忘れた頃に改稿して挿入されるかも知れませんが。
「・・・今のはどう考えても君が原因だと思うが?」
声をかけられたじんぶつは、バトの笑みごとズバッと一刀両断してきた。
「そんな言い方はないだろう?折角見せてあげたっていうのに。」
肩を竦め、半眼のまま紫紺のコートを着た青年はバトを睨む。
そんな視線も当然の如く意に介さずにチラリと先程までタクミの顔を映していた画面に目を滑らせて何処吹く風だ。
「しかし、確かにこちらの想像とは違っていた。」
「でしょう?あ、でも絶対にタクミはあげないから。」
「彼は君の所有物ではないだろう。」
至って冷静な突っ込み。
まさにその通りなのだが、バトには効かない。
「タクミはね、僕達が見つけた大事な大事な原石なんだ。だから誰にも渡さないし、タクミが望まない事は絶対にしない。たとえそれが"秒殺の皇帝"が相手でもだ。」
「・・・最初からそんなつもりはない。君が心酔する程の人物がどんな人間なのか、純粋に興味があっただけだ。」
壁にもたれたまま、静かに簡潔にその人物は弁明をする。
本来、弁明とは多弁になる事の方が多いのだが、彼の性格を表しているといってもいい。
「初めてタクミを知った時、その自由な発想に胸が躍った。すぐにコンタクトをとったし、彼はとても純粋で何よりLBXを心から愛していたんだ。」
更にタクミの年齢を聞いて驚くと同時に狂喜した。
そして、確信する。
彼はいまに凄いLBXビルダーになると。
勿論、バトも自分と彼の為に語学とLBX工学を必死に学び、そして彼の知らない様々な情報を教えた。
それは広大なインフィニティーネット内の事も含めて。
タクミは加速度的にLBX工学、それも設計への実力を高める事になる。
「でも・・・彼は純粋過ぎた。」
バトは拳を強く握りしめる。
その力の強さが全てを物語っていた。
インフィニティーネットに接続するという事は、この世界のありとあらゆる情報に触れるチャンスがあるという事。
そして、タクミの場合はその学習の速さに問題があったのだ。
「彼にとって現実は厳し過ぎたんだ。」
「現実?それは?」
「"あんな事件"があっても、大人達は自らの非を認めようとはしない。それどころか、まるで忌まわしい出来事のように責任をなすりつけあって消し去ろうとする輩もいる。僕達ですら想う事が、得るモノがあったというのに。」
「あぁ、知っている。」
知っているも何も、どちらかというと"当事者"だった。
だからこそ、バトの言っている意味の重大さが手に取るように解る。
「それを見ても尚、LBXを兵器の如く扱う人間は絶えない。アングラルールなんかがいい例だ。よりによってそういう輩の類いにいたのさ・・・。」
ただでさえ事件に心を痛め疲弊し、大人達に絶望ていたのに。
自嘲気味に、そして且つ苛立ちを隠そうともせずにバトは呟く。
「いた?誰が?」
「・・・タクミの
最後は吐き捨てるような言葉で。
その言葉を聞いた側が今度は渋い顔をする番だった。
「普通なら声に出して怒るよね。叫ぶかもしれない。あぁ、もっと言うなら復讐したっていい。でも・・・タクミは純粋過ぎたんだよ・・・。」
それがタクミが今のタクミになった原因。
「それで・・・いや、しかし、二度とLBXに携わらないという程というには理由が・・・。」
「あるんだよ。」
そこがバトにとって、いや、タクミがLBXを捨てた理由を正確に知る人物として一番許せない事だった。
ぎりっと歯を軋ませる。
「事もあろうにソイツは・・・タクミの親友だったソイツは、タクミの創ったLBXのプロトタイプを持ち出して、大会で次々と他のLBXを破壊していったんだ!」
自分の描いた夢のLBXの一歩が、目の前で他のLBXを破壊してゆく光景。
その残骸を一体タクミは何を思って眺めていたのだろう。
それを思うとバトは腹の底から怒りがこみ上げてくる。
何より、何故その場に自分はいなかったのだろうと悔やんでも悔やみ切れなかった。
「・・・自分が一番嫌悪する光景を、自分が創り上げたLBXが生み出していた・・・か。」
どんなモノでも、どんな無害な発明だったとしても、そういった側面がないわけではない。
蒸気機関、内燃機関、ダイナマイト、そしてエターナルサイクラー。
使う人間によって、その様相は変わってゆく。
発明者の想いや意図はそこには存在しない。
しかし、10代の少年にとってそれは悲惨な光景でしかない。
「だとしたら彼とは会えない、会わない方がいいな。」
タクミという少年の心の傷と人間性を考えて、すぐ様そう決断を下した。
「僕は何かを護る為、目的を成し遂げる為とはいえ、多くのLBXを破壊してきた。」
必要な事だったし、相手は敵だった。
しかし、それは自分にとっての味方と敵、善と悪という概念、色づけに過ぎない。
確実にタクミとのソレとは明らかに違う分類の仕方だ。
「さぁ?どうだろね。タクミはあー見えても意外とミーハーだから、喜ぶかもよ?」
バトの言葉は半分だけ事実だった。
あとの半分は彼なりの気遣いで、それは聞いた側も容易に察する事が出来た。
「そうかな?」
「多分ね。誰のファンかは知らないけど。あぁ、でも前にアルテミスチャンピオンの山野バンより、灰原ユウヤの方が好きだって言ってたかな。」
無言でピクリと眉が動く。
「理由を聞いても?」
何やら、言葉に重みが増したような・・・。
「ん?あぁ、剣と盾という武器の取り回しが綺麗だとかなんとか。メカニック的にプレイスタイルも選択武器も整備がし易いんだってさ。」
単純にメカニックの視点としてである。
「ちなみに、秒殺の皇帝は圏外だって。秒殺されたら、整備のし甲斐も戦闘データもあったもんじゃないんだと。いやぁ~ひっじょ~に解り易い好みの基準だよね?」
途中から自分がからかわれているのだと解ると、目の前のバトの目を見て一つだけ溜め息をつく。
「話がズレたけどさ、つまりは、何がってもどんなになっても、僕
先程からフランクに話しかけていた人間とは同一人物とは思えない表情。
そこに全ての決意が表れている。
無言でバトとジンと呼ばれた男との睨み合い数十秒続いた後、最初に口を開いたのはジンだった。
「ところで、彼の好きなLBXは何だ?それとバト、君のデスクの上にあるその"パスポート"は?」
ジンのその言葉に、バトは再び笑顔に戻るのだった。