対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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Episode79 『増加する見舞い客』

 すっとぼけた表情でシラを切り続ける私に、微妙な空気が病室内を流れ始めた時。

 再び病室の扉が開かれる。

 現状のシーンがアニメであれば、ぼのぼのにて主人公ぼのぼのが見せる焦りのエフェクトが私に表示されていることだろう。

 その状態でゴリ押しの何食わぬ顔を見せる私に、怪しいと目を細め怪訝な顔した鹿之助くん。こちらを厳しい目で見つめながら考える人のような仕草をするふうまくん。私を見ながら唖然としている蛇子ちゃんではあったが、開かれた扉に釣られるようにして全員が出入り口を注目する。

 そこには彼等(3人)にとってどうかは分からないが、私にとってみればみんな見知った顔の4人であった。

 彼、彼女達は私の狭い病室内がすし詰めになることを厭わずに入ってくる。

 でもおかげさまで、一瞬のうちに病室内は賑やかになった。

 

「日葵ちゃっ!」

「…………!((心寧ちゃん!)………………(ステイッ ステイッ!)………………!」( まだだッ まだだッ!))

「おっと、先客がいるとは」

…………。(こんにちは)

「え、え~っと……お邪魔します?」

 

 病室内に入ってきたのは、集団の先頭で私のハンドサインに反応する心寧ちゃん。

 なお先輩と、コロ先輩。

 そして最後尾には……私が洋館に再突入したときに、洋館の外で不審な動きをしていた下部が赤渕メガネでブロンドヘアの女子生徒だった。

 

「…………っ」((えっ、でも……っ))

「…………!!!((そんなことよりふうま君だぞ!) …………!!! …………!!!( ふうま君!!! 私よりふうま君!) ………………!!!!!」( 今だ行けっ! ゴー!ゴー!ゴー!))

「ぁっ…………ぁあっ! ふうまくん……! ふうまくんっ! お久しぶりですっ……! あぁ、足を折って動けないでいる日葵ちゃんの病室で会えるなんて……あの日を彷彿させますね……っ!」

「君は……まさか、速水さん?」

「はい、そうですっ……速水、心寧ですっ! あなたが応援してくれたから、失った両足をサイボーグレッグにする手術を受け入れて……それにこの前の危機だって、あなたという存在(心の支え)が居てくれたからこそ私は……っ。わたしはっ……!」

「!???!!!?」

 

 さぁ、この乱入で、さっそく微妙な空気が混沌と化してきた。

 まず最初に動いたのは心寧ちゃん。彼女は私のお見舞いで来てくれたのだろうが、私としては彼女にアイコンタクトで私のお見舞いよりも想い人に挨拶するように仕向けさせてもらった。

 一瞬の目の動きから〈心理学〉上では彼女は、義を通すか、私情を持ち込むか考えた素振りを1.2秒みせたが、私の何度も繰り返されるふうま君に想いを伝えに行くことのGOサインに従ったようだ。

 『㊙ふうまファンクラブ』の会員なだけはある。蛇子ちゃんという幼馴染がいる前で、ふうま君に対して両眼を涙で潤ませて飛びつく勢いのまま足元で崩れ落ちる。

 当然、何も考えてなさそうな昼行燈ことふうま君は、彼女に掛け寄っては崩れ落ちた彼女の手を取って引き起こす。

 それを蛇子ちゃんは信じられないものを見るように、獲物を横取りされた昼ドラマの女優のような顔で心寧ちゃんを凝視している。もうそれは、完全に私が“課外授業”について情報を諜報していたことを忘れているようなそんな顔だ。

 私がGoサインを出したとはいえ正妻(幼馴染)の目前でふうま君を独占するあたり……。あの子のメンタルはスティールハートが強すぎる。でもよくやった。おかげ様で、“課外授業”の情報流失事件はそのまま触れられることなく流れるぞ。いいぞーこれ。

 私……一周まわって、心寧ちゃんのことも好きだわぁ。

 いくら私によるアイコンタクトとハンドサインでの誘導があったとはいえ、見舞いを終えてからふうま君……ではインパクトが弱いことを見通しているところとか。目の前に想い人が居たとしても、まずはちゃんと私に対する義を通すか私情を持ち込むか悩むところとか。私の骨折の件もうまく使って運命的な出会いを演出するロマンチストなところとか。足元から崩れ落ちることでふうま君が引き上げるように仕向ける相手を引き込む作戦とか。正妻(幼馴染)を近寄らせない小技とか……全部ひっくるめて(したた)かで好き。

 まぁ、それはそれとして、あの場所の空気だけがクッソ修羅場になりつつあって笑いそうになる。だいたい私のせいなんだけど。

 すべては“課外授業”の情報から逃れる為なんだ! 蛇子ちゃん、許してクレメンス……!

 

「クフ……くふふふふふふふ……」

 

——トントンッ

 

 こちらの思惑に通りに事が運んだことに対しても、笑いが漏れ出てしまっている私はとっさに布団を被った。そのままシーツおばけのような状態で肩を震わせる。

 そんな折に、外側から布団が何者かに叩かれる。口角は上がってしまっているものの、なんとか笑い声だけを抑えながら布団を被るのをやめると、視界には私から見て右頭側に なおコロ先輩コンビが丸椅子(スツール)に座り、こちらを見つめていた。

 

「?」

「やぁ。妖精ちゃん。僕は君の険しい表情しか見たことが無かったから、その顔は新鮮だよ」

「……。……。……?」

「あぁ! これはこれは、コロ先輩に、なお先輩じゃ……ない……です……か? ……えぇ?」

「なんだい? その反応は」

 

 元気そうな2人の姿を見てホッと一息を付いたのも束の間。私は首をかしげることになった。

 目前の視界にはなお先輩とコロ先輩がいる。

 コロ先輩が女子生徒の服を纏っているのは、まぁ普通の光景だ。

 で、視線を横にズラしてなお先輩を見ると……うん。私の目に狂いはない。

 今、は五車学園の女子生徒の服を着用している。上半身には白のワイシャツに赤いネクタイ。それと猫の肉球スタンプワッペンが右胸についている。下半身には私が普段学校生活で着用している短い丈の紺色スカートと120デニールの黒タイツ、両手には黒のハーフグローブを着用していた。

 初対面で出会った場合、絶対に女性と見間違えてしまうような恰好をしている。

 

「あぁー……? なお先輩……で、間違いないですよね?」

「妖精ちゃん。昨日の今日で、僕の顔を忘れちゃったとでも言いたいのかい?」

「あの……いえ。ほら……」

 

 直接的には口に出さず、ボディランゲージで自分の衣服を撫でるような仕草をしてなお先輩の顔と服を交互に見る。

 

「服の事かい? これは可愛いから、僕が気に入って着用しているだけさ。先生達からも許可は貰っているし、別にLGBTに配慮してとかではないよ」

「あー……。五車学園って性別に凝った制服を着用しなくていいんですね。そういうところは、ニュータウン……なんです……ね?」

「そうとも言えるかもね。……それにしても今日は随分と楽しそうな顔をしているね! 何かいいことでもあったのかな?」

「あ、はい! やっとまた日常が帰ってきたな……と思って少し嬉しくなってしまいまして……。お二人とも(私に〈投擲〉されたり、悪質タックルをした割には)何処も大した怪我がなく、元気そうで何よりです」

「……! ……。……。」

「君は重傷のようだけどね……。…………あの時は我を失っていたとはいえ本当にすまなかった」

「いえ、良いんですよ。なお先輩の親友を思う気持ちを考えれば当然の行為だったと思います。私もコロ先輩に大変申し訳ないことを致しました。私もあの時の行為をお詫び申し上げます」

「? ……? ……? ???」

 

 コロ先輩は相変わらず、耳を澄ませば何かを喋っているのがわかるが……。足元側での心寧ちゃんと蛇子ちゃんとふうま君の修羅場による茶番劇で殆どが掻き消されてしまい、何を言っているのか分からない。

 それでも怪我の心配をしてくれたり、私が彼女を〈投擲〉したときに出来た擦り傷についても彼女自身はなんともないと言いたげに小声だが話していることがなんとなしにわかった。

 なお先輩はというと、狂気状態に陥っていたとはいえ自分のやってしまった行為や光景は覚えているのだろう。軽い挨拶と私の疑問を解消したあとで、間髪を入れることもなく謝罪の言葉を述べてくる。でも陽葵ちゃんにも似たようなことを思ったが、狂気状態ならば仕方ないと思う。彼女たちは、あくまでも中立的立場にいる一般人なのだ。

 私の説明書の定義における『CALL of CTHULHU クトゥルフ神話TRPG』153頁“信頼と公平さ”のように仲違いで目的の核心を見失うことは避けるべきと言った内容は適応させられない存在なのは理解している。

 

「えっと、日葵ぃ……この人たちは?」

「あぁ、鹿之助くん。彼女達は、私が足の骨を折る切っ掛けになった冒険の苦楽を共にして以来の私の友達ですよ。こちらは3年生の穂稀 なお先輩。そしてお隣の方が死々村 狐路先輩です」

妖精(ようせい)ちゃん……君に対して、あんな仕打ちをした僕を友達と言ってくれるのかい?」

「違うなら違うと否定してくださっても、大丈夫ですよ。寂しい気持ちにはなりますが……私もなお先輩のレーザー砲を破壊して、コロ先輩に酷いことをしましたし……」

……?(なんのこと?)

「……君は本当に優しいな……ふふっ。えっと……鹿之助くんだったかな? 妖精ちゃんの紹介にあった通り、友達の穂稀 なおだ。よろしく」

……。(ともだち。)…………。(ししむら ころ。)……、……。(おなじく、よろしく。)

「よ、よろしくお願いしますっ!」

 

 見舞いに来てくれたなお先輩たちの相手をしていると、今度はなお先輩たちの対面側に座っている鹿之助くんが私の左頭側へと寄ってきた。彼にとっては見たこともない五車学園の生徒に戸惑いながらも事情を伺ってきたため、紹介をする。

 そんな紹介に2人も快く応じて、鹿之助くんに対して握手をしてくれた。今、私の目の前を通して鹿之助くんのか細い右腕となお先輩のほっそりとした右腕が握り合われる。男の娘と美少年の熱い握手が目の前で交わされている!

 右をみれば美少年が、左を見ても男の娘がッ! ……やばい、荒ぶる。

 かわいいキュートイリュージョンして、パンデモニウムが形成される。

 織田 鋼人は『百合の間に挟まりたい』とほざいていたものだが……。私は私の意に関係なく男と男、薔薇に挟まれている……! 最高かよ! 生きて帰った報酬が鹿之助くんと会えるだけじゃなくて、薔薇に挟まれる貴重な経験をできた件について!

 まぁ、純粋に私の目前で握手をしている鹿之助くんの手のひらのニオイを嗅げて、ハイテンションになっていることもあるんですけど。

 

「ひ、日葵? 顔が真っ赤だぞ……?」

「鹿之ニュウム」

「え?」

 

 もう今の光景だけでご飯3杯いけそう。

 おお! ナムアミダ・ブッダ! 私は今、この瞬間死んでも構わない!

 お手てのシワとシワを合わせて、幸せ。ナームー。お仏壇の羽瀬川。

 

「さて、鹿之助くん。あと、私の正面に居るはずのふうま君に泣きながら抱き着いているのが、速水 心寧ちゃん。私を組み伏せようとしていた陽葵ちゃんの親友です」

「アイツが日ノ出の——……。……な、なぁ……なんかあの場所、空気が歪んでいないか……?」

 

 鹿之助くんの若干、引いたかのような顔している。さらに空気が読めない彼でも、空気の色が読めたようなことを話していたため、手を合わせて拝むのを止めそちら側に顔を向けた。

 ……ベッドの足元側での修羅場は更に混迷を極めていた。

 この瞬間、心寧ちゃんは念願のふうま君と遭遇することができ、我を忘れて縋り寄っていると言った状態なのだが……。初動で出し抜かれた蛇子ちゃんが張り付いた笑顔のまま、ふうま君の左腕に自身の腕を絡ませて正面から彼の胸に抱き着いている心寧ちゃんに笑顔の〈威圧〉を放っている。

 〈威圧〉の方法もやや露骨で、彼女は同級生の事はおおよそ『○○ちゃん』とちゃん付けで呼ぶのだが、心寧ちゃんにだけは『速水さん』と苗字で呼び、やんわりとふうま君から離れるような言葉かけをしている……。

 しかし、そこで引く心寧ちゃんでもない。というか蛇子ちゃんの声なんか一切聞こえていない。何だったら、田舎特有の蛙の鳴き声ぐらいの環境音的に対する反応ぐらいの反応を見せていた。

 そして、この心寧ちゃん非常にしたたかな女である。幼馴染の蛇子ちゃんに敵意を向けてはいるが、あくまでもその様子は微塵にも見せてはいない。ふうま君の手前では男心をくすぐる乙女ムード・乙女モードで、ふうま君の正面の視界は彼女が独占しているのだ。つよい。この女は本当につよい。恋愛クソ強女だ。大好き。

 やっぱり恋愛はこれぐらいガツガツ行かないとな! 好きな異性がいる場合、待っているだけじゃダメなのよ。私も鹿之助くんとは、もうちょっと親睦を深めたら、心寧ちゃんムーブしても(攻勢に出ても)良い頃合いかと思っている。

 ……まぁ、そのためには “鹿之助くんの憧れの座” を会得する必要があるのだが。

 早く退院したいなー♪ クラスの合同格闘訓練に出たいなー♪

 

 

神 村 舞 華 と ♪

 

手 合 わ せ し た い な ♪

 

 

…………。鹿之助くんも、あの状況・空気の淀みが認識できますか。そうですね。今は関わらない方が吉な空気ではあります。……さて、私の友達紹介に戻りますね。そして……えーっと、あちらの人は私も知らないです。はじめましての人です」

 

 心の奥底でメラメラパチパチが沸き上がって来ていたものの、一旦気持ちを落ち着ける。

 それから視線が蛇子ちゃんと心寧ちゃん、ふうま君の3人組に釘付けになっている鹿之助くんへ、私はベッド上から身を乗り出し彼のモチモチの両頬に対して両手で挟むように掴み、首のすじを痛めてしまわないようにゆっくりと下部が赤渕メガネのブロンドヘアの女の子へと視点を移動させた。

 彼女はこの部屋で何をするわけでもなく、部屋の隅で3人組の混沌とした空気にタジタジになっている。時々 ベッドの周辺で固まっている私達を見ては、助け舟を出してほしそうな顔をしていた。口の形を凹の字をひっくり返したかのような口にして、涙目でこちらを見つめている。

 私の病室に何をしに来たのか分からないが、このまま放置していても一人ぼっちの居心地の悪い経験しかしないだろうとのことで手招きをして彼女を呼んだ。呼ばれた彼女は頷くと今にも泣きそうな顔で駆け寄って、恋愛戦場を潜り抜け、人口密度の控えめな鹿之助くんの横へとやってきた。

 

 彼女の特徴と言えば何度も取りあげた通り、下部が赤渕メガネを掛けた女性であった。

 制服のネクタイの色が青いことから五車学園1年生。私達と同級生であることがわかる。首にはセーラー服に用いられるスカーフを小型化させたかのような赤色のチョーカーを巻いていた。光彩は水色で、くりくりとしたぱっちりとしつつも垂れた目は大人しそうな雰囲気を漂わせている。アメリカ(米連)やヨーロッパからの留学生説が持ち上がりそうなほどに、髪色は輝かしいゴールドブロンド色に染まっており、ミディアムショートな髪量は彼女が見かけによらず活発な動きをすることを示しているようにも見えた。

 そして……これは、私……。青空 日葵としてのコンプレックスだが……。

 彼女も胸部が大きい。比較対象として挙げるならば、神村ぐらいだろうか。…………あのね、ネクタイがね。ネクタイが……パイズリみたいになってるんですよ……。しかもスカートの丈もクソ短いし……。青空 日葵もお尻が大きいことと、この第二成長期で買い替えるのがもったいなくて2周り程大きなスカートを購入しているわけだけど、彼女はそれを上回っているんよ。

 何あれ? こっちに走ってくるたびにお胸はばるんばるん。何もない病室の床で、すってんコロリ。メガネがポロリ。スカートからは淡いピンク色のショーツがチラリして?????

 それを鹿之助くんに????? 見せ?????

 

「はぁ……?」

 

 無意識に私の左の瞼の下が痙攣する。

 更にそんな状態で落としたメガネを『眼鏡、メガネ』と探すそのノリは昭和のギャグ。それに、その足首のくしゅくしゅのルーズソックスは何さ? そのファッションセンスは、平成初期のギャルのソレなんですが???

 いくら流行は20年ごとに繰り返される傾向があるとはいえ、もうその私からしてみれば時代錯誤のメガネにドジっ子属性にしろ、ファッションセンスにしろ、どこから突っ込んでいいのか分からない。

 

「……」

「……ひ、ひまり?」

「……」

 

 ……ふふふ。蛇子ちゃんの気持ちが分かる。今こそ分かるわ。手に取るように分かるわよ。

 これが問い詰めから逃れるために私が行った行為のインガオホーという奴なのかしら?

 でも私は大人だし、前世の年齢を加えたら私の方が先輩だし? 私は鹿之助くんが、大大大大、大好きだが、鹿之助くんが私の事をどう思っているかは分からない。だからこそ、死屠殺(嫉妬)なんかしないわ。ええ。しないですとも。大人だもの。

 私だってデカくなる。水城 ゆきかぜよりも平たい胸部(まな板)からいずれは脱却する。流石に女性ホルモンの働きがあるし、筋肉のない男並みに平たい胸板が完成するという事はないだろう。……無いと思いたい。

 そんな誰かの性癖の詰め合わせ特盛セットなドジっ子属性系の平成初期ギャルが、今。鹿之助くんの隣に座った。

 この妖怪爆乳乳袋共! 今に見てろよォッ!!!

 

……。お嬢さん。先ほど転んでいらっしゃられましたが……お怪我はありませんか?」

「心配おかけしてすみません……急いでそちらに行こうとしたら、脚をとられちゃって……あ、あ、あの。わ、私は篠原(しのはら) まりって言います。速水さんと日ノ出さんとは同じクラスで……委員長をしていて……」

 

 実にクールな口調で、鹿之助くんの隣に座った妖怪爆乳乳袋(篠原 まり)の安否を確認する。

 彼女の話し方は常に上目遣いで、ちょっとおどおどとした頼りのない乙女のようなイメージだった。あ?ガン飛ばしとんのか?コラ?

 名探偵で覚えたパラパラ踊ってやろうか?あ"?

 声色は心寧ちゃんよりは低く、陽葵ちゃんや私よりは甲高い乙女の声だが、男はこういうものにキュンっとしてしまうものだ。同じ女としては、あまりにも男の前であざとすぎるとイラッとするのだが。

 あざあざあざあざ、あざとい アザトース 鹿之助くんに色目を使い過ぎると、カルティスト認定して家族もろとも宇宙の彼方までぶっ殺しちゃうぞ★(ぶっ飛ばしちゃうぞ?)

 しかし……心寧ちゃんと陽葵ちゃんのクラスの委員長さん……か。私が不慮の事故で生徒指導になったあの時は教室に居なかったような……?

 

(ま、いっか……今はそれよりも……)

「……」

 

 ここで、ふと鹿之助くんを見る。

 そんなアマが隣に来てしまった彼は顔を赤らめて、視線を真下へ向けている。

 ……この様子から、ほぼ確実に女性経験はないと見た。そしてまた純潔(童貞)でもあるのだろう。

 初心満載で純粋な部分も、ほんっとにかわいいなぁ。

 私の中でS(鹿之助くん)P(ポイント)が累積され、粘つく深淵が浄化されて行く。

 

「その、こうやってちゃんと会うのは初めまして、ですよね……?」

「えぇ。そうですね。あの洋館での出来事を除けば、初めまして、です。ドーモ、篠原まり=サン。『青空 日葵』=デス」

 

 とりあえず挨拶はされたら、返すのが礼儀というもの。

 それに——どうせこちらのネタはジェネレーションギャップで伝わらないのだ。ちょっと特殊なアイサツで返したとしても彼女には伝わらないだろう。ゆえに顎を引いて、彼女と同じように軽い上目遣いでのガンを飛ばしながらも、ニンジャスレイヤーのような作法で挨拶を交わした。

 鹿之助くん(私の獲物)に手を出してみろ。

 ニンジャ殺すべし。ハイクを詠め。カイシャクしてやる。慈悲は無い。

 

 




~あとがき~
 穂稀(ほまれ) なお先輩の、まれの字が予測変換の穂希じゃなくて、稀ってマ?
 すっごい修正個所だらけじゃん!!!
 うわああああああああ!!!
※Episode45-Tipsまで修正済。

 あと、今回は旅行先に居るので感想返しはいつもより遅れます。


~評価返信~
『どらごん侍様』
■ 一気読みさせて頂きました。とても面白いですね!次のお話も楽しみにお待ちしております!
◇ 評価文の執筆ありがとうございます!楽しんで頂けているようならば何よりです!またTwitterのフォローして頂いたみたいで……さっそくフォロバさせて頂きました!どうぞ、よろしくお願いします!

『虚夜即の子様』
■ 私はTRPG要素はとある配信者の追っかけから、対魔忍要素はインターネットミームでしか知りませんが、日間ランキング100位以内で見かけてから3日ぐらいで最新話まで読み切るくらいには面白かったです。
  タイトルと原作表記(こちら側の世界なので仕方がない)の割に探索者RPが強めな特徴はありますが、どちらの要素もさほど深く知らないので気になりませんでした。
  影がありつつも普段は道化染みた振る舞いをする主人公って良いですよね。応援してます。
◇ 人を選ぶような文章構成だったにも関わらず、最後まで完走していただきありがとうございました! 探索者RPが強めなのに原作が対魔忍につきましては……クロスオーバー作品として作者も悩みました。ただオリ主という人間個人と対魔忍世界という惑星1つを天秤にかけた結果、より要素の多い方を原作に引き込んだ次第であります(その割には既にクトゥルフ系生物が大量にカチコミに来てますが……)虚夜即の子様は大丈夫とのことでしたが知っている方にとっては気になる部分になるかもしれませんね……。今後の物語構成の参考にさせていただきます!
  明るく振る舞いつつもちょっとしたところで闇が出ちゃうの……作者の癖です。好きです。よきです。応援ありがとうございます!

『しじみじめじめ様』『ktkn様』『万葉@青ペンギン様』
◇ お三方、頂いた評価文を公開するか悩んだのですが、今回は返信だけとさせて頂きます。この度は、本小説を具体的に改善する案に加えを手心まで加えていただき誠にありがとうございました。
  現状、そんなお三方に私がご報告できると致しましては、約3週間待ってください。(特殊タグ減少、改善案反映)リメイク版を出します。
  ダイレクトメッセージを、俺はどぉんどん、おみまいしていくぞぉ。よろしくお願いいたします。


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