機動戦士ガンダム外伝 サイド7最後の銃声   作:震電みひろ

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無事にトラップを脱したエイタだが、その大ジャンプのため着地に失敗してガンダムの左膝部分に故障が発生した。
左ふくらはぎにあるビームサーベルのマウント部分が開かなくなったのだ。

そしてオダワラの方もタイミリミットが迫って来ている事を感じていた。
暗くなったら夜襲を掛ける決意をする。


12,夜襲(後編)

陽が沈んでだいぶ時間が経った。

エイタはガンダムのコックピットの中で、ハッチを開けたままパックのレーションを食べていた。

 

パックのレーションは味がかなり落ちる。兵士にも緊急用に支給されるが、人気はない。

軍隊の食事で人気がある順番と言えば『基地内で提供される通常の食事・Aレーション』『野外炊事車、フィールド・キッチンて提供される食事』『缶詰の戦闘糧食』『レトルトパックの戦闘糧食』の順だ。

 

いまエイタが食べているパックのレーションは、倉庫の中で作業員のロッカーの上に投げ出されていたものだ。

おそらく支給されたが食べる気のない隊員が、そこに放置したのだろう。

賞味期限は半年以上過ぎていたが、そんなに問題にはならないだろう。

それよりの丸二日、水しか飲んでいないエイタには空腹の方が厳しかった。

パックを温める材料もなかったが、エイタはレーションの袋を開けると、付属していたプラスチック・スプーンで細切れとなったパスタを口に運んだ。時折、残り少なくなった水を飲む。

 

その時、コックピット内に「ピッ、ピッ、ピッ」という警告音が鳴った。

 

「来たか」

 

これはエイタが設置した「自作グラウンド・ソナー」に反応があった警告音だ。

エイタは作成しておいたマイクとWi-Fiのセットを、ここでも倉庫を中心に八か所に仕掛けておいた。

汎用モニターを見ると、その内のいくつかに反応がある。

モビルスーツの足音を捕らえたのだ。

そして敵の推定位置が赤い円で示された。

 

……100ミリで撃つには、まだ距離があるな……

 

100ミリ・マシンガンは大量に弾をバラ撒く事が出来るが、ビーム・ライフルには有効射程距離では若干劣る。

ビーム・ライフルも大気中での射程はそれほどではないが、直進性から狙い撃てる範囲が100ミリよりは長いのだ。

 

エイタはレーションの残りを一気に口に詰め込むと、袋を外に投げ捨てた。

そのままハッチを閉める。

 

……さぁ、来るなら来い。ジオンのモビルスーツ……

 

エイタは操縦レバーを握りしめた。

 

 

 

オダワラは森林地帯から慎重にザクを移動させた。

住宅街はモビルスーツの姿を隠せるような場所が少ない。

ただ敵モビルスーツが居ると思われる公共施設から、五百メートルほど離れた場所にハイスクールが、さらに同じ並びで1キロほど離れた場所にジュニア・ハイスクールがあった。

この二つの建物ならモビルスーツの姿を隠す事が出来るし、公共施設から一直線に並んでいるので、相手からは見つかりにくい。

 

……ハイスクールまで近づいたら、後は一気に飛び込んだ方がいいか……

 

オダワラはそう考えていた。

いくら音を立てないように慎重に進んだとしても、五百メートル以内なら相手も気づく可能性は高い。

それならば一気に飛び込んで、敵の寝首をかく方がいい。

もし敵パイロットがコックピットの外で、例えば建物中などで寝ていれば、苦労なく連邦の新型モビルスーツを破壊、もしくは捕獲する事が可能だ。

モビルスーツのコックピットの中は狭い。

オダワラでも二日も連続でコックピット内で寝るのはごめんだ。

戦場に慣れていない新兵なら、緊張が解ければ外で手足を伸ばして寝たいと思うだろう。

 

……問題は、本当に公共施設に敵がいるかどうかと、居たとしてもどこに居るのか、だな……

 

乗り込んだ先が無人だったら、連邦のモビルスーツが別の場所で待ち伏せていたら、オダワラはいい的にしかならない。

 

オダワラは静かに、静かに、ザクを進ませた。

やっとの思いでハイスクールまでたどり着く。

その影でザクをいったん停止させる。

 

……少しここで様子を見るか。せめて公共施設に敵が居るか居ないかくらいは見極めたい……

 

そう考えてオダワラのザクが校舎の影から公共施設を覗いた時だ。

 ダン、ダン、ダン、ダン!

連続的な激しい破壊音と共に、ハイスクールの校舎の一部が破壊された。

 

……敵の攻撃?……

 

オダワラは素早くザクを校舎の影に引っ込める。

少し遅れて「ダダダダッツ」という装薬銃による発射音が響いた。

オダワラはザクを校舎の反対側に移動させ、敵が撃ってきていると思われる方向を覗いてみた。

公共施設より少し北側の森林地帯に近い部分、そこは人工の川がある場所だが、そこから敵は撃ってきていた。

マシンガンの発射光がハッキリと見える。

オダワラの方もそこに向かってマシンガンを撃ちこんだ。

小さめのドラム缶くらいの薬きょうが、激しく地面に散らばる。

 

……なぜだ、なぜ敵は俺が接近した事が解った?……

 

オダワラはそれが意外だった。

 

……音で気が着いたのか?いや、それにしてもどこに潜んでいるのかは解らないはずだ。相手は明らかに自分がハイスクールに隠れている事を知っていた……

 

オダワラは考えを切り替えた。どの道、夜襲は相手の不意を撃つ事で成果を上げる事ができる。

敵に接近を察知された状態では襲撃は失敗だ。

むしろ敵は川を掩蔽壕として使えるだけ、オダワラの方が不利だ。

オダワラは装備していたクラッカーは放り投げた。

敵の場所まで届く事を期待したのではない。撤退のための目くらましだ。

クラッカーはオダワラと敵の中間まで飛んで、そこで爆発した。

オダワラはその爆発の隙に、ザクを撤退させた。

予想通り、連邦のモビルスーツは深追いはして来ない。

 

……相手は俺の接近を察知した。俺が知らない連邦の警戒システムが生きていたのか?……

 

だがオダワラにもこの夜襲で二つの情報を掴む事が出来た。

 

……連邦のモビルスーツは、やはり市の公共施設に居た。そしてその背後には川がある。そこを拠点にして攻撃に備えている……

 

……敵がマシンガンで攻撃して来たと言う事は、ビーム・ライフルはエネルギー切れで使えなくなったのだろう。そうでなければ、あの状況でビームを撃って来ない理由がない……

 

オダワラはニヤリと笑った。

 

……敵があのビーム・ライフルを使えないとなれば、武器としての勝負は互角になるな……

 

 

 

秘密倉庫から川沿いに森林地帯に移動していたエイタは、ザクが撤退するのを見届けていた。

エイタはホッと安堵のタメ息をつく。

 

……これで今夜はもう襲って来ないんじゃないか……

 

敵もバカじゃない。エイタが夜襲に対応できたという事は、何らかの方法で相手の接近を知る事ができると分かっただろう。

うかつには近づけないはずだ。

長期戦なら『グラウンド・ソナー』の事は感づかれたくなかったが、エイタは明日の夕方にはこのサイド7を出るのだ。

つまりあと20時間少々、敵を退けられればいい。

エイタはそう考えていた。

 

だが彼にとってはそこが経験不足から来る甘さだったのだ。

彼は敵のザクをもっと引き付けて、ここで撃破しておくべきだった。

そのため相手には『エイタにはビーム・ライフルが使えない事』を知られてしまったのだ。

 




この続きは、明日正午過ぎに投稿予定です。
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