わたしの命は想像、演じるのは姉さま   作:ひゃ

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ちょっと間が開いちゃった。申し訳ない。


いつのまにか役者が増える

「俺、よるのいのちに会いたい。」

 

「「「ダメ」」」

 

 四方八方からまったく同時に、口を揃えて同じ言葉が飛んでくる。ここにいる者は皆だいたい役者であるが、台本もないのにこの有様。

 

 明神阿良也へのある意味での信頼がうかがえる。

 

「ダメよ!阿良也君は凄い人だけど、でもセクハラ男でもあるのよ!妹に会わせるなんて絶対ダメ!!」

「…だ、そうだぞ。阿良也。」

「は?失礼な真似なんてしないよ。ただ話をしたいだけ。いいだろ。」

「よくねーよ。相手が小娘だってわかってねえのか。ちょっと黙ってろ。夜凪、黒山から話は聞いてるな?」

「ううん。とりあえず行って来いって……。」

「あの野郎。」

「はあ……。新入りが来るっていうから、誰かと思えば……、巌さん鼻詰まってんの?あんたの最後の舞台、この子に潰されるよ?」

「俺の配役に口出すのか、偉くなったなクソガキ。」

 

 シンと稽古場が静まり返る。突然現れて、『よるのいのち』の姉だという新入りの役者。彼女を次の舞台(最後の舞台)に出すという巌裕次郎。それに異を唱える明神阿良也。

 その場に居た役者たちの心は、困惑に包まれた。

 

((とりあえず、『妹さん』ってことは年下の女の子だろ?阿良也は近づけちゃダメだろ……。))

 

 困惑する劇団員たちにただひとつ明白だった事は、明神阿良也を自由にしてはいけないということである。

 

「わっ、私、一生懸命がんばるから!」

「……公演は3か月後だ。台本を渡す。演目は『銀河鉄道の夜』。俺達と一緒に死への旅と行こうか、夜凪景。」

 

 

 

 

 姉さまが帰ってきました。汗だくで。何故?

 

「姉さま、タオルをどうぞ。シャワー浴びますか?」

「うん、そうする。ありがとう命。」

 

 何故、初めて行った稽古場から帰ってきて、汗だくになっているのでしょう?これは稽古でかいた汗というには、乾いていない、いいえ、今この瞬間まで全力疾走していたような……?

 

 なぜ?なにゆえ?ほわい?

 

「ふ、ふふふ……!足は、足は私の方が速かったのよ。芝居ではまだ負けても、鬼ごっこをすれば私に勝てる役者はいないかもしれないわ。」

「何の話ですか?鬼ごっこ、したんですか。どうして……?」

 

 

(経緯はこうである。『よるのいのち』に会いたい明神阿良也が夜凪景についていこうとした。劇団天球の人間たちがそれを阻もうとした。突破された。景は逃げた。阿良也は追った。

 鬼ごっこである。勝者、夜凪景。)

 

 

 まあ、姉さまが満足げなのですべて良し。夕飯の用意を続けるべし。今夜は生姜焼きです。

 シャワーから上がった姉さまの着てきたティーシャツが、キーゼルバッハ部位なのですが。食欲が削がれる……。

 キーゼルバッハ部位というのは、鼻血が出やすい場所のことです。わたし、ものしり。

 

 今日も謎の多い姉さま。家族からしてもふしぎがいっぱい。どこで買ってきたんですかそれ。

 

「あら?命、今日は家族で夕飯食べるの?嬉しいけど、雪ちゃんと黒山さんは?」

「お姉さま、大人にはお酒を飲んで一日を終えたいときというのがあるそうですわ。」

「そうなの。」

 

 正確にはバツが悪くなった黒山墨字が逃げて、それを雪さんが追いかけたのですけど。

 

 叱られて謝れない大人の男性というのも、たまには役に立ちますね。家族水入らずの夕食はちょっと久しぶりです!

 

 うまー。

 

「美味しい。命また料理上手になった?」

「いえいえ、今日はレイとルイも手伝ってくれたので、その分美味しいんですよ。あとはお母さんと姉さまのレシピが良いのです。」

「生姜すった!」

「たまねぎ切った!」

「えらいわ。ありがとう、レイ、ルイ。すごく美味くなってる!」

 

 

 そして夜は更け、夜凪景は友人との電話で『巌裕次郎がいかに恐るべき男か』を知るのであった。

 

「姉さま?台本読まなくていいんですか?ページが進んでませんが……。」

「おねーちゃんね、さっき電話してから顔色悪いのに、私がもう寝よって言っても台本読むんだよ。」

「おねーちゃん最近色んな顔するよねぇ。お友達できたし。」

「なるほど……。でも無理は禁物ですよ姉さま。寝ましょう!レイ、ルイ、やっておしまいなさい!」

「「てやーー!!」」

「ああっ、ゆるして!台本が、台本が、巌さんは常に木刀を握っている演出家なのに!」

「寝ないこは戦も出来ませんよ姉さま!」

 

 

 

 

 

 次の日、結局台本はさっぱり頭に入らなかったらしい姉さまはしょんぼりしながら、同時に追い詰められた子兎のようにビクビクしながら稽古に向かった。

 

 そしてムムムと考え込むように、やっぱりしょんぼりしながら帰ってきた。大黒天に。

 

「頭では分かってるの。阿良也君の芝居は大袈裟なのにリアル。動作から感情が伝わってくる感じ。」

「分かってんじゃんそれだよそれ!」

 

 わくわくと楽しそうに、雪さんが姉さまの意見に同意を示す。姉さまを応援しているのだろう。

 ちなみにわたしは、その雪さんにひっついている。わたしたちを挟むようにレイとルイ。ちょっと離れたところにクロヤマが立っている。

 

 まだ謝られていないので、距離を取られているのだ。意地っ張りめ!

 

「そう思って身体を動かそうとするとなんていうか……」

「感情がついてこないんだろ。」

「そう!そんな感じ!」

「……あー。」

 

 レイと同じく、わたしも内心で「あー」である。姉さまと共に生きてきて、感情がついて来ていない様子は何度も見ている。

 ぎこちない笑顔、引きつった表情、エトセトラ。

 

「スターズのオーディションの時は?どうやって涙を流した。」

「あれは始め、お母さんのお葬式を思い出して演じていたの。でもなぜかその時は涙が流れなくて、黒山さんにバカでも分かるように演じろって言われたから、お葬式から家に帰った後、はじめて涙が流れた時の感情を思い出して涙を流したの。」

「ま、そんなとこだよな。中には涙腺コントロールする奴もいるが。」

 

 スッ、パコン!

 

 雪さんが静かにクロヤマの頭を叩く。きゃー!すてきー!デリカシーのある大人、さいこー!

 姉さまが気にしていない様子だから、何も言わない。でもクロヤマは許せないから行動は起こす。叩く。

 良いことするなぁ、雪さん。

 

「イタッ、なんだよ!……あー、悪かったな。」

 

 わたしと目が合って、気まずそうに謝られた。クロヤマ、ちょっと成長したか?

 

「……役者にもいろんなタイプがいるんだよ。例えば、」

 

 クロヤマがホワイトボードの中心にまっすぐ横線をひき、ちっちゃい似顔絵と「表現」「感情」の文字を書き、役者さんの演じ方について説明しだす。

 

 表現しない姉さま、役作りをしない千世子さん。うっ、百城千世子……!『天使』どうしよう…!?

 

 悩み事がフラッシュバックしてフリーズしていたわたしを余所に、話は進んでいく。雪さん絵が下手なんですね。

 

「私に足りないもの……、掘り下げた感情を表現するための技術……。」

「“技術”なんて大袈裟なもんじゃねーよ表現力なんて。自然に皆できてるもんだ。」

「え?皆?」

「そう。お前の妹は特にな。だろ?おい命。座敷童ごっこはどうした。関係ありませんって顔してんじゃねーよ。」

「命にはできてるの?私できないけど…、役者なのに。」

「できてるよ。人間誰しも本能的に出来てる。忘れてるだけさ。」

「それ、どういう」

 

「あーーーーー!!!ちょ皆静かに!」

「!?」

「お前が一番うるせーよ。」

 

≪星アキラ熱愛か!?明神阿良也の舞台挨拶に現れたアキラさんですが謎の美少女と―――≫

 

「何してんのけいちゃん。」

「あれ?お前千世子と行ったんじゃなかったの?」

「オシャレして行ってよかった。TV出演……。」

「そういう問題じゃないから。」

「ウルトラ仮面……。」

 

 ……姉さまが刺される!!??

 

 姉さまが、わたしたちの大事な姉さまが、イケメン俳優の女性ファンに刺されてしまう!いや女性とは限らない、過激なファンに刺されてしまう!

 

 くっ、後悔しても時すでに遅し。やはりわたしが行くべきであった……。せめて、姉さまが刺される前にこのわたくしが星アキラを刺すしか……!!

 

「ウルトラ仮面……!」

 

 はっ!いけないいけない、弟のヒーローを刺すわけにはいきません。わたしだってお姉ちゃんですから!!

 

 

 

 

 

 一方その時、スターズ事務所では。

 

≪星アキラ熱愛か!?明神阿良也の舞台挨拶に現れたアキラさんですが謎の美少女と―――≫

 

「こうなっては(ほとぼり)が冷めるまで待つしかありませんね。」

「冗談じゃないわ。いくらの損失になると思ってるの。千世子と手塚で手いっぱい、『よるのいのち』の案件も考えなくてないけないのに。

 参るわね、夜凪景。」

 

(いいえ、むしろこれはいい機会かしら?

 この損失を賠償させる、なんて流石に未成年の姉妹には非道すぎる。けれど、『天使遊び』の映画化で和解すれば……。いえ、それでもやはり駄目ね。酷すぎる。

 原作者に嫌われるのは避けたいし……。)

 

「……仕方ない。2人があの場にいた必然性を作るわ。」

「というと?」

「アキラを巌裕次郎の舞台に出演させる。あの3人を共演させるのよ。」

 

 

 

 

≪星アキラ熱愛でなく共演!?――今秋公開予定の舞台の――≫

 

「星アキラ。星アリサの息子の。」

「コイツの芝居好きじゃないんだよね。」

「ああ分かる小手先というか。」

 

 テレビを囲んで、劇団天球の者たちは数日ぶりに本気で困惑していた。最近俺らこんなんばっかだな。なんでこうなってる?

 

(外部からの役者をこの時期にこんなに……。巌さんらしくない。皆戸惑っている。)

 

 七生が考え込むそばで、明神阿良也もまた彼なりに戸惑っていた。

 

「はぁ……、って気持ち。」

 

 

 

 一方、巌裕次郎と星アリサは、どこか険悪な空気で話していた。否、険悪な眼差しは、星アリサから巌に向けられたものだ。

 

「あなたにとってアキラは重荷にしかならないはずよ。こんなにすんなり話が通るなんて思いもしていなかった。」

「罪滅ぼしだよ。お前への。」

「……せいぜい利用させて貰うわ。」

「夜凪景。あれはお前の若い頃にえらく似てるな。」

「……あれは私より厄介よ。見る目が落ちたわね巌先生。」

「そりゃお前だよ。アリサ。ガキってのは化けるもんだ親の想像を超えて。」

 

 星アキラに対する、アリサの評価、巌の評価。現在は確かに星アリサの方が正しい。彼は果たして化けるのか。

 

 

 

 ぎこちない空気の中、劇団天球と星アキラは顔を合わせて挨拶をしあう。

 

「今日からお世話になります!星アキラといいます。舞台は初めてですが精一杯がんばります!宜しくお願いします!」

 

「……よろしく。」

「テレビで観るより可愛い顔してる。」

「顔だけじゃないといいけどな。」

 

 互いに距離の空いた、すこし嫌な空気の中で、アキラは数少ない顔見知りを見つけた。

 

「ああ夜凪く―」

「私、ウルトラ仮面さんと熱愛なんてした覚えないわ。」




最後、駆け足になっちゃったかな……。

読者さん達に質問します。恋愛要素、欲しいですか?要らないですか?

恋愛いれるとしても、誰かと両想いとか、付き合うみたいなことにはしないと決めています。命ちゃんの年齢の事もありますが、「家族が最重要」という価値観をブレさせたくないなので。
なので恋愛を入れるとしても、原作の景ちゃんの周囲のような、「ん?もしかして?」くらいの感じを何人かから示される、命ちゃんの方は気づかないか、躱すか、家族を優先する、みたいな対応をして貰おうと思っています。

皆さんはどう思うか、教えてください。

恋愛要素はいりますか?

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