機動戦士ガンダム外伝 サイド7最後の銃声   作:震電みひろ

11 / 20
10,膠着

朝になった。

コロニーの外周の三分の一を占める巨大ミラーが徐々に展開し、『河』と呼ばれる光を取り入れるガラス部分を通して、コロニー内部に陽の光を取り入れる。

 

オダワラは少し疲れた様子で薄く目を開いた。

軽く三時間ほど仮眠を取っただけだが、体調の方は悪くない。

オダワラのザクは、さらに移動して別の場所に待機していた。

やはり森林地帯にある小高い丘の影だが、ここにはあらかじめブルドーザーで簡単に塹壕を掘ってある。

モビルスーツが立って歩けるほどの深さはないが、木々の高さとあいまって屈んだ姿勢ならば、外からは見られずに移動できる。

 

オダワラは昨夜、PXで連邦の兵士と撃ち合った後、森林地帯に何か所か追加でワナを仕掛けたのだ。

持って来ていたプラスチック爆弾を簡易地雷で、ワイヤーを使ってブービートラップとして仕掛けたのだ。

モビルスーツ相手にどこまで通用するかは微妙だったが、運が良ければ脚部に故障を起こせるかもしれない。

 

元々は電波の使えないミノフスキー粒子下の宇宙戦闘用に開発されたモビルスーツだったが、陸戦兵器としても有効である事が判明した。

だが1G下でのモビルスーツの由一の泣き所は脚部だ。

その全重量が圧し掛かる二本の脚部は、くるぶし部分と膝関節部分に多大な負担がかかる。

結果としてこの部分に様々な故障が発生した。

 

……そこに爆発物でさらに負担を与えれば、うまく行けば行動不能に出来るのではないか?最悪でも敵の足止めにはなるし、爆発で相手の位置も解る……

 

オダワラはそう考えて、夜の内に追加の罠を何か所にも仕掛けたのだ。

 

……対戦車地雷でもあれば、もっと有効だったんだがな……

 

しかしここで無い物をねだっても仕方がない。

オダワラは水筒の水でタオルを濡らし、それで顔を拭うと眠気を払った。

 

 

 

朝になった。

その陽の光の明るさで、エイタは目を覚ました。

頭と身体が重い。おそらく睡眠は三時間程度しか取れていないだろう。

 

……俺はいつの間にか、眠っていたのか……

 

昨夜、PXで敵兵の攻撃を受けた後にはあれほど恐怖を感じていたのに、いつの間にか眠っていた自分の図太さに少々呆れた。

だがエイタとて、夜の間中、敵の攻撃を恐れて震えていた訳ではない。

PXに行く途中、軍艦の艦装を整備する工場を見つけたのだ。

そこは森林地帯側が背の高いビルで『コの字型』に囲われており、さらには地下に掘り下げられた暗渠もあった。

その時点ではまだ火の手も上がっていたが、その工場の内部には火は回ってこないように見えた。

 

……同じ場所に居るより、移動した方が敵には解りにくいはずだ……

 

エイタはガンダムを静かにその工場まで移動させた。

ここでまた敵に狙撃されたらおしまいだが、そこは運を天に任せるしかない。

幸いな事にまだ続く火災が、その炎と煙でガンダムの機体を隠してくれる。

無事に整備工場までたどり着いたエイタはホッとタメ息をついた。

 

……どうやらモビルスーツの駆動音が聞こえるほど、近い場所に敵は潜んでいる訳じゃなさそうだな……

 

火災の火の手は広がっている。その破壊音もあって敵に気づかれずに済んだのだろう。

それにモビルスーツの駆動音は隠密性のためにかなり抑えられるように設計されていた。

 

……だが50tを越えるモビルスーツの足音までは消す事は出来ないからな……

 

そこまで考えた時、エイタはハッとなった。

 

……そうだ、どんなに静粛性を保っても、モビルスーツの足音だけは消す事ができない……

 

エイタはさっそくコックピットから外に出て、コンクリートの床に耳を付けた。

そこからは火事による破壊音以外にも、コロニー自体が発する低周波の駆動音などが混じって聞こえる。

 

……だが二足歩行は独特の音やリズムがあるはずだ。それを拾う事が出来れば……

 

エイタはさっそく工場内にあるマイクをかき集めた。全部で18個が集まる。

さらにエイタは工場内から軍専用のネットワーク回線を呼び出した。

たとえコロニーが無人であっても、軍専用のネットワークは生きているはずだ。

予想通り、ネットワークは使用可能だった。

エイタはそれぞれのマイクにWi-Fi機能を接続し、それを森林地帯に近い道路のアチコチに仕掛けていった。

メガホンを作ってマイクがコンクリートの地面に接触するように設置する。

これで地面から伝わる音を拾えるはずだ。

明け方までに8か所にマイクを仕掛ける事が出来た。

 

……これで敵モビルスーツが接近すれば、その足音からだいたいの位置が予想できる……

 

三か所のマイクで足音が拾えれば、その伝達速度の違いから音源のおおよその位置を測定する事は難しくはない。

その程度のプログラムはエイタにとって朝飯前だ。

 

ガンダムのコックピットに戻ったエイタは、さっそく手帳を取り出し、自分のアイデアを書き留めた。

エイタはどんな時でも手書きできる紙のメモとペンを持ち歩いている。

そこで思いついたアイデアなどを、簡単に図を交えて書き留めるためだ。

 

……今後、地上でもモビルスーツ戦が行われるようになるだろう。その時、敵の位置を知る事は重要だ。地面に三か所以上のマイクを設置する事で、敵の居る場所が把握できる。よし、コイツを『グラウンド・ソナー』と名付けよう……

 

エイタが仕掛けたマイク『グラウンド・ソナー』により、敵の接近が探知できる。

その安心感も手伝って、エイタはいつの間にか眠りに落ちていた。

 




この続きは、本日正午過ぎに投稿予です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。