その事を予想していたオダワラもPXに向かう。
そこでマグライトの光を発見し、それには『連邦軍パイロットの帽子』を見つける。
オダワラはライフルで、その帽子目掛けて引き金を引いた。
エイタはPX内を物色していたが、食料品や飲料水はほとんど無かった。
……みんな避難の時に持ち去ったのか……
辛うじて見つけたのは、飲料水とコーラのペットボトル一本ずつだけだ。
その二つを店内にあった布製の袋に入れる。
他にも「何か食べられそうなものはないか?」と店内を探し回った。
だがキャンディ一つ残っていない。
……仕方がない。とりあえずはこのペットボトル2本で良しとしよう……
エイタがPXを出ようとした時、ふと陳列棚にある帽子が目に入った。
手に取ると地球連邦宇宙軍『E.F.S.F.』のモビルスーツ・パイロット用の帽子だった。
とは言っても正式な軍装の帽子ではない。各部隊が独自に作っているオフタイムに被る野球帽タイプのものだ。
それでも前部分には『MOBILE SUIT PILOT SIDE7』と金字の刺繍が施され、側面には鷲のマークが描かれていた。
どこの軍隊でもそうだが、パイロットは憧れの職種であり、その中でもモビルスーツ・パイロットは特別だ。
基地の近くでパイロットの徽章を見せれば、すぐに女の子が引っかかる。
その意味では、帽子は正式な軍装品ではなかったが、その基地独自のパイロットのトレードマークとして、他の職種の人間が身に着ける事は躊躇われたのだ。
エイタも技術将校のため『モビルスーツを動かす事は出来る』が、パイロットではない。
パイロット・キャップに憧れはあったが、身に着ける事は出来なかった。
……でもここは無人のコロニーだ。ちょっと被ってみるくらいいいだろう……
エイタはパイロット・キャップを手にすると、それを被ってみた。
すぐ近くに鏡があるので、そこで自分の姿を映してみる。
……うん、中々似合うじゃないか。俺も今はモビルスーツに乗って、ジオンのザクと戦っているんだもんな。一つくらい貰って行っても構わないだろう……
だがその帽子はエイタの頭には少し小さかった。
別のサイズを選ぼうと、ツバに手をかけて帽子を脱いだ時だ。
ビシッ、という感触と共に、手から帽子が吹き飛んだ。
ほとんど同時にライフルの銃声が聞こえる。
エイタは思わず尻もちを着いていた。
……敵、敵が居るのか?それで俺を狙撃したのか?……
エイタは四つん這いのまま、出来るだけ音を立てずに移動した。
レジのあるカウンターの方に移動する。
……今の弾はあの兵舎の方から飛んできた……
エイタは敵が潜んでいると思われる場所に目を凝らした。
そして自分のライフルを構えて物陰に狙いを付ける。
……おかしい……
オダワラは不審なものを感じていた。
確かに狙った所に命中した。帽子が吹き飛んだのも見えた。
それに続いて何か重みのあるものが倒れる音もした。
……だがなんだ、手ごたえが感じられない……
人を撃ち倒した時の独特の感触がなかったのだ。
確かに頭部に当たれば、相手は即死だったのかもしれない。
その場合も一言も発せずに、ただの物体として倒れるだろう。
しかしオダワラのカンが「敵を倒していない」と告げているのだ。
……やはり確かめるべきか?……
オダワラはそっと兵舎の影を伝って、PXに向かって歩を進めた。
エイタはPXのカウンターに身を潜めて、敵が隠れていると思われる物陰を見張っていた。
だが何も見えない。店内よりも外の方が明るいので、人がいれば解るはずだった。
……敵は必ず近くにいる。そして俺を倒したかどうか、確認に来るはずだ……
と、その時、兵舎の影の中で、微かに動く人影のような物が見えた気がした。
目を凝らして暗闇を見つめる。
すると暗い影の中にも、何となく人型っぽいものが見える気がした。
そしてそれが人間なら、この状況ではジオン兵しかあり得ない。
……先手必勝だ……
エイタはプルバック式のアサルト・ライフルをフルオートで撃った。
敵の姿がハッキリと見えているのではない以上、単発で狙い撃っても仕方がない。
人影らしい物に向かって弾をばら撒くように撃つ。
だが相手の動きは素早かった。
とっさにスライディングするように他の建物の影に身を隠すと、すぐに撃ち返してきたのだ。
敵は「ダダダッ、ダダダッ」と言うように、三発程度に区切って撃ってきていた。
だがカウンターに身を隠している分だけ、この状況ではエイタの方が有利だ。
エイタはカウンターを移動しながら、弾倉を変えて敵を撃ち続けた。
オダワラは常に建物の影に入りながら、敵兵を撃ち倒したと思われる場所に向かっていた。
PXの店内まであと20メートルほどの所でだ。
PXのカウンターがある辺りが光ったかと思うと、突然フルオートで弾を撃ちこまれた。
オダワラはとっさに兵舎玄関の柱の影に飛び込む。
……あんな所から?まだ他に敵がいたのか?それとも相手は死んでいなかったのか?……
柱を盾にして銃の発射光が見えた辺りに、引き金を短く区切りながら三点バースト射撃で撃ち返した。
だが相手はカウンターの中を移動しながら撃ってきている。どうやら敵は一人のようだ。
……この状況では俺の方が不利だ……
オダワラは敵がカウンターの中を移動していると思われる隙に、兵舎の裏側にダッシュした。
……ここは無理をする所ではない。それにこの場所は連邦軍のモビルスーツの方が近い。戻って攻撃されたら一たまりもない……
不利だと思ったら迷わず退却する。ここがオダワラが歴戦の勇者である証だ。
オダワラは兵舎を盾として、森林地帯に続く裏門へと走った。
エイタがカウンターで弾倉を入れ替えている時。
ジオン兵が走り去っていく足音が聞こえた。
……ジオン兵は退却した?……
相手が一人とは限らない。
エイタは一瞬だけ頭をカウンターの外に出し、すぐに引っ込める。
だが敵からの射撃は無かった。
……あの様子だと、俺の弾は相手に当たっていない……
走り去る足音から、相手が負傷していない事は間違いなかった。そのくらいはエイタにも解る。
……とすると相手は急いでザクのある場所に戻ったのだろう……
そう考えるとグズグズはしていられない。エイタも一刻も早くガンダムの所に戻らねばならない。
もし相手が先にザクにたどり着き、そのまま一気に攻めてきたら、エイタもガンダムも一たまりもないだろう。
エイタはペットボトルを入れた袋を掴むと、PXから弾けるようにして飛び出した。
「敵よりも早くモビルスーツに乗らねば!」
そのままガンダム目指してダッシュする。
そして走れば走るほど、追いかけられているような恐怖に駆られる。
今すぐにでも森の中からザクが飛び出してくるような気がする。
まだ火事が収まっていない所があるので、PXから一直線に向かう事は出来ないが、それでも可能な限り最短コースを辿ってガンダムまで辿り着いた。
途中、恐怖と焦りで何度も転びそうになりながら、ガンダムのコックピットに飛び込む。
スリープ状態のガンダムを起動するのも、もどかしく感じられた。
ガンダムが起動した後も、エイタの全身はしばらく小刻みに震えていた。
この続きは、明日朝7時半頃に投稿予定です。
下の「評価する」で評価を頂けると大変嬉しいです。
モチベーションに繋がります。
どうぞよろしくお願いします。