無限転生 ~LOST REQUIEM~   作:とんこつラーメン

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遂に自分の事を話す事になった主人公。

彼女達はどんな反応をするのか?








ばくろ

「転生…ですか?」

 

 私が出した単語を前に、司令室にいる全員が小首を傾げていた。

 別に、そこまで難しい事を言ったつもりはないんだけど。

 

「言葉だけならば知ってはいるが……」

「どうして、いきなりそんな事を言い出すのかしら?」

「それは……」

 

 私が理由を説明しようとしたら、約二名の頭から知恵熱が出ているのが見えた。

 他の皆以上にウンウンと唸っていて、どう見ても本気で理解していっぽい感じだ。

 

「てんせー…って…何?」

「なんか聞いたことがあるような…ないような? 全然わかんないデース…」

「響……」

「切ちゃん……」

 

 未来さんと調さんが呆れた目で二人を見ている。

 申し訳ないけど、これに関しては何も擁護が出来ない。

 

「はぁ…仕方があるまい。立花に暁。私が説明してやろう」

「うぅ…すみません…翼さん…」

「申し訳ないデース…」

「そう思うのなら、これからはもっと勉強をする事だな」

「「うぐ…!」」

 

 あ…勉強不足だって自覚はあるんですね。

 

「二人にも分かりやすく説明をすれば、転生とは生まれ変わりを指す言葉だ」

「「生まれ変わり?」」

「そうだ。輪廻転生という言葉を聞いたことは無いか?」

「「う~ん…?」」

 

 今時なら、ラノベとかでもよく聞く言葉だとは思うんですけどね。

 けど、この人達の事だから文字が沢山並んでいるラノベとかは余り読まなさそうな気もする。

 

「一度死んだ者は、巡り巡って別の存在へと生まれ変わる…と覚えておけばいい」

「成る程…」

「デース…」

「本当に分かってるのか…?」

 

 多分、分かってない可能性が高そうかと。2ポンド賭けてもいいですよ。

 

「しかし、どうしてまたいきなり私達にそんな事を聞くんだ?」

「純粋に知識を確かめようと思いまして。知っていれば、こちらから説明をする手間が省けますし。約二名ほどは理解不能だったようですが」

「「申し訳ありません……」」

 

 反省しているのなら、後でちゃんと勉強をしましょうね。

 

「確認も終わったし、そろそろ本題に入れるんじゃないのかい?」

「そうですね」

「転生とナナシくん…一体どんな関係があるというんだ…?」

 

 弦十郎さん…そんな風な目で見られると、ちょっと説明しにくいのですが…。

 

「回りくどい言い方は好きじゃないので、ストレートに言わせて貰います」

 

 少しだけ息を吐き、呼吸を整える。

 自分の根幹に付いて話すのはあんまり経験が無いので、地味に緊張する。

 

「…私は『転生者』…と呼ばれる存在なのです」

 

 言っちゃった。言ってしまった。

 さて、皆はどんな反応を見せてくれるのか。

 

「転生…者…? それはつまり、呼んでの字の如く…と捉えればいいのか?」

「はい。それで構いません」

「あなたは…一度死んで、その後に生まれ変わった存在だという事…?」

「信じられないでしょうが、その通りです」

 

 マリアさんが絶句するのも無理はない。

 普通ならば絶対に信じられないような事だから。

 私ならば、すぐに精神病院へ行くことを勧める。

 

「確かに…俄かには信じがたいが……」

「そうかもしれないね。だがしかし、君達はこれまでに幾度となく信じられないような超常的な現象に立ち会っている筈だ」

「うん…言われてみればそうかもしれない」

「そういえば、私達って一度は月にまで行ってるんだよね…」

「フィーネとかシェム・ハとかも似たようなもんだったしな…」

 

 …どうやら、ここにいる皆さんも私に負けず劣らずの体験をしてきているようで。

 マーリンの奴…これを知ってて私に話すように促したな?

 

「それに、君達が知らないだけで、意外と転生という行為自体はかなりの頻度で発生してるんだよ?」

「そうなのか?」

「少なくとも、私が知る限りでは死亡した人間達の殆どが色んな異世界などの転生をしている筈だよ。これに関してはまず間違いない。向こうでどんな人生を歩んでいるかまでは知らないけどね」

「もしや…奏もどこかの世界に転生をして……?」

「セレナも…もしかして……」

 

 なにやら翼さんとマリアさんが神妙なお顔に。

 触れてはいけない事にでも触れてしまったんでしょうか。

 

「ってことは、ナナシちゃんも一度は死んで、その後に私達の世界に生まれ変わったって事になるの?」

「そうなるね。ただし、彼女…ナナシちゃんは普通の転生者じゃない。彼女は数多い転生者達の中でも、ある意味で唯一無二の存在を言っても過言じゃないんだ」

「ナナシちゃんが普通じゃない…?」

 

 未来さんが心配そうな顔でこっちを見てくる。

 別にそんな顔をされるような事は何も無いんですけどね?

 

「それは自分で説明します」

「大丈夫なのかい? 言い難いのなら私から言ってあげようと思ったんだが…」

「気遣いは無用です。この程度、特異点攻略や異聞帯攻略に比べればどうって事無いですから」

「そりゃそうだ」

 

 あれらと比べるのは烏滸がましいとは思うけど、なんとなく引き合いに出してしまった。

 

「私が転生をしたのは今回が最初ではありません。これまでにも沢山…それこそ無限にも等しい回数を転生してきているのです」

「無限の…転生だとぉっ!?」

「はい」

 

 弦十郎さん。驚く気持ちは分かりますが、声が大きいです。

 

「ちょっと待てよ…。ってことは何か? お前は今までに何度も何度も死に続けて、その度に色んな世界に転生してきたって事になるのか?」

「まさしく、クリスさんの仰る通りです。そのせいでしょうか、どうも私の精神は摩耗し過ぎてしまったようで…感情表現が下手になってしまいました」

「私の見解では、君の場合は精神の摩耗というよりは自己防衛の末に自然とそんな風になっていってしまったんだと思うよ」

「自己防衛…ですか?」

「そうさ。マスターは心のどこかでこう思っている。『どうせ死んでも、また別の世界に生まれ変わるだけだ』ってね。普通の人間にとって最も恐れるべき現象であり、同時に人生で一度しかない『死』が、君にとっては最も身近で日常的になっている。死に慣れ過ぎると心の方が死んでしまう。それを少しでも防ぐ為に、君は虚無でいようとしている。以前までの君にはまだ少なからず人間らしい感情が残されていたが、ここ数百万回の転生ではその傾向が特に顕著だ」

「まさか、マーリンからそんな事を言われるとは思いませんでした。というか、私が転生している様子を見ていたんですか?」

「勿論。丁度いい暇潰しになるしね」

「うん。やっぱり一度でいいからぶっ飛ばさせて下さい」

「なんでっ!?」

 

 それを私に聞きますか。この鬼畜チート野郎。

 

「自分の心を守る為に…ね」

「ナナシの感情が薄いように感じたのには、そんな理由があったのか……」

「死ぬのに慣れるって…そんなの悲しすぎるよ……」

「響……」

 

 悲しすぎる…か。その『悲しい』って感情も最近は良く分からないんですよね。

 涙の流し方も忘れてしまいましたし。

 辛うじて、この前に紫から『アレ』を受け取った時にだけ少し『嬉しい』とは感じましたけど。

 

「何か複雑な事情を抱えているとは思ってはいたが、これは俺達の想像を遥かに超えていたな……」

「それはそうだろうね。誰だって『生まれ変わり』なんて現象が本当にあるだなんて信じられないものさ。だが、こればかりは信じて貰うしかない」

「そうだな……」

 

 言葉では幾ら説明しても難しいかもしれない。

 だって、私が転生者だっていう確固たる証拠がどこにも無いのだから。

 こんな事を信じるのは、目の前で似たような事象を目の当たりにした者か、もしくは余程のお人好しかのどちらかだ。

 この人達の場合、その両方に該当しそうだけど。

 

「マーリンさんとは、無限の転生の途中で知り合ったんですか?」

「そうだよ。詳しく話せば長くなるんだが、簡潔に話せば…世界存亡の危機を前に私と彼女が契約をした…って感じかな」

「簡略化し過ぎです。間違ってませんけど」

「間違ってないんだっ!?」

「世界の危機って、割とどこにでも転がってんだな……」

 

 なんかクリスさんがしみじみと呟いてる。

 それに関しては私も激しく同意ですよ。

 場合によっては、何十回も連続で世界の危機に立ち向かってますから。

 

「実は、前に話したことで弦十郎さんに謝らなければいけない事があるんです」

「俺に謝る事? なんだ?」

「私が病院で目を覚ました時、私は何も話せずに記憶喪失だと判断しましたよね?」

「そうだったな。それがどうかしたのか?」

「あの時、私は半分本当で半分嘘をつきました」

「半分の嘘…?」

「はい。先程も申しあげた通り、私は転生者…生まれ変わった者です。生まれ変わった際には常に能力などは全てリセットされるのですが、たった一つだけ次の生に引き継がれるものがあります」

「それはまさか……」

「そのまさか…記憶です。つまり、私には所謂『前世の記憶』というものがあるのです。ですが、あの時は咄嗟に言葉が出なくて、結局は記憶喪失という事になってしまい……」

「いや、あれに関しては俺の早とちりももある。もっと冷静に判断すべきだったな」

「気にしないでください。仮にあの場で色々と聞かれても、当時の私ならば普通の誤魔化していたと思いますし」

 

 まだ、あの時は状況が不透明でしたからね。

 自分に関する情報を簡単に曝け出すのは危険ですから。

 

「ですので、完全な記憶喪失という訳ではありません」

「ならば、本当の部分とはなんなんだ?」

「それこそが、現在の私にとって最も重要なことでもあります」

 

 気を入れ直す為に少しだけ咳払いをし、首を動かして楽にする。

 

「私には…目を覚ます前までのこの世界での記憶が一切ありません」

「…? それってどういう事?」

「それに付いて話すには、まずは『転生』のパターンに付いて話す必要があります」

「また長くなりそうデース…」

 

 すみませんね切歌さん。もう少しだけ我慢してください。

 

「一言に『転生』と言っても、幾つかのパターンが存在しています。まずは、胎児の状態に戻って文字通り全てを一からやり直す転生。通常はこれが一般的です」

「いや…転生に一般的に何もあるのかよ……」

 

 最近はあるんですよ。割とマジで。

 

「二つ目は、体がある程度、成長した状態で別世界に生まれ変わる転生。これは転生というよりは転移に近いのですが」

「三つ目はなんなの?」

「『憑依転生』と呼ばれる類の物です。その世界にいる人物の体に乗り移る形で転生をするパターン。私も憑依転生自体はあんまり経験したことがありません」

「憑依された側はどうなるのだ?」

「私にも詳しくは分かりません。意図せず身体だけを乗っ取ってしまうようなパターンもあれば、二重人格のように一つの体に二つの人格があるようなパターンもあります」

「時と場合によって違う…ということなんだね」

「そうなりますね」

 

 あまり経験したことが無いって言っても、それでも軽く10万回以上は経験してるんだけど。

 

「私が発見されたのは確か、錬金術師たちの施設…だったんですよね?」

「その通りだ。私とマリアが、培養液のような物で充たされていたシリンダーの中に浮いていたナナシを見つけたんだ」

「話を聞いた錬金術師も、私の事を『逃亡中の山の中で見つけた』と言っていました。という事は、恐らく今回はこの体の状態のまま転生したと考えるべきなのでしょうが……」

「それだけで全ての疑問が氷解する訳ではない…か」

「そうなります。もしかしたら、私はこの世界のどこかの家庭で生まれ育ったという可能性も否定は出来ませんから。だけど……」

「マスターにはその記憶が無い。この世界で過ごした記憶も、この世界での家族の事も」

「はい。なので、この線は最もないと考えているのですが、それはこの世界で過ごした記憶が無い事の説明にはなりません」

「転移に近い転生をしたとしても、山で発見されるまでの間に必ず何かがあった筈。その記憶も無いのは流石におかしい…か」

 

 ここで私と弦十郎さんは、さっきから黙って話を聞いていてくれた緒川さんの方を向いた。

 彼もまた私達が何を聞きないのか一発で理解してくれたようで、どこからか出した資料を片手に説明をしてくれた。

 

「我々もあれから色々と調査はしてみましたが、ナナシさんの出生記憶や戸籍といったものは見つけられませんでした」

「矢張りか……」

「なんとも、もどかしい感じがします。転生した先での自分の正体が分からないというのは…こう…魚の骨が歯に引っかかったようなモヤモヤ感がありますね」

「例えが庶民的だし……」

 

 え? 私はどこまで行っても庶民ですよ?

 庶民以上でも、庶民以下でもありません。

 

「これまでにも似たような事は無かったの?」

「ありはしましたが…それでもすぐに何らかの形で判明したりしていました。少なくとも、こんなにも時間が経過しているのに手掛かり一つとして見つからないのは珍しいですね」

 

 正確にはヒントらしきものはあるんだけど。

 アサキムが言っていた『いきなり山の中に出現した』という言葉。

 そのまんまの意味だって言ってたけど……。

 

「ともかく、ナナシ君に関してはこれからも調査を続けていこう」

「ありがとうございます」

「いや…礼を言うのはこちらの方だ。自分から己の秘密を話すのは相当な勇気がいる筈だろうに……」

「もっと大変なことなんて、探せば幾らでもありますから。話す事よりも、信じて貰えるかどうかの方が心配でしたけど」

「それに関しては問題は無い。我々も、伊達に様々な修羅場を潜り抜けてきた訳じゃないからな」

「みたいですね。こうして話をしていて、その事を改めて実感したような気がします」

 

 私が安堵の溜息を吐くと、いきなりマーリンが私の頭に手を置いてきた。

 

「だから言っただろう? 心配はいらないって」

「そうですね……マーリンの言う通りだったのが癪ですけど」

「最後まで弄るのだけはやめないんだね……」

 

 こんなに面白い事を止める訳がないでしょうに。

 

 こうして、私の事を話したことで少しだけ皆と距離が縮まったような気がした…と思う。多分。

 けど…なんでかな。これからがもっと大変なような気がする。

 まだ話してない事もいっぱいあるし…それは追々教えていけばいいか。

 急ぐ必要性はどこにも無いんだし。

 

 

 

 




割とそこまで驚かれなかった展開。

これがまた別の世界ならば話が違ってくるんでしょうけどね。
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