無限転生 ~LOST REQUIEM~   作:とんこつラーメン

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現在、脳内でこの作品の主人公がISの世界にいた頃の話を構築中です。

気が向けば投稿するかもしれません。










れっつら自立

 本部(潜水艦)に戻ってから、私は弦十郎さんにノートパソコンを一台貰った。

 なんでも、『何かを調べたいのならばコレを使うといい』との事。

 所謂『支給品』のような物だと思って、遠慮なく受取って欲しいと言われたので、素直に貰う事にした。

 こんな代物をポンと渡せる剛毅さに若干の驚きを感じつつも、同時にこの程度ではビクともしない程の組織力があると推察できた。

 着実に『S.O.N.G.』とやらの大きさを感じている。

 

「ふむふむ……」

 

 潜水艦内だというのに余裕でネットに繋がるとは恐るべし。

 どんな仕組みになっているのだとか、考えるだけ無駄…というか、面倒くさいのでしたくない。

 

(翼さんは以前『ツヴァイ・ウィング』なるユニットを組んでいた…と。で、その片割れである『天羽奏』さんとやらが突然の急死により事実上の解散…ね)

 

 艦内の与えられた部屋でココア片手に画面と睨めっこをする。

 機密だらけの環境にいる翼さんが一般人相手にユニットを組むとは考えにくい。

 恐らく、この『奏さん』とやらもS.O.N.G.…いや、その前身となる特異災害対策機動二課の一員で、彼女と同じように戦闘要員だった可能性が非常に高い。

 突然の急死というのも、本当は戦死と表現した方が正しいのだろう。

 

(少し話を聞いてみるべきか…? いや、流石にそれは拙いかな。ここにある写真から見て、この二人は公私ともに非常に仲が良かったように感じる。自ら、蛇がいると分っている藪を突く愚行を犯す意味は無い)

 

 変に不快感を与えてしまえば、最悪の場合、彼女達を敵に回してしまう可能性すらある。

 仮にも命の恩人その2なので、そんな事は出来るだけ避けたい。

 万が一にでもそうなった場合は、速やかに自殺でもしてから転生し、夢見る双魚の二つ目の反作用で全てを無かったことにすればいい。

 なに、死ぬ方法なんて探せば幾らでもある。

 転生者多しといえども、私以上に人間の死因を知っている奴は絶対にいない。

 

 

「え? 月が欠けるという異例の事態が発生した…?」

 

 月って…あの月だよね? 地球の衛星にして、ガガーリンが人類で初めて降り立って例の有名な台詞を言った…あれ。

 ずっと前に転生をした時、そこでは私は極々普通の一般人女性だったが、ちょっとした気まぐれで宇宙飛行士を目指そうと思って一生懸命に勉強して、JAXAの試験を受けたっけ。

 そこで知り合ったもじゃもじゃ頭の男性の言葉には、久し振りに心が震えた。

 あの人の言葉は、その全てが真理であり名言ばかりだった。

 

「そう言えば……」

 

 入院中、ちょっと眠れなくてなんとなくカーテンを開いて夜空を見上げたら、月が変な形をしているような気がしたけど…あれって私の気のせいじゃなかったんだ…。

 

(にしても…月が欠ける…ねぇ…)

 

 もしも、この時代にマイクロウェーブ送信施設や月面都市フォン・ブラウン、ムーンセルとかがあったらどんな事になってたんだろう?

 まぁ…いずれにしろ、絶対に碌な事にならないのは確実だな。

 

「ここからは、特にこれと言った事は書かれてないけど……」

 

 なんか、マリアさんがいきなり来日してから、翼さんと一緒にコンサートをしたりとか、ノイズによる多大な人的被害が出た…とか。

 ある日突然、そのノイズとやらもいなくなったみたいだけど。

 この手の怪物がある日突然にいなくなるというのは絶対に有り得ない。

 そこには必ず、万人が納得出来る理由が有る筈だ。

 私にはさっぱり分からないけど。

 

(バジュラや次元獣、インベーダーなんかがその最たる例だしな。宇宙怪獣は例外だけど)

 

 あれは災害というよりは、大宇宙の意志による人類に対する試練に近い。

 無慈悲なる破壊魔という点ではインベーダーと一緒だけど。

 

「………………」

 

 カーソルを上下させたり、違うページを開いたり。

 色々と見てはいるけど、一般的に知られている情報ではこれが限界か。

 

(いやさ……別にそこまで深く踏み入りたいとは思わないけどね。変に機密事項とかに触れて身動き出来なくなるよりかはずっとマシだし……)

 

 なんか疲れた……。

 体を伸ばしてから立ち上がり、息抜きに散歩でもしようと思って立ち上がる。

 

「いや…潜水艦内で散歩って……」

 

 自分で言って自分にツッコむとは…私もいよいよ末期だな。

 孤独に対して余りにも慣れ過ぎている。

 一人でいる時の過ごし方を熟知しまくってるからな…。

 

「はぁ……」

 

 無限転生を始めてから、もうどれだけの回数の溜息を吐いたことだろう。

 一京回は軽く超えてるんじゃなかろうか。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 ボケーっとしながら艦内の廊下を歩いていると、向こうから超知っている赤いシャツの男性がやって来ているのが見えた。

 

「ん? ナナシくんか。もう調べ物は良いのか?」

「一先ずの情報は見れましたので。今は小休止タイムということで、散歩ついでに食堂まで行こうかと思いまして」

「そうだったのか。しかし、君の方から来てくれるとは丁度良かった」

 

 ちょーどよかったとな?

 それはどーゆー意味ですか?

 

「実は、君に是非とも紹介したい人物がいてな」

「ほぅ?」

 

 彼が視線を下げると、そこには白衣を着た金髪美幼女が立っていた。

 こんな恰好をしているという事は、間違いなくこの子も組織の一員なのは確実だろうけど……。

 

「は…初めまして。ボクはエルフナインといいます」

「これはご丁寧にどうも。私は……」

 

 ここでふと言葉が止まる。

 別に『ナナシ』と名乗っても良いのだが、それはあくまでも仮の名前。

 そのままで通すのもアリかもしれないけど、それがずっと続くのはお互いにとってもいい事ではない。

 どうしようか考えていると、さっきのアサキムの言葉が頭をよぎる。

 

『いっそのこと、洗礼名である『バキエル』を名乗ればいいんじゃないのかな?』

 

 あの時は全力で拒否したけど、それは相手がアサキムだったから。

 こんな子相手にそれは出来ないし、したくない。

 

(まぁ…これもある意味は『仮の名前』だしな……)

 

 後でネット検索をして、ちゃんと日本人っぽい名前を考えよう…。

 

「どうかしたのか?」

「あ…いえ。なんでもありません。すみませんでした。私の事は『バキエル・ザ・ローズ』とでも呼んでください」

「バキエル? それは確か、黄道十二宮の一つである双魚宮の……」

 

 あら。よく御存じですこと。

 予想通り、この子は頭脳労働専門なんだろう。

 

「バキエル…だとぉっ!? まさか、名前を思い出したのかッ!?」

「いえいえ。これは本名ではなくて、所謂『洗礼名』というやつでして」

「洗礼…? 君は何処かの宗教にでも入っているのか?」

「まさか。どっちかというと私は宗教大嫌いですから。この名前は、どこぞの自称『至高神』な勘違い大馬鹿野郎が勝手に私の事をそう呼んできただけです」

「そ…そうか……」

 

 アイツの顔を思い出すだけで、心の奥底から怒りの感情が復活しそうになる。

 な~にが『全ては私の喜びと共に!』だよ。ふざけんな。マジでもう一回死ね。

 あれならまだジ・エーデルの方がずっとマシだわ。

 

「う~ん…やっぱり、ナナシの方が良いかもしれませんね。自分で言うのもアレですが、私って『バキエル』って顔してませんし。なので、前言撤回です。私の事はナナシと呼んでください」

「分かりました。ナナシさん」

 

 少し腰を低くしてからの握手。

 なんといいますか…この組織も相当に業が深いようで…。

 

「にしても弦十郎さん……」

「分かってる…ナナシくんが言いたい事は分かる。だが…」

「事情がある…でしょう? 知ってますよ。特に気にしてませんから」

 

 世の中には、13歳でMS乗ったり、ご先祖が残したスーパーロボットに乗ったり、小学生で社長をやってたり、挙句の果ては銀髪ツインテール美幼女なオペレーターもいるぐらいだし。

 これぐらいじゃ驚くには値しない。

 この私を本気で驚かせたいのならば、それこそ6歳で召喚獣を操る以上の事をやってみせてくれないと。

 

「この白衣で分かるとは思うが、エルフナインくんは主に我々の技術的な部分を補ってくれている」

「技術顧問的な役割って事ですか?」

「そうなるな」

「そ…そんな! ボクが技術顧問だなんて……」

 

 恥ずかしそうにモジモジしているエルフナインさん。

 成る程。技術顧問と同時にマスコット的な役目もしているのか。

 これはまた大変重要な役回りだな。

 

「前に俺が食堂で話したことを覚えているか? 響くん達の戦う手段の事を…」

「はい」

「あの時に話した『もっと詳しく説明できる人物』というのが、このエルフナインくんなんだ」

「ほぉ~…」

 

 バックアップ専門ってわけなのね。

 決して派手ではないけど、かといって蔑には出来ない。

 かなり重要なポジじゃないの?

 

「まぁ…世の中、色々ですよね」

「それだけで片付けていいのか?」

「実際にそうなんだから仕方がないと思いますけど?」

「むぅ……」

 

 はい論破。

 別にしたくてしたわけじゃないけど。

 

「そうだ。実は、私からも弦十郎さんにお聞きしたい事…というか、頼みたい事がありまして」

「頼みたい事? その内容にもよるが何でも言ってくれ」

 

 どっちやねん。

 

「私の戸籍って用意できたりします?」

「ナナシくんの戸籍? まぁ…出来なくはないが…いきなりどうしたんだ?」

「いえね。このまま皆さんのお世話になりっぱなしというのは性に合わなくてですね。出来れば、どこかで働いて金を稼いで、部屋でも借りようかと思いまして。けど、今の私は身元不明の根無し草状態。だけど、戸籍さえなんとかできれば後は全て自分でなんとか出来ますので。その一点だけどうにかお願いできないかと…」

「自立したい…ということか?」

「端的に言えば、そうなります」

 

 自立…凄く久し振りに聞いた言葉だな。

 私って自立出来てるのかな……。

 

「我々は別に気にはしないのだがな……」

「私が気にするんです。勿論、部屋が見つかるまではここでお世話になってしまいますが……」

「それは一向に構わない。だが…寂しくなるな」

「いや…まだ一週間も一緒に過ごしてませんよね?」

 

 どんだけ私に執着してるねん。

 それに、本当に部屋が見つかるかどうかも分からないし、これが永遠の別れになる訳じゃないんだし。

 少なくとも、私が死んで転生するまではいつでも会えるんだから。

 

「暫くはフリーターになりますね」

「履歴書はどうする気だ?」

「そこは適当に誤魔化しますよ」

 

 それこそネットの出番だろう。

 ネット最高。ネット万能説浮上。

 

「分かった。君のその自立心は無下には出来ないからな。可能な限り、我々がなんとかしよう」

「ありがとうございます」

 

 かなりデカい借りを作ってしまったが、こればかりはマジで仕方がない。

 戸籍なんて自分の手で作ろうと思えば作れるが、変な真似をして疑われるのは勘弁願う。

 ここは敢えて、この人達に助力して貰う事で信用を得るのが一番だろう。

 

「安心したら小腹が空きました。よかったらご一緒にどうですか? 何か作りますよ?」

「え? ナナシさんってお料理が出来るんですか?」

「昔取った杵柄というやつです」

 

 伊達に昔、料理の専門学校に通っていたわけじゃないって事ですよ。

 

(…増々、ナナシくんの正体が分からなくなるな…。確かに彼女に関するデータは全く無い。記憶が無いのも本当かも知れないが、それはあくまでも『今の世の中』に関する事だけ。それ以外の事はかなり鮮明に覚えているようだ。彼女は一体……)

 

 なんだか後ろからジロジロと見られてますね~。

 どれだけ見ても何も変わりませんよ~。

 ん~…エルフナインさんにはホットケーキでも作ってあげましょうか。

 材料…あったかな? 出来れば、ハチミツよりもメープルシロップの方が良いんだけど……。

 

 

 

 

 




次回、ナナシちゃんバイトを始める。
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