無限転生 ~LOST REQUIEM~ 作:とんこつラーメン
病室まで来た三人に連れられて病院の駐車場まで降りてくると、そこには明らかに周囲の車とは雰囲気の違う高級車が。
車種までは分からないけど、とにかく真っ黒でピッカピカに磨かれている。
そして、車の前にはビジネススーツをビシッと着こなしている一人の男が立っている。
もしや、あれがこの車のお抱え運転手か?
「待たせたな、慎二」
「いえ。その子が例の…?」
「そうだ」
シンジ…シンジねぇ…。
同じ名前だからなのか、なんとなく私が8942回目に転生をした世界で知り合った汎用人型決戦兵器で人造人間なアレに乗っていたナイーブな少年を思い出す。
最終的には彼も大きく成長して一人の立派な『漢』になったけど。
「初めまして。僕は緒川慎二といいます。司令、彼女に我々の事は…」
「まだ詳しくは話していない。場所が場所だったからな」
「確かにそうですね。分かりました」
…成る程。この雰囲気…確実に普通の人間じゃない。
少なくとも表側の人間ではない事は確実だな。
血の匂いがするとかそう言う意味じゃなくて、なんて言えばいいのか…。
目の前にいるのに目の前にいない。そんな感じがする。
分かり易く言えば、恐ろしく気配が希薄なのだ。
(まるで…黒子テツヤくんみたいだな……)
彼と同様に、常時ミスディレクションを発動しているような…そんな感じ。
こんな人間を飼っているって事は、この人達って暗部に属する連中なのか?
(…それは実際に彼らの『本部』とやらに行ってみればわかる話か)
私の事を『救出』したという彼らが何者なのか。
そして、この世界の真の姿を少しでも把握出来れば文句は無い。
その為に、私は彼らが垂らした釣糸に自らの意志で食いついたのだから。
対価として私の身体を調べさせろとか言って来ても問題は無い。
別に隠すような事は何も無いし、それによって困る事もまた無いからだ。
「初めまして。私の事は『名無し』とでもお呼びください」
「ナナシさん…ですか?」
「はい。文字通り名前が無いもので、暫定的にそう名乗る事になりました」
「…分かりました」
この顔は納得してないって感じだな。
けど、こればっかりは受け入れて貰わないと困る。
「では、行くとするか」
「皆さん、乗ってください」
「「「はーい」」」
さてはて、彼らの言う『本部』とは一体どんな場所なのやら。
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・・
・
街中を走る車の後部座席から、私は外の光景を静かに覗き見る。
ここは中央街とかなのだろうか? とても賑やかで大勢の人々が闊歩していた。
「どうしたの? 何が気になるものでもあった?」
「いえ…そうではないのですが……」
まるで絵に描いたかのような平和な光景だ。
けど、私は知っている。知り過ぎている。
この世には本当の平和なんて一度も存在したことは無いのだと。
一見すると平和そうに見える光景も、その裏には必ず小さな陰謀やら悪事やらが跋扈しているものだ。
だけど、人々はそれらを進んで見ようとはしない。
事件が発生してから初めて人々はそれらを視界に入れる。
表側になる『見せ掛けだけの平和』に酔いしれ、現実を見ようとしないからだ。
前に私がとある事件にて戦った男『ヴィンデル・マウザー』が言っていた言葉を思い出す。
『平和とは一種の麻薬だ。知らず知らずの内に人々の心の中へと浸透していき、やがては世界全体をゆっくりと腐敗させていく。だからこそ、その麻薬を駆逐する為に戦争という名の駆除作業が絶対に必要なのだ』
奴の言っている事は理解出来るし共感も出来る。
やろうとしたことは過激すぎるとは思うけど。
永遠の闘争なんて現実的に考えても不可能だ。
もし仮にそんな事が実現されれば、その先に待つのは絶対的な破滅だけ。
腐る前に滅びてしまっては意味が無い。
「平和って……なんなんでしょうね……」
「え……?」
「ナナシちゃん…?」
ふと零した私の呟きに答えてくれる人は、車内には誰もいなかった。
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「まさか…潜水艦が『本部』だったとは……」
「驚いた?」
「そうですね……」
車に揺られること一時間。
到着したのは巨大な潜水艦の中でしたとさ。
まさか、車ごと艦の中へと入って行くとは思わなかった。
(いや…今更、この程度で驚くような事は無いか)
マクロスに比べたら、こんなのまだずっとマシだろうな。
なんせ、戦艦の中に街が丸々一つ入ってるんだから。
その後継艦も沢山生み出されていくし。
因みに、あの世界に転生した時は私も立派なバルキリーのパイロットをしてました。
好きな機体は『VF-11サンダーボルト』だ。
あの何とも言えない量産機感がたまらない。
アーマードになれば完璧。
「…で、ここから私はどうなるのでしょうか?」
「まずは、我々の事を詳しく話そうと思う。その上で、君が発見された時の事も詳細に説明しよう」
「分かりました」
本当ならば部外者に話す事は禁じられているのだろうが、生憎と私は部外者じゃないみたいだしな。
知らず知らずの内に関係者になっていたってのが正解だけど。
「響くん。未来くん、今回は助かった。後はこちらに任せて、君達は翼たちの所に行くといい」
「はい! お疲れ様でした!」
「ナナシちゃん。また後でね」
また後で? まるで、話が終わった後に私がどうなるのかを知っている風な口ぶりだな。
いや…そうだろうな。彼らがこのまま私をみすみすと逃がすような真似をするとは思えない。
このまま『保護』と言う形でこちらの身柄を拘束してくる可能性が大いにある。
まぁ…だからなんだって感じなんだけど。
刑務所もココも、私にとっては似たり寄ったりだし。
「ここで話すのもアレだな……どこかいい所はあるだろうか? 流石にいきなり司令室まで連れて行くのもアレだしな…」
「でしたら、食堂ではどうですか? あそこならば飲み物もありますし」
「そうだな。変に堅苦しい場所で話すよりかはずっとマシか。分かった。では、俺に着いて来てくれ。これから食堂に案内しよう」
「分かりました」
潜水艦の中にある食堂…。
普通ならば大した期待などしないのだろうが、このデカさの潜水艦の食堂だ。
一般的な常識は通用しないと考えた方が良いだろう。
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・
「これはまた……」
やっぱり、かなりのデカさを誇る食堂でした。
カルデアの食堂を彷彿とさせるな。
エミヤやブーディカママの作る料理…また食べたいな。
「驚いてくれたかな?」
「まぁ…一応」
決して抜けない貧乏性のせいなのか、こんなものを見せられると自然と考えてしまう。
この潜水艦…どんだけの金がつぎ込まれてるんだよ…と。
同時にこうも思ってしまうのだ。
(この人達…やっぱり普通じゃないな……)
キョロキョロと食堂内を見渡しながら、そんな事を考えていると、弦十郎さんが適当な席に座るように促してきたので、遠慮なく空きまくっている席に座らせて貰う事に。
恐らく、今はまだ仕事中なのだろう。
先程別れた響さん達も見かけない所を見ると、どうやらこことは別の場所へと行ったようだ。
誰かの所に行くようにと言っていたような気がしたけど。
「何か飲むか?」
「何があるんですか?」
「なんでもあるぞ」
ほぅ…? 『なんでも』ときましたか。
ならば、入院中に飲めなかった代物を頼もうか。
「では、ジンジャーエールはありますか?」
「あるとも。少し待っていてくれ」
あるんかい。
心の中でツッコんでいると、本当にジンジャーエールが出てきた。
「お待たせした。遠慮なく飲んでくれ」
「いただきます」
コップを持ってから一口ゴクリ。
うん、美味しい。
こうしてコレを飲むのは何十年振りだろう。
前の転生の時には、こんな物を飲む余裕なんて微塵も無かったしな。
そういや、弦十郎さんは何を飲むんだろう?
そう思ってふと目を動かすと、そこには美味しそうにコーラを飲む彼の姿が。
「ん? どうした?」
「いえ……」
てっきりコーヒーとかを飲むと思ってた…。
これは色んな意味で予想外。
「喉も潤ったところで話に入ろうと思うのだが、大丈夫か?」
「問題ありません」
「まず、我々の事だが……」
ここからは、私が着いた話を掻い摘んで説明しよう。
詳細を話していったら大変だし、頭もパンクするだろうから。
彼らは、国連直轄の超常災害対策機動タスクフォース『S.O.N.G.』と呼ばれる部隊らしい。
弦十郎さんは司令官であり、同時に作戦指揮も担当しているようだ。
嘗ては『特異災害対策機動二課』と呼ばれる部隊だったらしいが、それを再編成した上で直轄組織が日本から国連に移行していて、安保理が定めた規約に従って国外での活動も許可されているとの事。
詳しくは話してくれなかったが、これまでにも色んな大規模な超常脅威を何度も防いできたらしく、そのための手段がここには存在している。
「もしや、その『手段』とやらとは響さん達と関係しているのですか?」
「矢張り、君には分かってしまうか」
「このような特殊過ぎる部隊に、彼女達のような少女が属していること自体が違和感の塊ですから」
これに関しては、私じゃなくてもすぐに分かると思う。
黒の騎士団のゼロことルルーシュならば、少ないヒントで答えにまで辿り着いて見せるだろうけど。
実際、私も彼の神憑りなまでの超絶的な頭脳に何度助けられてきたか。
「別にここで彼女達について話してもいいのだが、俺よりももっと詳しく説明できる人物に心当たりがあるのでな。詳しくは彼女から聞いた方が良いだろう」
ふむ…餅は餅屋ってわけか。賢明な判断だ。
「超常災害…では、ノイズなども貴方たちがどうにかしていたのですか?」
「ノイズの事は覚えているのか?」
「いえ。病室で読んでいた雑誌に記事が書かれていたので」
「そうか…。その通りだ。確かに、奴らが発生していた頃は我々が対応に当たっていた。その後、とある方法にて我々はノイズを封じる事に成功はしたのだが、それとは別に作られたノイズ…『アルカ・ノイズ』と呼ばれる存在がテロリストなどに行き渡っていてな。まだ完全に安心できる状態とは言い難いんだ」
まぁ…そうだろうな。
どんな方法でその『アルカ・ノイズ』とやらを製造したのかは知らないが、そんな便利な物を見逃すほど奴らはバカじゃないだろう。
「ここで、君の事に話が行くのだが…」
「もしや、私はテロリストの所にいたとでも?」
「テロリストではなく、君がいたのはパヴァリア光明結社と呼ばれる錬金術師たちで構成された組織の残党のアジトなんだ」
「…………はい?」
錬金術師って…あの錬金術師?
私が知っている錬金術師って言えば、ミニスカ大好きな焔の錬金術師さんに、めっちゃマッチョでキラーンでダンディな剛腕の錬金術師さんに、爆発大好きな紅蓮の錬金術師さん、後は皆大好きな鋼の錬金術師くんだな。
「錬金術とは…あの錬金術の事ですか? 原子配列そのものを組み替える行為よりも既存の物質の形状を変化させたり、または化学反応を起こしたりすることを主としている…あの? 等価交換の原則で成り立っている?」
「俺も錬金術に関しては、そこまで詳しくは無いので何とも言えないが…どうしてそこまで詳しいんだ?」
「いや…これぐらいは普通では?」
「なに?」
「え?」
…別におかしなことは言っていないつもりだが。
少なくとも、私の知っている錬金術はそんな感じだし、この人達も錬金術師を相手にしているのだから、それぐらいの事は知っていて当然なのでは?
専門書でも読めば、普通に書いてある事じゃないのか?
(まずったかな……)
もしかしたら、私の知っている錬金術と、この世界の錬金術とは根本的に違うのかもしれない。
私の知る錬金術はれっきとした『科学』だけど、この世界では『魔術』に近いものなのかもしれない。
錬金術に関わる転生なんて非常に少なかったせいか、この違いが良くまだ分からない。
これもまた私が知らなければいけない事なのかもしれないな。
「残党…ということは、そのパヴァなんとかという組織はもう壊滅しているのですか?」
「う…うむ。組織の幹部やトップを倒したので、事実上の壊滅状態とは言えるのだが…」
「生き残った連中がまだ世界中に存在している…と」
「そうなる。現在の我々の仕事の一つでもある」
「それはまた……」
大変な事で。
組織の残党狩りなんて、一番面倒くさい仕事の一つじゃないですかヤダー。
「私がそんな場所で発見されたとなると…まさか、人体改造でもされていたのでしょうか? もしくは、私自身が連中によって製造された人工生命体的な感じ…?」
え? 今回の私ってまさかホムンクルスなの?
この体の中には『賢者の石』が入ってるの?
ホムンクルスって言えば基本的に不老不死だけど、私の『無限転生』という特典は『何があってもいつかは必ず死ぬ』ことが大前提となっているから、不老はあっても不死だけは絶対に有り得ないか。
そうなると、今回は次の転生まで相当に長くなりそうだな。
「ん? どうしました?」
「…君は何も思わないのか? 自分が改造されたり、自然に生まれた存在ではないかもしれないという可能性に対して…」
「別に何も? そんなの、世界中を探せば似たような事例は幾らでもあるでしょう? 私だけが特別じゃないですよ」
「…………」
なにやら弦十郎さんが悲しそうな目でこっちを見てきたので思わず訪ねてしまったが、そしたら今度は急に黙ってしまった。
一体どうしてしまったのだろうか? 何か変な事でも言ったかな?
空気が重くなりかけた時、食堂にいきなり元気な声が聞こえてきた。
「お腹空いた~。クリスちゃんは何食べる?」
「そうだな…って、おっさん? と…誰だ?」
入ってきたのは響さんと未来さん、それと他にも五人の女の子が入ってきた。
これまた違和感だらけの人達がやって来たもんだ。