無限転生 ~LOST REQUIEM~   作:とんこつラーメン

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今回も多重クロスオーバー。

なんと三作品も一気にクロスします。






なんでやねん

 今日も今日とてふらわーでのバイトを終えて、私は現在の自分の拠点となっているアパートへと帰る。

 お世辞にも広々としているとは言えない部屋ではあるが、下手をすればホームレス一直線だったかもしれない状況から考えれば贅沢過ぎるほどだ。

 因みに、私の身元保証人は何故か弦十郎さんになっていた。

 私が目覚めて初めて会った人物なので、ある意味では相応しいのかもしれない。

 

「お疲れ様でした私ー。偉いぞ私ー」

 

 …言わないでください。分かってますから。

 『おかえり』の代わりに、こうして部屋に入る時に自分を鼓舞しておかないと虚しさで嫌になりそうなんですよ。いやマジで。

 

「「「おかえりー」」」

「え?」

 

 靴を脱ぐために足元に視線をやっていたので、誰もいない筈の部屋から返事が聞こえてきたことに思わず間抜けな声を出してしまった。

 恐る恐る前を見てみると、そこには物凄く見た事のある顔が三つ並んでいた。

 

「やぁ、久し振りだね」

「元気にしてたかい?」

「本当に姿形が変わってるのね。中身はそこまで変化してないみたいだけど」

 

 比率的には男3に女が1。

 絶対に交わる筈のない、完全に別々の世界の住人である三人がどうして仲良く並んで座ってるの?

 

「色々と問い質したい事はありますが、まずは……」

 

 部屋に上がってから、呑気に茶を飲んでいる黒ずくめ野郎ことアサキムに詰め寄った。

 

「どうして、まだこの世界にいるんですか。別の世界に旅立ったんじゃないんですか?」

「ボクも本当はそのつもりだったんだけどね。けど、その途中で出会った隣の彼に誘われてね。面白そうだから一緒に来たんだ」

「そうですか。で、どうやって私の部屋の場所を突き止めたんですか?」

「突き止めたというよりは、彼の後ろをそのままついて来たら、到着したのがこの部屋だっただけさ」

「あー成る程。その一言で全てに納得しました」

 

 つまり、今回もまた全ての元凶は、そこでまだアホみたいにニコニコしている花の魔術師(笑)ってわけですね。ハイハイ了解ですよっと。

 取り敢えず、話しかける前に挨拶代わりに一発顔面にぶち込んでおきますか。

 

顔面パンチ(ゲッタービーム)

「ぶふぉっ!?」

 

 幾ら千里眼を持っていても、似たような力を持つ私の前では無力なようで、変な声を上げながらグランド糞野郎ことマーリンは見事に私の拳を顔面にめり込ませた。

 

「お久し振りですねマーリン。なんとなくムカつくので殴ってもいいですか?」

「その一文にどれだけツッコミ所を盛り込むのさっ!? どうして挨拶前に殴るのかなっ!? せめて殴る前に一言に何かあってもいいんじゃないのッ!? 君と僕は本当に物凄く久し振りの再会なんだよッ!?」

「確かにそうですね。全ての異聞帯を攻略し終え、異星の神との戦い以来ですね。私自身は、あの最終決戦で死んでしまいましたけど。あの後、ちゃんと地球の白紙化は元に戻ったんですか?」

「あの戦いの結末について、別にここで話しても構わないんだけど、それは是非とも君の目で確かめてほしい」

「…そうですね。もしも奇跡的にその機会があれば…必ず」

 

 本当のそんな機会があったら…だけど。

 

「僕から言えることがあるとすれば、君が死亡した時、誰も彼もが心から悲しんでいたってことかな」

「…私の事なんて、とっとと忘れてしまえばいいものを」

「それは無理だろう。カルデアにとって、君の存在は完全に無くてはならないものになっていたからね」

「…さいですか」

 

 私自身は、どこにでもいて替えの効くモブキャラAぐらいの感覚だったんですけどね。

 

「つーか、なんでこの世界にいるんですか? どうせ、その体も第7特異点の時みたいな分身体とかなんでしょうけど」

「まぁね。僕が君の元まで来れたのは…ソレのお蔭さ」

 

 そう言って、マーリンは私の胸元を指差す。

 それだけで彼が何を言いたいのかが分かったが、ここはお約束として一拍挟んでおこう。

 

「いきなり人の胸を指差さないでくれませんか? セクハラですか? いい度胸です。出るとこ出ましょうか? では、今度は法廷で会いましょう」

「ちょっとぉぉぉぉぉぉぉっ!? なんでいきなり裁判沙汰に発展してるのかなぁッ!? 今から完全に説明タイムに入る雰囲気だったよねっ!?」

「冗談ですよ。それぐらいでいちいち大声を出さないでください。ご近所さんにご迷惑でしょう。発情期ですかコノヤロー」

「君の冗談は洒落にならないんだよ……その気になれば、本当に僕を法廷に立たせるかもしれないし……」

 

 え? 絶対に立たせますけど? それがどうかしましたか?

 

「さて、茶番はこれぐらいにして」

「茶番て……」

「マーリンが言いたいのは、私と融合している『夢見る双魚』の事ですね?」

「その通り。文字通り『夢』を司るそのスフィアが、僕をこの世界まで導いてくれたのさ」

「そっか…マーリンは夢魔と人間のハーフでしたね…」

 

 完全完璧に忘れてた。私的にはマーリン=クソ野郎のイメージしかなかったから。

 

「伊達にカルデアで過労死寸前まで働いてませんね。流石です」

「うん…お蔭で、スカディや孔明、玉藻の前と自然と話す機会が増えてたよ…。キャストリアからは出会う度に命を狙われてたけど」

 

 それに関しては同情の余地は無い。

 

「マーリンがこの世界に来れた理由は分かりました。来た理由は聞きたくもありませんけど」

「久し振りに君の顔が見たくなったからさ」

「本当は?」

「暇潰しに君の顔が見たくなった」

「死んでください」

「酷っ!?」

 

 暇潰しにマーリンに会わせられる方の身にもなってくださいよ。

 私の城に土足で上がりやがって。

 いや、ちゃんと靴は脱いでるけどね。

 

「んで、そんな『胡散臭いブラザーズ』の隣に、どうしてこれまた久し振りに会う八雲紫(自称17歳)がいるんですか?」

「なんか名前の後に余計な物が付いてるような気がしたけど…まぁいいわ。そこのアサキムという人物から、あなたが別の世界で生きているって聞かされて様子を見に行きたくなっちゃったの」

「基本的に気紛れですもんね、あなたって」

 

 気紛れでも大抵の事は解決できてしまうのが、このスキマ妖怪なんですけど。

 

「ちょっと待ってくれ。さっきの『胡散臭いブラザーズ』ってのはなんなんだい?」

「そのまんまの意味ですよ。二人揃って胡散臭いですし」

「「否定は出来ない……」」

 

 でしょうね。自覚があるだけ立派です。

 

「では、どっちが兄で、どっちが弟なんだろうね」

「マーリンなんじゃないんですか? なんとなく」

「そうか。では…兄さん!」

「弟よ!」

 

 はいはい。そこでバカやってる二人は放置して、私はゆかりんとお話でもしましょうかね。

 

「本当に、私が知ってる貴女とは完全に変わってるのね…」

「幻想郷は幻想郷。ここはここですからね」

 

 それが転生ってものですし。世間には転生しても姿形が変わらない人もいるようですが、あれってフィクションでしょ?

 だって、生まれ変わるのに姿形が変化しないって絶対に有り得ないですし。

 

「けど、魂の色までは変わってない。こうして実際に話してると、それがよく分かるわ」

「そう…ですか」

 

 前にも女尊男卑の世界で同じような事を言われたけど、私の根本ってそんなにも変わってないのかな。

 もし本当にそうだとしたら、どんだけー。

 

「紫がこの世界に来れた理由はなんとなく察しがつきます。どうせまた『スキマ』を使ったんでしょう? あれって本当に万能ですからね」

 

 スキマの前では、それこそ時間も次元もあってないようなものだし。

 どんだけ汎用性高いんだって話。

 

「貴女が幻想郷に転生をして、幼い頃からの付き合いになるのかしらね…私達」

「そうなりますかね。あの頃はまだ私も『夢見る双魚』を持っていなかった。だから、紫は私の事を覚えていられる」

「仮に持っていたとしても、私は全力で抗うけど。だって、あなたの事を忘れるとか絶対にしたくはないし」

「紫のそーゆーとこ…嫌いじゃないですよ。ほんと」

 

 いつもは掴み所のない飄々とした美女なのに、ふと見せる人間らしさが私は好きだ。

 なんだか、紫の隠された一面を見たような気がするから。

 

「ところで霊夢はどうしてます? 元気にやってますか?」

「えぇ。のんべんだらりとしながらも、ちゃんと巫女としての役割は果たしてるわ。貴女に言われた通りにね…先代の博麗の巫女様」

「昔の話ですよ」

 

 紫が言った通り、幻想郷での私は霊夢の母親…つまり先代の博麗の巫女をやっていた。

 弾幕なんて便利な物が無い時代に誕生したので、妖怪退治は基本的にステゴロでやってたけど。

 だって、色々と小細工するよりも近づいて殴った方が手っ取り早いんだもん。

 

「なんなら、昔あなたが着ていた巫女服でも持ってきましょうか?」

「いや…別にいいですよ。って、なにスキマを開いてるんですか。いらないって言ってるでしょうが」

「嫌よ嫌よも好きのうちってね」

 

 私の抗議も虚しく、紫はスキマから昔懐かしの巫女衣装を取り出した。

 これ…巫女服なのに無駄に露出が多くて恥ずかしいんですよね。

 インナーなんて完全にハイレグですし。

 動き易さ重視と言われれば、それまでなんですけど。

 

「今から着てみる?」

「……後で」

 

 今はまだ男共がいるからね。

 別に異性に裸を見られるぐらいは何とも思わないが、こいつらに見られるのは何か嫌だ。

 

「そうだ。実は君に忠告しておかないといけない事があるんだった」

「忠告? またいきなりですね」

「本当は、この前会った時に言っておくべきだったんだろうけど、すっかり忘れてしまっていてね」

「健忘症ですか?」

「かもしれないね」

 

 …アサキムには本当に冗談が通じない。

 せめて、お酒ぐらいは飲めるようになりなさいな。

 

「君がいるこの世界は、嘗て僕や君がいた『多元世界』のように幾多の可能性が交わる世界のようだ。正直、これから先に何が待ち受けていても不思議じゃない。下手をしたら、マーリンのいる世界や紫のいる幻想郷とも何らかの形で繋がる可能性も否定できない」

「そんなまさか……」

 

 というのは簡単だが、珍しくアサキムが真剣な顔をしているので、ここは素直に忠告を受け取る事にした。

 

「だが、今の君には戦う力は無い。魔術回路はあるみたいだし、スフィアから抽出される次元力である程度の事は補えるけど……」

「現状、この世界に危険性は感じてませんからね。私が転生する前は相当に危なかったようですが」

 

 それらの厄災は全て響さん達が払拭してくれたのだろう。

 事実として、それらしいニュースは一切聞かない。

 

「けど、油断は禁物よ。今は大丈夫でも、これから何が起きるかは分からないんだから。なので……」

 

 またもや紫がゴソゴソとスキマの中を漁っている。

 あの中…マジでどうなってるんだろう?

 紫とはかなり長い付き合いになるけど、未だにあのスキマの中がどうなってるかはよく分からない。

 

「はいこれ」

「これは……」

 

 それは、赤い紐が交差して輪になり、金と銀の鈴が一対となって飾られている装飾品。

 忘れる筈がない。忘れようも無い。

 年数的にはもう数百年も前になるが、彼女の事は物凄く克明に覚えている。

 崩壊が約束された世界にて出逢った私の大切な『友達』。

 彼女の刃であり愛機でもあった存在の待機形態だ。

 

「貴女の辿った軌跡が気になって色んな場所に行きまくってたら、偶然にも『彼女』と出会ったのよ。で、私の事情と貴女の事を話したら『それ』を託されたのよ。『もしも貴女が千影と出会う事があったのなら、これを渡して欲しい』って」

「…………」

 

 どれだけ時間が経っても…彼女はちっとも変ってないんだなぁ……。

 思わず泣きそうになってしまうが、ここで泣くのはダメだと思ってなんとか堪えた。

 

「約束通り、あなたに渡したわよ」

「えぇ…ちゃんと受け取りました」

 

 一番いいのは使う機会が無い事だけど、万が一にもその時が来たら……。

 

(遠慮なく使わせて貰います。『君』と一緒ならば、どんな敵とも戦える)

 

 君の刃は…私が受け継ぐ。

 これは間違いなく、私に取って掛け替えのない宝物だ。

 

「ありがとうございます。久し振りに思い出に浸れました」

「それは良かったわ」

 

 紫には本当に世話になりっぱなしだな…。

 いつの日か、この大き過ぎる借りを返せる時が来ればいいのだけれど。

 

「そういえば、これからどうするんですか?」

「もう用事は済んだし、そろそろ帰ろうかなとは思ってるけど…」

「よろしければ、今日は泊まっていきません? 私も久し振りに紫と色々と話をしたいですし……」

「あら、いいの?」

「勿論です。あ、そこの二人はお帰り下さい。出口はそちらです」

「「だと思った」」

 

 今から女子会をやるんですから、男は邪魔なだけなんですよ。

 特にマーリン、テメーはダメだ。

 

 その夜、アサキム&マーリンの胡散臭いブラザーズは本当に帰り、紫と二人で懐かしい話で盛り上がった。

 途中でアルコールが入って、二人で仲良く裸のプロレスごっこもしちゃったけど。

 まぁ…気持ち良かったからいいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




再び登場のアサキムに、まさかのマーリン。
ついでに紫もやって来た。

もう一つの『無限転生』とも地味にクロスオーバーしました。




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