わたしの命は想像、演じるのは姉さま   作:ひゃ

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感想くれたひと、ありがとうございます!なんか頭よさそうな感じの面白い返信返せなくてごめんね。

誤字修正しました!報告してくれた人、ありがとうございました!


安心して下さい、手遅れです

 夜凪命は慄いた。

 

「ひえ……。評価伸びてる……。」

 

 正直に言えば訳が分からなかったし、正直に言わなくても理解が出来なかった。

 

「なんか知らんが爆発的に伸びてる……。天使ごっこだけずば抜けて、いや、他のもだいぶ伸びてるな……!?バグか?」

 

 とりあえず深呼吸して、ノーパソを再起動して、もう一度確認した。

 

「いやこれバグじゃないですね……。おかしいのはわたしの頭ですか?それとも世界ですか?」

「命ねーちゃんがパソコンにおしゃべりしてるー!」

「どうしたの?あんち?なぐさめてあげようか?」

 

 あっ、レイとルイが今日も可愛い。大丈夫だ。世界も頭もおかしくないぞ。

 

「んーん、ちょっと予想してない反響があってびっくりしただけ。心配しないでくださいまし。」

「そうなの?もしかしてうりあげ増えそう?」

「増えそうですね……。」

「やったー!おかし買ってくれる!?」

「それは姉さまと相談しないとです。」

 

 まあ姉さまはこころよく許すだろうが。そうそう、姉さまの事だが、めでたいことに役者としての所属事務所が決定したのである。

 

 あのヒゲが社長というのは実に不安だけども、雪ちゃんさんはとてもマトモで素敵なお姉さんだったし。

 雪さんに誠心誠意姉さまへの失礼を謝罪され、(主に姉さまと雪さんが)ヒゲへの制裁を行い、ちゃんとした会社であるという説明をうけ、姉さまが映ったCMを見せてもらい、第152回夜凪家家族会議を経て、妹弟トリオは姉さまの門出を祝福したのである。

 

 ちなみにわたしの決定打は、姉さまと雪さんの息の合った美しいハイキックと、躱そうともせず甘んじてそれを受けたヒゲの潔い態度です。

 わたしの「必殺本の角アタック」も綺麗に決まったし、いつまでも遺恨を残すことは辞めておく。

 

 怪しいヒゲ男、本名黒山墨字。無罪放免です。おめでとう。でも調子に乗るなよ。

 

 

 今は黒山さんが姉さまを時代劇のエキストラの仕事に連れて行っている。やるではないかヒゲ。

 

 実際、エキストラは超重要な経験値らしい。ネットで仕入れた知識だが。

 

「まあ姉さまはなんだって真剣に頑張るので心配はいらないですね。お夕飯を作って帰りを待っていましょう。」

 

 わたしの「天使」が異様にバズっていることはひとまずスルーである。というか向き合いたくない。現実を直視したくない。

 

 あの人が出てきませんように……!姉さまのお邪魔になったら今度こそ許さないぞ。

 

 

 

 

 SNSを中心に大きく評判を上げつつあるネット小説「天使を演じるのは、ただの子供の遊びで済むだろうか」

 

「この作品、作者との連絡は取れたの?スミス。」

「清水です。いえ、現在小説サイトとの交渉中です。作者本人との連絡は取れていません。」

 

 芸能事務所スターズ、社長、星アリサ。

 

 元大女優。現在も役者、映像業界において大きい影響力を持つ人物である。

 芸能事務所社長としてのそれは、女優だった頃よりも大きい。現役時代の彼女は、どれほど偉大でも「ひとりの女優」だった。それに対して現在スターズに所属する役者は天才ではないが、一人でも無い。

 

 「人数」が増えれば「出られる映画」も増える。「今どきの映画」のほとんど全てに、スターズの役者は出演しているのだ。……それも、主役として。

 

 強大な影響力は全て、役者の心を守るために。そうして育てられた者が、またスターズの名声を高めていく。本当に素晴らしい無限ループである。

 

 彼女と、スターズの人間にとっては。スターズ以下の凡人にとっては妬みの対象であり、スターズ以上の役者(怪物)を求める玄人にとっては障害である。

 

 しかし、その影響力はあくまでも「役者・映像業界」をメインとしたものだ。文字と絵の世界においては幾らかその威光も弱まる。

 

 まあ、スターズに嫌われても関係ないですしおすしー。アニメ化しちゃえば役者なんていらない、むしろそっちのが最高では?

 

 しかし、星アリサには引き下がれない理由があった。……女優をしているとたまにあるのだ。人生に必要な作品が。

 

「この作品(映画)は、必要かもしれない。百城千世子の女優人生に。」

 

 ただの直観である。当たっていたかどうかは、彼女本人が演じ終わってみてからでないとわからない。

 

 しかし、この「天使様」……。今までの千世子のイメージこれ以上なくぴったりでいて、同時に異なる。可愛らしい美少女と作り物の天使はまったく違う。男性的なふるまいも、全ての中心でありながら主役ではない点も。

 

 つまり、これまでのイメージを全く損なわずに、新しいイメージを与えることが出来る。

 

 新規ファンの大幅な開拓、女優としてのキャラクターの変化と成長……。もしかしたら、最近たまに見る「男装女子」を演じる百城千世子なんてものも実現するかもしれない。

 

 けれど、これはまだ捕らぬ狸の皮算用、甘い期待にすぎない。良い結果を出せるか、最高に良い結果になるか、それはまだわからないけれど……。

 

 私がやるのは、役者を守り、作品を用意して演じさせ、そして失敗を未然に防ぐこと。

 

 これは千世子のためだけではない。アキラにも芽のある話だ。

 

 天使の「中の少年」。主人公。魔法使いであり、魔法は苦手で、賢く現実的、そして役者。

 

 これは星アキラが演じられる役だ。

 

 アキラと千世子が共演し、二人でひとつのように対等に張り合える。千世子に存在感を喰われても、主人公としてはむしろその方が良い。千世子が輝けば輝くほど、そのすべては主人公の功績になる。

 

 むしろアキラが影のように振舞うことで、影の黒幕として、主人公の強さが際立つ。

 

 二人ともに大きな出世が期待できる、その上原作の現在の評判から考えても大きなヒットが見込める。……とても見逃せない獲物である。

 

 

「しかし社長、ネット小説はライトノベルに近い扱いなので、今からでは、書籍化やコミック化、アニメ化その後実写化という流れが普通です。時間がかかり過ぎます。

 いえ、もちろん数年単位が映画の普通ですが……。百城さんたちの年齢がそぐわなくなるのでは?」

「書籍化した後、直接映画化すればいいでしょう。アニメ化を望むファンも多いけれど、そもそもの流行のきっかけは「百城千世子に演じて欲しい」よ。

 作者と出版社に交渉して、スターズ主催で映画化する。そうすれば、かかる時間は最低限で済むわ。

 アニメや漫画を経由すれば、二次元に執着し、そもそも実写化自体を嫌がるファンも増えるわ。それを避けるためにもね。」

「アニメ制作会社がすでに動き出していますが。」

「牽制しておきなさい。」

 

 

 ひとつの小説を、二次元が持っていくか、三次元が持っていくか、その戦いは既に(作者の知らないところで)火ぶたを切っていたのである。

 

 

 所変わって、ある劇団の稽古場。ある若手の団員が、大好きな演出家の先生に課題を出されて紙束を持参していた。

 

 課題は「最近読んだ文字で、一番演じてみたくなったもん提出しろ」である。それを何故かあんまり関係の無い先輩男優が最初に読んでいた。

 

 何故だろうと(彼以外の)全員が思ったが、気まぐれな男のすることなので全員放置して稽古に戻った。

 

 それは、コピー用紙にプリントされた、最近バズってるネット小説だった。通称「天使遊び(てんあそ)」である。

 

 彼はそれを、ある種のトランス状態で読んだ。内容には没頭してるが、頭の中でこの役を俺が演じたら、を何パターンもシミュレーションしている。

 

 全てを読んで、それで、その先が読みたいと思った。この先があるはずだと思った。でも、今はそれよりも……、

 

「巌さん!俺この作品やりたい!」

 

 何が気に入ったのか、子供の役作りをしていない時には珍しく、子供のような表情を浮かべて、その役者は、明神阿良也は叫んだ。

 

 

 




夜凪命の二次オタ的自己評価

自称「にわかオタク」。愛は強いがお金を払えないので、「推しに貢げない分際でオタクをなのれぬ」「そもそも原作買えないし、情弱だし」という意識がある。
お金に余裕が出来たら、漫画とラノベを買いまくるつもり。

妙な英才教育を受けているので、オタク的にも常識知らず。妙にズレているところがある。が、姉の方が天然なので自覚がない。
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