いや、でもこの環境なら別に見られて減るものでもないし……。
前世で探索者だった頃は、持ち物を奪われて全裸異変解決スタートも数多くあった。だから全裸徘徊について今更『恥じらい』とか言われても……と思う。
でも、このまま沈黙を貫き通すことは自分にとって不利益を被ることになりそうだった。
「恥じ……? なーに言っているんですか。眞田先輩。この女しかいないメンバーで恥じらいなんかないですよ! でも洋館の外に出た先には異性が沢山いたので……雨合羽とか身体を隠せるものが欲しいですけど……。そりゃ流石に、聖剣ヒカキボルグと本と
「お、おう」
「やだなーもう。変なことを聞かないでくださいよー。あはははははははは」
「…………」
だから私は、眞田先輩には差し当たりのない返事として、鋼人卿が所持していた本を拾い上げながら豪快に笑いかけて気にしてないように振る舞う。
不幸中の幸いにも私の他の荷物は不気味な紋章が描かれた小部屋で見つかった。
しかし服だけは入念に燃やされていた。私の
ちょっと今回、金品の損失が多すぎやしませんかね? 湯水のようにお金が溶けていくそんな感覚がある。代わりに宝石とか護符とか収入はあったけど……まだ換金前だから利益を出した実感がないし。
また、私の持ち物の中からカードキーが見つからずに一瞬焦った場面もあったが、〈目星〉を付けながら捜索したところ。奴が読んでいた本の間にカードキーがしおりとして挟まれているのを発見する。
これさえあれば無事に洋館から出られるだろう。
「さて、と。無事にカードキーも見つかりましたし……脱出の道は開いてあります! 外に出ましょう! 出口、こ↑こ↓ 全員生還やったぜ!!! いぇぇぇぇぇぇい!」
「騒ぐな、走るな、先導するな! この愚か者!」スパーンッ!!!!
「あいたっ!」
しかし無事に出られることを確信して、最後に駆け出しながら野獣先輩のポーズからの、全裸のドヤ顔
暴力反対! 今のは明らかな体罰ですよ! 体罰! 教育委員会に言いつけてやるぅー!!!
外では全裸の私と心寧ちゃんに対する配慮もあってか、出入り口は四方がブルーシートで囲われており、その目の前には医療用の担架と救急隊員が出待ちしているのを確認する。室井先生じゃないことは意外であったが、そういえば心寧ちゃんと私は生まれたての赤子のような姿だ。
室井先生は男性だし、ここはプライバシーに配慮してという奴なのだろう。
よかった。これなら堂々と全裸のまま外に出る必要も無ければ、新たな噂を生じさせることはないにも等しいに違いない。
動けない心寧ちゃんと私はそのまま担架に乗せられ、蚊帳のようなかまぼこ型の防水性を持った袋の中に詰め込まれて、豪雨の中。森の外。五車学園地下の病院に緊急搬送されるのだった。
~あとがき~
これにて、約半年間続いた~悪霊の家~編、工事完了です。
長い期間お付き合いしてくれた兄貴姉貴も、最近読み始めてくれた兄貴姉貴もありがとうございました!
~生還報酬~
正気度報酬 1D6
新クトゥルフ神話TRPG 選択ルール:幸運ポイントの回復(95頁)
成功した技能の成長ロール
・特記
釘貫 神葬ちゃんに、《クトゥルフ神話》技能を+1% 贈呈。
速水 心寧ちゃんに、《クトゥルフ神話》技能を+7% 贈呈。