無限転生 ~LOST REQUIEM~   作:とんこつラーメン

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         偉大な栄光とは失敗しないことではない。
         失敗する度に立ち上がることにある。

                          エマーソン






はなのまじゅつし

 非常に意外過ぎる人物達との再会があった次の日。

 三人ともがそれぞれに元いた場所に帰ったり、また別の場所へと旅立っていった…そう思っていた時期が私にもありました。

 

「やぁ」

「…なんでまだいるんですか」

 

 私はいつものようにお好み焼き屋『ふらわー』にてバイトに勤しんでいた。

 常連さんの相手をしたり、はたまた新規のお客さんがやって来たり。

 今日も今日とて大忙し…とまでは行かないが、それでもそれなりに繁盛はしている。

 そこに突然、今度こそもう二度と顔を見ないと思っていた人物が普通に店内へと入ってきた。

 しかも、あろうことか客として。

 

「もうとっくに帰ったかと思っていましたよ…マーリン。いや、その体はあくまで幻影だから帰るもなにもないんですけど」

「そーゆーこと」

 

 流石にいつものローブ姿では確実に悪目立ちすると思ったのか、今のマーリンは以前にラスベガスで見せた黒い服になっている。

 見た目だけで言えば、本当にごく普通の一般人のように見える。

 実際には、全身から立ち上る独特の気配と、その髪色&顔で一般人とは程遠い。

 非常に腹立たしいが、顔だけは本当にイケメンだからなコイツ…。

 

「というか、どうして私のバイト先を知ってるんですか。また千里眼でも使ったんですか?」

「よく分かってるじゃないか。因みに、ちゃんとお金ならあるよ。日本円で」

「どうやって入手したのかは…聞かない方が良さそうですね」

 

 聞いたら聞いたで後悔しそうな気がする。だから聞かない。

 

「よりにもよって、店長が買い出しに行っている時間帯を狙うとは……。あなた、絶対に千里眼の使い方を間違ってますよ。ギルガメッシュ王の方がもっとマシな使い方をしますよ」

「だろうね。ああ見えて、根っこの部分じゃ彼は超真面目だし」

 

 伊達にウルクの王じゃないって事ですよね。

 私も、第七特異点で実際に彼の仕事っぷりを見せつけられて、本気で尊敬の念を抱いてしまったし。

 

「そういえば、幻影なのに飲み食いとか出来るんですか?」

「その辺は問題無いよ。幻影とはいってもちゃんと実体はあるし、幻影が得た経験はちゃんと本体の方にもフィードバックされるようになっているから」

「アナタはどこの七代目火影ですか」

 

 マーリンの事だから、その気になれば普通に螺旋丸とか使えそうな気がする。

 因みに、私は前に『あの世界』に転生して中忍ぐらいになって試しに頑張ってみたけど全然習得できませんでした。

 

「そう言う訳だから、遠慮なく作ってくれたまえ」

「ソーデスカ」

「いやー…君の手料理なんて食べるのは初めてだな~」

「そういえばそうですね。カルデアにいた頃は一度も料理なんてしたことは有りませんでしたし」

 

 正確には、まだマスターしてなかったが正解だけど。

 エミヤやブーディカに教わって、ようやく人並みに食べられる代物は出来るようになった。

 その後に例のエリート料理学校のある世界に転生して、本格的に料理を学ぶ羽目になったけど。

 

「で、ご注文は何にするつもりですか?」

「君のオススメとかは無いのかな?」

「オススメですか……」

 

 私がマーリンに出せるオススメと言えば……。

 

「この水道水なんていかがでしょうか? 最近、少し気温が上がって来てますからね」

「わーい。マスターがくれた水道水だー…ってなんでお好み焼き屋で水道水を注文しなくちゃいけないのさっ!?」

「だってマーリン、前に味覚が無い的なことを言ってませんでした? だったら、お好み焼きを食べても意味ないんじゃないかなーと思いまして」

「あぁ…その事か。それなら大丈夫だよ」

 

 私が渡したお冷(本当は水道水じゃない)を飲みながら、マーリンは得意げに微笑んだ。

 

「確かに、以前までは味覚を初めとして幾つかの感覚が鈍かったけど、その辺は魔術で幾らでもカバーできるからね。実際、同じ魔術を良くカルデアでも使ってたんだよ? 知らなかったっけ?」

「ハイパー初耳です」

「だろうね。この事を知っているのは、食堂で料理を作っていた面々だけだし」

 

 誰でもいいから、この公式超絶チート野郎をどうにかしてくれませんか?

 キャスター・アルトリアかモルガン辺りがいてくれれば最高の抑止力になりそうなのに……。

 

「というわけだから、今の私はどんな料理も美味しく食べられるのさ」

「はぁ…分かりましたよ。それじゃあ、豚玉で良いですか?」

「それで構わないよ」

 

 仕方がない…こうなったら、大人しく豚玉を作って、とっとと帰って貰おう。

 それが一番だ。そう信じよう。うん。

 少なくとも、店長が帰ってくる前にはどうにかしないと。

 変に誤解とかされたらマジで最悪だし。

 

「えーっと…豚玉の材料は……」

 

 もう完全にどこに何があるかは把握しているが、それでも常に頭の中でおさらいをしながら探すようにしている。

 どんな事であっても、油断こそが最大の敵なのだ。

 

「「ん?」」

 

 必要な材料を集めていると、いきなりスカートのポケットに入れているスマホに着信が来た。

 この音は通話ではなくてメールの類か。

 

「こんな時間帯に誰からでしょうか……」

 

 まだ材料をかき混ぜてもいないので問題は無いが、それでもとっとと見るに限る。

 変にマーリンを調子づかせてはいけない。

 一度でも自分の流れになったが最後、怒涛の勢いで押し寄せてくるから。

 

「これは……響さん?」

 

 彼女からのメールだなんて珍しい…って事も無いや。

 一応、彼女を筆頭に全員の番号やアドレスなどは登録してあるが、その中でも最も頻繁に電話やらメールやらをしてくるのは響さんだ。

 因みに、このスマホは私が自立をする時に弦十郎さんから支給品の一つとして貰った物だ。

 

「なになに…?」

 

『今日は翼さんやマリアさんも仕事が無くて、久し振りに皆でS.O.N.G.に集まるんだけど、バイトが終わったらナナシちゃんも来ない?』…ねぇ。

 

「お友達かい?」

「…どうでしょうね」

 

 これまでに無数の世界に転生をしてきた私だが、それでも本当に大切に想っている友達と言えば非常に少ない。

 私にとって最も愛する親友と言えば、やっぱり……。

 

(あなたしかいないよ……)

 

 右手首に付けている『紅い紐』を見つめながら、私は彼女の顔を思い出す。

 こんな私に『剣』を託してくれた大切な人……。

 

「つーか、どうせ私が何かを言わなくても全部知ってるんでしょう? 千里眼を誤魔化せるだなんて思い上がった考えは持ってませんよ」

「バレたか」

「バレますよ。伊達に契約をしてなかったんですから」

 

 …今にして思えば、私がカルデアで契約をしていたサーヴァントってどれもこれもが曲者揃いだったなぁ…。

 場合によってはマーリンすらも霞んでしまうほどにキャラが濃い奴もいたし……誰とは言わないけど。

 

「誘われたのならば行った方が良い。この世界は君にとってまだまだ未知の場所だ。人との関係を大事にするに越したことはない」

「それぐらいは私だって分かってますよ」

 

 どんなに強がっても、人は一人では何もできない。

 いずれ誰もが必ず理解する世界の真理の一つだ。

 

「仮に行くとしてもバイトが終わってからですけどね。という訳で、まずはご注文の品を作ってしまいましょう」

「待ってました。私も知識としては知っているんだけど、こうして実際に目にするのは初めてでね。実は柄にもなくワクワクしているんだ」

「では、いっちょ本気で作りましょうか。絶対に『美味しい』と言わせてみせますよ」

「それは楽しみだ」

 

 その後、マジモードでお好み焼きを作ったら、マーリンから虚飾無しの絶賛を受けてしまって普通に戸惑ってしまった。

 美味しい料理を作る事でマーリンに本気の顔をさせられるのなら…これからも作ってやってもいいかもしれない。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 バイトが終わり、私は学校帰りの響さん達と待ち合わせしている場所へと向かう事に。

 最初は直接向こうに行くのかと思っていたら、あの後で再びメールが来て、待ち合わせをしてから一緒に行くことになったのだ。

 

「……で。どうして一緒に着いて来てるんですか?」

「私もそのS.O.N.Gとやらに興味があるんだよ。仮にも私は君と契約をしているサーヴァントの一人だ。君が世話になっている人達に挨拶ぐらいはするべきだと思ってね」

「契約ってまだ継続中なんですか?」

「あれだけ長い付き合いをしたんだ。そう簡単に切れるわけがないだろう?」

「……そうですね」

 

 契約というよりは『絆』と言った方が正しいかもしれないけど……。

 

「それに……」

「それに?」

「君が知り合った子達と私達サーヴァントとは意外と深い関係性があるかもしれないよ?」

「ふーん…?」

 

 またマーリンが意味深な事を言っている。

 昔からコイツは冗談を言う事はあっても嘘だけは絶対に言わない。

 その代り、重要な事は全てぼかしていう癖があるけど。

 

「あ…いました」

 

 街中にある歩道橋の近くに彼女達はいた。

 あれは…響さんに未来さん。それからクリスさんと切歌さんに調さんもいる。

 響さんが私の姿に気が付いて、こっちに手を振っている。

 

「ところでマスター。一ついいかい?」

「なんですか?」

「君…彼女達に隠し事をしているだろう?」

「隠し事じゃありません。言う必要性が無いと思っているだけです」

「それを世間一般では『隠し事』って表現するんだよ」

 

 知ってますよ…それぐらいは。

 けど、話したって意味のないことだってあるでしょうに。

 

「前にも話したけど、この世界は幾多の可能性が交わる場所だ。その中心にいる彼女達と組織ならば、カルデアと同様に大半の超常的なことを経験していると思っていいだろう」

「何が言いたいんですか?」

「君の正体やこれまでの事を話しても、彼女達は普通に受け入れてくれるかもしれないって事さ。じゃないと、いつまで経っても話がややこしいままになるだけだよ? 大丈夫、いざとなれば私もフォローするから。君の事情を知っている数少ないサーヴァントとしてね」

「…………」

 

 そうなのだ。マーリンは千里眼を持っているが故に私の正体と事情を全て把握している数少ない存在の一人になっている。

 だからこそ、必然的に頼る事も多くなりがちになった。非常に不本意だったけど。

 他に私の事を知っていたのは、ギルガメッシュやロムルス・クィリヌス、BBや蘆屋道満や殺生院キアラ、後は何故かマッチョな方のオリオンと初代ハサンおじいちゃんも私の裏事情を把握していた。

 冠位級の英霊は伊達じゃないってことなんだろうか。

 

(まぁ…別にいっか)

 

 どうせダメ元だし。正直な所、いつかは必ず話さなければいけないとは思っていたし。

 ちゃんと話しておかないと、それはそれで面倒くさい事になりそうだし。

 

(けど…なんて言って切り出そう)

 

 その辺は到着するまでの間に考えておきますか。

 何も思いつかなかったらマーリンに丸投げすればいいだろうし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




        自分に打ち勝つことが、最も偉大な勝利である。

                              プラトン





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