無限転生 ~LOST REQUIEM~ 作:とんこつラーメン
現状、戦闘シーンは微塵もないですね~。
日常系に近くなるかもしれません。
響さん達に案内されてやって来た宿泊部屋なのだが、これには普通に驚いた。
顔には全く出なかったけど。
兎に角、デカくて広くて清潔。
ベットはフカフカだし、床はピカピカ。
更には、置いてある家具は近未来的なデザインながらも使い易さ重視となっている。
これは恐らく、私のように初めてここを使うものに対する配慮なんだろう。
「うわー…落ち着くー」
ベッドの上でゴロゴロとしながら、ようやく心身共にリラックスさせることが出来た。
どれだけ転生しても病院の雰囲気は余り好きにはなれないし、あそこはあくまでも患者の為の施設。
私のように衰弱しただけの奴がいつまでも居座っていてもいい場所じゃない。
病院と刑務所は二度と来ないぐらい気持ちでいた方がいいと、ずっと前に転生した時に入院した病院の看護師さんが言っていた。
(響さん達は帰ってしまったのか……)
ここに来るまでに彼女達の事を少しだけ教えて貰ったのだが、響さんと未来さん、クリスさんはなんとかっていう音楽学校の高等部に通っているらしい。
調さんと切歌さんも中等部に通っていたらしいが、今年から高等部に上がるらしいとの事。
(学校……か)
私って、これまで一体どれだけの学校に通ってきたんだろう…。
え~っと…花咲川高校に空座第一高校、穂群原学園に海軍の士官学校、アニメーターの専門学校にも行ったっけ。
後は、IS学園に駒王学園、トレセン学園にも通ってたな~。
大洗女子学園にも行ってたし、阿智賀女子学園って場所にも通った。
遠月学園では色んな意味で美味しい思いをさせて貰ったな。
とある異世界ではトリスティン魔法学院なんて場所にも行った。
精霊たちも一緒に通っている来禅高校に、学園都市のお嬢様学校である常盤台中学、汎矢理高校、後は…聖エルミン学園に七姉妹高校、月光館学園に八十神高校、雄英高校って半ば専門学校っぽい所もあったし、国立魔法大学付属第一高等学校なんていう凄そうな学校も行った。
美滝原中学に聖祥大付属小学校、他にはどんな学校に通ってたかな…。
(もしも、私の経歴を履歴書に書けって言われたら、絶対に超小さく書かないと埋まらないだろうな……)
いや、どれだけ小さく書いても絶対に書ききれない。
それだけの転生人生を送ってきた自負はある。
「…食事とかは、さっきの食堂を使えばいいのかな…」
けど、誰が料理を作るんだろうか?
やっぱ、食堂のおばちゃん的な人が常駐しているのかな?
「まぁ…いざとなればちゃんと許可を貰ってから自分で作ればいいか」
その辺の知識もちゃんと脳内には記録してある。
ちゃんと作れるかどうかはまた別問題だけど。
(あそこがシャワー室に、あそこがトイレ。私一人には勿体無いぐらいの好待遇だな)
こんな部屋で寝泊まりをしたのは、恐らく私がIS学園に通っていた頃が最後だろう。
あそこの学生寮は本当に金を掛け捲ってたからな。
「……着替え、どうしよう……」
今になって、大事な事に気が付いてしまった。
現在の私は正真正銘の無一文。
替えの服さえ持っていないような状況なのだ。
もしも浅はかな考えでシャワーなんて入ったら、それこそ裸で過ごさなくてはいけなくなる。
いや…着ている服をもう一回着るってのもアリなのか?
この場合は仕方がないしね。うん、そうだそうだ。
「流石にバスタオルぐらいは……」
あった。
ダメ元で部屋の中を調べて見たら、ちゃんと綺麗に洗濯されているバスタオルとハンドタオルが折り畳まれた状態で並べてあった。
これで少なくとも、シャワーに入れないという事態は防げたわけだ。
「最悪の場合、裸で寝ようかな」
裸で寝るのって意外と気持ちが良かったりするんだよね。
一時期は、死ぬまでずっと裸で寝る事に嵌ってたぐらいだし。
仲間からは『お前は裸族か』ってツッコまれたけど。
「そうと決まれば、まずはサッパリしたいな」
入院中は風呂やシャワーなんて入りたくても入れなかったし。
出来る事と言えば、濡れタオルで体を拭くぐらい。
それでは全くスッキリしない。
「脱いだ服は…そこら辺に置いとけばいいか」
別に誰かに取られるって訳でもないし。
特に気にする必要はないでしょ。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
食堂にて話を終えた弦十郎は、司令室に戻って正面モニターを腕組みしながら見ていた。
そこには、部屋で寛いでいるナナシの姿が映し出されている。
「今のところは何も特別なアクションはしていないな」
「どこにでもいる、至って普通の女の子ですね」
ベッドの上でゴロゴロとしながら、気紛れに部屋の中を散策して回る。
年頃の少女が初めて訪れた場所でする行動としては、何もおかしな所は無い。
「けど…なんだか気が進まないですね。幾ら、素性が不明とはいえ、女の子を監視するような真似をするのは…」
「それは俺だって同じだ。だが、我々の前では言えなかった事をふとした拍子に漏らすかもしれない。それがナナシ君の正体に繋がる可能性だってあるんだ」
「そうかもですけど……」
オペレーターの一人である藤尭朔也は複雑な顔をする。
モニターの向こうにいるナナシは、彼の目からはどこにも怪しい所が無いからだ。
『……着替え、どうしよう……』
ナナシが呟いた言葉を聞いて、この場にいる全員がハっとなった。
そう言えば、今の彼女には替えの着替えなんて代物は無いのだった。
このままでは風呂にも入れないではないか。
『最悪の場合、裸で寝ようかな』
それを聞いて、流石の弦十郎も焦りを見せる。
ナナシの裸を全員で見るような事態だけは何が何でも避けなければ。
主に大人の男として。
「…友里。後で彼女の部屋にパジャマを持っていってくれるか?」
「分かりました。あ…でも」
いきなり司令室全体を見渡すようにして、もう一人のオペレーターである友里あおいが男性陣全員を睨み付けた。
「私が着替えを届けに行っている間、モニターを見るような事はしないでくださいね?」
彼女から発せられる並々ならぬ殺気に、全員が声も出せずに頷くしかなかった。
「では、行ってきます」
静かに、だが悠然とした感じであおいが司令室を後にする。
彼女が去ってから、隣に座っていた朔也はホッと胸を撫で下ろした。
「こ…殺されるかと思った……」
「取り敢えず、モニターは切っておくか……」
「了解です…」
モニターの映像が切り替わり、市街地の光景が映し出される。
これまで通り、人々が行き交う平和な風景だ。
「司令、ナナシさんと捕縛した錬金術師を会わせるという約束…本当によろしいのですか?」
これまで黙っていた慎二が、ふと弦十郎に質問をする。
因みに、彼もまたあおいの殺気に本気でビビッていた一人だ。
「正直に言えば、俺は不安しかないと思っている。なんせ、ナナシ君の体を弄繰り回していた張本人だからな。幾ら、その時の記憶が無いとはいえ、余りいい感情は抱かないだろう」
「では、どうして…?」
「本人が望んだからだ。ナナシ君は自分自身の意志で奴と出会い、話を聞くことを望んだ。俺はその彼女の勇気を尊重してやりたい」
通常ならば間違いなくトラウマに刻まれていてもおかしくない事だが、それでもナナシは向かい合う事を決めた。
荒療治と言えばそれまでだが、何も分からない現状ではそれが最善なのもまた事実だった。
「それに、俺達には何も口を割らなかった奴が、彼女にならば何かを話すかもしれない。あくまで可能性の話だがな」
「でも、司令はその可能性に乗ると決めた…ですよね?」
「あぁ。ナナシくんは不可思議な雰囲気を出す少女ではあるが、決して悪人ではないと俺の勘が告げている。だからこそ、賭けてみる価値はあると踏んだ」
理想論&根性論。
司令としては絶対に発言してはいけない事だが、そんな彼だからこそ皆はついてきた。
これもまた一種のカリスマなのかもしれない。
「しかし、問題はここからだな……」
「はい。捕縛した錬金術師に会わせるにしろ、会わせないにしろ、その後のナナシさんの生活基盤を考えなくては」
今のナナシには戸籍なんてないし、住む家すらも無い。
自分の名前すらも失っているような状態なのだから当たり前だが。
「暫くは、ナナシくんに狭苦しい思いをさせてしまうな…」
「その辺は、僕らが支えるしかありませんね」
大人だからこそしなくてはいけない事がある。
こんな事は今に始まった事ではないので、弦十郎は微塵も臆してはいない。
「まずは、彼女の服などをどうにかしなければな……」
「その辺りは装者の皆さんを頼るしかありませんね。こればかりは、男の僕達ではどうにも出来ませんから」
「うむ……」
決意をしたや先にコレである。
男とはつくづく無力な生き物だ。
今回は少し短め。
本当はここで全てのネタを出し切る予定でしたが、なんだか思ったより長引いてしまったので、錬金術師との遭遇は次回に回します。