無限転生 ~LOST REQUIEM~   作:とんこつラーメン

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なんつーか…本当に完全に行き当たりばったりな作品なのに、どうしてこんなにも好評なのだろう…?

書いている自分自身が一番分かりません。

それとも、私も成長しているって事なのかな?







はじめまして?

 病院生活三日目。

 看護師さんもこちらに気を使ってくれるのか、あれから色々な差し入れがあった。

 まぁ…差し入れと言っても、持って来てくれるのは女性向けの雑誌や漫画とかなんだけど。

 こっちとしては暇が潰せる上に情報も収集できるから一石二鳥だった。

 ついでに、新しい新聞も貰ったしね。

 

(…普通の子達が読めば面白いと思うんだろうけど……)

 

 残念ながら私は『普通』じゃない。

 感情の起伏すらかなり薄くなってきている今の状態では、笑いたくても笑えないのが現実だ。

 木星戦役時の時代に転生した時に初めて話したザビーネ・シャルが言っていたように感情を処理できない人間ではなく、感情を表現する事すら出来なくなった人間が今の私だ。

 この場合、私もまた彼の言うように『クズ』の烙印を押されてしまうのだろうか?

 別に言われること自体は一向に構わないんだけどね。

 自分がクズだって自覚は大いにあるし。

 

(そう言えば、この雑誌に気になる事が書いてあったな……)

 

 手にしている雑誌のページをペラペラと捲っていくと、ちょうど真ん中辺りにその記事はあった。

 

【突如として消滅したノイズ被害! その真相に迫る!】

 

 ノイズってなんぞや。

 そう思って、その記事を熟読していくと、世間一般的に知られている情報ぐらいはゲットできた。

 ノイズとは、ある日突然出現した謎の存在で、数年前までは全世界規模で出現をしていたらしい。

 出現頻度自体は非常に少ないらしいが、何故か日本だけは他の国の数倍の確率で現れていたようだ。

 けど、重要なのはここからで、ノイズに触れられた生命体は例外なく灰となってしまうらしい。

 今はもういなくなってしまっているようだが、街中にノイズが跳梁跋扈していた頃には数多くの人々がノイズによって命を落としていたようだ。

 余りのも謎が多い生態と意志の疎通が不可能な事から、世界中でノイズは『特異災害』という括りになっているようだ。

 事故でも事件でもなく『災害』。

 つまり、人間の力では防ぎようが無い力だと言う事だ。

 

(…けど、こんなのはあくまで『世間一般の認識』に過ぎない。この裏には必ず何かが存在しているに違いない)

 

 これまでの転生にて沢山の奇跡や超常現象を見て、体験してきた。

 だからこそ分かる。

 人間、その気になれば奇跡の一つや二つ、容易く起こせるのだ。

 『起きる』じゃなくて『起こせる』。

 この違いが一番重要なのだ。

 

「何があっても絶対に諦めない奴にしか奇跡は起こせない…か」

 

 どこの誰が言った台詞かはもう忘れてしまったが、どこかの世界に転生した時に聞いたような気がする。

 私が思い出せる一番の奇跡…それは……。

 

(アムロ大尉がアクシズを押し返して、文字通り地球と人類の未来を守り抜いたことか……)

 

 あの時、あの瞬間、間違いなく全ての人々の心は一つになった。

 世界を守る為、全てを守る為に。

 かくいう私も、あの時はネオ・ジオンに所属していたにも拘らず、ギラ・ドーガでジェガン達やジムⅢ達と一緒にアクシズを押し返そうとしたっけ…。

 

『今この瞬間こそが、本当の意味で地球がダメになるか、ならないかの境界線なんだ!! だったら、命を掛ける価値は十分にありますよ!!』

 

 …我ながら、あの時は恥ずかしい台詞を言ったもんだ…。

 すぐに機体の方が限界を迎えて吹き飛ばされそうになったけど。

 

(あの時、私のギラ・ドーガの腕を掴んで助けてくれようとしてくれたジェガンのパイロットって誰なんだろう…?)

 

 結局…お礼も言えないまま転生しちゃったしな……。

 はぁ…なんて礼儀知らずな奴なのやら…。

 

 雑誌に目を落としながら物思いに耽っていると、いきなり病室の扉をノックする音が聞こえてきた。

 恐らくは、あの人だろう。後日また来るって言ってたし。

 

「どうぞ」

「失礼する」

 

 案の定、入ってきたのは風鳴弦十郎さんだった。

 今日も今日とて赤いシャツを着ている。

 もしかして、同じ服を何着も持っているのではないでしょうね?

 だったら普通にドン引きです。

 

「ん?」

 

 よく見たら、彼の後ろに二人程の人影が見えた。

 今日は彼だけじゃないのか?

 

「失礼します」

「失礼しま~す!」

 

 一人は大人しげで、もう一人は元気いっぱいな感じ。

 声の質から予想して、一緒にいるのは女の子か?

 

「えっと…その子達は?」

「彼女達は……そうだな。民間の協力者…のようなものだ」

 

 民間の協力者…ね。

 それと同じ単語、もしくは類似する言葉は今までにも腐るほど聞いてきたよ。

 だからこそ、たったそれだけで彼女達がどうして彼と一緒にいるのかが分かった。

 

(何らかの出来事によってなし崩し的に協力せざるを得なかったんだろうな…)

 

 通常ならば非常に珍しいことかもしれないが、私から言わせれば『そんな事は世界中に溢れている』だ。

 例を挙げていけば本当にキリが無いよ?

 

「元気そうで本当に良かった!」

「響。病院なんだから、もう少し声のボリューム下げて」

「あ…ゴメン未来」

「謝るのは私じゃないでしょ?」

「そうだった…ごめんね?」

「別に気にしてないですけど……」

 

 このオレンジ色の髪の子が『ヒビキ』って名前で、こっちの黒髪の子が『ミク』ね。

 取り敢えずは覚えておきますか。取り敢えずね。

 

「立花響です。初めまして…になるのかな?」

「小日向未来です。私は初めましてだね」

「これはご丁寧にどうも」

 

 どうしてヒビキさんが疑問形になるのかは謎だが、それよりもここは私も自己紹介をするべきなのだろうか?

 でも、まだこの世界での自分の名前を決めてないんだよね…。

 情報収集に夢中になって、すっかり忘れてた。

 

「…で、どうして彼女達が一緒に?」

「つい先程、君の担当医に話を聞いたところ、君は元から怪我や病気の類は一切無く、体が衰弱していただけだったそうでな。体力さえ回復すればいつでも退院は出来るそうだ。事後報告になってしまうのは申し訳ないと思っているのだが、こちらで退院の手続きをしてきた」

「あぁ~…」

 

 そこまで気にするような事でもないと思うけど。

 寧ろ、無駄な手間が省けて助かったとさえ思っている。

 彼が言わなければ、こっちの方から進言していた。

 

「大丈夫ですよ。私もそろそろ外に出てみたいって思ってたところですから」

「そうか。それを聞いて安心した」

 

 でっかい体してる癖に、どんだけ心配性なんだよ。

 仮にも司令官なら、ブライト艦長みたいにドーンと構えていればいいんだよ。

 

「それでな。退院するのはいいが、今の君は私服の類を一切持っていないだろう?」

「ですね……」

 

 現状、最大の問題の一つがそれだ。

 流石に病院服のまま外に出る訳にもいかないし。

 あと、普通に先立つ物が無い。

 それ自体は後でどうにもなるけど。

 

「俺自身、女性物の服には疎くてな…そこで」

「同年代で同性である彼女達を同行させた…と」

「その通りだ。相変わらず、話が早くて助かる」

 

 それは助かる。非常に助かるが…同時に懸念すべき事もある。

 この人達に借りを作らせ過ぎではないだろうか?

 

 いや、別に今までの転生の中で誰の助けも借りなかったって訳じゃないよ?

 助けられることなんて日常茶飯事だったし、私が誰かを助ける場面の方が少ないぐらいだったし。

 だからこそ、受けた恩は必ず返してから死ぬようにしている。

 そうじゃないと、死んでも死にきれないから。

 

(…この世界にどれだけいられるかは分からないけど、長い目で考える事にしよう……)

 

 最初から急ぎ足では何も大成などしない。

 まずは一歩一歩確実に前へと進む事が大事なのだと私は学んだ。

 

(よく見たら、ミクってこの手に紙袋が握られてる。あれに服が入っているのかな?)

 

 服装か~…そういや、私ってファッションに拘ったことって一度でもあったっけ?

 そんな暇も余裕も無い…と言う以上に、純粋に興味が無かったので特に何もしてはこなかったけど。

 取り敢えず、常識的な範囲でおかしくなくて、出来れば地味で目立たないような服装ならば何でもいい。

 勿論、スカートじゃなくてズボンとかであれば言う事は無い。

 

「そう言う訳だから、ここからは君達二人に任せる。俺は廊下に出ていよう」

「分かりました! 任せてください師匠!」

「ひ~び~き~?」

 

 また声がでっかいし。

 つーか『師匠』? ヒビキさんは彼から何かを教わっているのか?

 それを質問しようとしたら、彼はそそくさと廊下へと出て扉を閉めてしまった。

 部屋に残されたのは、彼女達と私の三人だけ。

 

「あの…因みにどんな服を持って来てくれたんでしょうか…」

「こんなのだよ」

 

 そう言ってミクさんが紙袋から取り出したのは、胸ポケットが二つある真っ白なノースリーブと、真っ赤なチェック柄のスカート。

 …これに対して私はなんて言えばいいの?

 

「前に一度試しに買ってみたは良いんだけど、私にはあんまり似合わなくて…かといって、このままクローゼットの中に入れっぱなしにするのは勿体無いから」

「持ってきたと……」

 

 大人しそうな顔をして、意外と大胆な性格をしているのかもしれない。

 この世界でも、人は見かけによらないという法則は健在のようだ。

 

「私も一度着てみたんだけど、やっぱり私服でスカートってのは落ち着かなくてさ~…」

 

 でしょうね。

 私から見ても、ヒビキさんはスカートよりもズボンが似合うイメージがある。

 

「体調はもう大丈夫だって聞いてるけど、一人で着替えられる? 難しそうだったら手伝うけど……」

「それぐらいだったら問題無いかと」

 

 今着ている病院服だって、濡れタオルで体を拭く時は普通に脱いだり着たりしているし、これぐらい単純な服なら心配いらないだろう。

 

「じゃあ、服はここに置いておくね。私達も出ていた方がいい?」

「別にいてもいいですよ? 同じ女同士ですし、恥ずかしがるような事でもないでしょう」

「「そ…そう?」」

 

 今更、自分の裸を見られたぐらいで動揺するようなことはない。

 女体化した状態での己の裸なんて今までに何度も見せてきた。

 男の上で腰を振っていた事だって一度や二度じゃないし。

 経験人数だけで言うなら、間違いなく私が全宇宙ナンバー1だと自負している。

 勿論、男女問わずで。

 

(んじゃ、とっとと着替えますか)

 

 まずは上から脱いで…っと。

 あ…そういや私ってばブラを着けてないじゃん。

 このまま着てもいい…わけないか。

 

(ん? これは…)

 

 紙袋の奥の方に同じ色のブラとショーツが入っていた。

 これも用意してくれたのか? 

 話題に出さなかったのは、普通に恥ずかしかったからか。

 何とも初々しい羞恥心だ。羨ましい程に。

 

(用意をしてくれたのなら、遠慮なく使わせて貰うのが礼儀ってもんだよな)

 

 ブラのつけ方は普通に知っている。

 私にとってはTS転生なんて当たり前の事だから。

 

(…今、気が付いたけど、私が着替え始めてから二人揃って後ろを向いてるし…)

 

 女同士なのに相手が着替えるのを恥ずかしがるとか、どんだけ純粋なんだよ。

 こりゃ、筋金入りの生娘だな。

 

(なんて言ってる間に、ブラを着けてノースリーブも着終えている私なのでした)

 

 後は、ショーツとスカートを履くだけか。

 このヒラヒラ感だけは、どれだけ転生をしても慣れそうにない。

 

(…こんなもんか)

 

 ここには姿見なんて贅沢な物は無いから、今の自分の姿は分からないが、まぁまぁいいんじゃないだろうか。

 この肉体とそっくりな岸波白野の尊厳さえ守れれば、それで十分だろう。

 

「終わりました」

 

 終了の言葉を聞いて、二人はゆっくりとこちらを振り向いた。

 私の姿を見た途端にその目が急激に輝き始めたが。

 

「おぉ~! すっごく可愛いよ!」

「想像以上によく似合ってる……」

 

 片方はシンプルなリアクション。

 もう片方は静かに感動している…のか?

 

「弦十郎さん。もういいですよ」

「そうか?」

 

 扉の向こうで待っているであろう彼に声を掛けると、静かに扉が開いて弦十郎さんが入ってくる。

 その顔は素直に驚嘆をしていた。

 

「うむ。良く似合っているじゃないか」

「ありがとうございます」

 

 例え世辞でも、礼ぐらいは言っておくのが常識だ。

 どんな時も、敬語を使ってお礼と謝罪さえしていれば、大抵の事はどうにかなるもんだ。

 

「御存じの通り、手荷物の類は全く無いので、今すぐにでも出られますよ?」

「ならば、行くとするか。駐車場に車を待たせてある」

 

 待たせてある? 弦十郎さんが運転をするんじゃないのか?

 まさか、お抱えの運転手でもいるのだろうか?

 

「そうだ。ねぇ、あなたのことはなんて呼べばいいのかな?」

「私の事?」

 

 ヒビキさんに言われて現実に戻される。

 誤魔化せたと思っていたのに、また考えなくちゃいけなくなる。

 なんかもう面倒くさくなってきたな…この際、適当でいいか。

 

「御存じかもしれませんが、私には過去の記憶も無ければ、本当に名前があったのかさえも定かじゃありません。なので、『名無し』でも『ネームレス』でもお好きな方でどうぞ」

「「「…………」」」

 

 …あれ? なんで急に黙るんだ?

 私なりに気を利かせたつもりなんだけど…。

 

「君の名前や素性に関しては、我々が全力で調べる。だから、自棄にだけはならないでくれ」

「いえ…別に私は自棄になんては……」

 

 なんか勘違いされてる? この人達には冗談が通用しないのか?

 

「じゃ…じゃあ、本当の名前が分かるまでは『ナナシ』ちゃんって呼ぶことにしましょうよ。ね?」

「そうだね。暫定的でも名前を決めておかないと、話もしにくいだろうし…」

「と言う事だが…それでもいいか?」

「そちらがそれでいいのでしたら、私は全然問題ありません」

 

 変に拘った仮名称をつけると、本名が判明した時に困るからな。

 繋ぎの名前なら、これぐらいで十分だろう。

 

「では、ナナシくん。行くとするか」

「はい。よろしくお願いします」

 

 そんなわけで、私は彼らの『本部』とやらに招かれる事になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




劇中でナナシが着ていたのは、FGOの礼装である『もう一つの結末』の格好です。




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